「・・・・・ごめん」

「・・え?大神はん、どないしたん?」

「いや、ごめん、あしりん、元に戻って」

 

僕は自然とふうっ、とため息が漏れた・・・

膝に手を乗せうつむくと、

眼鏡を外しながら心配そうに覗き込む、あしりん。

 

「ごめん、できなかった」

「え?どうして?」

「その、ちょっと、とまどっちゃって」

 

僕・・・ちょっとなさけないかな。

 

「ねえ、私・・・きらい?」

「嫌いじゃないよ、でも、その。なんていうか・・・」

「・・・言って、何でも」

「あしりん、実は僕、Hするの、はじめてなんだ・・・」

「・・・そうなんだ・・・う〜ん」

 

そういえば、あしりんはどうなんだろう・・・

 

「あ・・・あしりんは?」

「ほへ?私は・・・はじめて・・・じゃないけど」

「そ、そう・・・だよ・・・ね」

「そういうの、こだわるの?」

「ううん、こだわらないけど・・・」

 

ちゃんと説明しなきゃ。

 

「ごめん、あしりん・・その、途中でなんだか、あしりんと紅蘭が交錯しちゃって・・・」

「あ!・・・私が悪いんだ」

「そうじゃなくって・・その、やるならちゃんと・・・」

「ちゃんと?まっさらってこと?私の本名・村主葦音(すぐりあしね)としたいってこと?」

「い、いや・・・その・・・」

 

あしりんも困惑してる。

 

「さっきHしてた時、はじめてのHが紅蘭と!って、胸がときめいたんだけど、

でもよく見ると髪も完璧じゃないし、そばかすだってないし、声は渕崎ゆり子じゃないし、

するならちゃんと、あしりんが成りきってるキャラでないと、もったいないっていうか、

あしりんに失礼な気がしたのと、やっぱり僕はじめてだから、中途半端なキャラクターとは・・

ごめん、雰囲気壊しちゃって、でもなんだかそういう気がしたから耐えられなくなって」

 

と、あしりんの表情を見ると・・・喜んでる!?

 

「いい!いいわ!これぞ萌えの極みだわ!萌え萌えコスプレHに相応しいHしなきゃ!」

「え?あしりん?あしりん?」

「じゃあ、どのキャラとする?初体験!どんなキャラでも成りきってみせるから!」

「う、うん・・えっと・・・う〜〜〜ん、急に言われても・・・えっと・・・」

「大体の服は揃ってるから、ケモノキャラでもok!あ、男キャラもあるよ」

 

どうしよう・・・どうしようかなぁー・・・

まさか「初体験の相手を好きなアニメ・漫画・ゲームのキャラから選べ」なんて事になるとは・・・

う〜〜〜ん・・・あ、あそこにあるのはときメモの制服・・いや、僕はときメモよりもは・・・

 

「あの・・鳴沢唯、ありますか?」

「え?唯?同級生?『おにいちゃん唯はね』の、唯ちゃん?」

「う、うん・・・あれが・・いい・・・かな・・・」

 

ベットの下の引き出しからゴソゴソと探る、

出てきたのは・・・リボンだ、あの柄は間違いなく唯の!!

 

「はじめては唯ちゃんでいいのね?」

「うん・・・あ、でも服って・・」

「あの学校の制服は確かこっちで見たと思うんだけどな〜〜〜」

 

チャイナドレスを豪快に脱ぎ捨て、

下着姿で壁にかかった服を分ける、あしりん。

唯ちゃん・・・妹系キャラって事は、僕がリードしないといけないんだよな・・・

 

「これじゃない・・これはギャラクシーエンジェル・・・これはエヴァのだし・・・」

 

次々と投げ捨てられる服、

と、その中に僕の胸をドキッとさせる物を見つけた。

 

「あしりん!」

「え?あった?」

「う、ううん。ゆ、唯ちゃんキャンセル!」

「キャンセル?やめるの?じゃあ、何でいくの?」

「そ、それ・・・それが・・・いい」

 

僕の指の先にあるのは紫のタイツと繋がった、きわいどい服・・・

 

「これって・・・・・これがいいの?」

「うん・・・これが、いい」

「・・・・・モリガンさんねぇ・・・そういう趣味あったんだぁ〜」

 

含み笑いのあしりん。

 

「いやその、唯ちゃんは普通でゲームで脱ぐけど、

モリガンはゲームキャラで、そりゃあ同人誌とかではいっぱい脱ぐけど、

でもその、なんていうか、コスプレしてる人とか見てもモリガンのコスプレって、

すごいエッチなのに中は見せてもらえないから、見せてもらえないのは当たり前だけど、

だからこそ寸止めされてるっていうか、だから、それにこのキャラすごい好きだし・・・」

 

僕の言い訳を無視してモリガンの衣装がかけてあった壁の下から黒い翼を取り出し装着する、

マジックテープみたいなものでくっつけてたんだ・・・さらには黒いカチューシャ?

それにも小さく黒い翼っぽいのがついてる、それを取り出して・・・あ、ブラ外した!

ショーツも脱いで、直に衣装を着始めている、背中の翼って実は重そうだな・・あ、押入れあけた、

ダンボール箱があって中にスプレーが・・・ヘアスプレー?振って・・頭にかけてる、編みを解いた長い髪に・・・緑になってく!?

 

「・・・・・・・もうキャンセル無しね?」

「あ、はい、モリガンさんで決めました」

「初体験がモリガンね・・・なんだか君の将来が見えたっぽい」

 

ど、どんな将来なんだろう・・・?

 

シュー・・シューーー・・・シュー・・・・・

 

「・・・・・そうだっ♪」

 

窓のほうへ移動し掛けてあった服を払い落とすと、

カーテンを二重に閉めて外の明かりを遮る・・・部屋はまるで夜のように暗くなった、

あしりんの人影はわかるんだけど、目が慣れるまではハッキリとは・・・って、こっちに来た!?

 

「ふふふふふふふふふ・・・・・」

「あしりん!?」

「・・・・・私の名はモリガンよ」

 

も、もう始まってる!?

 

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