三姉妹がお風呂へ行き、
僕の部屋で美鈴姉さんと2人っきりになった。
美鈴「これで、ひとまずは安心よ」
僕「姉さん、ほんっとに、ありがとう・・・」
美鈴「お礼はあの子たちに言いなさい、あと管理人さんにも感謝だわ」
僕「ええっ?あのおじいさんが・・・どうして?」
美鈴「悪口はあまり言いたくないから言葉を選ぶけど・・良い噛ませ犬になってもらったわ」
噛ませ犬・・なーんとなくわかるな。
僕「相談所の人から目を逸らしてくれたってことですか?」
美鈴「そういうことになるわね、あの人と比べて見てもらえば弟クンの正常さがわかるってことよ」
僕「やっぱり・・・美鈴姉さん、そこまで計算して!?」
美鈴「んー、前回の時にあの管理人さんが雪沙ちゃんに興味アリアリなのは視線でわかってたわ」
僕「それで、危険なのは管理人の方だ、と・・」
美鈴「そんなつもりじゃないわよ、まあ、そうなんでしょうけど」
僕「じゃあ、どういうつもりで?」
コップの麦茶を飲み干す美鈴姉さん。
美鈴「選択肢を増やしたの、相談所へ行くか、家に戻るか、管理人の所へ住むか、君の所、つまりここへ住むか」
僕「どうして?」
美鈴「あら、いっぱいある中で君を選べば信頼度は上がるわ、君が本当は嫌、でも家も嫌、施設も嫌、だとしたら?」
僕「その時は・・あの管理人の所へ?」
美鈴「そうよ、でも3人とも躊躇なく君を選んだわ、しっかりとね」
そうか、僕抜きで三姉妹を呼んだのも、
僕がいなくても選ぶかどうか確かめるために・・・!
僕「なるほど、僕が料理作ってる間にそんな事があったんですか」
美鈴「それだけじゃないわよ、雪巳ちゃんたちがいない間に雛塚家へも行ったし」
僕「どうなって・・ました?」
美鈴「お父さんが暴れてたわね」
僕「それで、どうしたんですか!?」
美鈴「どうもできないわよ、警察じゃないんだから。逆にまだ残ってる子たちの保護へと論点がシフトしたわ」
僕「じゃあ、雪巳ちゃんたちから問題はそっちの方へ・・・」
美鈴「そうね、あの子たちの方がこっちの子より幼いから」
これは、喜んでいいの・・かな?
僕「じゃあ、安心していいんですか?」
美鈴「君の家に雪巳ちゃん達が住む事に関しては、ね」
僕「良かったぁ・・・」
美鈴「油断しちゃ駄目よ?完全に100%信頼して貰えたかどうかわからないんだから」
僕「と、いうと?」
美鈴「そうね・・・私が職員だったら、君はまだ疑わしいと思うわ」
僕「どーして!?」
美鈴「あまりにもあの子たちに親切にしすぎてる事・・下心がある可能性は捨て切れないわね」
ぎくぎくぅ!!
僕「そそそ、そんなの、ない・・・です」
美鈴「あら、あってもいいと思うわよ?私は」
僕「無いですってば!」
美鈴「まあ、逆にあの子たちの方の下心がかなり強いみたいだけど」
僕「そうなんですか・・・まあ、そうですよね・・・」
あの妹弟たちの環境を見ると、そう思う・・・
1日でも多くこの家に留まりたいと思ってるんだろうな。
美鈴「弟クンはそんなこと無いでしょうけど・・1つ歯車が狂うと突然、虐待し始める可能性もあるからね」
僕「どんなに仲良くても、ですか」
美鈴「そう、他人でも親子でも・・まあ、君の事は児童相談所の皆さんによーーーくフォローしておいたから」
僕「本当に・・・ありがとうございます」
美鈴「そのかわり・・・わかってるわね?」
う・・・ちょっと恐い・・・
僕「はい・・・ネズミーランドの、お土産、ですよね・・」
美鈴「違う!あの子たちの事よ」
僕「あ、はい!任せてください、夏休みいっぱい、ちゃんと・・・一緒に住みます」
美鈴「養子に貰いたくなくなったらすぐに決断するのね、逆に貰いたくなった場合も」
僕「そんなにすぐには・・・決められない、です」
美鈴「でも、早く決めた方があの子たちのためよ?」
僕「はい・・・」
美鈴「いっそ1人恋人にしちゃえば・・あ、3人とも恋人にしてもいいわねえ」
僕「ねえさん!!」
ぴんぽーーん
美鈴「あ、取りに来たわ!」
僕「じゃあ僕が・・」
美鈴「そうね、行ってらっしゃい」
職員女「申し訳ありません、車に乗ってから忘れ物に気が付きまして・・」
僕「いえいえ、居間ですか?」
職員女「はい・・・あ、これですわ、あってよかった」
僕「気付かなくってすみません」
職員女「とんでもない!・・・あら、賑やかな声が聞こえますわねえ」
僕「はは、雪巳ちゃんたちがお風呂に入ってるんです、フリーマーケットでお風呂用おもちゃ買ってあげたから」
職員女「そうですか・・・どうかよろしくお願い致しますね」
僕「はい、あの子たちは僕が守る!くらいの気持ちで」
職員女「・・・たのもしいですわ、本当」
美鈴姉さんが入ってくる。
美鈴「さ、弟クン、この部屋片付けましょう」
僕「はい」
職員女「それではこれで・・お邪魔致しました」
美鈴「いいえー、お仕事がんばって下さい、大変ですよね、児童虐待が多くて」
職員女「そうですわね、本当に・・・では失礼致します」
今度こそ本当に帰っていく職員さん・・・
もう大丈夫かな?正真正銘、もう戻ってこない、よな?
美鈴「弟クン、信頼されてるわよー?」
僕「はい・・・」
美鈴「まあ、チクリと『他の家の虐待の方を何とかするのが大事ですよ』って事は君のいない時に言っておいたから」
僕「何から何まで、ほんとうにもう・・・」
美鈴「あの子たち、他人事に思えないのよねー・・・将来、義妹になるからかなー?」
どきどきどき!!
美鈴「さあ、もう私は帰らなきゃ」
僕「あ・・・兄さんが、おなか空かしてる!」
美鈴「電話しておいたから大丈夫、それより、ちゃんと今夜、一緒に寝てあげるのよ?」
僕「は、はひっ!!」
美鈴「なんて声出してるの・・一緒にお風呂入れなかったんだから、添い寝くらいしっかりしなさいね」
はは、ははは・・・
美鈴「それと同時に、しっかり添い寝してもらいなさい!」
食事を終え、僕はお風呂を出てきた、
部屋では三姉妹が明日の準備に余念がない・・・
昨日買ったばかりのリュックに一生懸命詰めている。
雪巳「ゆきさー、ぱんつはひとつでいいよー」
雪菜「ガムは持っていっちゃ駄目・・食べ物禁止だって・・・」
雪沙「え〜?ぢゃあ、水筒もだめだの〜〜?」
僕「そうだね、向こうで飲み物ちゃんと買ってあげるから」
雪巳「お兄ちゃんの準備はー?」
そうだな、着替えと行列用のゲームボーイくらいは持っていくか・・・
後は迷子になった時用の、携帯電話の番号も持たせてあげないとな。
他に必要なのは・・ホテルパンナコッタから届いた封筒は丸ごと持っていくし・・・
雪巳「ガイドブックどこー?」
雪菜「わたし・・持ってない・・2冊とも・・」
雪沙「ゆきさのリュックだよ〜、ほら〜」
僕「そうだ、ベビーパウダー入れた?」
雪沙「あ〜〜、そっだ〜〜〜」
慌てて持ってくる・・・
僕「中でぶちまけないように、しっかり閉じておくんだよ」
雪沙「うん〜、箱をコンビニの袋に入れるね〜〜」
雪菜「ちゃんと巻いて・・・そう・・・」
雪巳「ねーねーお兄ちゃん、明日の作戦確認しようよー」
僕「そうだね、僕がインターネットとガイドブックで情報収集した・・・」
そうしているうちに気が付けば時計は午後10時過ぎ、
明日は朝早い、準備も終ったし、もう寝なければいけない・・・
雪巳「明日、何時に起きるー?」
僕「開門が7時だから、5時過ぎに出よう」
雪菜「電車で・・・55分、です」
僕「じゃあ5時半でもいいかな?」
雪沙「5時に起きる〜、朝ごはんはむこうでだよね〜」
さて、寝るか・・・
そうだ、今夜はみんなと寝なきゃ・・・
僕のベットに3姉妹は窮屈だよな、ここは僕が彼女達の部屋へ・・・
僕「よし、枕持ったし、行こう」
雪巳「うんー」
雪沙「だれとねるの〜?」
僕「みんなとだよ」
雪菜「・・・うれしい・・・」
4人で布団が3つひいてある部屋へ・・
三姉妹の布団はそれぞれ決まっているようだ、
一番奥が雪巳ちゃん、真ん中の、僕がデパートで買った布団が雪沙ちゃん、
そして廊下に近い布団が雪菜ちゃん、三人ともそそくさと潜り込んでいく。
雪菜ちゃんが目覚ましをセットし、雪巳ちゃんは電気をリモコンで暗くする・・・
雪巳「おにーちゃん、こっちでねよー」
雪沙「こっちがきもちいいよ〜〜〜?」
雪菜「目覚まし・・近いほうが・・いい・・です・・よ」
それぞれ三者三様に僕を誘っている!
誰の布団に入るべきか・・・う〜〜〜〜〜ん・・・
僕「じゃあ・・・真ん中で・・いい、かな」
雪沙「わ〜〜〜い♪」
雪沙ちゃんの布団に潜り込む、
ベビーパウダーの、いい匂い・・・
すすす、と僕の胸へ入り込む雪沙ちゃん。
雪沙「えへへ〜〜〜♪」
僕「お、おやすみ・・・」
雪巳「おやすみー」
雪菜おやすみ・・・」
僕「え?わ!わ・・・」
雪巳ちゃん雪菜ちゃんも真ん中の布団へ入ってきた!
うーん、空調ばっちりといえど、これは暑い夜になりそうだ、
興奮して眠れないかも・・いや、明日のネズミーシーに興奮した、だ、うん。
僕「おやすみなさい・・・」
雪巳「・・・・・」
雪菜「・・・・・・」
雪沙「・・・・・クー、クー・・・」
僕「・・・・・ほっ」
みんなすぐに眠ったようだ、
やっぱり今日の、相談所の人との会話で疲れてたんだろう、
それを思い出すと僕も気疲れで眠くなってきた・・明日は夢の国・・・楽しむぞぉ・・・
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めくる |