壁に背をもたれて座る僕に雪沙ちゃんが四つんばいで近づいてくる!

そして耳元で囁く・・・

 

雪沙「おにぃちゃ〜ん・・お風呂ばれなかったよ〜」

僕「う、うん、そうだね、よかったよ」

雪巳「あの管理人さん、きもーーい」

僕「こら、きもいなんで言っちゃ駄目!・・声が大きいし」

雪菜「雪香おねぇちゃんみたいな言葉。使わないで・・・雪巳おねえちゃん・・・」

 

それにしても、僕らを追い出して何の話だろう?

ちょっと恐いな・・でも盗み聞きする訳にはいかないし・・・

 

雪巳「ねー、晩御飯作る時間までドンジャラしよー」

僕「ドンジャラ?いいけど・・・じゃあ1時間ちょいできるかな」

雪菜「ゆきさ・・・ルールおぼえた?」

雪沙「ん〜、やっておぼえる〜〜」

僕「じゃあ、最初の2回くらいは練習ね」

 

机の上にドンジャラを置いて牌をまぜる、

えっと・・色と模様を集めるんだったよな、3つずつ・・・

 

じゃらじゃらじゃらじゃらじゃら・・・

 

 

 

 

 

雪巳「どーーーん!!」

僕「わ、やられた」

雪菜「・・・でも、点数低い・・・んっと・・」

雪沙「ルールわかったよ〜、次から本気だよ〜〜」

僕「そうだね、よし!・・・勝負だ!!」

 

子供相手に本気になっても、恥ずかしくなんか、ないぞ!

 

雪巳「そーだー、負けたら晩御飯作る係ねー」

雪沙「いいよ〜〜」

雪菜「でも・・・お兄ちゃん・・・」

僕「いいともさ!久々に作ってもいいよ」

雪巳「決まりねー」

 

じゃらじゃらじゃら・・・じゃらじゃらじゃらじゃらじゃら・・・・・

 

 

 

雪菜「そのドラえもん・・あたり・・・」

僕「え?ほんと?あっちゃあ・・やられちゃった」

雪巳「すっごーい高得点!」

雪沙「ゆきなおね〜ちゃん、ぎゃくてん〜?」

雪菜「・・・・・うん、1位に・・なっちゃった、です」

雪巳「あー!お兄ちゃん逆転4位ー」

僕「ええっ!?・・・・・ほんとだ」

 

がーーーーーん!!

 

僕「最後の最後で・・・うぅ」

雪巳「じゃー、2位だー」

雪沙「ゆきさは3ばん〜〜〜」

雪菜「ごめんな・・・さいです・・・」

僕「でも、楽しかったからいいや・・さて、ご飯作ろう」

 

もう6時過ぎだもんな。

 

雪菜「手伝い・・ます」

僕「いいよ、今日くらいは。全部やらせて!」

雪巳「ネズミーランドのガイド読んでるねー」

雪沙「ゆきさはシーの〜〜」

僕「しっかり予習しておくといいよ!」

 

廊下を通り台所へ移動する・・・まだ話は続いてるみたいだ。

冷蔵庫を開けると・・さて、何を作ろう・・お、炒飯の素がある、

これでいくか・・後は・・冷凍ギョウザか、丁度いいや、このセットでいこう。

 

 

 

僕「ん〜・・・こんなとこかな」

 

時計はもうすぐ7時・・・

久々に作った料理、早く三姉妹に食べさせたい!

口に合うかどうか・・健康を考えてちょっと薄味にしたんだけど。

 

僕「ごはんでき・・あれ?」

 

部屋に戻るも誰もいない・・・

綺麗に片付けられたドンジャラ、途中で伏せられてるネズミーランドガイドブック・・・

まさか、連れていかれたのか!?あわてて客間へ・・・中から賑やかな声が聞こえる、三姉妹の声も!

 

僕「あ、あの・・・」

美鈴「なあに?どうかしたの?」

僕「い、いや、夕食が、できたから・・・」

雪巳「わー、ありがとー」

職員女「それではこれで失礼致しますわ」

職員男「また様子を見に来るからね」

雪菜「はいっ」

雪沙「またね〜〜」

管理人「いつでも管理人室に遊びにきなさい」

 

うっ、管理人の声に苦笑いの雪巳ちゃん・・

雪沙ちゃん、ちょっと怯えてる・・管理人さんの視線、

今になって気が付いたけど・・・ターゲットは、雪沙ちゃん、か!?

 

美鈴「下まで送ります」

職員男「いえ、玄関までで結構ですので」

職員女「それでは今後もよろしくお願い致しますね」

管理人「私も手伝いますから」

僕「おつかれさまでした・・・」

 

出て行った職員2人と管理人・・・

三姉妹もホッとしたようだ、よかった・・・

 

美鈴「みんな、お疲れさま」

雪巳「汗かいちゃったー」

雪菜「お風呂、はいりたい・・です」

雪沙「うん〜、お風呂の後でご飯たべる〜」

僕「そうだね、よし・・・」

 

今日は三人とも頑張ってくれたし、

美鈴姉さんの忠告通り、一緒にお風呂へ・・・

 

僕「じゃあぼ・・・むぐむぐ」

美鈴「しーーーっ!!」

 

な、なんだなんだ?

僕の口を塞いで、そのままさっきの客間に連れていかれる、

三姉妹も何だろう?と、ついてくる・・・一体なんだ?

 

美鈴「あ・れ」

 

ゆっくり指をさした、その先にあるのは・・・

ハンドバッグ!?黒い・・・美鈴姉さんの、かな?

ゴソゴソと中身を確認してる・・携帯電話を見た、あれは姉さんのじゃない・・・

 

美鈴「・・・大丈夫みたいね」

僕「え?どういうことですか?」

美鈴「これ、さっきの女性職員の、忘れ物よ」

僕「そうなんだ・・って、勝手に開けて見てもいいんですか?」

美鈴「確認したかったのよ、うん、携帯は動いてないし、マイクも無さそうね」

 

マイク・・・隠しマイク!?

 

僕「盗聴ですか!?」

美鈴「その心配はなかったみたい、でも・・」

僕「でも!?」

美鈴「もうすぐ、これを取りに来るわ」

僕「今から渡しに行きましょうか」

 

首を横に振る美鈴姉さん。

 

美鈴「多分、これは、わざとね」

僕「どうして?」

美鈴「例えば、君が雪巳ちゃんたちを虐待してたとするわね」

僕「してません!」

美鈴「知ってるわよ?例えばだから、聞いて」

 

つい熱くなっちゃった・・・

 

美鈴「で、雪巳ちゃんたちは君が恐くて、職員さんたちに虐待は無いって言ったとする」

僕「うん、例えばですよね・・・」

美鈴「職員さんたちが帰った後、そういう虐待癖のある人は、雪巳ちゃんたちを褒めずに・・殴るわ」

僕「ええっ!?酷くないですか!?」

美鈴「そういうものよ・・で、雪巳ちゃんたちは当然泣く・・そこへ忘れ物を取りに戻ってくると・・」

 

なるほどぉ・・・

 

僕「それで隠れた虐待を発見できる訳ですね」

美鈴「そういうこと」

雪巳「ずるーーーい」

美鈴「あら、かしこいと思うわよ、しっかりしてるわ」

僕「じゃあ僕、疑われてるってこと?」

美鈴「ううん、おそらく誰の家に行っても必ずやる常套手段ね」

 

そんなのがあるんだ。

 

僕「じゃあ、もうすぐ取りにきますね」

美鈴「そ。私は気付いたけど、指摘するよりわざと乗って安全を証明すればいいわ」

僕「よく知ってましたね、そんなの」

美鈴「あくまで予想の域よ、ひょっとしたら本当にただの忘れ物かも知れないわ」

僕「考えすぎかも、ってことですか」

美鈴「私はわざとだと思うけどね・・盗聴してる可能性も頭をよぎったわ」

僕「それでハンドバックの中を念入りに・・盗聴器見つかったらどうするんですか」

美鈴「その時は訴えればいいだけ。あきらかに法律違反だから」

僕「あ、そうか・・って、勝手にハンドバック開けるのはまずくないんですか?」

美鈴「わかりはしないわよ、それに何とでも言い訳はきくわ」

 

でも、何だかハンドバックのボタンが超小型盗聴器に思えてきた。

 

僕「本当に・・・盗聴器、無いですか?」

美鈴「ええ、携帯電話が通話になってるかなーと思ったけどそれもなかったわ」

僕「でも、携帯の中に仕掛けとか・・」

美鈴「あら、聞かれてまずいことでもあるの?」

僕「え?い、いや、ないです・・・」

 

とはいえ、もし盗聴されてたら・・・

あやうく「僕も一緒にお風呂へ」と言う所だったよ。

 

美鈴「もうしばらくしたら来るでしょう、雪巳ちゃんたちはお風呂入ってらっしゃい」

雪巳「はーーーい」

雪菜「はい・・・」

雪沙「は〜〜〜〜いっ」

僕「よーく洗うんだよ」

 

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