美鈴「甘やかしすぎ!」

僕「や、やっぱり・・・」

美鈴「特にお金ね、君、50代のおっさんじゃないんだから、何でも与えすぎ!」

僕「でも・・・あの子たち、かわいそうだし・・」

美鈴「あのね、本当にそう思うなら甘やかさないこと」

 

うーん、そうだとは思うけど・・・

 

僕「でも、美鈴姉さんだって最初、あんなに服を買わせて・・」

美鈴「あれは初期投資よ、2ヶ月弱、弟クンの世話をするための服」

僕「世話の・・?」

美鈴「いい?君が一緒に出かける時、あの子たちの服がみすぼらしかったら、君も変な目で見られるのよ?」

僕「う、うん・・」

美鈴「だから、あの服は君の着る服と同じ意味を持つの、だからあれはいいのよ」

僕「・・・あ!そういえば美鈴姉さんの買った下着、すんごい値段・・!」

美鈴「話を逸らさないの!」

僕「でも、高すぎだよ!」

 

プレステ2買える値段だし!

 

美鈴「あれはね、あの子たちのために買ったの」

僕「どういうことですか?」

美鈴「あれを私が最初に買うことによって、あの子たちも遠慮なく服を買えるようにするね」

僕「計算、なんですか?」

美鈴「そう、さらに、私の買った下着の値段以上買ったりしないためのストッパーでもあるわ」

僕「つまり、1人の買える金額の目安を作った、ってことですか?」

美鈴「もちろん!だいいち、本当に下着が欲しかったら君のお兄さんにねだるわ」

 

・・・僕、騙されてる!絶対、丸め込まれてる!

 

僕「ま、まあ、わかりました・・・」

美鈴「・・・これは私が看護学校に通っていた時に、先生から聞いた話なんだけど・・」

僕「はい」

美鈴「飢餓で苦しむアフリカのある地方にボランティアで行く時、絶対持ち込んじゃいけない物ってあるのね」

僕「なんでしょうか?」

美鈴「それは・・ジュースよ、なぜだかわかる?」

僕「え?えっと・・・砂糖分を感じて虫が寄るから?」

美鈴「違うわ、飢餓で苦しむ子供にとっては毒になるからよ」

 

ええっ?腹痛でも起こすのかな?

 

美鈴「飢餓の子供がボランティアの飲む美味しそうなジュースを欲しがる、それをあげたとする」

僕「そりゃあ一口くらいなら・・」

美鈴「その子は、一生その味を忘れられなくなるわ」

僕「なら、また来た時にあげたら・・」

美鈴「でもその子は、ジュースの美味しい味を知ってしまったために、普通のろ過水では我慢できなくなってしまうの」

僕「・・・!!」

美鈴「やがてその子は親にジュースをねだったり、盗もうとしたり・・」

僕「あちゃー・・」

美鈴「飢えている時も、ずっとジュースが飲みたい、ジュースが飲みたいって・・・」

 

それはあまりにも罪な事だ。

 

美鈴「1度贅沢を覚えてしまうと、普段の生活の酷さが増してしまうわ」

僕「そうですよ、ね・・・」

美鈴「あの子たちを引き取るのならかまわないわ、でも、そうと決めたんじゃないなら・・」

僕「わかりました、気をつけます」

美鈴「まあ、今のは極端な例だし、合鍵と防犯ブザー買ってあげたのは初期投資としては秀逸だわ」

 

そこまで聞きだしているのか!?

 

僕「じゃあ、あんまりお金や物を与えないように・・」

美鈴「そうね、だからといって財布の紐を堅くする必要はないわ、見極めること」

僕「たとえば・・?」

美鈴「んー、遠足が近いらしいからリュックを買ってあげる、これはギリギリセーフね」

僕「あ!お弁当箱、雪巳ちゃんにあげた・・」

美鈴「それはセーフ。あと、お小遣いあげたでしょ?5000円」

僕「はい・・・駄目でしたか?」

美鈴「んー・・好ましくはないけど、それを使い切ったからってさらにあげなきゃ、まあいいわ」

僕「あ!雪菜ちゃんに、さらに8000円あげた・・」

美鈴「返してもらいなさい!」

僕「でも、それは、弟を遊園地に連れて行ってあげるように・・」

 

ふうっ、とため息をつく美鈴ねえさん。

 

美鈴「ま、あの子なら大丈夫でしょう・・何か訳ありの8000円でしょうし」

僕「ごめんなさい・・」

美鈴「これ以上あげると、別れた後にお金を手に入れるため万引きや援助交際するかもよ?」

僕「そんな!!」

美鈴「あの子たちのお姉さん見たでしょ?あんな子が量産していいの?」

 

確かに・・・反省。

 

美鈴「ま、私もあの子たちにちゃんと釘さしておいたから」

僕「何言ったんですか!?」

美鈴「あの子の立場と、君の立場。それだけよ」

僕「それぞれの、立場・・・」

美鈴「そういうこと。そうね・・・ただ、お金使っていい時もちゃんとあるわよ」

僕「初期投資以外でですか?」

美鈴「そう、それは・・・デートの時よ」

 

ででで、で・え・と!

 

美鈴「君があの子たちとデートや旅行に行く時、それは1人の女の子としての扱いだから」

僕「デートだなんて・・」

美鈴「だからネズミーシー行くお金はデート資金だからOK、好きな女の子のご機嫌取りだから」

僕「うーん・・なんだか言ってることが矛盾しているような・・」

美鈴「あら、全然矛盾してないわ、デートってそういうものよ」

 

デート、かぁ・・・

 

美鈴「旅行だって、君が喜ぶためのお手伝いとしてあの子たちが付いていくんだから」

僕「お手伝い・・」

美鈴「いい?あの子たちのための旅行、じゃなく、君のための旅行、よ?あの子たちはそのメイド」

僕「僕が喜ぶことが最優先・・・」

美鈴「だから、例えば旅行のときに君だけ豪華な食事、っていうのは駄目よ」

 

あたまがこんがらがってきた・・・

 

美鈴「まあ、さっきのジュースの話とネズミーシー連れて行く事の違いがわかれば、それでいいわ」

僕「ジュースあげる罪と、旅行へ連れて行く理由・・・」

美鈴「それがわからなければ、君があの子たちを養子に貰う資格は無いわ」

 

難しいなあ・・・

 

美鈴「・・・本当のこと言うと、多分ここまで君があの子たちを甘やかしすぎてる事ってあまり無いように見える」

僕「ええ?じゃあ、無実・・?」

美鈴「でも、こう注意しておかないと、甘やかしすぎて取り返しのつかない事になるのが目に見えてたから」

僕「・・・じゃあ、甘やかしすぎ、未遂ですね・・」

美鈴「いいこと?今は君があの子たちに奉仕するんじゃなく、君が奉仕される側な事は絶対忘れないで」

 

・・・あの子たちの事ばっかり考えてたもんな、僕。

 

美鈴「さて・・・もう1つの注意があるわ」

僕「はい・・・言ってください、覚悟はありあす・・・」

美鈴「いい姿勢ね・・これは君には辛い事でしょうが・・はっきり言うわ」

僕「お願いします・・・」

美鈴「弟クン、君ねえ・・・・・」

 

どきどきどきどきどきどきどきどきどきどき!

 

美鈴「冷たくしすぎ!」

僕「えええええーーーーーっっ!?」

美鈴「ちょっと君、酷すぎるわよ?」

 

たった今、言ってた事の逆じゃん!!

 

僕「だって、甘やかしすぎって・・」

美鈴「その話はもう終ったの!」

僕「えっ?えええっっ!?」

 

どーゆーこーとー???

 

美鈴「あの子たち、子供なのわかってる?」

僕「ええ、まあ・・・」

美鈴「まだ小学生2人に、中学生になったばかりの子が1人よ」

僕「そうですよね・・・」

美鈴「・・・親と離れて、本心はどれだけ心細いか、わかる?」

 

でも、あの子たち、一緒に住みたいって・・・

 

美鈴「いいこと?赤の他人の家に子供3人だけで同居するの、いかに実の親が酷い人間でも、寂しいはずよ」

僕「あんなに明るく元気なのに・・・雪巳ちゃん、雪沙ちゃんは」

美鈴「そうふるまってるのよ、そういう性格なだけで、本当はどうしていいかわからない部分が多いはず」

僕「だからって冷たくした覚えは・・」

美鈴「弟クン、あの子たちを女の子として意識しすぎて、逃げてばかりいるでしょ」

 

ドキッ!!

 

美鈴「あの子たちはね・・君の胸の中で甘えたくってウズウズしてるのよ」

僕「でも、べったりくっつきすぎると、恥ずかしい・・」

美鈴「な〜に子供相手にはずかしがってるの?いいこと?君はここでは親代わりよ?」

僕「え?だってさっき、僕の位置はあくまでも奉仕される側だって・・」

美鈴「その話は別、一緒に考えちゃ駄目。今は『他所のお子さんを預かっている立場』での話をしているの」

 

むずかしすぎる・・頭がうにうにしてきた。

 

美鈴「あの子たちの寂しい気持ち、甘えたい欲求を受け止められるのは、ここでは君だけ」

僕「そりゃそうだ、僕しかいないんだし」

美鈴「でしょ?だから、甘えたがってたら、たっぷり甘えさせてあげなさい」

僕「甘やかしすぎちゃ駄目なんじゃ・・・」

美鈴「んもー、甘やかしていい種類と悪い種類があるの、その区別をつけなさいっ」

 

つまり・・・物やお金で釣るな、心で包み込んであげろ、ってこと・・なのかな?

 

僕「・・・・・美鈴姉さん・・・ためになります」

美鈴「もちろん君の心もわかるわ、まだ二十歳で異性に免疫ないものねー」

僕「その・・・一緒のお風呂とか、もう、どうしていいか」

美鈴「耐えられないなら彼女にしちゃえばいいのよ」

僕「っ!!」

 

恋人に・・・!?

 

美鈴「彼女なら、相手が許せば一緒にお風呂も、じっくり楽しめるでしょ?」

僕「そんな・・・」

美鈴「いっそ3人とも彼女にしちゃえば?」

僕「いー!?」

美鈴「そのかわり・・・・・大変よ〜〜〜〜〜?」

 

え、えんりょします・・・

 

僕「とにかく・・あの子たちが体で甘えたいなら、受け入れることに・・します」

美鈴「そうね、雪巳ちゃんだって中1なんてまだまだ甘えたい盛りなんだから」

僕「う・・・がんばり・・ます」

美鈴「恥ずかしいから、体が成長してきてるからって、逃げないようにね」

僕「はい・・・できる・・・かな」

 

もう大人なんだから、理性を持って・・・

 

美鈴「どうしても、どうしていいかわからなくなったら私に相談しなさい」

僕「はい、お願いします・・・」

美鈴「私の忠告はこの2つ。・・・さて、まだ来ないわね・・・マッサージの続きしてあげる」

僕「は、はあ・・」

美鈴「ほら、横になって!」

 

湯上りの背中をやわらかぁくマッサージしてくれる・・

うぅ・・・とろけるぅ・・こんなの毎日されたら骨抜きになっちゃう・・・

 

美鈴「そうそう弟クン・・・雪菜ちゃんと、何かあった?」

僕「いいっ!!」

美鈴「・・・あったようね」

 

何でもお見通しか、おそろしい・・・

 

美鈴「まあ、大体想像はつくわ」

僕「はい、多分それです・・」

美鈴「・・・他の子も同じ気持ちだと思うわよ?」

僕「そうですか・・ううっ、おしり気持ちいい・・」

美鈴「気を抜いたら弟クン、コロッ、と行っちゃうわね・・」

 

コロッ、とですか・・・

 

美鈴「あの子たち、油断すると、とんでもない事しそうだから気をつけてね」

僕「うー・・・もうすでに、ちょっと、されてるかも・・・」

美鈴「君が手を出さなくても、あの子たちが出すかもね〜」

僕「はあう・・足のぐりぐり、いいぃぃぃ〜〜・・・」

美鈴「まあ、君の人生にとって良い経験になるといいわねっ」

 

・・・・・ね、ねむぅ〜〜く、とろけてきたぁ・・・

 

美鈴「そのまま寝ちゃいなさい・・ほぉら」

僕「はひぃ〜〜〜・・・」

美鈴「おやすみ・・・ふふふ」

 

・・・・・ZZZzz・・・

 

こうして美鈴義姉さんは、

僕に難解なパズルを置いていったのだった・・・

 

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