雪沙「だったらいらな〜い」

僕「えー?そんな」

雪沙「はんぶんこしたいの〜」

僕「わ、わかったわかった、じゃあ50円ずつね、はい50円」

雪沙「うん〜!」

 

・・・・・おごってあげるって言ってるのにわざわざお金出して半分こにしたがるのなんでだろ〜♪

 

雪沙「キャラメル、ミルクにしよ〜かな〜普通のにしよ〜かな〜」

僕「お、シベリアがある、たまにはこういうの食べるのもいいかな」

雪沙「・・・・・なりゆき〜まだ選んでるの〜?」

也幸「・・・」

雪沙「うまい棒の味で迷ってるの〜?も〜、いつも迷うと長いんだから〜〜」

 

また也幸くんのテレパシーと会話してる・・・

 

雪沙「も〜、これにしなさいっ!」

也幸「・・・・・」

雪沙「あ〜、それ戻してほかの買うの〜?も〜」

 

何だか最後に決められないみたいだな、也幸くん。

 

雪沙「なりゆき、いつも選びなれてないんだから〜」

也幸「・・・・・」

雪沙「だから〜、ゆきさが選んであげるっていってるでしょ〜?これとこれ〜!」

 

強引に押して決めちゃった。

それでいいのか?也幸くん・・・と思ったら、

また別の駄菓子を・・・どうしても120円分買いたいらしい。

 

僕「わかったよ、あと20円・・・ほい」

雪沙「おにぃちゃん!あまやかしちゃ〜だめだよ〜」

僕「え?そんなに悪い事しちゃった?」

雪沙「・・・・・こんかいだけだよ〜?わかった〜?なりゆき〜」

也幸「・・・・・・・・」

 

・・・結局、雪沙ちゃんはさらに20円受け取って也幸くんの駄菓子をまとめる。

雪沙ちゃんの駄菓子も600円分選び終えたみたいで小さい買い物籠にしっかり入ってる、

僕も選び終えたし・・・あとは会計なんだけど、そういえばお店の人ってどこにいるんだろう?

 

雪沙「くださ〜い」

 

ん?何も無い場所に、置物かなんかに話かけてる?

 

おばあさん「はいはい、それからね」

 

うわっ!!びっくりしたっっ!!

いつのまに・・・ピクリとも動いてなかったから、まったく気付かなかった!!

ゆっくりした動きでソロバンをはじく・・・う〜ん、オブジェか何かかと思ったよ、気配がまったくなかったし。

 

おばあさん「はい、120円と600円だよ〜」

雪沙「720円で〜〜す」

おばあさん「かしこいねえ・・・袋はべっこだね?」

 

う〜〜〜ん・・・見れば見るほど、生気がまったくない・・・

しわくちゃのミイラが機械か何かで動かされてるみたいだ、これ。

 

おばあさん「おまいさんも買うのかね?」

僕「は、はい・・・これだけですが・・・」

おばあさん「・・・・・860円だよ」

僕「千円札で・・・お願いします」

おばあさん「あいよ・・・・・はい、140円」

 

う〜ん、いつ動かなくなってもおかしくない、からくり人形だ・・・

って、そんな失礼な事言っちゃいけないや!

 

僕「ありがとうございます」

雪沙「ありがと〜またくるね〜」

也幸「・・・・・・・」

おばあさん「はいはい、またおいで」

 

最初から最後まで気配のないおばあさんに一礼して、駄菓子やを後にした。

 

雪沙「ほら〜、なりゆき〜!おにぃちゃんにお礼いうの〜!」

也幸「・・・・・」

 

お菓子袋をじーっと見ながら雪沙ちゃんにベッタリくっついてる、

僕は完全無視みたいだ、これは・・・激しく人見知りをしてるっぽいのかな?

 

雪沙「もっと、ちゃんというの〜!」

也幸「・・・・・・・・」

雪沙「も〜!私に言うんじゃないの〜!」

 

人形相手に一人芝居してるみたいだ・・・

 

僕「まあいいよ、まだ幼いんだし、無理して言わなくても」

雪沙「だめ〜、あまやかしちゃ〜」

僕「雪沙ちゃん、結構しっかりしたお姉さんなんだね」

 

まさか雪沙ちゃんに、甘やかすな、なんて言われるとは・・・

逆に雪沙ちゃんだって、たっぷり甘やかされ・・あ、甘やかしてるのは僕か。

 

僕「ちゃんと帰ってから食べるんだぞ、也幸くん」

也幸「!!!」

雪沙「あ〜!にげた〜〜!!」

 

電柱の影に隠れちゃった。

そして僕らが進むたびに次の電柱へ、次の電柱へ・・・

僕ってそんなに恐いのかなあ?まあいいや、もうどうでも。

 

僕「さあ、マンションについたけど」

雪沙「なりゆき〜、ランドセルと帽子、家に置いてきたらあげる〜」

也幸「・・・・・」

 

コクコク、とちょっと深めにうなずいて雛塚家へ駆けていった、

そしてすぐに戻ってきて雪沙ちゃんの差し出す駄菓子袋を手にすると、

中のお菓子を頬張りながら、あっという間に逃げていった・・・・・

 

僕「なんか忍者みたいだ」

雪沙「ごめんね〜おにぃちゃん」

僕「いいよいいよいいよ」

雪沙「よくないよ〜、せっかくのデートなのに〜」

僕「あ、邪魔が入ったってこと?まあ・・・また一緒に行こうよ」

雪沙「ぢゃあ、あしたっ!」

僕「んー、勉強はかどってるならね」

 

エレベーターに乗って僕の家へ・・・

玄関に入ると小さな靴が揃えられてる、これは雪菜ちゃんだな。

 

僕「ただいまー」

雪沙「ただいま〜〜」

雪菜「・・・おかえり・・・」

 

僕の部屋のテーブルで、ばりばり勉強中だ。

 

僕「偉いなー、帰ってすぐ着替えて勉強かー」

雪菜「・・・ネズミーランド・・・あるから」

僕「そっか、じゃあ雪沙ちゃんも」

雪沙「おかしたべてからね〜〜」

僕「うん・・・邪魔にならないように、こっちで食べよう」

 

机から離れて、ベットを背もたれにして座る。

 

僕「さて・・・食べようっと」

雪沙「は〜い、おにぃちゃん、あ〜ん」

僕「え?あ、メロンアイスか、2人で1つ買ったんだよな」

雪沙「はやく〜〜!あ〜〜ん」

僕「はい、あ〜ん・・・んぐ・・おいしい」

 

同じスプーンで今度は雪沙ちゃんが食べる。

 

僕「あれ?2つ貰わなかったの?スプーン」

雪沙「ほーだよ〜?はい、あ〜〜ん」

僕「あ〜〜・・・ん」

 

間接キスか・・・

まあ、こういうのは大人の僕がマジになったら負けだ、

この前のいちごミルク飴でそれは痛感した・・だから・・・

 

僕「じゃあ今度は僕から、はい、あ〜〜ん」

雪沙「あ〜〜〜ん・・んぐんぐ」

僕「おいし?」

雪沙「んへへへへ〜〜・・・あ〜〜ん」

僕「あ〜〜〜ん」

 

ポキッ、とエンピツの芯が折れた音が聞こえた。

 

雪菜「・・・・・お兄ちゃん」

僕「んっ?どうしたの?」

雪菜「・・・・・・・そろそろ・・・スーパーへ買い物」

僕「え?もう食材切れたっけ」

雪菜「だから・・・一緒に」

 

僕の口にアイスが突っ込まれ、そのスプーンを抜き取りながら立つ。

 

僕「そうだね・・お、アイスも丁度あと一口だし、雪沙ちゃん全部食べな」

雪沙「ゆきさもスーパーいく〜〜」

雪菜「・・・雪沙は宿題いっぱい残ってるでしょ・・」

僕「そうだね、おとなしく勉強してなさい」

雪沙「え〜〜?だって〜〜」

雪菜「・・・ネズミーランド、いけなくなるよ・・・」

雪沙「は〜〜〜〜〜い・・・」

 

しぶしぶテーブルに向かって勉強道具を出しはじめた、

雪菜ちゃんは少しホッとした表情で立ち上がって玄関に体を向ける。

 

雪菜「お兄ちゃん・・・」

僕「うん、行こう」

 

今度は雪菜ちゃんと2人っきりでお買い物だ。

 

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