とたとたとたとたとた・・・

 

雪沙「ね〜、アニメ見せて〜」

僕「ん?あ・・・2時から再放送のアニメか・・・でも僕も見たい衛星放送あるんだよな」

雪沙「え〜せ〜?」

雪巳「BSが見れるのー?」

僕「よく知ってるねBS放送」

雪巳「うん、電気店とか友達の家でやってるから」

僕「それだけじゃないよ、BSデジタルがあってCSもある、スカパー」

 

リモコンを2つ出していじる。

 

僕「ほらほら、色々やってるよ」

雪巳「すごいすごいすごーーい」

雪沙「何チャンネルあるのー?」

僕「スカパー入れたら何百とあるよ」

雪巳「目が回っちゃう〜」

僕「でも、スカパーは有料放送が多いから、そのうち3分の1くらいしか契約してないんだ」

雪沙「見るとお金かかっちゃうの〜?」

僕「そういう番組もあるけど、すでにお金払ってある番組しか見れないようになってるから雪沙ちゃんは心配いらないよ」

雪巳「契約ってどうやるのー?」

僕「電話かけるの。普通にリモコン操作してる分には間違って契約しちゃう事はないから安心して」

雪巳「わかったー」

雪沙「ね〜、アニメ見たい〜、画面もういっこ出して〜」

僕「それは無理だけど・・・そうだ!テレビがある部屋がもういっこあるよ」

 

廊下に連れ出して奥のめったに行かない部屋へ・・・

 

僕「ここだよ」

 

ガチャッ

 

雪沙「わ〜〜、ここなに〜?」

 

目を丸くしてびっくりしてる、

それもそのはず、中にある革張りの椅子や透明テーブルはきらびやか・・・

奥にはミラーボールが転がっている、さらに高そうな灰皿やグラス、食器も・・・

 

僕「これは僕の父が経営してたカラオケバーが和風に改装したとき、いらなくなった物なんだ」

雪沙「カラオケあるのー?」

僕「あるよ、ほら!あそこ」

雪沙「おっきいテレビ〜〜!」

僕「レーザーディスクカラオケ。古いけどね。で、このテレビでアニメ見られるよ」

 

せっかくだからってアンテナに繋いでおいたんだ・・・

リモコンは・・・これはカラオケのだ・・・テレビの・・あったあった!

 

僕「はい、何チャンネルだっけ?」

雪沙「ん〜と・・・8かなぁ〜?たぶん」

僕「違ってたら変えればいいし。じゃあ僕は戻るからね」

雪沙「うん〜!ありがと〜」

僕「そうだ!エアコンつけなきゃ・・・これでよし!」

 

広いカラオケバーの豪華なソファーにポツンと座ってる小5少女・・・

う〜〜〜ん、シュールだ・・・椅子や机の配色が赤なだけに、ちょっといかがわしいかも・・・

そうだ、部屋といえばこの子たちへの住む部屋割りが先延ばしになったままだっけ・・・

 

 

 

 

 

時間は流れ、夕食が終わり僕の部屋に戻った。

洗い物も終え三姉妹は僕の部屋でくつろいでいる、

そろそろお風呂の時間だけどその前に・・・

 

僕「そういえばみんな、今は1つの部屋で寝てるけど、それぞれ別々の部屋が欲しいよね?」

雪巳「えー?いいよー、3人で1つでいいよー」

雪菜「もったいない・・・」

雪沙「広いから平気だよ〜」

僕「でもさ、せっかく部屋はいっぱい余ってるんだし」

 

あれあれ?喜ぶかと思ったら浮かない顔だなあ・・・

 

雪巳「1人1部屋じゃ広すぎるよー」

雪菜「掃除も・・・手間かかる・・・」

雪沙「もう1人で恐いのは嫌ぁ〜」

 

そうか、1人だと心細いのか、

確かに他人の家で1人で寝るのはまだ子供のこの子たちには恐いのかも、

いや、野宿したりする子だぞ?じゃあ、単に気を使ってるだけなのかな?

ただでさえ居候なのに、1人1部屋まで貰っちゃ悪いって感じているのか・・・

それとも、1人で寝てると僕が襲ってくるとでも?ありえる・・・そりゃあ恐いよな・・・

 

雪巳「あー、じゃあ今日寝たい部屋言っていい?」

僕「うんいいよ、どこ?」

雪巳「ここー」

僕「え?僕の部屋!?」

雪巳「お兄ちゃんと一緒に寝るー」

 

またまた爆弾発言を!!

 

雪沙「ずる〜い!ゆきさも〜」

雪菜「・・・じゃんけんで決めようよ、三人で」

雪巳「4人で一緒に寝るのはー?ここかあっちでー」

僕「こらこらこら!勝手に決めない!・・・わかった、3人あの部屋でいいから」

 

・・・何でも僕が思ってる事が正しい訳じゃない、

何でも喜んでくれると思ったら大間違いってことか、

勉強になった・・・これはちょっと自分をいましめておかないとな。

まあ、これはこの三姉妹にも言えるんだけど・・・なつかれるのは悪くはないんだけど、

お風呂に入ってきて、おまけに抱きつかれちゃうと・・・ロリコンになったらどうしてくれるんだ、まったく。

 

僕「でも、空いてる部屋は言ってくれれば自由に使っていいから」

雪巳「うん、そうするー」

雪菜「ありがとう・・です」

雪沙「ぢゃあ、雪絵や雪音も呼んでいいの〜?」

僕「え?それって妹だよね?それは駄目」

雪沙「そっか〜・・・」

雪巳「ゆきさー!ここは私たちしか入っちゃ駄目って言ったでしょー」

雪菜「お兄ちゃん・・・これ以上増やさないから安心して・・・」

 

なんだ、雪巳ちゃんと雪菜ちゃんは、しっかりわかってくれてる。

ここに住む理由が、表向きは保護でも約束としては奉公だもんな、

無駄にこれ以上保養はできない、それを上の2人はちゃんとわかってくれてる・・・

 

僕「雪沙ちゃん、ここへは住み込みで働きにきてもらってるんだから、

 これ以上増えちゃったら、仕事も増えちゃうでしょ?ほんとのこと言って、

 僕の世話を出来るのは雪沙ちゃんくらいの年齢でギリギリだから、

 それも雪沙ちゃんを雪巳ちゃんと雪菜ちゃんがカバーして、ようやくなんだから、

 さらに雪沙ちゃんよりも下だったり同じ年だったりする子が来ちゃったら、

 その子の世話の分、僕の世話がおろそかになっちゃうでしょ?つまり、

 三人でもう定員、これ以上は雇えないし世話もできない。わかった?」

雪沙「うんわかったぁ〜、ごめんね〜」

僕「わかればよろしい」

 

ちゃんと本当にわかってくれたかな・・・

 

雪沙「お友達も駄目だよね〜・・・」

僕「う〜〜〜ん、そうだね、ここは僕の家だから」

雪沙「お友達を呼ぶのって、夢だったの〜・・・」

 

ちょっとしょげてる・・・

友達くらいなら、まあ、いいかな?

 

雪巳「だめだよー、雪沙、いさせてもらってるんだからー」

雪菜「・・・下のおうちに、帰すよ」

雪沙「いやっ!ごめんなさ〜〜い!ごめんなさ〜〜〜〜〜い!!」

 

焦りまくってる・・・

雪菜ちゃんの言葉、脅迫みたいで嫌だな・・

雪沙ちゃん、ちょっと涙目になってるし・・・僕は怒っても「家に帰す」だけは言わないでおこう、

どうせ夏休み終わったら帰すんだし、それまでは安心して住ませてあげたい・・・

・・・・・やっぱり線引きって大事だよな、そこはちゃんとしないといけない。

 

僕「お友達は呼んじゃいけない変わりっていう訳じゃないけど・・・」

 

ゴソゴソ・・・うん、丁度いい感じである。

 

僕「もうすぐ夏休みだし、まだ働きはじめたばっかりだけど、お給料の一部を先に渡しておくよ」

雪巳「ええっ!?お給料出るのー?」

雪菜「うそっ・・・」

雪沙「お、おかね〜〜?」

 

財布からお札を出す。

 

僕「お小遣い程度だけどね」

雪巳「だってー、ご飯もらってるしー、服も買ってもらったしー、私たちが働くのって家賃の分だってママがー」

雪菜「眼鏡・・・買ってもらった・・・2つも・・・」

雪沙「お札がいっぱ〜い!」

僕「君たちの大事な大事な『夏休み』を貰うんだから、これくらい出して当然だよ、貰ってくれないと僕の気分が悪くなっちゃう」

 

ここまで言えば貰ってくれるかな?

 

雪巳「どうしよー」

雪菜「もうとっくに・・・お給料こえてるのに・・・」

雪沙「おにぃちゃん、ゆきさ、一生お世話するよ〜?」

僕「二学期まででいいよ・・・お願いだから貰って、でないとお世話される事ができなくなっちゃう」

 

お金を餌にどうこうする気はないし、

今まで買ったものの金額からすると全然少ないお小遣いなんだけど、

やっぱり目の前に『現金』を見せられると、この子たちもすごく緊張してるなあ・・・

 

雪巳「本当に・・・いいのー?」

雪菜「大事に・・・つかう・・・」

雪沙「夏休みの間、なんでもする〜」

僕「うん、じゃあ雪巳ちゃん、はい5000円札」

雪巳「ありがとう!!」

僕「雪菜ちゃんには2000円札2枚と1000円札」

雪菜「・・・・・うれしい」

僕「雪沙ちゃんには1000円札3枚と500円玉2枚と100円玉・・・10枚!」

雪沙「ありがと〜〜みんな五千円だね〜」

僕「そうだよ、夏休みの間、大事に使うんだよ」

 

ようやくみんな嬉しそうだ。

 

雪沙「ね〜、これで遠足行っちゃ駄目〜?」

僕「え?遠足なんてあるの?」

雪沙「うん!でもおうちにお金ないから行けなかったの〜」

僕「遠足って学校の行事じゃん!それ行けないって・・・いくら?」

雪沙「んっと・・・ちょっと待ってね〜」

 

ランドセルを開けてガサゴソと・・・

くちゃくちゃのプリントを見せてくれる、

行き先はマザー牧場日帰り、3500円か・・・

 

僕「遠足は学校の行事なんだから行きなさい、そのお金を別で出してあげるから」

雪沙「うそ〜〜」

僕「本当。3500円・・・4000円渡すから500円返して」

雪沙「うれしい〜〜〜♪遠足行ける〜〜〜〜〜♪」

 

飛び跳ねて喜びだした!!

 

雪菜「あの・・・」

僕「ん?どうしたの?」

雪菜「私も・・・・・」

僕「遠足なの?」

雪菜「6年生は林間学校なの・・・」

僕「いくらなの?」

雪菜「プリント・・・行けないからって捨てちゃった・・・」

僕「出すよ、友達に聞くとかして金額わかったら教えて」

雪菜「ありがとう・・・・・」

 

眼鏡を外して涙をぬぐってる・・・

そんなに嬉しいのか、遠足行けるだけで・・・

 

僕「雪巳ちゃんは?」

雪巳「修学旅行5月に終わっちゃった〜」

僕「・・・・・ごめん」

雪巳「いいよー、しょーがないもーん」

僕「うん、本当にごめんね」

 

変わりに個人的にどこかへ連れてってあげるか・・・

 

僕「さて、じゃあお風呂入ってくるけど・・・邪魔しないでね」

雪巳「はーい」

雪菜「今日は・・・背中流したい・・・気分・・・」

雪沙「してほし〜ことあったら呼んでね〜」

僕「じゃあ、お先に」

 

・・・・・あの子たちにお金あげる時は、

本当に慎重に考えてからにした方がいいな。

 

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