也幸「・・・・(おろおろ)」

 

山ほどのお菓子をいっぱい抱えバス停へ・・・

一旦置いてガマ口を開け、ビクッ!とする、もう20円しかない!

どうしよう・・・汗がタラーと流れる。実際はSUICAで乗れるのだが也幸くんはそれを知らない。

 

也幸「・・・・・」

 

歩いていくしかない、と再びお菓子を抱えると・・・

 

美鈴「あら也幸くん、どうしたのー?」

也幸「!!!」

 

とってもいい「おねえさんおばさん」だ!

 

美鈴「そんなにお菓子買って・・・袋とかないの?」

也幸「ーーー!!」

美鈴「リュックも詰まってるみたいね・・・いいわ、車で送ってあげる!」

 

遭難した無人島に助け舟が来てくれた!

そんな感じで美鈴ねえさんについていく・・・

車の後部座席にまずお菓子をぶっちゃけ、続けて乗り込む。

 

美鈴「どこか遠くへ行ってたの?」

也幸「!!!(コクコクコク!!!)」

美鈴「そのパスは・・・猫猫園!?一人で!?怖い事させるわねー」

 

・・・くちゃくちゃと買ったばかりのお菓子を食べているうちに、

車はあっという間にマンションについた、美鈴ねえさんがトランクから何か探してくれている。

 

美鈴「待ってね・・・はい紙袋、これにそのお菓子を詰めなさい」

也幸「!!!」

 

いそいそと詰める也幸くん。

 

美鈴「あ!そのローションは私のよ、最初からあったでしょ?今夜使うんだから」

也幸「・・・!(コクッ)」

美鈴「まあ、あの子たちにあげるのもいいわね・・・今度持って行ってあげましょ」

 

美鈴ねえさんに手を振りながら、

紙袋をずるずる引きずりマンションへ・・・

エレベーターに入り、ジャンプしてまずは9階を押した。

 

・・・・・ガチャッ

 

家に入ると雅幸隆幸お兄ちゃんはまだテレビゲームに夢中、

画面ではおっぱいのおっきな水着のお姉さんがクネクネと踊っている。

 

隆幸「すっげー・・・あー也幸!どーしたんだよ」

雅幸「雪香姉ちゃんは・・・もうちょっとかかる、遅れるって・・・」

隆幸「雅幸にーちゃんが寿司ばっかで飽きるって言うから、コロッケ買いにスーパー寄るってー」

雅幸「だってほんとに飽きてきたもん・・・也幸はまた何を持ってきたの・・・」

也幸「!!!(えっへん!!!)」

 

紙袋を偉そうに渡す。

 

隆幸「わーお菓子いっぱい入ってるー」

雅幸「パンもいっぱい・・・チョコもガムも・・・グミも・・・」

隆幸「これ食っていいのー?ありがてぇー」

 

貪り食う兄2人!

もはや花より団子、エロおっぱいよりお菓子モードである。

その反応に満足した也幸くんは再び外へ・・・エレベーターに乗っかる。

 

也幸「〜〜〜♪」

 

続いて19階・・・

降りてインターフォンを押すと元気な声が聞こえる。

 

雪巳「也幸おかえりー」

 

ついに帰ってきた也幸くん!

大冒険を終えて凱旋帰宅・・・と言いたいが、

玄関に入っても迎えはない・・・姉3人はどこへ?あそこだ!!

 

雪沙「ぢゃ〜つぎはこれしてみよぉ〜」

雪菜「髪の毛入れるって・・・痛くないの・・・かな」

雪巳「こっちの本だと、お尻に指いれちゃってるー」

 

書斎の奥で本を読む三姉妹、

すご〜〜くえっちな漫画・・・三姉妹がお兄ちゃんにしたエッチな事は、

ここに来て早いうちに見つけたこの大量のエロ漫画が参考書になっていた、

描いてある内容は刺激が強すぎた反面、なぜか男の子が犯される話が多く、

三姉妹はきっとお兄ちゃんはこんな風にされたいのだろう、と純粋に想い、遂行した・・・恐ろしい話である。

 

雪菜「あ・・・おかえり・・・」

雪沙「なりゆきにはまだはやいからぁ〜、ここきちゃだめぇ〜」

雪巳「空のお弁当箱は台所に置いてねー」

 

今は也幸君を褒め称えるより、

お兄ちゃんをどうやってロリロリ肉地獄に落とすかの方が大事なようだ。

大冒険を成し遂げた也幸くんは少し大人になった事を報告しようとソヨカゼを探す。

 

也幸「・・・・・!!」

 

いた!お兄ちゃんの部屋で、ベットに乗って丸まっている!

てけてけと近づくとソヨカゼが顔を上げる、じーっと也幸くんを見つめる・・・

 

也幸「!!(ただいま、いってきたよ)」

ソヨカゼ「にゃぁ〜(・・・・・)」

也幸「・・・!?(ソヨカゼ!?)」

 

返事をしてくれたソヨカゼ、でも、いつものような心の言葉が浮かばない!

 

也幸「ーーー!!!(ソヨカゼ!?ソヨカゼ!?)」

ソヨカゼ「にゃ・・・(・・・・・)」

 

いつもなら脳内で会話が弾むのに、

なぜかまったく「ソヨカゼのセリフ」が浮かばない!

あせりながら頭を、背中をなでる・・・気持ち良さそうなソヨカゼ・・・そして・・・

 

ソヨカゼ「ふにゃぁ〜〜〜・・・(坊主・・・そろそろのようじゃ)」

也幸「!?(そろそろって、なにが!?)」

ソヨカゼ「にゃにゃ・・・(坊主とワシが話ができるのも、もうお終いのようじゃわい)」

 

ガーーーン!!!と衝撃を受ける!

 

也幸「!?!?!?(どうして?どうして?どうして?)」

ソヨカゼ「にゃう・・・(坊主、坊主は今日でひとつ大人になった、新しいことを覚えるには古いものは消えるもんじゃよ)」

也幸「ーーー??(それって、ねこのことばをわすれちゃうってこと!?)」

ソヨカゼ「ふぁぁ・・・(そうじゃ、人間の言葉を話せるようになるには、猫と話せる能力を捨てなくてはならぬ)」

也幸「!!!(そんなー!ぼくいやだよー!もっとソヨカゼのおじいちゃんと、おはなししたいよー!)」

 

うるうると目に涙を溜める也幸くん。

慰めるようにソヨカゼはやさしくしっぽで也幸くんの手を撫でる・・・

 

ソヨカゼ「にゃにゃにゃ・・・(いいんじゃよ、人間は人間と話すべきじゃ、大人になるには失わなければならない物もある」

也幸「・・・(ソヨカゼ・・・ソヨカゼはもう喋ってくれないの!?)」

ソヨカゼ「ぐるぐるぐる・・・(喋らなくとも、気持ちは伝わる・・・今まで坊主が人間と接していた時のように、な)」

也幸「・・・・・(わかった・・・ソヨカゼのおじちゃん・・・ぼくにいま、なにかいいたいことはある?)」

ソヨカゼ「うにゃうぅ(そうじゃな、坊主、そのやさしさをいつまでも持っておくのじゃぞ、ワシからの最後の教えじゃ)」

 

・・・リュックからブラシを出し、

やさしく、やさしく毛をとかす也幸くん。

こらえた涙がぽたっ、ぽたっ、と溢れてしまう。

 

也幸「・・・ソヨカゼ・・・ありが・・とう・・・」

ソヨカゼ「ふにゃあああぁぁ〜〜〜〜〜♪♪♪」

 

廊下から歩いてくる大きな足音!

 

お兄ちゃん「ただいま・・・お!也幸くん!おかえり」

也幸「!!!(コクコクコク!!!)」

お兄ちゃん「猫猫園はどうだった?・・・あれ?泣いてるの?」

 

腕でゴシゴシ目を擦り、

お兄ちゃんに抱きつく!

ちゃんと喋って報告したいが、まだちょっと言葉が出てこない。

 

お兄ちゃん「疲れたよね、ご飯にしよう」

雪沙「おにぃちゃんおかえりぃ〜・・・なりゆきもおかえりぃ〜」

雪菜「也幸・・・お兄ちゃんにSUICA・・・カード返してあげて・・・」

也幸「・・・・・!!(さっ!!)」

雪巳「晩御飯できてるよー、食べ終わったらお風呂入れてあげるねー」

 

探検帽子をそっとソヨカゼにかぶせて台所へ・・・

そうだ、大きくなったら猫猫園をこっちにも作ろう!

舞奈ちゃんにも手伝ってもらって、不幸な猫のいない、

お腹を空かしていつも寂しそうに鳴いている猫を保護する施設を作ろう!

勉強して高校を出たら、そういう仕事について、猫も人もみんなが笑顔でいられるように・・・

 

也幸「・・・・・!!!」

 

将来に目標ができた也幸くん!

その瞳の輝きを失わなければ、きっと達成できるだろう。

大冒険をやり遂げた也幸くんなら、きっと、きっと・・・それが現実になるのは15年先の事であった。

 

雪巳「雪絵も雪音もご飯だよー出てきてー」

雪菜「お兄ちゃん・・・お疲れ様・・・です」

お兄ちゃん「え?何が?・・・はは、まあ、ね・・・」

雪沙「なりゆきもたべるよね〜、ソヨカゼもごはんはやくこっちぃ〜」

也幸「・・・はぁい・・・」ソヨカゼ「にゃぁ〜〜〜♪」

 

也幸くんの大冒険・おしまい

 

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