改札から出た也幸くん、
それはいいのだが、猫猫園への行き方がわからない・・・
バスに乗ろうにも、どのバスか・・・とりあえず駅前の大きい地図を見ていると・・・
「也幸くん、だよね?」
後ろからの声にビクッ!と振り返ると、
やさしそうなおじさん・・・見た事があるような無いような、いや、あるっぽい?
也幸「・・・?」
園長「お久しぶり!猫猫園の園長だよ」
也幸「!!!」
園長「話は電話で聞いているよ、偉いねーひとりで・・・さ、こっちだよ」
也幸「!!(コクコク!!)」
猫の絵がラッピングされたワゴン車に乗り込む!
ワクワクドキドキソワソワしながら待つと車が走り出す、
車内に残る猫の香り・・・一歩間違えると嫌なアンモニア臭だが也幸くんには大好きな匂いだ。
園長「ミケくんの名前が決まったからね、今日はみんなの前で発表しますよぉ」
也幸「〜〜〜♪♪♪」
園長「あれから来園者が増えてね〜・・・也幸くんのおかげ、ミケくんのおかげ様々ですよ!」
とりあえず褒められている事は理解する也幸くん、
きっと猫たちも褒めてくれる、そう思うと出発の時に考えていた、
もし忘れられていたらどうしよう?という不安もどこかへ吹き飛んだようだ。
園長「さあついたよ、ほーら凄いお客さんでしょう」
也幸「!!!」
園長「駐車場がこんなに埋まるのも、今年に入って初めてですよ」
凄い数の車が並んでいる・・・
前に来た時はこの5分の1くらいだった気がする、
中も賑わっている様子がわかる、沢山の猫がいるもの・・・思わず顔がほころぶ。
園長「あぶないから飛び出さないようにね」
也幸「!!!!!(コクコクコクコクコク!!!!!)」
園長「手と服もちゃんと消毒・・・もう降りちゃった」
車が止まると同時に猫猫園へ!
飛び出さないように、と言われた分、一瞬だけ止まり、
すぐに駆け込む!入った所で両手を出して、早く消毒して〜って感じで待つ。
お姉さん「まず入場券を・・・まあ永久パス!ようこそ!」
也幸「!!(コクコクえっへん)」
お姉さん「では消毒しますねー、はいー・・・はい、これでオッケーですー」
中は猫、猫、猫猫猫、猫猫猫猫猫!まさに猫猫園!!
也幸「!!!」
あたりをキョロキョロ見る!
人が多くて混雑してて、なかなか見つからない・・・
どこ?どこ?と思って探し回ると・・・いた!懐かしの、あの、お母さん猫だ!
也幸「・・・・・(こん、にち、わ)」
心の中で恐る恐る問いかけてみると・・・
母猫「にゃぁ〜〜(おや、おひさしぶり!元気にしてたかい?)」
と返事をされたように感じた!
也幸「コクコク(げんきだよぉ、くびになにつけてるの?)」
母猫「にゃ〜にゃ〜(これかい?見てごらん)」
也幸「!!(ふだになまえがついてる、マリってかいてある!)」
どうやら母猫の名前はマリと名付けられたようだ。
母猫「にゃ・・・(うちの子たちも大きくなってねぇ、ほら来たよ)」
子猫たちもやってきた!本当に、ふたまわりくらい大きくなっている。
白猫「みぃ〜(おにぃちゃんだぁ、にんげんのおにぃちゃんだぁ〜)」
虎猫「ふみぃ(いいにんげんのこだぁ〜いいにんげんだからあまえるぅ〜)」
也幸「!!!(みんなきれい・・・あれ?もういっぴきは?)」
後ろからようやく園長さんがやってきた!
園長「也幸くん、これから命名式典っていうのをするから、ミケくんを持ってくるよ」
也幸「!!!(コクコクコク!!!)」
園長「あそこの上で待っていてね」
奥にステージができている、
上にはくす玉まで・・・そこで待っていればいいらしい、
母猫たちにスリスリしたいのを我慢してステージへ、と後から母猫子猫もついてきた。
也幸「・・・・・」
くす玉の紐が気になる・・・
チョン、チョン、と突っついてみるが、
ぐいっと引っ張ってしまいたい衝動にかられる・・・軽く握って軽く引いてみる。
ぽんっ!!
バサバサバサバサ〜〜〜!!
也幸「!!!」
振ってきた紙ふぶき、
垂れてきた幕にはしっかりと、
命名ワトソン、の文字が!キョトンとする也幸くん!
お姉さん「きゃーどうしましょう」
園長「どうしたのかい?・・・ああっ!せっかく徹夜して作ったのがっ!」
三毛猫「みぃぃ〜〜〜(あ〜おにぃちゃんだぁ〜〜〜)」
也幸「!!!(おっきくなってる!)」
園長「ええっと・・・それでは皆さん、ハプニングはございましたがこれから命名式典を・・・」
顔をひきつらせながらも強引に進行を始める園長さん、
三毛猫のオス・ワトソンと心の中での会話を楽しむ也幸くん、
そして散らばった紙ふぶきでじゃれて遊ぶ猫たち・・・なんだかんだで命名式典は開始されたのだった。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
園長「也幸くんお疲れ様、ありがとうね」
也幸「!!!(コクコクコク!!!)」
園長「帰るときはまた駅まで送るから」
也幸「・・・・・」
園長「外へ出るのかい?帰る訳ではないよね?」
ちょっと反省したのか、とぼとぼと外へ。
裏手にある従業員用の駐車場、その空いた所の車止めに腰をかける、
リュックを脱いで中からお弁当を出す、昼食の時間だ、中で食べちゃいけない事は理解している。
也幸「・・・(いただきます)」
パカッ、と開けると色とりどり、賑やかなおかずが並んでいる、
雪香の作った朝食とは違い、野菜も豊富・・・さらに下段はご飯に海苔が乗っている。
ご機嫌で食べると頭からハラリと紙ふぶき1枚が落ちてきた、それを大事そうにポケットへしまう。
也幸「・・・・・(ぺっちゃくっちゃぺっちゃくっちゃ)」
・・・・・何か視線を感じる!
也幸「!!!」
振り返ると、
斜め後ろの窓から十数匹の猫がお弁当を見てる!
じーーーっと見つめて物欲しそうに・・・あげたいけどあげられない、
だったらこれを早く無くしてしまおう、と慌てて掻き込む!食べる食べる食べる!!
也幸「!!(ぶほっ!けほけほけほ・・・)」
むせってお茶を・・・飲んで落ち着いた。
あらためて周りを見渡すと、本当にのどかだ・・・
こんなに遠くじゃなく家の近くにも、こういうのができたらいいのにと考える。
いっそ、公園でいつもお腹を空かしている猫たちを、20階のいっぱいある部屋の1つに入れて、
猫猫園みたいに飼ってお客さんを入れたら・・・夜になり100匹の猫と一緒に寝るのを想像しただけで、うっとりしてしまう。
也幸「・・・・・!」
気分が落ち着いたところで再びお弁当・・・
それを園内から見つめる、やさしい、やさしい目の持ち主。
お兄ちゃん「・・・大丈夫そうですね」
園長「ええ、帰りも駅まで送りますから」
お兄ちゃん「ありがとうございます、也幸くんにはとびっきりの大冒険になったと思います」
結局、心配で大学の準備を放り出してついてきたお兄ちゃん、
三姉妹から逃げてきた面も否定できないが、何かあったときに助けようと尾行してきた。
もし見つかっても偶然だね、の一言で済まそうと思って来たが、どうやら姿を見せなくて良さそうだ。
お兄ちゃん「・・・じゃあ僕は東京ドイツ村でソーセージでも食べてくるかな」
そろりそろりと猫猫園を出るお兄ちゃん、
入れ替わりにお弁当をごちそうさました也幸くんが戻ってきた、
もう1度、手や服に消毒液をかけて・・・あとは思う存分、猫たちと遊ぶだけだ!
也幸「!!!」
猫A「にゃ〜(あ、いい子だ!)」
猫B「ふにゃ〜(すごくいい子だ)」
猫C「うにゃぁ〜(甘えさせてくれそう)」
猫D「ふにゃにゃ〜(ちょっと引っ掻いても怒られなさそう)」
猫E「みにゃぁぁ〜(遊んで遊んで、遊んでぇ〜〜〜)」
あっという間に猫まみれな也幸くんであった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
園長「也幸くん、そろそろ閉園だよ」
也幸「!!!」
和室で母猫子猫とまったりしてた也幸くんだが、
そろそろ時間切れらしい、お別れをしなくてはいけない。
也幸「!!!(じゃあ、またぜったいくるから)」
母猫「ぶにゃん(無理しなくてもいいからね、学校が、勉強が一番大事だから)」
虎猫「みぃ〜(またあそぼ〜)」
白猫「みゅ〜(げんきでねぇ〜)」
三毛猫「なぁ〜(じゃ〜ねぇ〜)」
猫一家に手をぶんぶん振る。
園長「マリとチャトランと白玉とワトソンにお別れしたんだね?」
也幸「!!!(コクコクコク)」
園長「じゃあ富浦駅まで送ってあげるから」
最後まで猫たちに手を振りつつ外へ、
ワゴンに乗っても何度も何度も猫猫園を振り返る・・・
次はいつ来れるのか、来週にでも来たいけど早くて冬かな、と思いながら車は出発する。
園長「也幸くん1人でちゃんと帰れるよね?」
也幸「・・・(コクッ)」
園長「帰りの切符を買ってあげるから、乗り換えを頑張るんだよ」
猫たちの余韻に浸りながら、
今度はソヨカゼが恋しくなってきた也幸くんだった。
もどる |
めくる |