也幸「・・・・・〜〜〜@@」

 

目を丸くしてキョロキョロする・・・

降りたはいいが、駅構内はまるで迷路のようだ。

誰かに話を聞こうにも、誰に聞いていいのかちんぷんかんぷんだ。

 

也幸「・・・・・?」

 

大きなハテナマークのインフォメーションセンターに目が向く、

おばさんが座っている、素直に聞けばいいのだが也幸くんにはそれがお店に見えた、

きっとこれは「?」を売っているのだろう、その「?」は、きっと買ってからのお楽しみの何か・・・

也幸くんの中では福袋を想像している、しかも1袋1万円とか、中はサイズの合わない服ばかりとか・・・

買わされて電車賃がなくなったら大変だ、とまるで被害妄想のような思い込みでその場から離れる、ついた先は東海道線ホームの下だ。

 

少年A「真理奈お姉ちゃんここ東京〜?」

真理奈「そうだよっ!もうとっくに東京だよ?」

少女B「ネズミーランドってここにあるのぉ〜?」

真理奈「まだだよ、東京ネズミーランドって言っても千葉にあるから」

少年C「千葉なのに東京って言ってるんだー、それって詐欺だー」

 

にぎやかな団体・・・

パパとママのいない大家族って感じだ、

也幸くんにとって何だか他人とは思えない子供たちがいっぱいいる。

 

真理奈「こら海斗!はぐれたら初島に帰れなくなるよ?」

少女D「おしっこいきたぁ〜い」

真理奈「じゃあ待ってるから行っておいで!ボクは乗り換え確認してるから」

 

千葉・・・乗り換え・・・その言葉にキュピーンと目を光らせる也幸くん!

 

也幸「!!!」

真理奈「あれ?君はどうしたのかな?ボクん家の弟じゃないはずだけど」

也幸「ーーー!!」

真理奈「え?迷子?・・・違う、ちょっと見せてね・・・裏?・・・のりかえ・・・あ、そういうことなんだ」

也幸「!!(コクコクコク!!)」

 

わざわざ自分の乗り換えと一緒に也幸くんの乗り換えも調べてくれる真理奈さん。

 

真理奈「・・・途中まで一緒だねっ、京葉線の館山行きだよっ」

也幸「!!!」

真理奈「1人で行くんでしょ?ついておいでよ、ボクたちは舞浜駅で降りちゃうけど」

少年A「おなかすいたぁ〜、そこのお弁当買って〜」

真理奈「もうちょっと我慢して!じゃあハイチュウ買ってあげるから」

 

このお姉ちゃんは凄くいい人だ、

おっぱいがおおきくって、雪巳お姉ちゃんと同じ感じがする!

そう思うと少しの間だけでもこのお姉ちゃんの弟になってみたい気がした也幸くん。

 

真理奈「みんな1人1個だよ〜・・はい、君も」

也幸「!!!」

真理奈「彩子もトイレから帰ってきたよね?じゃあ乗り換え行くよっ!」

 

まわりの売店やレストランをキョロキョロ見ながらついていく也幸くん、

目移りしてふらふらしそうだが、猫猫園に行くためにはこれを振り切らないといけない!

油断すると置いていかれちゃう・・・そう思うとジャングルを突き進むかのように意気上がるのだった。

 

真理奈「えーうっそー、ホームすっごい遠い!」

少女B「この階段降りるの〜?」

真理奈「うん、すっごい距離あるから、離れないでね」

少年E「みちがうごいてる・・・」

真理奈「エスカレーターが平ら・・・東京って凄い所だね」

 

みんなひょいひょい乗る、

也幸くんも遅れてぴょ〜んと・・・

大きな落とし穴をまたいだみたいな達成感だ。

 

真理奈「今更だけど泊まりにしたかったなー」

少年C「お金がかかるから泊まれないのー?」

真理奈「それもあるけど船の休みってボク、夏以外の月曜だけだから」

少年A「僕が夏休みの間、休まないで毎日働いてたのって、ネズミーランド行くお金がいるから〜?」

真理奈「夏は儲かるからね、ボク、はりきってたから、予想以上に稼げてびっくりしちゃったよ」

 

再びぴょ〜んとジャンプ・・・

いつのまにか壁にはネズミーの広告でいっぱいだ。

 

真理奈「特にお盆過ぎてから、名前忘れちゃったけど男の子と妹っぽい子3人がお客に入ってから・・・」

少女D「おさかないっぱいもってかえったひ〜?」

真理奈「そう、あの日を境に急にお客さんがいっぱい入るようになって、ボクびっくりしちゃった!」

少年A「その人が広めてくれたのかな〜」

真理奈「う〜ん、ちょっと不思議なんだけど初島の猫がお客さん引っ張ってきてくれてるみたいなんだよね」

 

猫という単語に耳をピクピクさせる也幸くん、

動く歩道が終わって次は下りのエスカレーター、高くてちょっと怖い。

 

真理奈「どういう訳かお客さん、猫のうしろついてやって来るんだよね」

少女B「そのお客さん、猫の神様だったのかな〜」

真理奈「だったら面白いね、初島の猫って昔から人間臭いし」

少年C「その男の子、かっこよかったー?」

真理奈「んー・・・どうだろ?ボクそこまで覚えてないや、冬になったら年賀状でも出そうかな」

 

何度もエスカレーターや階段を降り、ようやくホームだ。

 

少年A「ネズミーランド行けるのも、その人のおかげ〜?」

真理奈「そうだね、ってボクのおかげじゃないの!?」

也幸「!!!(コクコクコク!!!)」

真理奈「ほら、この子はわかってくれてる、偉いねー」

少年E「でんしゃがきた・・・」

 

ワイワイガヤガヤと乗り込む、

よく見ると他のお客さんもネズミーへ行く人が多いみたいだ、

向かい合う席にみんなが座る・・・也幸くんも子供たちにすっかり混ざっていた。

 

少年A「その帽子いいなー」

少女B「きみいくつぅ〜?」

真理奈「こら!怖がってるみたいだよ?」

也幸「・・・・・」

真理奈「そうでもない?偉いね1人で旅行なんて、ボクびっくりだよ」

 

水筒を開けてお茶をコクコク・・・

電車が走り出し、子供たちはもちろん真理奈さんまでソワソワしてる。

 

真理奈「楽しみだな〜すっごい久しぶり」

少年C「行ったことあるのー?」

真理奈「うん、昔、パパとママが生きてた頃に1回だけ」

也幸「!!!・・・・・」

真理奈「わ!どうしたの?泣いちゃった?なんで?」

 

生きてた頃、という言葉に急に悲しくなったようだ。

 

真理奈「帰りたくなったの?連絡しよっか」

也幸「!!!(ふるふるふるふる)」

真理奈「平気?だったらいいけど・・・ボク心配になっちゃう」

少女D「いっしょにねずみ〜らんどいく〜?」

也幸「・・・・・(ふるふるふる・・・)」

 

涙を一生懸命に拭く・・・

ようやく落ち着いて外を見ると大きな観覧車が見える、

あそこの頂上から猫猫園が見えたような気がしたのを思いだし、とたんに元気になる!

 

也幸「〜〜〜♪」

真理奈「あっ、機嫌直った?よかったーボクどうしようかと思っちゃった」

少年A「次の駅?次?次の駅がネズミーランド?」

真理奈「待って・・・次の次みたい、そろそろ準備しよっか」

少女B「むこ〜にみえてきたぁ〜」

 

窓に殺到する子供たち!

反面、じーっと猫猫園入場パスを見つめる也幸くん・・・

 

真理奈「じゃあお別れだね、ちゃんと富浦駅で降りるんだよ?」

也幸「!!!」

真理奈「君のパパかママに頼んで初島にも遊びにおいで!ボク待ってるから!」

少年C「まもなく舞浜っていってるよー」

真理奈「こらオサム!ゴミを捨てちゃ駄目!みんなも荷物忘れちゃ駄目だよ?」

 

通路に立つみんな・・・

也幸くんは精一杯、その列に手を振る。

 

真理奈「じゃあね、初島も猫いっぱいだから!」

也幸「!!!」

真理奈「マリーナ号って覚えておいてね!ボクも覚えておくから!またね!」

 

舞浜駅につき、人の流れが一気にホームへ出る!

半分以上、それどころか8割は人が減って扉が閉まった。

窓ごしに手を振り続ける也幸くん、それに応える真理奈さんたち・・・

駅を抜けると外はネズミーランドとネズミーシーが間近に見える、

まさに夢の遊園地・・・也幸くんも夏休みにここで過ごした1日を夢のように感じていた。

 

也幸「〜〜♪♪」

 

とっても楽しかったネズミー・・・

ただ、おっきいぬいぐるみの中に人が隠れているのだけは怖かった、

どうして隠れているのか、なぜ出てこないのか不思議で、也幸くんは逃げるしかなかった。

 

也幸「・・・」

 

目を瞑って園内を思い出す・・・

すっごく広くって、華やかで、全てが楽しかった。

たった1人で駆け回ってみたいと、ツアーのお姉さんから逃げて駆け出したりもした、

気がついたらお兄ちゃんの所にいて、すぐに連れ戻されちゃったけど、

もうちょっと大きくなったら今度はめいっぱい走り回りたい、そんな空想を巡らせていると・・・

 

也幸「・・・・・zzzzz」

 

ぽかぽかした天気が気持ちよくって、ついうとうと・・・

あと1時間もしないうちに着くのだが也幸くんにはそれがわからない、

ちょっと眠って気がつけば目的地だろう、そんな軽い気持ちで眠ってしまったのだった。

 

・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「・・・あちゃーもうすぐ着くのに、どうしよう・・・」

 

遠くから、すごく聞き覚えのある声、

でも眠くて也幸くんは起きられない。

 

「あのすみません、お願いがあるんですが・・・」

「なんですか?私には関係ないでしょう!」

「す、すみません!・・・あのおばさんにお願いしてみよう・・・」

 

・・・・・

・・・・・

 

おばさん「ちょっと坊や、そこの坊や、坊や起きて!」

也幸「・・・・・?」

おばさん「ほら、もう富浦駅につくけど、降りなくていいのかい?」

也幸「!!!!!」

おばさん「水筒が落ちてるよ?ほら、駅が見えてきましたよ」

 

コクコクと頷きながら目を覚ます!

降りるとそこは富浦駅、ついに也幸くんはやってきたのだ!

 

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