こうして也幸くんの大冒険が決定したのだった。

 

雪菜「じゃあ、準備してくる・・・です」

雪巳「お弁当作ってきてあげるー」

雪沙「なりゆきよかったねぇ〜〜〜」

 

スッとお兄ちゃんの胸から外れて部屋を出る雪菜、

空いた所へ雪沙が入って猫のようにスリスリゴロゴロしている。

 

お兄ちゃん「準備・・・電車賃って確か片道2000円くらいだよな」

雪沙「こどもだとそのはんぶん〜?」

お兄ちゃん「そうだね、だから往復で2000円・・・そうだ、SUICA渡しちゃえばいっか」

雪沙「こどもがもったらこどもりょ〜きんではいれるぅ〜?」

お兄ちゃん「え?・・・あ、そっか、雪沙ちゃんよく気がついたね、多分、大人料金で落とされちゃう」

 

猫猫園からの手紙に同封されてる路線図を眺める也幸くん。

 

雪沙「なりゆきぃ〜、ねこねこえんのにゅ〜じょ〜できるやつもってるよねぇ〜?」

也幸「!!!(コクコクコク)」

雪沙「いまもってるぅ〜?」

也幸「・・・(ふるふる)」

雪沙「ぢゃ〜したのおうちだぁ〜、とっておいでぇ〜」

 

あたりをキョロキョロ見回す也幸くん、

テレビの下に視点が止まり、四つんばいで近づいては何かを出そうとする。

 

お兄ちゃん「どうしたの?ゲーム出したいの?」

也幸「!!(コクコク)」

お兄ちゃん「でも、もうすぐ出かけるんだよ?・・・あ、借りて下へ持って行きたいんだ」

也幸「!!!(コクコクコク!!)」

お兄ちゃん「いいけど、なんてマイナーなゲーム機を・・・ソフト1枚しかないけど、いいよ」

 

ずるずると引っ張り出して抱える。

 

雪沙「それおっきぃから、てさげぶくろにいれてあげるぅ〜」

也幸「!!(コクッコクッ)」

お兄ちゃん「雪沙ちゃん本当に偉いね、夏休み終わって成長したね」

 

えへへへへ、という感じで部屋を出て行った。

空いたお兄ちゃんの胸元へちょこんと潜り込んでみる也幸くん。

 

お兄ちゃん「どうしたの?也幸くんまで甘えて」

也幸「・・・・・」

お兄ちゃん「はは、寝ちゃわないようにね」

 

落ち着く・・・すごく落ち着いて安らぐ。

お姉ちゃんたちがここに入りたがる理由が凄くわかった也幸くん、

たまに甘えさせてくれるお父さんやよく甘えさせてくれたお姉ちゃんたちとは違う、

暖かい温もりは大きな猫に包まれているようで、ここを動きたくなくなってしまう。

お兄ちゃんの胸で甘える也幸くんのその胸で猫が甘えていれば、これはもう也幸くんは抜け出せないだろう。

 

也幸「・・・〜〜♪」

お兄ちゃん「本当に、ほんっとうに1人で大丈夫?」

也幸「!!(コクコク)」

お兄ちゃん「テレフォンカードでも買ってあげるかな・・って喋るの苦手だから電話も無理か」

雪沙「もってきたよぉ〜〜〜」

 

大き目の紙袋を持ってきて置くと、

バタッ、と横に倒れた、それをキュピーンとした目で見るソヨカゼ。

 

ソヨカゼ「にゃぁ〜〜〜」

 

ゴソゴソゴソ!!

 

お兄ちゃん「こらソヨカゼ!入っても何もないぞ」

雪沙「ねこってこ〜ゆ〜とこはいるのすきだよねぇ〜」

也幸「!!!」

お兄ちゃん「也幸くんもそれを持って行こうとしちゃだめ!この家以外はペット禁止なんだから」

ソヨカゼ「ふにゃ・・・」

 

残念そうに鳴くソヨカゼ。

手提げ袋を奪った雪沙ちゃんがそれをひっくり返す!

 

雪沙「でるのぉ〜〜」

ソヨカゼ「ぶにゃんっ!!」

お兄ちゃん「こら乱暴にしない!可哀想でしょ」

也幸「!!!!!(コクコクコクコクコク!!)」

ソヨカゼ「にゃ・・・」

 

空いた袋にゲーム機とコード、ソフトを入れてあげるお兄ちゃん。

それを受け取った也幸くん、ちょっと引きずりながら廊下へ・・・そして玄関へ。

 

雪沙「おとしちゃだめだよぉ〜?」

也幸「!!(コクコク)」

 

ずずずずずーー・・・

 

雪沙「ん〜ひきずってるのはおとしてるんぢゃないからいっかぁ〜」

也幸「・・・・・(ずるずるずる)」

雪沙「ぢゃ〜ねこねこえんに、にゅ〜ぢょ〜できるのをもってくるんだよぉ〜〜」

 

玄関から出て階段だ、段差で1回1回持ち上げて降ろす、

小1の也幸くんにはこれでも大変な作業だが、がんばっている。

台風のときに猫家族をダンボールごと運んできた事を思い出しながら扉をくぐりエレベーターに乗る。

 

也幸「・・・・・・(ふう)」

 

ジャンプして9階を押し、

つくとずるずる引きずりながら我が家へ・・・

入ると洗濯機から衣服を取り出している雅幸がいた。

 

雅幸「おかえり・・・なにそれ」

也幸「・・・・・(さっ)」

雅幸「重そう・・・これ、テレビゲームだ」

隆幸「なになになにゲームゲーム?マジだ!すっげ」

也幸「!!!(えっへんコクコク)」

 

紙袋を奪いゲームを繋げ始めた雅幸、隆幸。

それを尻目に隆幸と共同の自分の部屋へ行き、

ゴソゴソと押入れの奥に大事にしまってあるカードを出した。

 

也幸「〜〜〜♪♪♪」

 

猫猫園永久入場券を首にかける、

あと何か持っていく物はないかとまわりを探すが、

特にないなと思ってリビングへ行くとゲーム機が丁度繋がった所だ。

 

雅幸「このゲーム機・・・ばつ・・・さんびゃくろくじゅう・・・」

隆幸「はじまった、バレーボールのゲームだー」

雅幸「これ・・・ビーチバレー・・・なんかすごい・・・」

也幸「!!!」

隆幸「也幸どっかいくんだ、これありがとよー」

 

玄関へ行くと盛り上がる兄の声が聞こえる。

 

隆幸「わーこれおっぱいすげーすげーめっちゃすげーーー」

雅幸「すごい水着・・・めくれそう・・・これすごっ・・・」

隆幸「ぼよんぼよんしてるぜー!おしりもでっけー雪香ねえちゃんよりエロいー」

雅幸「雪巳姉ちゃんが大人になったみたい・・・」

隆幸「これ勝ち進んだら脱いだりするのかなーすげーすげーすげーーーーー」

 

喜びの声を背に、満足そうに玄関を出る也幸くんであった。

 

・・・

・・・

・・・

 

お兄ちゃん「也幸くん取ってきたんだね、もうぶら下げて」

雪巳「はいお弁当だよー、お昼に食べるんだよー、あとお茶の入った水筒もー」

雪菜「はいリュック・・・私の貸してあげる・・・招待状とお弁当ここに入れるね・・・」

雪沙「まいごふだもつくったよぉ〜、うらにひらがなで、えきのなまえかいてあるから〜」

也幸「!!!!!(コクコクコクコクコク!!!)」

 

財布からお金を出すお兄ちゃん。

 

お兄ちゃん「千円札3枚と500円玉3枚と100円玉5枚、財布って持ってたっけ?」

雪沙「リュックの小さいぽけっとに入れておくねぇ〜」

お兄ちゃん「ちゃんと行けるかなぁ・・・僕の携帯電話持たせよっか?それだとパソコンからいる位置わかるし」

雪菜「お兄ちゃんに用事がある電話かかってきたら・・・困る・・・です」

雪巳「思い出したー、ゆうべお兄ちゃんお風呂入ってる時、携帯しつこく鳴ってたから私が出たよー」

 

ギョッ!という表情のお兄ちゃん!

 

お兄ちゃん「用件は何だったの!?」

雪巳「お兄ちゃんのお友達でー、大学再開した最初の日に女の子集めたから合コンしよーってー」

雪菜「こりてない・・・お兄ちゃん・・・」

お兄ちゃん「そ、それで、雪巳ちゃん何か返事した?」

雪巳「うんー、お兄ちゃんには私たち婚約者が3人いるから間に合ってまーすって言って切ったー」

 

膝から崩れ落ちるお兄ちゃん、見ててちょっと面白いなと思った也幸くん。

 

お兄ちゃん「ど・・どう言い訳しよう・・あはは・・・」

雪沙「だってほんとのことだもんねぇ〜♪」

也幸「!!!!!♪♪♪♪♪(コクコクコクコクコク)」

 

なんとなく面白そうに相槌を打ってみた。

 

お兄ちゃん「・・・まあそれは置いといてだな、じゃあ僕の携帯持たせるのは、やめとこう」

雪巳「そーだー買っちゃおうよー、それで終わったら私が使うー」

雪菜「私も・・・買って欲しいです・・・」

雪沙「テレビでやってたよぉ〜、きっずけ〜たいってぇ〜」

お兄ちゃん「駄目駄目駄目!・・・まあ、僕のSUICAを渡しておくよ、これは大事に大事に持ってるんだよ?」

 

受け取ったカードを迷子札へ入れる。

 

お兄ちゃん「そろそろ時間かな、ほらソヨカゼに挨拶して!」

 

ぐでーっと、まどろみの中にいるソヨカゼへ近づく。

 

也幸「・・・(ソヨカゼのおじいちゃん、いっしょにいく?)」

ソヨカゼ「にゃ・・・(ワシはいいわい、腕の針金も抜いたばかりじゃし、遠くは無理じゃ)」

也幸「!!(じゃあいってくるね、もらわれていったねこにあってくる)」

 

リュックをうんしょ、と背負い水筒も襷がけする。

 

お兄ちゃん「じゃあ気をつけてね」

雪巳「変な人に近づいたら駄目だよー」

雪菜「駅までは・・・行き方わかる・・よね・・・」

雪沙「なりゆきぃ〜、いかのおすし、わすれちゃだめだよぉ〜」

也幸「!!!(コクコクコク!!!)」

 

喜び勇んで玄関へ・・・

靴を履いていると声が聞こえてくる。

 

お兄ちゃん「うーん、いっそ猫猫園までタクシーとか・・・」

雪巳「えー何万円もかかっちゃうよー、もったいなーい」

雪菜「駅まで也幸なら、一人でバス乗れるから・・・そこまでしなくても平気・・・です」

雪沙「だったらそのおかねで、け〜たいでんわかってぇ〜〜」

お兄ちゃん「だから駄目だって・・・あう!手ぇ突っ込んじゃ駄目!そんな所に!」

 

靴を履き終わり忘れ物がないか確認・・・意外としっかりしている。

傘は大丈夫かな?と玄関を開けると爽やかな快晴、降る気配はまったく無さそうだ。

 

雪巳「ほらーお兄ちゃん、泣くまでくすぐっちゃうよー?」

お兄ちゃん「ひゃひゃひゃ!や、やめ・・・はああぁぁぁあああ!!」

雪菜「お兄ちゃんの耳・・・おいしくたべちゃいます・・・・・あむっ・・・」

雪沙「おにぃちゃんってぇ、ちくびいぢってあげると、すぐになんにもできなくなっちゃうんだよねぇ〜」

お兄ちゃん「やめっ・・・乳首は!乳首はぁっ!あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」

 

ここでも喜びの声?を背に、さあ大冒険だ!と玄関を出る也幸くんであった。

 

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