ソヨカゼ「・・・・うゃぁ〜、ふにゃぁ〜、にゃぁ〜〜〜」
僕「ん・・・・・朝、か・・もう朝か」
うぅ・・・ちょっと頭が痛い・・
ソヨカゼ「にゃ〜〜〜、みにゃぁ〜〜〜〜」
僕「おはよう、ご飯が欲しいのか、そうだよな」
三姉妹は、もういないのだから・・・
僕「う〜頭が痛い・・・」
時間は・・・もうすぐ10時か、ちょっと寝すぎたかも?
僕「ほらソヨカゼついてこい、」
ソヨカゼ「うにゃぁ〜〜〜、にゃ〜〜〜ご」
僕「台所はこっちだぞ?・・・誰か探しているのか!?」
也幸くんを探してるんだろうか、
でも夏休みの間だって也幸くんが来れない日あったりして、
その時はおとなしくしてたんだけどなぁ・・・やっぱりもう来ないっていうのが、わかるんだ。
僕「・・・ほら!食べて元気出せよ」
ソヨカゼ「うにゃ・・・・うにゃにゃ・・・むにゃ・・・」
鳴きながら食べる声も、寂しそうだ。
僕「さて、朝食を・・・ん?」
冷蔵庫に何か貼ってある!?
僕「張り紙だ・・・9月1日の朝ごはん、て書いてある」
まさか!!
僕「・・・・・やっぱり」
開けた中には、そうめんが!!
僕「ゆうべ、作っておいてくれたんだ・・・」
最後の最後の最後まで・・・・うぅ・・・やばい、泣きそうだ。
僕「ありがたく・・・・・食べよう」
ソヨカゼ「うにゃうっ・・・・にゃ・・・にゃうぅっ・・・」
・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・ぴんぽーーーん
僕「来客だ・・・もしや!」
三姉妹か!?
急いで玄関に行きモニターを覗くと・・・知らないおばさんだ。
おばさん「すみません、こちら人材派遣会社の・・・」
僕「あ、新しい管理人さんですね」
おばさん「はい、それで早速、仕事をさせていただいているのですが、困ったことが・・・」
なんだろう?
とりあえず靴を履いて下りよう、
管理人室の案内とか、色々な説明もあるし。
僕「・・・お待たせいたしました、それで?」
おばさん「ゴミ捨て場が、凄いことになってまして」
僕「凄いこと・・・!?わかりました、じゃあ一緒に行きましょう」
エレベーターで1階へ・・・
今日は9月1日だから始業式か、
10時過ぎてるし、終わった雪巳ちゃんとかにバッタリ会ったりするかな?
おばさん「こちらです、酷いでしょう」
僕「うわ!何このゴミの山!粗大ゴミもいっぱい」
おばさん「ボロボロの布団とか、これって有料ゴミですよねぇ」
すごいな、一世帯のゴミを丸ごと捨てたような・・・って、ええっ!?
僕「嫌な予感が・・・まさか!!」
おばさん「あら、どちらへ!?」
まさか・・・まさか・・・・・まさか!!
僕「ドアが開いてる!?」
雛塚家の中へ入ると・・・!!
僕「うわ・・・・・誰も・・・いない」
廃墟のような室内・・・
タンスは引き出しが出たまま中はほとんど無く、
汚れた床には破かれたカーテンが隅にあるくらいで、
慌てて大事なものを持てるだけ持って逃げた感じ・・・テレビも電話も無い、
あきらかにこれは・・・そんな・・・こんなに早く・・・まさか・・・嘘だ・・・嘘だぁ!!
おばさん「どうなされ・・・これは!泥棒・・・ですか?」
僕「いえ・・・・・夜逃げ、です」
おばさん「まあ!どうしましょう」
僕「・・・とりあえず、ゴミ捨て場の粗大ゴミは処分してください、料金は・・・僕が出します」
おばさん「よろしいんですか?・・・ではそのようにします・・・けど・・・」
その場で崩れ落ちる僕・・・
夕べが・・本当の本当に・・・お別れに・・・・・なっちゃった。
僕「ぅ・・ぅ・・ぅぅぅ・・・」
おばさん「し、失礼します・・・」
何も言わずに・・・
三姉妹、これがわかっていたんだろうな、
だから、あんなにも別れを惜しんで・・・うぅぅぅぅ・・・
僕「・・・・・はっ!まさか!!」
ユニットバスで雪沙ちゃんだけ寝てたりして!?
ガチャッ!!
僕「・・・・・いない」
パチッ、と電灯をつけると・・・
僕「ああっ!?」
お風呂側の壁に、クレヨンで字が!
「おにいちゃんありがとうだいすき ゆきさ」
僕「雪沙ちゃん!!」
ううぅぅ・・・
・・・・・そうだ!雪菜ちゃんがいたっていう、押入れ!
僕「ここか?ここか?・・・・・ここだ!」
ガラッ!!
僕「・・・・・ああっ!!」
またクレヨンで文字が!
「お兄ちゃん好きでした、本当にありがとう 雪菜」
・・・ここを見るって推理して・・・さすが・・・雪菜ちゃん・・・だよ。
僕「じゃあ雪巳ちゃんは・・・」
カーテンの下か!?
違う・・どこだどこだ・・・・・無いか・・・
僕「・・・荷物を運んだり捨てたりで、それ所じゃなかったのかも・・・」
どこへ行っちゃったんだろう・・・
とりあえず・・・部屋へ・・・戻って・・・考えよう。
僕「こういうのって、警察とか呼ばないといけないの・・・かなぁ」
とりあえずエントランスへ・・・
新聞を取ろう、郵便物も来てるかも?
開けるとまず新聞、その下に・・・鍵?3つだ、それが紙の上に乗っている。
僕「何だろう・・・・・あああっっ!!」
これは、これはぁっ!!
「お兄ちゃんとの最高の夏休み、どこへ行っても忘れないから、愛してる 雪巳」
そしてこれは・・・僕の家の、合鍵だ。
丁寧に戻してくれてた、しかも手紙付きで・・・
僕「・・・・・雪巳ちゃん・・・・・ありがとう」
3つの鍵を握り締めると、
本当にもう、終わっちゃったんだなって思う。
僕「・・・いや、でも・・・そうだ!まだ雪香がいるかも!!」
行って見よう!!
・・・
・・・
・・・
小娘寿司についた、
夜逃げとはいえ雪香だけ残ってる可能性もあるからな、
いればそこから何か情報を・・・せめて引越し先だけでもわかるかも!?
僕「すみませーん」
男店員「はい、らっしゃい」
僕「昨日ここで働いてた雪香ちゃんっていう子・・・」
男店員「ああ、昨日お試しで働いてもらったけど、やっぱり合わないって手取りだけ持って辞めたよ」
僕「そう・・です・・か・・・・・・あ、いかのお寿司ください」
・・・・そういえば帰ったら大掃除するって言ってたよな?
昨日の時点でもう計画されていたのか・・・ヒントは転がっていた、でもまさかこんなにすぐとは!!
・・・
・・・
・・・
バイクを走らせマンションへ向かうと、
下校の小学生たちとすれ違った・・・そうだ、
始業式くらいは出たかも知れない・・・でも小学生で雛塚家以外に知り合いは・・・
僕「・・・知り合い、じゃないけど、1人いるな」
マンションを素通りし、
大きな公園についた、滑り台の上には・・・
舞奈「え〜〜〜んえ〜〜〜〜んえ〜〜〜〜〜〜ん」
1人、両手の甲で目をこすってる、舞奈ちゃんだ。
舞奈「ぜったいうそ〜なりゆきくんがてんこ〜しちゃっても〜こないってぇ〜せんせ〜うそついてるぅ〜
そんなでんわがあったってぜったいうそぉ〜だってきの〜なりゆきくんとここであったも〜んえ〜んえ〜ん
きの〜ものすご〜〜〜くてぇふってたけどぉ〜、ぜったいうそだぁ〜だっておでこにきすしてくれたもぉ〜ん
これってけっこんしてくれるっていうやくそくなのにぃ〜ぜったいそ〜だっておもったのにぃ〜うそだぁ〜〜
も〜あえないってせんせ〜のいったことしんじないぃ〜だってなりゆきくんこんなにいいものくれたもぉ〜〜ん」
泣きながら、開いたオルゴールにそっと耳をあててる・・・
ネズミーのお土産でプレゼントしたやつ・・・悲しい・・・切ないよ・・・也幸くん・・・
舞奈「あしたもここくるもぉ〜んあさってもそのつぎもぉ〜まいにちここにきてなりゆきくんまつもぉ〜〜ん
まいなのおはなしちゃんとさいごまできいてくれるのってなりゆきくんだけだもぉ〜んなりゆきくぅ〜〜ん
ぜったいまいにちここにくるからいつかもどってきてぇ〜にねんせ〜になってもさんねんせ〜になっても〜
ちゅうがくせ〜になってもこ〜こ〜せ〜になっても〜おとなになってもまいにちくるからぁ〜〜え〜〜〜ん」
・・・言えなかったんだろうなぁ・・
也幸くん今頃、夜逃げのトラックの荷台で、
こっちの方角を見ながらハーモニカでも吹いてるのかなぁ・・・・・行こう。
僕「そっか・・・学校には連絡済みかぁ・・・」
こういう場合の転校手続きって、どうなるんだろう?
美鈴ねえさんに電話、はできないんだっけ今は兄さんを悶絶肉地獄に落としてる頃だろうし。
僕「・・・もう、会えないだろうなぁ」
・・・
・・・
・・・
マンションに帰ってきた。
玄関に入ると三姉妹の靴が無いかと探してしまった・・・
ととととと・・・
僕「誰か来る!?」
この軽快な足音は!
ソヨカゼ「にゃぁ〜〜〜」
僕「お前か・・・ただいま」
ソヨカゼ「ふにゃあああ〜〜、うにゃぁぁあああ、なぁああああ〜〜〜う」
僕「そんなに也幸くんを探さないでくれ・・・・辛くなる」
さあ、いかのお寿司を食べて、家事をしよう。
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