やっぱり誰も選べないよ。

 

僕「・・・・・みんな、ありがとう、じゃあ、さようなら」

雪巳「・・・最後にー、誰が一番好きだったのー?」

雪菜「最後の・・・最後の最後の、私のお返事、聞かせて欲しい・・・です」

雪沙「え〜〜、これでおしまいぃ〜〜?さいごになにかないのぉ〜?」

僕「これが、答えなんだ・・・ごめんね、誰が一番とか、言う事が、できない」

 

確かに1人言えと言われれば言えるかも知れない、

要所要所で1人しか選べない時に現に選んでた訳だし。

でも、言ったからってどうなるんだ?選ばれなかった子の気持ちは?

 

僕「ごめん、誰が一番っていうのは、無いから、それが、僕の、正直な、結論だから」

 

3人いっぺんに、本気で振っちゃうのは、きついなぁ・・・

 

雪巳「みんな嫌いなのー?」

僕「ううん、大好きだよ、でも、お別れなんだ」

雪菜「わかった・・・です・・・それがお返事・・なら・・・・・」

僕「本当にごめんね、みんな僕が悪いんだ、ごめん」

雪沙「みんなまだこどもだからぁ、だめなのぉ〜?」

 

・・・・・否定しない、でも肯定もしないでおこう。

さあ、いよいよ三人に、ちゃんとしたお別れをする時間だ。

 

僕「雪巳ちゃん、ありがとう、中学生の女の子がいてくれて助かったよ」

雪巳「私もー、お兄ちゃんにいっぱい色んな所連れてってもらってー、嬉しかったー」

僕「うん、僕も一緒に行けて、とっても楽しかったよ、良い思いでになった」

雪巳「あと色々してもらってー、こんな夏休みー、もう2度と来ないと思うー」

僕「そんな事は無いよ、雪巳ちゃんが頑張れば、もっと楽しい夏休みも来るよ」

 

そっとやわらかく髪をなでてあげる。

 

雪巳「最後にー、いっこだけお願いがあるのー」

僕「何かな?聞いてあげられる事ならいいんだけど」

雪巳「簡単だよー、ちょっとだけ、かがんでー」

 

同じ目線までしゃがむと、

髪を掻き分けて唇を寄せてきた・・・

 

ちゅっ♪

 

雪巳「嬉しいー、お兄ちゃん、ちゃんと目ー見てくれてるー、おっぱいじゃなくてー」

僕「そんな、いつも胸ばかり見てるみたいに、言わないでよ」

雪巳「お兄ちゃーん・・・・・とっても大事なものくれて、ありがとうねー」

 

大事なものって・・・初恋の思い出、って事にしておこう。

さあ、その隣、雪菜ちゃんにも、しっかりお別れを言わないと。

 

僕「雪菜ちゃん、ありがとう、一番細かい所に気がついてくれたのが雪菜ちゃんだったよ」

雪菜「・・・お兄ちゃんの買ってくれた・・・眼鏡のおかげ・・・です」

僕「あと、その、返事なんだけど・・・ほら、誰も選ばなかったから、つまり・・・」

雪菜「それ以上・・言わなくても・・・わかる・・です・・・・・ひっく・・・」

僕「ごめん・・・でも、ちゃんと考えて出た結果がこれだから・・・・・ごめんね」

 

やさしく頭をなでてあげる。

 

雪菜「わかった・・です・・・もう・・許してあげる・・・です」

僕「ありがとう、最後に許してもらえて・・・・・安心したよ」

雪菜「・・・・・しゃがんで・・・・・ください」

 

同じ目線までかがむと、

間髪入れずに唇を寄せてきて・・・

 

ちゅっ♪

 

雪菜「最後は・・・挨拶の・・・キス・・・です」

僕「お別れの挨拶だね・・・大丈夫、雪菜ちゃんならまたすぐ、新しい出会いのキスができるから」

雪菜「・・・・・お兄ちゃん・・・・・初恋を・・・・・ありが・・・・と・・・う・・・・・」

 

僕だって感謝だよ。

さあ、最後だ、雪沙ちゃんも、もう泣き顔だ。

 

雪沙「おにぃちゃぁぁぁぁあああん」

僕「ほらほら、最後は笑ってお別れしようよ、ね?」

雪沙「だってぇ〜〜、だってぇぇぇえええ〜〜〜」

僕「雪沙ちゃん、ちっちゃいのに本当によく働いてくれて、助かったよ」

雪沙「おにぃちゃんのことぉ〜、こんなにすきなのにぃ〜〜〜」

 

やさしく涙を拭いてあげる。

 

雪沙「おにぃちゃんがびんぼ〜になったら、ゆきさがたすけにいくねぇ〜」

僕「ははは、ありがとう、その時は僕がお風呂場で寝てるのかな」

雪沙「ゆきさもきすするぅ〜〜〜」

 

そういえば僕のファーストキスの相手、雪沙ちゃんだったな・・・

かがむと可愛らしい両手で僕の顔を持って、唇を突き出してきて・・・・・

 

ちゅっ♪

 

雪沙「えぇ〜〜〜ん・・・えへへへへぇ〜〜・・・ぇぇぇええ〜〜ん」

僕「泣きながら笑わなくても!」

雪沙「おにぃちゃんが、わらっておわかれしたいっていったもぉ〜〜〜ん」

 

・・・僕もかなり、うるうるきてる。

 

雪巳「じゃーお兄ちゃん、もう行っちゃうねー」

雪菜「楽しい・・・夏休みを・・・ありがとう・・・・・です」

雪沙「ソヨカゼもぉ〜〜〜・・・ばいばぁ〜〜〜〜い・・・・・」

ソヨカゼ「ふにゃ・・・」

 

名残惜しそうに、

本当に残念そうに玄関から出て行った三姉妹。

これで、本当に、終わっちゃったんだなー、全て。

 

僕「・・・・・喉が渇いたな」

 

台所へ向かう・・・あ、キャバレー部屋、灯かりがつけっぱなしだ、

掃除したのはいいけど最後に消すのが抜けてたんだろうな、まあ、しょうがない。

 

僕「・・・・・しっかり片付けられて・・・あれ?」

 

ワイン2本だけ残ってる、

ネズミーのお土産の・・・飲まないから飾っておいたんだっけ。

 

僕「三姉妹の事を振り返りながら、飲み明かすか・・・」

 

今夜くらい・・・・・いいよな。

部屋に戻り栓を抜き、ラッパ飲みする。

静かだ・・・これで本当に、僕だけ・・・残ったのは思い出と、年老いた猫だけか。

 

僕「でも、明日から下で会ったら、挨拶くらいはしてもいいよな?」

 

絶縁とか喧嘩別れじゃないんだし。

そうだ、明日、あらためて三姉妹がお世話に来てくれたお礼として、

ビッグマザーに何か持っていこう、雪香も帰ってきてる事だしカステラの詰め合わせでいいよな?

 

僕「・・・・・甘い・・・ぅ・・・ちょっとクラクラしてきた・・・」

 

まだ微かに残る三姉妹の匂いを吸い込みながら、

僕はベットにも戻らず、静かに、静かに眠るのだった・・・・・

 

僕「雪巳・・・ちゃん・・・雪菜・・・ちゃん・・・・・雪沙・・・・・・・・・ちゃん」

 

・・・・・・・みんな・・・・・・・ごめんね。

 

もどる めくる