遅い朝・・・・・重苦しい食卓。

みんな目を真っ赤に晴らしている、

そして不機嫌、当たり前だ、恋人が別れを告げた後のようなものだから。

 

ソヨカゼ「うにゃ〜〜〜」

僕「あれ?お前、まだか・・・誰かあげないの?」

雪巳「・・・」

雪菜「・・・」

雪沙「・・・」

 

しょうがない、僕があげよう。

 

僕「ほら・・・そろそろ病院いかないとな、来週行こう」

ソヨカゼ「うにゃっ♪」

 

・・・・・再び静まり返る食卓。

 

僕「1時から、児童相談所の人がくるけど・・・」

雪巳「私パスー、どうせ駄目なんでしょー?じゃあいいー」

僕「そんなこと言っても、ちゃんと言うべきことは言わないと・・・」

雪巳「じゃー、お兄ちゃんを何度も何度も無理矢理やっちゃったーって言っていいー?」

僕「それは駄目だって!たとえ本当のことでも!」

 

トゲトゲしくて手に負えないなぁ・・・

 

僕「雪菜ちゃんは、どうかな・・・」

雪菜「私は・・・雪香おねえちゃんのほうへ、行く、です」

僕「そっか・・・じゃあ無理強いはできないよね」

雪菜「本当の家族のほうが・・・大事・・・だから・・・」

僕「ごめん・・・わかった、行っておいで・・・よろしくね」

 

まるで家族から弾かれたって言いたげだな。

 

僕「雪沙ちゃん、いるだけいる?」

雪沙「やぁ〜、しゅくだいするぅ〜」

僕「そっか・・ええっ!?もう終わったんじゃなかったの!?」

雪沙「まだあるも〜ん、はやくやらないとまにあわない〜」

僕「頑張ってね・・・結構、残っていそうだね」

 

まあ、細かいことはこの際、無しにしよう。

 

僕「じゃあ、食器の洗い物は、僕がしようかな」

雪巳「私がやるー、今月いっぱいはメイドだもーん」

僕「そう、じゃあお願いするよ」

雪巳「誰かと違って途中で投げ出したりしないもーん」

僕「ははは・・・・・手厳しいな」

 

きっついなぁ・・・

 

雪菜「たぶん・・・雪沙のこと・・・です」

僕「え?そうなの?」

雪沙「しゅくだいできたことにしていいっていっての、ゆきみおねぇちゃんだも〜ん」

雪巳「でも夏休みいっぱい残ってたんだから、普通早くやるでしょー?」

僕「こ、こら、喧嘩しないの!!」

 

こんな事、今までなかったよな?

やっぱり僕のせいか・・・こりゃあ大きな罪を背負っちゃったよ。

 

雪菜「・・・お兄ちゃん・・・」

僕「な、なになに?なになになに?」

雪菜「一緒に雪香お姉ちゃん・・・見に行きます・・・か」

僕「いいのかな・・・うん、じゃあ行ってみようか」

雪菜「お土産・・買って行った方がいい・・です」

 

よかった、まだ雪菜ちゃんは許してくれてる感じだ。

 

雪巳「お兄ちゃん油断しちゃ駄目だよー」

僕「えっ!?どういう意味!?」

雪巳「教えなーい・・・雪沙、掃除さぼっちゃ駄目だからねー」

雪沙「わかってる〜、おそ〜じはやくおわらして、しゅくだいするぅ〜」

雪巳「今年はもう手伝わないからー、できなくてもお掃除のせいじゃないからねー」

 

これは・・・美鈴ねえさんに、なだめてもらった方がいいな。

 

・・・・・

・・・・・

・・・・・

 

僕「ではお願いします、早急に」

 

電話を切る・・・ふう、

新しい管理人さんはとりあえず月曜に来るけど、

緊急事態の臨時だからって通いで日給らしい、大変だ。

 

僕「住み込みの人を探さないと・・・」

 

派遣会社にもお願いするけど、

ああいう管理人さんをよこした所だ、

できたら別の所を探すか、個人をあたってみるか・・・

 

ぴんぽーーーん

 

僕「誰だ!?モニターをチェック・・・なんだ也幸くんか」

 

そうだ、也幸くんにも説明しなくちゃ。

 

僕「開けるから入っておいでー」

也幸「!!!(コクコクコク)」

 

小さい体をバネのようにして玄関から飛び込んできた!

 

ソヨカゼ「ふにゃ〜〜〜〜」

也幸「!!!!!」

 

あーあ、抱きあって・・・でも、9月からどうしよう。

 

僕「也幸くん、聞いて欲しい事があるんだ」

也幸「・・・?」

僕「8月いっぱいで雪巳ちゃん雪菜ちゃん雪沙ちゃんのお仕事が、終わっちゃうんだ」

也幸「・・・!」

僕「だからもう、9月からは、ここに遊びに来ても、入れてあげられないんだ」

 

ガーーーーーン!っていう表情になってる。

 

僕「ソヨカゼは僕が責任持って飼うから・・・」

也幸「ーー!ーー!!ーーー!!!(ふるふるふる)」

僕「泣いても駄目、もう明日でお別れだからね」

ソヨカゼ「にゃにゃにゃ?」

也幸「〜〜〜〜〜!!!(ぼろぼろぼろ)」

 

しょうがないよ、

也幸くんだけ特別扱いはもうできない、

かといってソヨカゼを公園に戻す事も、もうできないんだ。

 

雪菜「準備できた・・・です」

僕「じゃあ行こう、お土産は駅前でカステラでも」

雪菜「也幸・・・そこ邪魔になるから・・・」

也幸「・・・・・・(ぐっすんぐっすん)」

ソヨカゼ「ふにゃ〜〜〜、うにゃ〜〜〜〜〜」

 

なんとなくソヨカゼも雰囲気を感じ取ったみたいだな。

今はめいっぱい一緒にさせてあげよう・・・死に別れるよりまだマシ・・・と思って。

 

僕「外は・・・あっつ!」

雪菜「明日退院だから・・今日はタクシーでいいかも・・・です」

僕「そうだね、お見舞いは今日で最後だろうから」

 

って明日の荷物運びとかどうするんだろう?

そもそも雪香の住んでたウィークリーマンションは?

会って聞けばいいか、ウチには来れない事もちゃんと言おう。

 

僕「タクシーきた!!」

 

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