雪巳「・・・ぃちゃーん・・・お兄ちゃーーーん」

 

ん・・・どこだ・・・雪巳の声・・・

うう、体がちょっと痛い・・ここは・・・ああ、書斎か。

内側から鍵かけてあるもんな・・・外して、っと・・・よっし・・ふぁぁ・・・

 

僕「おはよう・・・どうしたの?」

雪巳「朝ごはんできたよー」

僕「そんな時間か・・・あ、雪巳ちゃん帰ってきたんだ、美鈴ねえさんは?」

雪巳「交代したよー、雪香お姉ちゃん起きたからー、色々お話してるみたーい」

僕「そこまでは回復したんだ・・・あ、じゃあ雪巳ちゃんはここまでバス?」

 

コクンと頷いて台所の方へ・・・

僕もついていく、食卓ではすでに雪菜ちゃん雪沙ちゃんもいる、

ソヨカゼもいて、也幸くんはいないな、残ったり帰ったり自由気ままだ。

 

雪沙「おっはよぉ〜〜〜」

雪菜「おはよう・・・です」

僕「おはよう、じゃあ、いただきまーーーっす」

 

・・・もう29日か、三姉妹の夏休みは今日を入れてあと3日。

僕はまださらに2週間あるけど、区切りである事に変わりは無いよな。

 

僕「ん・・・そういえば雪香って食事は?」

雪巳「んー、それなりにたべてたよー」

僕「そっか・・・時間かかりそうかな」

雪菜「食べ終わったら・・・私・・・行ってくる・・・です」

僕「じゃあ一緒に行こう、タクシー・・・はもったいないから今度はバスかな」

 

プルルルル・・・

プルルルルルル・・・・・

 

僕「電話だ!僕が取るよ」

 

朝から誰だろう?

玄関まで行って・・・

 

僕「もしもし」

男「すみなせん、こちら児童福祉相談所の・・・」

僕「あっ!どうも、お世話になっています、先日は失礼致しました」

 

いつも急だなぁ。

 

職員男「それで、今日はですね、そろそろ夏休みも終わりますし・・・」

僕「はい、そうですね、そういう時期がきましたよね」

職員男「ですから今後の事についてお伺いできればと思いまして」

 

・・・しっかり仕事してるなぁ、頭が下がるよ。

 

僕「わかりました、僕からも相談する事があるかも知れないですし」

職員男「では本日の午後1時くらいに・・・」

僕「いえ!ちょっと今日は病院に行く用事が・・・」

 

さすがにそんなに早く結論は出せないよ!

出せなくても、相談する内容をまとめる時間は欲しい。

 

僕「雪巳ちゃんたちの姉が入院しちゃってて、時間差でついてあげてるので・・・」

職員男「それは大変ですね、ではいつにしましょうか」

僕「そうですね・・・あまり延ばせられないので・・・よし、明日の午後1時でお願いします!」

 

24時間ちょっとで、決めよう!!

 

職員男「わかりました、ではその時間には雪巳ちゃん雪菜ちゃん雪沙ちゃんも」

僕「・・・いるようにしたいと思います、すみませんこちらから連絡しなくちゃいけないのに」

職員男「いえいえ、色々と忙しいようですから・・では明日、伺いますのでこれで失礼いたします」

 

・・・・・来るべき時が、来ちゃったな。

 

 

・・・

・・・

・・・

 

朝食が終わって雪菜ちゃんとマンションを出た。

 

僕「今日は暑いなぁ〜・・・」

雪菜「でも・・お洗濯はすぐ乾く・・・です」

僕「そうだね・・・あ、気をつけて!」

 

花壇の世話してる管理人に見つからないように・・・

よし、もういいだろう、バス停へ・・・タクシー使っちゃいたいなぁ〜。

 

僕「暑いしやっぱりタクシーにする?」

雪菜「もったいない・・です・・・タクシー禁止・・・です」

僕「そう言うと思ったけど、雪香も早く雪菜ちゃんに会いたいんじゃないかなー」

雪菜「・・・甘やかすの・・駄目・・・です」

僕「あ!バスが来た、駅前に降りれば後は歩いていけるから」

 

涼しい〜・・・

・・雪菜ちゃんがちょっと元気無いのは、

雪香を心配してだよな?僕を犯せなかったから、とかだったら・・・別の意味で涼しい。

 

僕「そうそう、電話だけど相談所の人が明日、午後1時に来るって」

雪菜「・・・雪香お姉ちゃんのこと・・です・・・か」

僕「ううん、みんなのこと・・・だから家にいてね、一緒に話すかもしれないから」

雪菜「じゃあ・・また作戦会議・・・する・・・です」

僕「いや、それは、まだ、待って・・その・・・作戦とかは、いらない、かな」

 

まだ作戦を実行するための指針が決まってないんだから。

 

雪菜「お兄ちゃんのために・・・がんばる・・・です」

僕「ありがとう、その気持ちは嬉しいよ」

雪菜「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん・・・・・お兄ちゃん♪」

 

やばい、グラッと揺れそうだ、

バスじゃなくって僕の心が・・・あぅ。

 

・・・

・・・

・・・

 

病院に着いた、

雪菜ちゃんに行ってもらって、

来れるなら美鈴ねえさんを呼んでもらう・・・あれ?

 

雪菜「お兄ちゃん・・・」

僕「どうしたの?美鈴ねえさんは?」

雪菜「来ていいって・・・」

 

ええ?もうそんなに回復したのか?

一緒に階段を上がる・・・ちょっと怖いな、

女医さんが扉の前で立ってる、ドアには雛塚雪香の文字が。

 

僕「入って・・・いいんですか?」

女医「はい、ただし・・・少しでも雪香さんが嫌がるようなら、すぐに出てください」

僕「え?・・・あ!わかりました」

 

つまりモルモット・・・いや、

雪香が大丈夫か試すのかな。

他人の男だと怖いけど知ってる男なら平気かどうか、とか?

 

僕「一応ノックしよう」

 

コン、コン

 

美鈴「はーい」

 

ねえさんの声だ。

恐る恐る入ってみると・・・

 

雪香「よっ!」

僕「・・・・・雪香?」

雪香「そーだよ、どーしたの」

 

髪の毛が黒く染まってる・・・

 

僕「良かった・・・よっ、じゃないだろ」

雪香「!!!(ビクビクッ!!!)」

美鈴「弟クン、まだちょっと口調に気をつけてあげて」

僕「あ、ごめん・・・雪香・・・ちゃん?」

雪香「お土産は?梨とか林檎とか食い飽きちゃってさー」

 

いつもの感じ・・・でもないな、手が、肩がちょっと震えてる、

まだ怖いんだろう、これはここからあまり近づかないほうが良い。

 

僕「その・・なんだ・・・まあ、生きてれば色々あるよ、うん」

雪香「それ、なぐさめてくれてんの?」

僕「まあ・・・ね・・・これで雪香も・・・少しは・・おと・な・・しく・・・」

 

なんて言っちゃまずいかな・・・

 

雪香「・・・そだね、まー、懲りたよ」

僕「うん・・雪香も真面目にしてたら、かわいいんだからさ」

雪香「な、なに・・・照れること言うんじゃねーって!」

 

よかった、ある程度は元気だ。

 

美鈴「ほら、ちゃんと言いなさい」

雪香「うん・・・ご・・ごめん・・・ごめん・・なさい」

僕「え?」

 

今、雪香が、素直に謝った!?

 

雪香「今まで色々、ごめんね・・・あと・・・ありがとう、助けてくれて」

僕「いや、僕だって・・・電話にもっと早く気づいていたら・・・」

雪香「それはしょーがないって、どーせぐーぐー寝てたんでしょ?」

僕「まあ、そんなところ、無視した訳じゃないんだ、ごめん」

雪香「いいよ、無視されててもおかしくないのに、助けに・・来て・・くれたん・・だ・・・から」

 

・・・あ、唇まで震えだした、そろそろ限界っぽいな。

 

僕「じゃあ忙しいから帰るから、早く元気になって、ね」

雪香「うん!じゃあねー、時間が経ったら、また、きて、よ」

僕「今度は何か持ってくるよ・・・じゃあ雪菜ちゃんお願いね」

 

・・・・・何とか乗り切ったみたいだ。

入れ替わりに女医さんが入っていった、

薬を打つみたい・・・精神安定剤か何かだろうか?

 

美鈴「お疲れ様」

僕「美鈴ねえさん!」

美鈴「助けてくれた君なら大丈夫だったみたいね」

 

安心してる・・・美鈴ねえさんも賭けだったんだろうか。

 

美鈴「あの調子なら1週間もかからず自宅療養できるでしょ」

僕「自宅・・・でも自宅って、あの雛塚家だと大変そう・・・」

美鈴「何を言ってるの、君の家に決まってるじゃない、あんなに部屋を持て余して!」

僕「ええー!?でもまだ決めてないし、それにウチは雛塚家じゃないし」

美鈴「そうそう言い忘れたけど、君が雛塚家に養子に入る選択肢だってあるのよ!?」

 

な、なんだってーーーーー!?

 

僕「その展開は・・・考えてなかった」

美鈴「で、考えはどう?固まった?」

僕「・・・明日午後1時に児童相談所の人が来るので、そこで・・・」

美鈴「1時って言ったら私のパートが始まる時間じゃないの」

僕「えっ!?じゃ、じゃあ、時間を今からでもずらしてもらったほうが・・・」

 

そっと僕の頭をなでる美鈴ねえさん。

 

美鈴「偉いわねー、1時に設定したって事は、私の力を借りずに自分で、自力で意思を伝えるのね」

僕「で、でも、どっちを選んでもやっぱり、美鈴ねえさんがいた方が・・・」

美鈴「それは選び終わった人がいう言葉よ?それに、もうさんざん助けてあげたでしょ?フィニッシュくらい自分でやりなさい!」

 

・・・・・そうだよなぁ。

 

僕「わかりました、自力で頑張ります」

美鈴「これからは助けてあげられない時もくるでしょう、頑張るのよ」

僕「はい・・・自分に責任を持って、ちゃんとやります」

美鈴「言うのは簡単ね、ま、身内として、可愛い義弟クンを見守ってあげる」

僕「はい・・ですからそんなに頭をなでなでしないで・・・」

 

なでりなでりと、あやされてるみたいだ。

 

美鈴「どうする?私はあと1時間くらいいるけど・・・」

僕「帰ります、雪菜ちゃんはどうしましょう」

美鈴「自分で帰るでしょう、バス代あげた?」

僕「あ!あげてないです、じゃあ・・・」

美鈴「私が渡しておくわ、じゃあ気をつけて帰るのよ!」

 

やっぱり頼りになるなぁ・・・

でも結論は自分で出さないといけない!

よし!すぐに帰って、すぐに結論を・・・・・出せる訳、ないよなぁ。

 

もどる めくる