病院について雪沙ちゃんが入っていった、

僕はロビー・・・する事ないな、でも待たないと・・・

って雪沙ちゃんは戻ってくるのか?お弁当渡すだけじゃなくって、

一緒にずっと看病って事になったら、ここにいる意味はないぞ!?

携帯で聞いてみるかな、でも病院は禁止だよな?携帯の電源も切っちゃったし。

 

僕「病室は行っちゃいけない、っていっても手前まではいいよな・・・?」

 

でも、男の声すら駄目とかってありそう・・・

しばらく絵本でも読んで待つかな、たんぱんまんとむしばこぞう・・・

もうちょっと大人向けは・・・あった、低カロリーでもおいしいおかず100選・・・

 

美鈴「お待ちどうさま」

僕「あ!美鈴ねえさん!」

美鈴「雪沙ちゃんは雪菜ちゃんと夕方までいるそうよ」

僕「そっか・・・退屈しないといいけど」

美鈴「リュックに漫画詰めて来たみたいだから平気そうよ」

 

準備万端って訳か。

 

美鈴「来る時タクシーだったんでしょ?送ってあげるわ」

僕「ありがとう・・・美鈴ねえさんは、もういいんですか?」

美鈴「落ち着いたからね、まだ男の人は駄目だけど・・・昼食に抜けるくらいは大丈夫」

 

そのついでで家まで送ってくれるのか。

 

美鈴「さ、弟クンはもう食べたんでしょ?行きましょ」

僕「はい・・・あ、入院費とかってどうなるんですか?」

美鈴「緊急だしとりあえず心配いらないわ、でも長期の個室なら別途、高くなるわね」

 

そっか、とりあえず状況を見守るしかないか。

 

僕「すみません、本当に色々と」

美鈴「ま、込み入った話は車でね」

僕「そういえば雪巳ちゃんたちのお父さんはまだ警察?」

美鈴「診察中よ、ちょっと顔色が悪いから見てもらってるけど、たぶん病気ね」

僕「ええーっ!?そんな、あのお父さんまで!」

 

駐車場にある、あいかわらずかっこいい車に乗る。

 

僕「何の病気なんですか?」

美鈴「お酒の飲みすぎよ、肝臓か胃か、まあ内臓ね」

僕「うわ・・・下手すると入院!?」

美鈴「まだそこまでは行ってないと思うけど、お酒は止めた方がいいわね」

僕「そうですね・・・あとビッグ・・・雪香のお母さんはまだ来ませんか」

 

でも僕が警察に連れて行かれた時は来てくれたんだよなー・・・

 

美鈴「来ないでしょ、来たってマイナスにしかならないって考えるでしょうから」

僕「そんな!実の娘が、しかも長女がこんな目にあってるのに!」

美鈴「・・・たぶん、雪香ちゃんってあのお母さんと衝突して出て行ったんじゃないかな」

僕「だったらなおさら、会って仲直りなり、助けてあげるなり・・・」

美鈴「いいこと弟クン?みんながみんな、清く正しい家族愛を持ってる訳じゃないのよ?」

 

そんなぁ・・・

 

美鈴「あのお母さんだって、あれでもあれなりに信念て程でないにしろ、正しいと思って育ててるのよ」

僕「ええっ、あれで、ですか!?」

美鈴「そう、あんなに子供がいるんですもの、全員に、別々に強い愛情を注いでフォローしてたら、身が持たないんでしょうね」

僕「そんな・・・ひどい・・・だったら産むなっていう感じですよね」

美鈴「命は尊いものよ、だから産むななんて言っちゃだめ、でもまあ計画性は無さ過ぎよね、きっと勢いでしょ」

 

お酒に酔った勢い・・・かな?あのお父さんの。

 

美鈴「だからあのお母さんも放任主義でいるのは、そうでないと育てられないからよ」

僕「お金もかかるでしょうし、パート出てるみたいですからね」

美鈴「もちろん間違った育て方である事には変わりはないけど、でも一生懸命、生きてるでしょう親も子も」

僕「色々と法律は犯してますけどね、生きるために盗みとかはしちゃいけないと思うけど・・・」

美鈴「そうね、だから雪香ちゃんもあんな目にあったのかも知れないわ、でもそれは報いであっても被害者に変わりはないわ」

 

車が駅の横を通り抜ける・・・

 

僕「だったらなおさらお母さんが来て助けてあげないと」

美鈴「それが利益になるならね。ならないから来ないんでしょ」

僕「お金にならないからですか!?」

美鈴「そ・・・と言いたいけど、雪香ちゃんがあのお母さんに会って、酷く取り乱したとしたら!?」

僕「そんなにも、嫌いっていうことなんですか!?」

 

まあ確かに家族であっても殺人事件とかは起きるけど・・・

 

美鈴「今の雪香ちゃんはどんな些細な事でも気をつけなくちゃいけないわ」

僕「じゃあ、お母さんに会って悪化する可能性がある、それが高いと踏んで・・・」

美鈴「そこまで考えての行動かは本人でないとわからないわね、単に面倒くさいだけかもね」

僕「心配は一応してる、っていう事でいいんですよね?」

美鈴「それもどうかしら・・・もう家を出て行った人間だから他人と思ってる可能性だってあるわよ」

 

ひどい・・・でも実際はわからないよな・・・

 

美鈴「このあたりは私たちが手を突っ込んじゃいけない所よ、今はね」

僕「じゃあ、本当の家族になったら・・・」

美鈴「弟クンが解決してくれるの?偉いわね〜、私なんかじゃとても無理よ無理」

 

だったら僕なんて、もっと無理だよ!!

 

僕「美鈴ねえさんですら手に負えないなら・・・」

美鈴「あらぁ、愛があれば、やれるんじゃな〜い?」

僕「でも、綺麗事ばかり言ってもいられないから・・・」

美鈴「そう、家族なんてそんなものよ、綺麗事なんて、それは他人が言ってるだけの事」

僕「理想と現実は違う、っていうやつですよね・・・」

 

そういえば美鈴ねえさんも家族に、

両親に酷く裏切られたんだっけ、恋人の事で・・・

確かに綺麗事で言えば間違ってたのは美鈴ねえさんだけど、

当事者の美鈴ねえさんからすると、小5少女と大学生の男の肉体関係は、

全然、正当で自然なものであって、それを引き裂いた両親こそが悪なんだろうな。

 

美鈴「で、結論は出せそう?養子の」

僕「・・・今決めなきゃ、明日決めなきゃ、で今日まで来てます」

美鈴「たっぷり悩みなさい、でも結論は早く出しなさい」

僕「・・・9月までずれ込んじゃ、やっぱりまずいですよ・・・ね?」

美鈴「そうね、デッドラインだわ、そこを過ぎれば悪い方向にしか行かなくなるわね」

 

やっぱりそうなっちゃうよ・・・な

 

美鈴「変に延びれば周りの目も奇異に見てくるわ」

僕「学校も始まっちゃいますからね」

美鈴「それにあの子たちの情も、どんどん深くなっていくでしょう」

僕「そうなると、別れるのが辛くなる・・・」

美鈴「甘いわ、それで済めば良い方よ、別れたらあの子たちに心底、恨まれるのよ?」

 

それは怖い・・・今でも結構、怖い子たちなのに。

 

美鈴「あんなにいいようにしてくれたのに、捨てられた、って思うわね」

僕「でも約束では8月いっぱいって・・・」

美鈴「そう、だから約束のしてある、8月いっぱいまでに結論を出さないと、まずいの」

 

そうか・・・これは絶対に、今月中にどころか今日にも、今にも答えを出さないと!

 

美鈴「ただ、急かされて出した答えを後で失敗したって思わないようにね」

僕「じゃあ、めいっぱい・・・悩みます」

美鈴「どうしても、いま答えを出すのはまずいって思うのなら、延期もしょうがないわね」

僕「その分、リスクは覚悟しろと」

美鈴「でも重いもの背負い込んだり、背負い損なったりして一生後悔するよりはマシでしょ?」

 

・・・駄目だ!

20歳の僕には荷が重過ぎる!!

 

美鈴「でも・・・君が思い描く、理想的な家族っていうのをあの子たちと築くのもいわね」

僕「僕の理想の・・・みんな仲良く・・・助け合って・・・笑顔でいられるような・・・」

美鈴「そう、雛塚家を救えるのは、みんなを笑顔にできるのは、今は君だけかも知れないわ」

 

そう言われるとやってみたくはなる・・・

僕にそれができるのか、ではなくって、僕はそれをやりたい!

そうすれば、三姉妹は僕のそばにずっといてくれる・・・助け合っていける・・・

 

美鈴「でもねー、いざ家族になると、ほんっと大変よー?」

僕「それは想像つきます・・・1年後には三姉妹に嫌われてるかも知れないし・・・」

美鈴「逆にもっともーっと好かれてるかも知れないわよ?それは君次第・・・あ、ついたわ」

 

マンションについた。

駐車場までいかずに僕だけ降ろされる・・・

 

美鈴「ま、君なら嫌われる事はそうそうないわ、私が保証するから」

僕「・・・色々とありがとう」

美鈴「じゃ、夜にまた来るかもしれないけど、またね」

 

かっこよく去っていく美鈴ねえさん・・・

酸いも甘いも噛み分けた事だけあるよなー・・・

よし、帰って書類とにらめっこだ!煩悩を振り払って・・・

 

隆幸「・・・!!」

僕「あ!隆幸く・・・」

 

たたたたたたた〜〜〜!!

 

僕「あーあ、逃げちゃった」

 

あの子も也幸くん並に足、速いな。

マンションに入る・・・あれ?管理人がいないな?

裏か上で掃除でもしてるのかな、まあいいや、顔見なくて済む。

 

僕「・・・上は寝てる雪巳ちゃんだけか・・・」

 

静かにじっくり考えられそうだ、

書類と夜までにらめっこしよう・・・朝までになったりして。

 

・・・

・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

 

僕「・・・ん〜〜・・・結論が出ない・・・」

 

椅子から降りて床に寝転ぶ、

養子を3人・・・ちゃんと教育できるんだろうか?

途中で返すとか施設に放り出すとかは、絶対にできないからなぁ。

 

ガチャッ

 

僕「だ、誰!?」

 

入ってきたのは・・・

 

也幸「・・・・・」

 

あ、也幸くんか、

そういえばソヨカゼと部屋に篭っていたんだっけ。

 

僕「どうしたの?」

也幸「・・・・・・・」

 

ぺたん、と座り込んじゃった、

きっと、どうもしてないのだろう。

 

僕「おせんべい食べてなよ」

也幸「!!!(コクコクコク)」

僕「静かにね・・・」

 

・・・考えを続けよう。

養子にもらうって考えない方がいいんじゃないか?

そう、たとえば3人まとめてお嫁にもらうとか・・・

でもそれって大変そうなうえ、修羅場だよなー、ならいっそ、

1人に決めちゃって、その姉か妹がついてくる、って考えたら・・・

 

僕「でもなぁ・・・3人から1人に、選べないよなぁ・・・」

也幸「!!!」

僕「ん?也幸くん、どうしたの!?」

 

てけてけてけ・・・

 

部屋から出ていった。

何か思い出したんだろうか?

と思ってたら戻ってきたみたいだ、何か持ってる。

 

僕「鉛筆と・・・サイコロ消しゴムと、紙、だよね」

也幸「〜〜〜♪」

僕「機嫌良さそうに何を書いてるの?」

 

どれどれ・・・書き終わったみたいだ。

 

1ゆきさ

2ゆきみ

3ゆきさ

4ゆきな

5ゆきさ

6もう1かい

 

也幸「・・・・・(さっ)」

僕「え?これ振るの?サイコロ消しゴム」

也幸「!!(コクコク)」

僕「ええっと・・・雪沙ちゃんが、多い、よね」

也幸「!!!!!!!!!!」

 

ぴゅーーーーーっ・・・

 

僕「わ!超音速で逃げていった」

 

ばれた!っていう感じだ。

運任せ、か・・・最終手段としてはいいかな?

いや駄目だ、後悔するにしても、自分の意思で選ばないと!

 

僕「雪巳ちゃん・・・雪菜ちゃん・・・雪沙ちゃん・・・・・」

 

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