雪巳「ただいまー」

僕「おかえり・・・雪香はどうだった?」

雪巳「んー、半分以上寝てる感じかなー」

 

そっか・・・心配だけど行っちゃいけないんだよな。

 

僕「あれ?雪菜ちゃんは?」

雪巳「残ってるー、だからお弁当箱にご飯入れて持っていくねー」

僕「いいけど・・・もう時間的にはお昼に近くなっちゃったね」

 

朝昼兼用のご飯か。

 

雪巳「朝ごはん食べたらお昼寝するー」

僕「疲れちゃった?起こされるの早かったからかな急な事件で」

雪巳「うーんー、今夜だけだと思うけど、雪香お姉ちゃんに1人ついてないといけないからー」

僕「そっか、じゃあ夜遅くまで起きてないと・・・徹夜まではしなくても」

雪巳「美鈴おねえさんは夕食前に帰っちゃうからー、大事なのは心の問題なんだってー」

 

そのへんのケアは本当の肉親がいいんだろうな、

もしくは恋人・・・その恋人に裏切られたのかも知れないのか、

詳しいことはわからないけど、力になれる事があったら助けてあげたいよ。

 

僕「あの時、電話が気付いていたら・・・いや、その前に・・・」

雪沙「ん〜〜〜・・・おにぃちゃ〜〜〜ん」

 

ぺたぺたと歩いてきた雪沙ちゃん、

いつのまにかパジャマを着て・・・シャワーでも浴びたんだろうか?

 

僕「ど、どうした、の」

雪沙「あさねぇ〜、そ〜じしててぇ〜、これでてきたのぉ〜」

僕「え?それは・・・・・鍵!?」

 

部屋の鍵って感じだ。

 

雪沙「せんたっきのしたにあったよぉ〜」

僕「じゃあ、脱衣所の鍵かなにか?」

雪沙「ちがったよぉ〜、こっちぃ〜〜」

 

すでに鍵が合う場所を見つけたみたいだ。

廊下を進んで・・・進んで・・・ずっとずっと奥へ・・・

一番奥まで来たぞ!?このへんは物置ばかりか使ってない部屋まであったはず・・・

 

雪沙「ここ〜〜〜」

僕「あ!ここは!」

雪巳「なになにー、なんのへやー?」

僕「開かずの間だよ、ここへ越してきて、まだ1度も入った事ないんだ」

雪沙「あけるねぇ〜」

 

入るとほこりっぽい!

と同時に新築の匂いが・・・

あれ?入った所に玄関があるぞ?そして・・・

 

僕「これ、キッチンだよな、それとこっちはなんだ?」

雪沙「おといれと、おふろぉ〜」

僕「ユニットバスだ!でこっちのスペースは・・・」

雪巳「洗濯機置く場所みたーい、こっちは冷蔵庫かなー」

僕「キッチンだけで広いね、食卓もちゃんと置ける」

 

その先に部屋があるみたいだ!扉を開けると・・・

 

僕「こっちは寝室だ」

雪巳「大きいー、下の家が丸ごと入るよー」

雪沙「うん〜、いっかいのおうちがこっちにもあるみたい〜」

僕「すごいなここ、隠れ家とかアジトみたいだ」

雪巳「部屋の真ん中を仕切ったら、下のお家と一緒かもー」

 

無いのは押入れくらいか・・・いや、あるぞ!?

 

僕「さらに奥のこれは・・・?」

 

スライドするドアを開けると・・・

 

雪沙「も〜ひとへやぁ〜」

雪巳「すごーい、でもこの中、窓が無いよー」

僕「それはきっと、ここがウォーク・イン・クローゼットだからだよ」

 

鮮やかな木の色の床・・・

ちゃんと明かりもつくし、

中にはコンセントの差込口もあるから、

テレビとかの贅沢さえ言わなきゃ普通の部屋にもできるな、

3畳くらいの大きさだからベットを入れてもいいし、書斎にもできる。

 

雪沙「ね〜、なんでおうちのなかに、おうちがあるの〜?」

僕「それは・・・きっとこれは居候部屋・・違う、メイドルームだ!」

雪巳「じゃーここにメイドさんが住んで、お兄ちゃんのお世話するんだー」

 

・・・・・なんだ、こんな便利な部屋があったんなら、

三姉妹を最初からここへ入れておけばよかったんじゃないか!

そうすればお風呂が一緒になったりも、着替えてる所へうっかりとかも無かったんじゃ・・・?

 

雪巳「だったら9月からここに住めるねー」

雪沙「え〜、ゆきえと、ゆきねと、なりゆきをここにいれよ〜」

僕「確かに3人くらいなら住めそうだよね」

 

まあ、男の也幸くんは奥のクローゼット部屋行きだろうな。

で、成長して中2くらいになった也幸くんがトイレ行こうとしたら、

中央の部屋で姉の、高1と中3の雪絵ちゃん雪音ちゃんが着替えてて出れなくて困ったり・・・

 

僕「ま、まあ、ここの使い道は、おいおい考えるよ・・・雪沙ちゃん、ありがとう」

雪沙「えへへへへぇ〜〜〜」

雪巳「おなかすいたぁーー」

僕「じゃあ僕も食べよう、結局、雪巳ちゃんが戻るの待っちゃった」

雪沙「ゆきさがごはん、よそうよぉ〜〜」

 

・・・・・雪香もちゃんと食事が取れるようになるといいな。

 

・・・

・・・・・

・・・・・・・・・・

 

雪巳「雪菜のご飯詰めたー」

僕「前に僕があげた弁当箱だね」

雪沙「ぢゃ〜これもって、びょ〜いんいくねぇ〜」

僕「え?雪沙ちゃん1人で?大丈夫?」

雪巳「私はもう昼寝するからー」

 

心配だ、雪香があんな目にあったばっかりなだけに。

 

僕「じゃあ僕が持っていくよ、渡すだけならロビーで済むし」

雪沙「ほんと〜?ぢゃあ、いっしょにいこぉ〜」

僕「う・・・まあ、雪沙ちゃんもお見舞いしたいだろうからね」

雪巳「えー、雪沙だけで平気だよー、お兄ちゃんは私と一緒に寝ようよー」

僕「だ、だめ!駄目駄目!じゃあ雪沙ちゃん、一緒にタクシーで行こう!」

 

今度は雪巳ちゃんにいたずら、なんて事になったら、次は也幸くんに見られちゃう!

 

・・・

・・・

・・・

 

雪沙「いこぉ〜〜」

 

可愛らしいリュックにお弁当を入れ、

僕の手を繋いで玄関へ・・・これから遠足にでも行くみたいだ。

 

雪沙「おにぃちゃんとでぇとぉ〜♪」

僕「こら!お見舞いに行くんだから、そんなこと言わないの!」

雪沙「はぁ〜〜〜い」

 

とはいえ雪香があんな状態なのに、

戻ってきてすぐ、雪沙ちゃんにあんな事を・・・

なんて考えながらエレベーターに乗り1階へと向かう。

 

雪沙「そ〜いえばゆきかおね〜ちゃんのごはんはぁ〜?」

僕「んー、まだ食べられないんじゃないかな?」

雪沙「そっかぁ〜、びょ〜いんしょくもでないのぉ〜?」

僕「お腹が空いて食べる気になったら出るかも?あと売店もあるし」

雪沙「びょ〜いんのおかねは、おにぃちゃんがはらってくれるのぉ〜?」

 

その辺はどうなんだろう?

無料かな?無料だといいけど、

でも今はお金の事より雪香の体と心が心配だ。

 

僕「そういう事は美鈴ねえさんに任そう」

雪沙「いっかいついたぁ〜、はやくいこぉ〜」

 

飛び出す雪沙ちゃん!

玄関を出た所にいたのは・・・

 

管理人「おおっとあぶない!」

雪沙「きゃ・・・やああああああああああああ!!」

管理人「ほらほら、飛び出しちゃ危ないよ」

 

と言いながら雪沙ちゃんに抱きついてる管理人!

なんか助けるというより痴漢してるみたいに見えるぞ!

 

僕「何をしてるんですか!」

管理人「あ!いやこれは、飛び出して車にでも・・・」

雪沙「はなしてぇ〜〜〜!!」

 

何とかもがいで逃げ出した雪沙ちゃん!

 

僕「道路まではずいぶんあるでしょう」

管理人「そのまま行きそうだったから・・・雪沙ちゃん大丈夫かい?」

雪沙「い〜〜〜〜〜だ!ふ〜〜〜〜〜〜〜ん!」

 

そう言って道路まで逃げて・・・あ、タクシー止めちゃった!

僕も行かなきゃ・・・管理人は何だか変な顔してる、怒ってるようで目が挙動不審・・・

 

雪沙「おにぃちゃんはやくぅ〜〜」

僕「はいはい・・・すみません、駅の近くの病院まで・・・」

雪沙「や〜〜や〜〜〜やぁ〜〜〜」

 

体中をパタパタと、はたいてる。

 

僕「どうしたの?虫?」

雪沙「ばっちぃ〜、あの手がばっち〜のぉ〜」

僕「管理人に触られちゃったからか」

 

実際は汚れて無くても目に見えない不潔なものがついてるんだろう、

そう考えると実際に犯された雪香のショックは相当なもの・・・治療に時間かかりそう。

 

雪沙「へんなところさわられたぁ〜、おにぃちゃんも、おとしてぇ〜」

僕「はいはい、でも変な所は触れないからね」

 

さっ、さっ、さっ、と拭いてあげる。

雪菜ちゃんがネズミーの帰りに痴漢にあったの思い出すな、

タクシーの運転手さんがいなかったら、ぎゅうって抱きしめてあげたい。

 

僕「・・・はい、もう大丈夫」

雪沙「おにぃちゃ〜ん、あのおじさん、ちかんでつかまえてぇ〜」

僕「無理だよ、跳び出したのを助けたような格好なんだから」

 

・・・というか僕の方が心配だよ、

隆幸にあんな所を見られて・・・雪沙ちゃんをイカせてる現場を。

いつから見てたんだろう?小4でもある程度、理解できるよな?両親もいるんだし。

 

僕「その・・・雪沙ちゃん・・・」

雪沙「なぁ〜にぃ〜〜?」

 

タクシーの運転手さんがいるから、下手なことは言い辛いな、小言で聞こう。

 

僕「今朝、その、隆幸くんが覗いててさ・・・」

雪沙「え〜、どこを〜?」

僕「僕の部屋を、その、僕と雪沙ちゃんのいるとこを・・・」

 

う〜、雪沙ちゃんアニメ声だから、

よく通って運転手さんに丸聞こえになっちゃってそうだ。

 

雪沙「え〜〜〜、たかゆき、いないよぉ〜〜」

僕「でも、いて、ドアの隙間から、じーっと・・・」

雪沙「たかゆき、あげちゃいけないから、あげてないよ〜、だから、みてないよぉ〜」

 

そっか、雪沙ちゃんたちにしたら、そういう立場か。

でも子供の言い訳で済まされるような事態じゃないと思うんだけどな・・・

 

僕「見ちゃったから、誰かに言ったりしたら、また・・・」

雪沙「だからぁ〜、たかゆきはいなかったのぉ〜、いないから、みてないのぉ〜」

僕「・・・雪沙ちゃんはそう言っても、隆幸くんは・・・」

雪沙「ぢゃ〜たかゆきに、かえったらきいてみるぅ〜、なにもみてないっていわせるぅ〜」

僕「い、言わせるんだ・・・そっか、そういう事か、わかった・・・けど・・・」

 

いないはずの子がそこで何も見ても、

そこにはいないはずだから見なかった事にできるっていう訳か、

まあ隆幸くんも上げられた以上、後ろめたくて言えないはず、いやむしろ言わせない、と。

 

僕「・・・今からマンション戻る?」

雪沙「だいじょ〜ぶぅ〜、たかゆきなにもいわないよぉ〜、いえないよぉ〜」

僕「それならいいんだけど、さ・・・」

 

怖いなぁ〜・・・

あんなことしなけりゃ良かった。

でも雪沙ちゃんが疲れきってて、可哀相でなぐさめたくなって、

あとは雪香があんなことになってて混乱してというか気が動転して、

現実逃避というか、帰れてほっと気が抜けた所で魔がさしたというか・・・

 

僕「雪沙ちゃん・・・ごめんね」

 

普段ならあんないたずら、まずやらないのに・・・

これも今までさんざん、夏休みフルに使って犯され続けた結果かも?

それで、あの行動だって雪沙ちゃんが仕込んだというか、そういうふうにさせるよう蓄積したアプローチを・・・

 

雪沙「あれびょ〜いん〜?」

僕「そうだね、ついたみたいだ」

雪沙「おにぃちゃぁ〜ん」

僕「ん?どうしたの?」

雪沙「・・・またやろっねぇ〜♪」

 

あうあうあうあうあう・・・・・

 

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