僕「1個5千円で、計1万円か」

 

思ったよりちゃんとした金額で良かった、

これが2個2千円とかならムカッときたとこだ、

とはいえ貸した金が全部戻ってきた訳じゃないんだよなー・・・

 

雪香「あ、やっぱそーだ!みーっけ!」

 

・・・あいかわらず、いつ犯されてもおかしくないような際どい服だ。

 

雪香「後姿でそっかなーって思ってさ、これって運命の出会いってやつー?」

僕「いや、換金に来るの店の中からチェックしてたんだろ!」

雪香「えー、もっと夢を持とうよー、妹たちそういうの好きなんだけどー」

 

お前の場合は夢より金だろうが・・・

 

雪香「またちょっとピンチなんだけどさ、その預けたの、ちょろっとくんない?」

僕「預けたじゃなくって、僕に返したお金だろ!しかも全額じゃないし!」

雪香「えーそんなこと言ったっけ?雪巳、勘違いしちゃったかもね」

 

勘違いというより、根本的に間違ってるのは雪香だと思うぞ。

 

雪香「ほらさ、パチンコで勝つと気が大きくなるっしょ、だから調子に乗って変な事言っちゃったのかもね〜」

僕「だからって、お前の金を預かった訳じゃないだろう!ATMじゃあるまいし!」

雪香「昨日もさー、ヒロキたちがカラオケ行こうっていうからメシ浮く!って思ったら酷い目にあてさ」

 

さて、帰ろう・・・

 

雪香「ちょ、ちょい、まだ話してるっつーの!」

僕「えっと・・・確か駅前の向こう側に・・・」

雪香「でさ、やらしーことばっかしよーとしてくんのさ、したかったら金払えっつーのホテル代も出して」

僕「・・・友達はもっと選んだ方がいいぞ」

雪香「んで暴れたらなんかしらけちゃってさ、そいで最後、カラオケ代、私持ちだって、もーしんじらんない」

 

信じられないのは雪香、お前の生態だぞ。

 

雪香「金払う時になったらさ、もーみんな逃げちゃって、すっげーむかつかね?」

僕「・・・なんかそんな体験あるぞ、ファミレスとかで・・・」

雪香「だからマジ、ピンチなんだよね、やばいの、ほんと、だから、それ渡したの取り消しでいい?」

僕「だーーーーーーーーめ!!」

雪香「えー、じゃあアタシがこのままエンコー行って変な病気にでもなったらどうしてくれんのさー」

 

駄目だ、根本的に思考がおかしい、つきあってたらこっちまで変になる。

 

僕「真剣に言うけど、パチンコもエンコーも、やめろよ」

雪香「はいはい、今日でやめるから、1万ちょーだい」

僕「・・・・・1年間やめ続けたら貸してあげるよ」

 

バイクに乗って、っと。

 

雪香「ひっどーい!あんた絶対、近いうちに酷い目にあうよ!」

僕「・・・・・残念、もうあったよ」

雪香「じゃー、もっと酷い目にあうから!」

僕「・・・・・最後に一言だけ真剣に言うよ・・・・・・・知るか!!」

雪香「サイテー!!しんじらんなーい、ありえねーーーー!!」

 

ブロロロロ・・・・・・

 

バイクで駅の反対側へ向かう。

もうあまり相手にしない方がいいな、

何か事件に巻き込まれたら、こっちまで火傷しちゃう。

 

僕「昔は面倒見の良い、ちゃんとした姉だったんだろうなー・・・」

 

それがあの家族のせいで、

自分の身を守るために家を出たんだろうか?

考え方によっては1人でもあそこを出て自立すれば家族は助かるだろう、

雪巳ちゃんたち三姉妹も、そう考えて僕ん家に住み込んでるのかもしれない、

でも雪香の場合は稼ぎ方に問題がありすぎるよ、あの家族じゃ倫理観を求めるのは無理か。

 

僕「それに、家にお金とか食事とか還元してる気配ないもんな・・・」

 

あった、小娘寿しチェーンだ!

いかの握りを、6つだっけ・・・本当にそれだけでいいのか?

お茶は家にあるからいいけど・・・そうだ、おまけで蟹の握りも3つ買っておこう。

 

僕「すみません、いか6つとカニ3つをワサビ抜きで・・・」

 

味噌汁は・・・・・いっか。

 

 

 

マンションについた、

管理人が僕の顔を見るなり逃げていった・・・

あの人も、もう何なんだろうか?本当に新しい人を雇った方がいいかも・・・

 

僕「あ!雅幸・・・くん」

雅幸「・・・・・・・・・・・・・・」

僕「こんにちわ、それともまだおはようかな?」

 

睨んでる睨んでる、物凄く睨んでる、

そりゃそうだ、雪菜ちゃんにぶたれたのは僕のせいって事にしたいだろうに。

でも、なぜだろう?雅幸くんのせいで酷い目にあったのに、逆に可哀想な気がしてきた。

 

僕「雅幸くん・・・・・ごめんね」

雅幸「!?」

僕「じゃあね」

 

エレベーターに乗って上へ・・・

雅幸くん、すごく複雑そうな顔してたな、

変な風に受け取って、またこじれたりしなきゃいいけど。

 

僕「・・・19階についた・・・あれ?」

 

雪沙ちゃんも也幸くんもいない?

家に上げちゃったんだろうか?まあいっか、

あのままでずっといたら19階の住人に迷惑だもんな。

 

僕「・・・・・・・ただいま〜」

 

玄関を開けると雪沙ちゃんと也幸くんが、ちょこんと座っていた。

 

雪沙「おかえりぃ〜」

也幸「!!!(コクコクコク!!!)」

ソヨカゼ「ぶにゃあぁ〜〜〜♪」

 

これでもかっていうくらい也幸くんに甘えているソヨカゼ、

よっぽど好きなんだなぁ・・・也幸くんもソヨカゼをスリスリしてあげてる。

 

僕「雪沙ちゃん、はい、買ってきたよ、おまけつき」

雪沙「ありがとぉ〜〜、6つでいいのにぃ〜〜」

ソヨカゼ「ふにゃんっ♪♪」

僕「こら!ソヨカゼは駄目!イカとカニはお腹壊しちゃうから!」

也幸「!!!!!」

 

・・・・・そうだな、ゆうべ也幸くんが大事にしてた飴玉くれて、なぐさめてくれたんだ。

 

僕「也幸くん、上がっていいよ」

也幸「!!!」

雪沙「よかったねぇ〜〜〜」

僕「そのかわり、ちゃんと食卓で食べるんだよ」

雪沙「ぢゃ〜ソヨカゼはおにぃちゃんのおへやにとじこめるねぇ〜」

 

ソヨカゼを隔離したのち台所へ・・・

って僕がついてくる必要性は、あまりないんだけどな。

也幸くんが、ちょこんっ、と座るとその前にイカのお寿司を6個並べる。

 

雪沙「おしょ〜ゆかけるから、まつんだよぉ〜」

也幸「!!(コクコク)」

雪沙「ん〜〜〜・・・い〜〜〜・・・あ〜〜〜〜」

僕「どうしたの、変な声だして」

雪沙「うまくいかなぁ〜い・・・ねぇおにぃちゃん、のりってあるぅ〜〜?」

 

のり・・・接着剤、な訳ないよな。

 

僕「味付け海苔が確か・・・あったあった」

雪沙「あと、はさみぃ〜〜〜」

僕「料理用のが・・・これだ、美鈴ねえさんが前にくれたやつ」

 

渡すと器用に海苔を切りはじめた、

刻むっていうよりも、工作をしている手つきだ。

 

雪沙「まだたべちゃだめぇ〜〜!!」

也幸「!!!(ビクビクビクッ!!!)」

 

あ、そ〜っと手を出してた!雪沙ちゃんの目、鋭いなぁ。

 

雪沙「ん〜〜〜・・・の〜〜〜〜・・・・お〜〜〜〜・・」

僕「わかった!パーツを作ってるんだ!」

雪沙「しずかにしてぇ〜、てぇきっちゃうぅ〜〜」

僕「ご・・・・ごめん」

也幸「・・・・・・・(そわそわ)」

 

しばらくして何とか文字ができたみたいだ、

白いイカの上にそれぞれ海苔で作った「い」「か」「の」「お」「す」「し」を載せる。

 

雪沙「いい〜?なりゆきぃ〜、よ〜〜〜くわかったら、たべるんだよぉ〜〜〜」

也幸「ーーーーー!!!(コクコクコク〜〜〜〜〜!!)」

雪沙「まずはぁ、い〜〜〜〜!い、『い』だよ〜〜〜、い、へんなひとについていかない、の、い〜〜〜」

 

口が「い」の発音になったままよだれをこぼす也幸くん。

 

雪沙「わかったぁ〜?」

也幸「!!!(コクコクコク)」

雪沙「ほんとにわかったぁ〜〜?」

也幸「!!!!!(コクンコクンコクン)」

雪沙「ぢゃ〜、『い』だけたべていいよぉ〜」

 

ひょいぱくっ!

くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ・・・・・ごっくん。

 

雪沙「つぎはぁ〜、まってぇ、つぎからの、おしょうゆかけてないぃ〜」

 

そうか、最初、醤油で文字を書こうとしてたんだな。

でも流れちゃって、にじんじゃって、うまく文字にできなかったと。それで海苔か。

 

雪沙「つぎぃ〜、か〜〜〜!か、『か』だからねぇ〜、あぶないところへいかない、の、か〜〜〜」

也幸「・・・・・!!(キリッ!コクッ!!)」

雪沙「あぶないところへいっちゃだめだよぉ〜、はい、あ〜〜〜ん」

 

ぽいっ

くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ・・・・・・・ごくりっ

 

僕「あ!お茶入れてあげるよ」

雪沙「お水でいいよぉ〜、ありがとぉ〜」

也幸「!!!(コクコクコク)」

 

お茶をあげると急いで飲んでる、むせちゃわないといいけど。

 

雪沙「みっつめぇ、の〜〜〜!の、『の』はぁ〜、しらない車に、のらない、だよぉ〜」

也幸「・・・・・(ごくごくコクコク)」

雪沙「あれあげるとかぁ、あそこつれてってくれるとかぁ、そういうはなしにも、のっちゃだめぇ〜」

也幸「・・・・・(じ〜〜〜)」

僕「あ、僕!?」

雪沙「おにぃちゃんはいいのぉ〜!おにぃちゃんは、なりゆきをつれていっても、いいひとなのぉ〜」

也幸「!!!(コクコクコク、ぱくっ、むしゃもしゃ)」

 

理解しながら食べてるっていう感じだ。

 

雪沙「お〜〜〜!おおごえで、さけぶ、の、『お』だよぉ〜〜」

也幸「・・・・・」

雪沙「あぶないめにあったら、おおごえをだすんだよぉ〜」

也幸「・・・・・(コクッ)」

雪沙「はい、あ〜〜〜〜〜ん」

 

さすがにこれは也幸くん、自信が無いみたいだ、返事も遠慮がち。

 

雪沙「あとにこぉ〜、『す』はねぇ〜、すぐにしらせる、の、すぅ〜〜〜」

也幸「!!!(コクコク)」

雪沙「すぐににげてぇ〜、すぐにしらせるんだよぉ〜〜〜」

也幸「・・・・・(あんぐり)」

雪沙「ぽ〜〜〜〜い」

 

残るは1つだ。

 

雪沙「さいごぉ〜〜〜、しぃ〜〜〜〜・・・し、し、しはねぇ、『し』・・・・・」

也幸「・・・・・(そわそわそわそわ)」

雪沙「ん〜〜〜〜・・・しぃ・・・しぃ〜〜〜〜〜・・・・・」

僕「あれ?雪沙ちゃん、忘れちゃった?」

雪沙「し、し、し、し、し、はぁ〜〜〜、しなない、だよぉ〜〜〜!!!」

 

ぶっっっ!!!

 

也幸「!!!!!!!!!!!(コクコクコクコクコクコクコクコクコクコク!!!!!)」

雪沙「にんげん、しんぢゃだめなんだよぉ〜、ぜったいしんぢゃだめぇ〜〜〜」

也幸「!!!(シャキーン!!)」

雪沙「しなないなら、たべていいよぉ〜」

也幸「〜♪(ぱくっ、くっちゃくっちゃくっちゃ)」

 

ちょっと強引なまとめだけど、まあいっか。

 

雪沙「ぢゃぁ〜、いっただっきまぁ〜〜〜っす」

 

ん?何を食べたの?・・・あ!カニ握りか!

 

僕「そのおまけ・・・」

雪沙「ぢゅぎょ〜りょ〜だよぉ〜」

僕「・・・也幸くん、いいの?」

也幸「・・・・・(くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ・・・)」

僕「目を瞑って味わってる・・・復習してるのかな」

 

・・・雪絵ちゃん雪音ちゃんにも教えてる所を見てみたいかも?

 

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