雪巳「いただきまーーーす」

雪菜「いただき、ます」

雪沙「いただきまぁ〜〜〜す♪」

僕「・・・・・・・・いただきます」

 

賑やかな朝食、

でも僕はまだ気分が重い・・・

夕べなぐさめてもらったけど、それでもまだダメージを引きずってる感じだ。

 

雪巳「お兄ちゃーん、あのねー、2学期になったらねー、学校で夏休みの写真見せあうんだけどー・・・」

雪菜「今日の、ご飯、美味しい、です、か・・・今夜は、何が、食べたい、です、か」

雪沙「なつやすみおわってもねぇ〜、くがつのれんきゅうまで、ゆうえんちでしょ〜やってるんだってぇ〜」

 

一生懸命に話しかけて、僕を元気付けてくれようとしている・・・

食事そっちのけで、気を引こうと夢中なんだけど、それが却って痛々しいかも・・・

だからこそ元気に返事してあげるべきなんだけど、僕はこの先の事を考えて、あえて沈黙したままにしてみた。

 

雪巳「ネズミーのときの写真もっていきたいんだけどー、お兄ちゃん写っててもいいよねー?」

雪菜「最近、ご飯作るのうまくなったって、下で、お父さんに、褒められた、です、お兄ちゃんの、おかげ、ですっ」

雪沙「そのゆ〜えんちのぷ〜るだってぇ〜、お休みの日はさむくなるまでやってるんだってぇ〜」

 

・・・・・なんか、喋らないだけで酷いことしてるみたいな気がしてきた、

そりゃそうか、無視してるんだもんな・・・でも三姉妹のこういった事も、疎ましく感じちゃってる・・・

 

雪巳「この人だれーっていわれたらー、カレシーって言いたいけど我慢するから安心してねー」

雪菜「お兄ちゃんの、好きなのとか、ちゃんとメモしてる、です、栄養のバランスも、考えてる、です」

雪沙「せっかくかってもらったみずぎぃ〜、もうちょっときたいのぉ〜、しつないぷ〜るは冬でもやってるよぉ〜」

 

よし、ここは真っ当な事を言って、やりすごそう!

 

僕「・・・食事中にうるさく喋るのはマナーになってないし、汚いから静かに食べて」

 

・・・・・シーンと静まり返る食卓。

いけない事でも言っちゃったみたいに凍り付いてる、

普通の、しつけみたいな事で、おかしな話じゃないんだけど・・・

 

雪巳「・・・・・」

雪菜「・・・・・」

雪沙「・・・・・」

 

あー、変な罪悪感が込み上げてきた・・・

そういえば、これの逆な事が以前にあったよな?

熱射病の隆幸くんを黙って連れ込んだ時だっけ・・・あの時も空気が重かった。

 

僕「・・・・・・・・・ごめん」

雪巳「どうしてあやまるのー?」

雪菜「おとなしく、たべる・・・です」

雪沙「ソヨカゼはもうたべおわっちゃったぁ〜」

ソヨカゼ「ぶにゃっ」

 

だめだ、大人にならなきゃな・・・・・

 

 

 

 

朝食を終えて部屋に戻った、

机の上には大量の書類、養子に貰う資料だ、

どうしよう・・・本当にこれ、どうしよう・・・ん?

 

僕「これ何だっけ・・・・・???」

 

☆なんだっけ?☆

 

ネズミーのお土産か何か?

それとも、美鈴ねえさんの忘れ物?

雪巳ちゃんとかの文房具でもなさそうだし・・ん・・・開かない・・・

 

僕「う〜〜〜〜ん・・・・・ま、いっか」

 

すぐに必要なものでもないだろう、

多分、ゲーセンのどうでもいい景品か何か・・・

景品・・・ん?景品、景品っていうと・・・確か・・・ええっと・・・・・

 

僕「そうだ!パチンコの景品だ!!」

 

思い出した・・・換金してこなくっちゃ、

確かこういうのは偽造防止とか同じもの見つけて持ってこられないように、

一定の期間が切れると別の景品に変わって、もう買い取ってもらえなくなるんじゃなかったっけ?

 

僕「でも、どこのパチンコ屋だ?まあ駅前だろう、探せば見つかるはずだ」

 

もう10時は過ぎてるな、よし、行ってこよう。

 

僕「ついでに漫画雑誌でも買うかな・・・」

 

廊下に出ると雪巳ちゃんが掃除してた。

 

雪巳「どこいくのー?」

僕「・・・・・買い物」

雪巳「スーパーなら一緒に行くよー?」

僕「漫画とかだから」

雪巳「そっかー、わかったー」

 

うーん、そっけなくないよ・・・な?

 

雪巳「いってらっしゃーい」

 

玄関から出て、階段を降り19階エレベーターの前につくと・・・

 

雪沙「え〜ひど〜〜い」

也幸「・・・・・(コクコク・・・グスン)」

雪沙「あ〜おにぃちゃ〜ん、なりゆき、あさごはんもらえなかったんだってぇ〜」

 

またか・・・可哀想に、こっちで贔屓にされてるからなんだろうな、

どうせ、上の家で食わせてもらえとか言われたんだろう・・・でも、なぁ・・・

 

雪沙「ごはんたべさせてあげたい〜」

也幸「・・・・・(シクシクシクシク)」

僕「でも、う〜〜〜〜ん・・・・・ご飯だよね・・・」

 

もうあまりウチに上げたくないな・・・

とはいえ、ゆうべ僕とかみんな警察に行ってたとき、

留守番してくれてたみたいだから・・・・・そうだ!!

 

僕「すぐ帰ってくるから、ご飯買ってきたあげるよ」

也幸「!!!」

雪沙「え〜、おうちのごはんでいいよ〜、もったいない〜」

僕「僕ん家のご飯だってもったいないよ・・・何がいい?」

也幸「ーー!ー!−−−!!!」

 

何となく、なんでもいいって言ってるような気がする。

 

雪沙「あ〜、そっだぁ〜〜〜!あれかってきてぇ〜、いかのおすしぃ〜」

僕「いかの・・・あ、北海道フェアの、いかめし?」

雪沙「ちがうよぉ〜、にぎってあるおすしぃ〜、いかだけぇ〜、ろっこぉ〜」

 

6個・・・握り6個だけでいいのか?

 

僕「それくらいなら、まあ・・・」

雪沙「ぢゃ〜ここでまってるねぇ〜」

也幸「!!!!!(コクコク、手ぶんぶん)」

 

2人して座り込んじゃった、

こんな所で迷惑な・・・でも家には上げたくないなら、しょうがない。

エレベーターに乗って1階へ降りると、今度は雪菜ちゃんが上へと乗り込む所だ。

 

雪菜「あ・・・」

僕「・・・・・ちょっと買い物・・・」

雪菜「・・・・・ごめんなさい・・・です」

 

手には食器用の洗剤が・・・

 

雪菜「こっちの家のご飯つくって・・・食器洗わないといけなくって・・・」

僕「ウチのを持ってったんだ」

雪菜「ちょっとだけ・・・使わせてもらった・・・・・です」

 

それくらい、まあしょうがないか。

でも雪菜ちゃんは万引きでもしたかのように怯えてる。

 

僕「大丈夫、怒ってないよ」

雪菜「でも・・・・・」

僕「じゃあ行ってくるね」

 

マンションを裏から出て駐輪場へ・・・

普通を装おうとして、なぜか早足になっちゃった。

何かもうちょっと言ってあげるべきだったか、これで良かったのか・・・

 

僕「さあ、バイクで駅前だ」

 

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