僕「お、お前はっ!?」

ソヨカゼ「にゃぁ〜〜〜」

 

ソヨカゼがテーブルの上で、

さっき食べた夕飯の残りを舐めてる!

 

僕「こら!まったく・・・」

ソヨカゼ「ふにゃっ」

僕「どうやって入ったんだ!?」

 

テレビで『ジャンプしてドアを開ける猫』って見た事あるけど・・・

まあ本当は、僕がちゃんと閉めたつもりでも、閉まりきってなかったんだろうな。

 

パチッ

 

僕「あれ?」

 

電気が暗くなって夜光灯だけに・・・

よく見るとテーブルにある電灯のリモコンにソヨカゼの足が!

 

僕「こら、消すな!」

 

パチッ

 

さらに消えて真っ暗になった。

 

ソヨカゼ「にゃっ・・・」

僕「うわっ!!」

 

目が、ソヨカゼの目が、キュピーンって光ってる!!

 

僕「もういいや・・・寝るからな」

ソヨカゼ「にゃぁ〜〜〜〜〜」

 

ベットへ手探りで向かう僕についてくるソヨカゼ、

電気をつければいいんだろうけど、付けたり消したりしたら、

中で何してるんだろうって三姉妹の誰かが来たら嫌だもんな・・・

あったベットだ、潜り込んで・・・お風呂は明日の早朝でいいかな、早く起きられるといいけど・・・

 

ソヨカゼ「にゃんっ」

 

のそのそとベットを横断するソヨカゼ、

しばらく寝場所を探したのち、僕の胸の上に落ち着いた・・・

箱座りしたまま、目を光らして僕を見下ろしてる、なんだその落ち着きっぷりは!

 

僕「也幸くんがいないから、寂しいのか?」

ソヨカゼ「・・・・・(フンッ!)」

僕「あーあ、鼻息ついて目を閉じちゃった・・・まあいいや、おやすみ」

 

ひょっとしたらソヨカゼも気を使ってくれてるのかもな、

こうやって少しでも僕の気が休まるようにって・・・猫にそんな賢さはないか、

でも、いてくれるだけでありがたいよ、今の僕のそばに居て怒られないのはコイツくらいだ。

 

僕「ありがとう・・・」

ソヨカゼ「・・・・・ZZZzzz・・・」

僕「寝ちゃったか」

 

・・・・・也幸くんは、どうしてるんだろう。

 

・・・

・・・・・

・・・・・・・・zzz・・・・・

 

 

 

「・・・か・・・わ・・・か・・・」

 

ん・・・んん・・・?

 

「若!・・・若!ちょっと聞いておくんなせえ!」

 

なんだ?おっさんというか、侍みたいな声がするけど・・・

 

僕「誰・・・あ、お前は!」

 

2足歩行で立ってるソヨカゼ!

 

ソヨカゼ「若!いつもお世話になっておりやす」

 

しかも喋ってるし!!

 

ソヨカゼ「あっしにソヨカゼたぁ良い名前をつけていただいて、本当にありがたく思っておりやす」

僕「いや・・・お礼を言うなら也幸くんにだよ」

ソヨカゼ「実はその、也幸ぼっちゃんについて若にお願いがありやして・・・」

 

あ、若って僕の事か、まず呼ばれない言い方だから、わからなかったよ。

 

ソヨカゼ「也幸の坊については、こっちであっしが世話になる前からずいぶん見ておりやして」

僕「うん、公園の猫たちの主みたいになってたからね」

ソヨカゼ「・・・あの子は言葉にこそ出す事はないが、下の家ではそれはもう野良の私以上に虐げられておりまして」

 

曲がったしっぽをふりふりさせながら話してる。

 

ソヨカゼ「・・・その幼さにはあまりに過酷な境遇に立たされているのです」

僕「そうだね、大体はわかってる」

ソヨカゼ「もしあっしを怪我が治るまでの間ここに置いて下さるという心づもりなら、どうか代わりにあの子を置いて下さる事にはなりませぬか?」

僕「でもソヨカゼだってもう野良には・・・」

ソヨカゼ「なに、あっしの事ならもう大丈夫!これしきの傷、かすり傷にも及びません」

 

包帯ごしに舌で舐めてる。

 

ソヨカゼ「元々あっしは、明日をも知れぬ根無し草の身・・・同じ空の元、遠くから也幸の坊を見守っておりやす」

僕「そうは言ってもハリガネを抜くまでは家にいてもらわないと・・・」

ソヨカゼ「とんでもねえ!あっしは1度、命を拾われた身・・・これ以上、若に身銭を切らせる訳には参りませぬ」

 

そう言われてもなぁ・・・

じゃあ也幸くんとソヨカゼは一心同体だから両方面倒見るよ、

なんて事は軽々しく約束できない・・・どうするべきかなぁ・・・う〜ん・・・

 

僕「ソヨカゼがそれだけ也幸くんの事を心配してるのは、よくわかったよ」

ソヨカゼ「では何卒、よしな、よしなに・・・あっしはどうなっても構いませんので!」

僕「也幸くんについてはちゃんと考えておくから、ソヨカゼも出て行くなんて言わないでよ」

 

包帯の腕を目に当てて泣いているソヨカゼ。

 

ソヨカゼ「若・・・なんという、ありがたいお言葉・・・うぅ・・・うぅぅ・・・」

僕「ほらほら、鼻水が出ちゃうよ」

ソヨカゼ「也幸の坊や若には、娘や孫を助けていただいたご恩も・・・」

 

えっ!?・・・じゃあ、あの台風の時に也幸くんが運んできた、

猫猫園に持って行った、あの母猫と子猫たちは、ソヨカゼの娘と孫・・・!?

 

ソヨカゼ「このご恩は、一生かけてっ!」

僕「そこまで大げさに言わなくても・・・もう家族みたいなものなんだし」

ソヨカゼ「それでは・・もう・・・時がきてしま・・ったよう・・であり・・ま・・・・・坊を・・おたの・・・み・・・・・」

 

・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「・・・・・にゃぁ〜・・・」

 

んん・・・なんだ・・・?

 

ソヨカゼ「ぶにゃぁ〜〜・・・」

僕「ソヨカゼ・・・まだ朝じゃないぞ・・・」

ソヨカゼ「にゃっ・・・」

 

とすんっ、とベッドから降りた、

さっきのは・・・夢か、ソヨカゼが普通に喋ってたもんな。

でも僕の胸の上に乗っかって見た夢だから、案外、ソヨカゼが僕に見せた夢なのかも。

 

ソヨカゼ「ふにゃぁぁ〜〜〜」

僕「あ・・・部屋から出たいのか?トイレか水か・・・」

ソヨカゼ「にゃっ」

 

廊下へ出してあげよう・・・

ふう、ちょっとしか寝てないのに寝汗が・・・

お風呂入ってないからかな?よっと・・・ソヨカゼを出したぞ。

 

僕「ソヨカゼおやすみ」

ソヨカゼ「にゃ・・・」

 

まあ、おかげで気は紛れたよ、ありがとう。

 

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