アトラクションから出てしばらく歩くと風力発電所エリアについた。

 

雪菜「あのお店・・・透明です・・・」

僕「ガラス張りのレストランだね、ステーキとかエビフライとか美味しそう」

雪菜「遅いお昼は・・・あそこにします・・・か」

僕「うん・・・あ、キャラクターがテーブルを回ってる」

雪菜「也幸、お口にエビフライ入れたまま逃げそう・・・・・です」

 

はは、慌てふためく也幸君が目に浮かぶよ。

 

雪菜「あの・・・」

僕「ん?どうしたの?」

雪菜「・・・・お願い・・・ふたりっきりの写真が・・・欲しい・・・です」

僕「う、うーーーん・・・いいよ、わかった、あそこで撮ろう」

雪菜「うれしい・・・・・です」

 

エリアの一番奥、

人通りの少ない岬の灯台が目に入った。

 

僕「あれをバックに撮ろう」

雪菜「いいです・・けど・・・誰が撮る・・・ですか」

僕「そっか・・・あれ?灯台から人が出てきた」

 

従業員さんみたいだ、

慌てて近くへ行ってお願いしてみると、

カメラを見ただけで全部わかってくれたみたいだ。

 

僕「さあ、雪菜ちゃんこっちこっち」

雪菜「はい・・・ここに立つ・・・ですか」

僕「うん、まあ灯台が全部入らなくてもいいか・・・お願いしまーす!」

雪菜「待って!・・・これ、つける・・・です」

僕「それは・・・先月来た時のお土産、ティアラのカチューシャ!」

 

2人並んではい、ポーズ・・・念のためもう1枚・・・

いい感じで撮れたかな?雪菜ちゃん、照れながらもしっかり僕にくっついていた。

お姫様の冠まで持って来て・・・あ、もう仕舞っちゃった。

 

僕「ありがとうございました」

雪菜「それで・・・この灯台・・・入れる・・・ですか」

僕「どうだろう?ちょっと覗いてみよう」

 

ドアは立ち入り禁止ってなってる、

窓から覗くと・・・あーーーーー、従業員控え室だ!

そりゃあ都合よく従業員さんが出てくるはずだよ、納得した。

 

僕「しょうがない、なにか乗ろう」

雪菜「あれがいい・・・です」

僕「くるりんウォータービーグルだね、あれなら待ち時間も短そうだ」

 

乗り場へ並びにいくと、前回よりちょっと変わっている。

 

僕「案内板が新しくできてる、これは・・・」

雪菜「左が、ゆったりコース、右が、ずぶぬれコース、です」

僕「へ〜、ちょっと覗いてみよう」

 

待機列を離れてビーグルを見に行く、

まずは左側、動きが前よりゆっくりになってる気がする。

急いで戻って今度は右側・・・ひどっ!水しぶきがビーグルに、ぶっかかってる!

 

僕「あれは確実に、びしょ濡れだね」

雪菜「でも・・・乗ってる人、喜んでる・・・です」

僕「凄いね・・・さあ、並ぼう」

 

当然、ゆったりコースへ・・・

と思ったら雪菜ちゃん、僕の袖を引っ張って、ずぶぬれコースへ!?

 

僕「いいの?間違ってない?ずぶ濡れになるよ?」

雪菜「でも・・・こっちのが楽しそう・・・です・・・」

僕「うーーーーーん・・・まあ、雪菜ちゃんがそう言うなら・・・」

 

まあ、ずぶ濡れになってもタオルがあるし、

それに濡れて服が透けても、その雪菜ちゃんの陥没乳首ならポッチが浮き上がったりしないだろう、

ひょっとして雪菜ちゃんって・・・マゾなのか!?う、変なことを想像しちゃう、水攻めとか・・・

 

雪菜「列が進んでるです・・・」

僕「あ、ごめんごめん、詰めよう」

雪菜「・・・お兄ちゃんと2人っきり・・・嬉しい・・・です」

 

あらためて言われると、恥ずかしいな

 

雪菜「また・・・ふたりっきりでどこか・・・行けます・・・か」

僕「うん・・・そうだ、明日だけどさ、雪巳ちゃん雪沙ちゃんをお詫びも込めてどこか連れて行こうと思ってるんだ」

雪菜「今度は私が・・・お留守番・・・ですか」

僕「ううん、雪菜ちゃんもだよ、ただ今日疲れると思うからあんまり遠くは無理だけど・・・」

雪菜「・・・帰ったら・・・雪巳お姉ちゃんと・・・相談する・・・です」

 

・・・まとめて連れて行けば楽だけど、

ここはやっぱり午前・昼・夜と分けて別々で会いたいな、

2人っきりでちゃんと、今後の事とかをあらためて、話してみたい。

 

僕「じゃあさ、1日を3つに分けて、それぞれ別でデートしようよ」

雪菜「・・・分けないで・・・1日1人じゃ・・駄目・・・なの・・?」

僕「それも考えたけどさ、その・・・残り時間があまり無いし、それにその、1日丸ごとだと・・・待ってられないでしょ」

雪菜「・・・お兄ちゃんがそうしたいなら・・・そうする・・・です」

也幸「・・・(コクコクコク)」

僕「良かった・・・じゃあそれで雪巳ちゃん雪沙ちゃんとも話して・・・って、也幸くん!?」

也幸「〜〜♪」

 

い、いつのまに!?

しかも探検隊みたいな帽子をかぶって!

雪絵ちゃん雪音ちゃんや、ガイドのお姉さんは近くに・・・いないよな?

 

〜〜〜♪♪♪

 

携帯電話が鳴った!

 

僕「もしもし!?」

お姉さん「申し訳ありません!ガイドの者ですが、也幸ちゃんがですね・・・」

僕「いま、ここにいますけど」

お姉さん「ええええええ!?ど、どちらですか!?」

僕「くるりんウォータービーグル、の前です」

 

也幸くんが、どうしたの?って感じで目をパチクリして僕を見上げてる。

 

お姉さん「そんな遠い所に・・・いま、係りの者が迎えに行きますから!」

僕「はい、遠いってどこにいたんですか?」

お姉さん「ネズミーシーのお城で隠し部屋を探していただいてたのですが、その隙に・・・」

僕「すみません、よく言っておきます」

お姉さん「こちらこそ本当に申し訳ございませんっ!!」

 

ガイドマップを見ると・・・確かお城は・・・あった、

エリアは隣の隣だけど、火山の向こうだぞ!?どうやって来たんだろう?

見張りの従業員もいっぱいいただろうし、その目をかいくぐって、しかも僕らの所へ・・・!!

 

僕「こら也幸くん!勝手に来ちゃ駄目!」

也幸「ーーー!!」

雪菜「何それ・・・宝の地図・・・?」

僕「どれどれ・・・本当だ、×がしてあるのは・・・灯台の裏!?」

也幸「ー!ー!ーー!!」

 

あーわかった、これはきっと、

隠し部屋で宝の地図を見つけて1人で黙って先に来ちゃったんだな、

ガイドさんのツアーに参加する事より、宝を探す方を優先して、抜け駆けしちゃったのか。

 

お兄さん「すみませーん!」

 

慌てて係員のお兄さんがやってきた、

キッズツアー用の帽子と宝の地図を持ってるから一目で也幸くんとわかったんだろう、

逆に言うとこれだけ目立つ格好なのに、よく脱出できたもんだな、野良猫なみの素早しっこさだ。

 

雪菜「也幸が・・ごめんなさい・・・です」

お兄さん「申し訳ありません!也幸くん、みんなが待ってるよ」

僕「行っておいで、もう逃げちゃ駄目だよ」

也幸「・・・(コクコク)」

雪菜「もう・・・みんなと一緒に探すの・・・ね?」

 

連れ戻された也幸くん、

どこをどうやってお城から脱出したのか謎のままだ・・・

ネズミーシーの監視カメラで後から検証するなら、その場に立ち会いたいよ。 

 

 

 

僕「うわー、濡れた濡れた」

雪菜「私も・・・びしょびしょです・・・♪」

 

ビーグルのずぶ濡れコースが終わって出てきた、

お互い濡れてるのになぜか楽しそうだ、

それはいいけど、雪菜ちゃん、その、水で濡れてるのが・・・やばい。

陥没乳首だからポッチが透けないだろうと思ってたら、その陥没乳首そのものが透けてみえてる!

 

僕「あのクルクルとレーダーが回ってるお土産売り場でシャツを買おう!」

雪菜「無理しなくても・・・自然に乾く・・・です」

僕「そうも言ってられないよ、海水なんだし、ね?」

 

急いで適当に買ったシャツを渡してお互いトイレへ・・・

ふう、あんなに濡れて喜んでる雪菜ちゃんって、やっぱりマゾか!?

いや、僕が濡れて喜んでるところを見るとサドかも・・・SとかMとか言っててもしょうがない、出よう。

 

僕「・・・・・あ、雪菜ちゃん、丁度一緒に出たね」

雪菜「・・・私・・・Sで良かった・・・です」

僕「ええ!?」

雪菜「お兄ちゃんは・・・M・・ですか・・?」

僕「な、ななな、何のこと?」

雪菜「・・・このシャツの・・・サイズ・・・です」

僕「あ!ええっと・・・僕のはフリーサイズってやつだよ」

 

心臓を無駄にバクバクさせてしまった。

 

僕「さて、これからどこ行こうか、新しいのは也幸くんたちと乗りたいよね」

雪菜「・・・一緒に歩いてるだけで・・・も・・・楽しい・・・です」

僕「そっか・・・そうだ、じゃあ前に来たとき乗ったので、1番気に入ったのってなんだったの?」

雪菜「気に入ったの・・です・・・か」

僕「うん・・・あ、ウォータービーグルはいま乗ったからそれ以外でね」

 

ガイドマップを見ながら考え込む雪菜ちゃん。

 

雪菜「決まった・・・です」

僕「じゃあそれを乗りに行こう、どこかな?」

雪菜「人魚島の中・・・です」

 

人魚島か・・・あれ?新しいアトラクションができてる、

といっても人魚と一緒に写真を撮るってだけだ、しかも島の裏にある滝・・・

これは後で雪絵ちゃんたちとだな、それじゃなくって中となると・・・とにかく行こう。

 

雪菜「お兄ちゃんと・・お揃いのシャツで嬉しい・・・です」

僕「そうだね、はは」

雪菜「お兄・・・ちゃん♪」

 

寄り添って、べたべたくっついてる。

機嫌良さそうだな、まあここは、大人の振る舞いとして、好きにさせておくか・・・ちょっと恥ずかしいけど。

 

 

 

 

人魚島エリアの室内へ入る、

こっちは冷房がきいてて涼しいから気持ちいい、

濡れたばかりだから夏風邪ひかないといいけど・・・

 

僕「わかった!、また人魚の劇を見に来たんだね」

雪菜「違う・・・です、あれにまた乗りたい・・・です」

僕「あれって・・・くらげアップダウン!?」

 

先月乗った、あの「ただ単に上下するだけ」という、

恐ろしく単純で何のスリルもない、数合わせに作ったようなアトラクションだ。、

そう、下手するとシーで一番つまらない・・・いや言い方を変えよう、一番「クラシカルな」乗り物だぞ!?

 

僕「ええっと、シーの中で一番乗りたいやつ、だよ?」

雪菜「これが・・・です」

僕「・・・まあ、雪菜ちゃんがそう言うなら、乗ろう」

 

相変わらず夏休みのこの時期でも待ち時間0分だ、

適当なくらげさんを選んで2人並んで乗り込んで・・・

賑やかな音楽とともに、すい〜〜〜っと上へ・・・下へ・・・上へ・・・

 

雪菜「お兄ちゃん・・・」

 

もたれかかり僕の胸元に甘えて、

眼鏡越しに見上げ、僕を見つめてる・・・

誰にも邪魔されない2人きりの空間、それを演出するのがこの乗り物なのだろう。

 

僕「け、景色は見なくていいの?室内だけれど」

雪菜「お兄ちゃんだけ・・・見ていたい・・・です」

僕「そ、そっか・・・雪菜ちゃんがそれでいいなら・・・」

 

恥ずかしいような照れくさいような間が持たないような時間が過ぎ、

ようやく着陸してドアが開いた・・・雪菜ちゃんを胸から外すと凄く名残惜しそうだ。

 

僕「さあ終わったよ」

雪菜「もう1回・・・乗りたい・・・です」

僕「い、いや、連続はちょっと酔うかな・・・あ、あそこ!」

 

人魚島アスレチックエリアっていう子供の遊び場へ、

キッズツアーの冒険隊御一行が入っていく!雪絵ちゃん雪音ちゃん也幸くんもいる!

也幸くんは先頭のガイドお姉さんにしっかり手を繋がれて・・・あれなら逃げようがないな。

 

僕「面白そうだからついてってみようか」

雪菜「はい・・・です」

僕「邪魔にならないように、そーっと、そーっと・・・」

 

探偵かなんかみたいに尾行していくと、

小さな吊り橋の前まできた、かなり揺れそうだけど安全面はばっちりって感じだ。

 

お姉さん「さあ、宝はもうすぐですが、最後にこの『勇者の吊り橋』を渡らないと行く事はできません!」

 

はは、大げさだな、でも小3までの子供には、こんな橋でも立派な冒険だ。

 

お姉さん「さあ、勇気を振り絞って、ついてきてくださいねー」

 

也幸くん渡れるかな?と思ったら、

お姉さんの背中にしがみついちゃった、

楽でいいけど勇者じゃないぞそれは・・・雪絵ちゃん雪音ちゃんや他の子供も渡りきった。

 

雪絵「かんたん〜」

雪音「こわくない〜」

 

はは、子供は正直だ。

 

也幸「・・・(コクコク)」

 

って也幸くんは同意する資格ないぞ!?

 

雪菜「私たちも・・・」

僕「うん、そうだね」

 

う、グラッとくる感じがちょっと怖いかも・・・

いやこれはだな、大人だと体重があって揺れが大きくなるから・・・

 

グラグラッ!!

 

雪菜「っ・・・お兄ちゃん!」

僕「わ!急にしがみつかないで!」

 

ちょっとあせっちゃった、情けないな僕って。

 

お姉さん「はーーーい、この洞窟の奥ですねー、あ!あれは宝箱!!」

 

檻の中にでかでかと宝箱がある、

でも檻に大きな錠前がかかってて入れない。

 

お姉さん「ではここで、さっき也幸くんが手に入れた大きな鍵を・・・也幸く〜ん?」

也幸「・・・・・(ゴソゴソ)・・・!!(パッ!)」

 

わ!ズボンの、いや、パンツの中から出したぞ!どこにしまってたんだ也幸くんは!

 

お姉さん「そ、それではその鍵を・・・差し込んでね〜」

 

あれって絶対、本当はお姉さんが鍵を貰って差し込む係りだったんだろうな、

でも也幸くんが自分でやらされてる・・・背伸びしてうんしょ、と何とか鍵を入れた!

 

ガシャン!ギギギギギ・・・

 

わざとらしい効果音とともに檻の扉が開き、

そしてなぜか宝箱までもが少し口を開いた。

 

お姉さん「わーーー、とうとう宝を手に入れる時がきました!

 中身は何かなー?宝石?それとも金塊?それともお金がいっぱい?

 まーどうしましょ!ではみんなで一緒に宝を開けましょう!せーの・・・」

 

みんなで手をたずさえて開けた宝箱の中身は・・・!?

 

お姉さん「あれれれれ〜?手紙が入ってますね〜どれどれ・・・

 お宝はいただいた、この金銀財宝で東京ネズミーシーを建設します

 遅れて来た人は残念でした、また別の宝を探してね、怪盗ネズミー」

 

ぶっ!

いけない、隠れてるのにちょっとふいちゃった。

 

お姉さん「ざんね〜ん、宝は先に取られちゃったようですね〜

 でもがっかりしないでください!宝物はちゃんと手に入れています!

 それは、今日ツアーに参加してくれたみ〜んなが協力して、励ましあって頑張って、

 そうしてここまで来ることができた、やりとげた力、さらに、今日ここで知り合って

 仲良しになったお友達、そういう目に見えないけど大切な宝を手に入れたのです!

 おめでとう!おめでとう!おめでと〜〜〜はい拍手拍手〜ぱちぱちぱちぱちぱち〜〜〜」

 

ええええええええええええええええ

なんじゃそりゃあああああああああああああああああ!?

そんな子供騙しで納得するのか!?・・・あ、相手は子供だ。

 

雪菜「・・・教育テレビみたい・・・です」

僕「うん、道徳の授業みたいだね、これでいいのかなあ」

雪菜「これ・・・いくら・・・?」

僕「う〜ん・・・いや、お金じゃ買えない体験をしたんだよ、きっと」

雪菜「・・・・・・・・・・」

 

まあ小6じゃ納得しないよな。

 

雪絵「ここゴールぅ〜?」

雪音「おもしろかったねぇ〜」

也幸「・・・・・(ふぁぁあ〜〜〜)」

 

あーあ、也幸くんなんてポカーンとするかと思ったらアクビしてる。

 

お姉さん「ではここで、やり遂げたみんなにネズミーシーから『冒険者のメダル』をさしあげます!

 それといまみんながかぶってる帽子、これも記念のお土産にかぶって帰っていいですよ〜」

 

ほっ、ちゃんと手土産は貰えるらしい、

メダルを1人1人かけてもらって・・・也幸くんカジってる!

雪絵ちゃん雪音ちゃんはメダルより帽子が貰えた事に喜んでる感じだな。

 

お姉さん「では最後にこれからお外へ出て世界の踊りを見るショーへ行きまショー!」

也幸「・・・・(ふっ)」

 

何だ今のため息は!

っていけない、こっちくる!

僕と雪菜ちゃんは慌てて海草迷路へ入り込む。

 

雪菜「・・・あ」

僕「どうしたの?」

雪菜「ショーへ行きまショー、って、ひょっとして・・・」

僕「それ以上先は言わないで、言っちゃ駄目!」

雪菜「・・・・・はい・・・・・です」

 

さて、僕らもそのショーを観に行こうかな。

 

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