買い物が終わるともうすぐ12時半だ。
僕「キッズツアーの集合場所へ行かないと・・おっとっと」
雪菜「お兄ちゃん重そう・・・2つ持つです・・・」
僕「ありがとう・・・ついでにコインロッカーへ行こう」
也幸「!!!」
僕「え?持ちたいの?ありがとう、でも也幸くんたちはこれから行く所があるんだよ」
荷物を1度置いて、と・・・
キッズツアーの冒険案内とネームシールを3人に渡す。
雪絵「これなぁにぃ〜?」
僕「これから雪絵ちゃん雪音ちゃん也幸くんで2時間ちょっとの冒険に行くんだよ」
雪音「あ〜〜、これシールだぁ〜〜」
僕「そう、目立つ所、わかりやすい所に貼るんだよ」
也幸「・・・・・」
雪絵ちゃんは雪音ちゃんに、
雪音ちゃんは雪絵ちゃんにシールを胸のあたりに貼ってあげてる、
学校の名札の位置だな・・・そして也幸くんは・・・って、おでこ!?
僕「わかりやすいけど、そこは駄目!しかも名前が上下逆さにくっついてるし!」
雪菜「汗ではがれるよ・・・お札じゃないんだから・・・」
僕「雪絵ちゃん雪音ちゃんと同じように胸の所がいいかな」
也幸「・・・・・」
僕「はいできた、はがしちゃ駄目だよ?」
大丈夫かなあ本当に・・・
雪菜「私もついていったほうが・・いい・・・ですか」
僕「ううん、僕と雪菜ちゃんはツアー終わるまで別行動」
雪菜「嬉しい・・・です」
巨大地球儀の前にくると旗を持った探検隊風のお姉さんが待っていた。
お姉さん「キッズツアーご参加の方ですかー?」
僕「はい、よろしくお願いします」
雪菜「ツアーのお姉さんのいうこと・・・きいてね・・・」
雪絵「うん〜」雪音「きくぅ〜」也幸「・・・・・」
僕「こらこら僕の後ろに隠れない!」
そうだ、お姉さんにちゃんと言っておかなくっちゃ。
僕「すいません、この子、也幸っていうんですけど・・・」
お姉さん「まー也幸ちゃんこんにちわー(にこにこ)」
也幸「・・・・・」
お姉さん「怖くないよー、お姉さんとねー、これから冒険、探検にいくんだよー」
僕「それでこの子、その、なんていうか・・・きぐるみっていうか、大きいそういうのが怖いらしくって・・・」
スタッフさんに着ぐるみっていっちゃったよ、ぶっちゃけすぎたかな?
お姉さん「あららー、怖くないのにねー」
也幸「・・・・・(さっ)」
僕「こら!また隠れ・・・と思ったら逆から覗いてるし」
お姉さん「わかりましたー、もし走り出しても、パーク内には必ずスタッフがいて見回っていますからー」
僕「なら安心ですね・・・也幸くん、ちゃんとお姉さんに挨拶しなさい!お世話になるんだから」
まあ、こういうガイドさんはプロ中のプロ、
日本トップクラスの「お姉さん」なんだから任せて大丈夫だろう。
僕「じゃあ2時半過ぎにここへ迎えにきますね」
お姉さん「はい!緊急の場合は携帯電話へ連絡させていただきますので!」
雪菜「お行儀よくしないと・・・だめだから・・・ね」
3人を置いて離れる・・・
也幸くんは素早く巨大地球儀の後ろへ隠れた!
と思ったらお姉さんが何か持って誘い出してる、アメかな?
それにそーっと、そーっと近づいて・・・うん、大丈夫そうだ。
さて、このいっぱいの荷物をコインロッカーへ預けないとな。
僕「コインロッカーは・・・あったあった、こっちだ」
雪菜「でも・・・どれも使用中ってなってる・・・です」
僕「さすが夏休みだよね、でも1個くらいは・・・・・ないか」
しょうがない、宅配便を使おう。
僕「えっとガイドによると宅配便受付は・・・すぐそこだ」
雪菜「並ぶみたい・・・です」
僕「本当だね、でも20人くらいだからちょっと待てばすぐだよ」
並ぶところが日陰になってて涼しい・・・
園内を見回すと、みんな、はしゃいでるよなー子供も大人も。
也幸くんだって、逃げ回ったりしながらも、あれはあれで楽しんでるんだと思う。
雪菜「あの・・・お兄ちゃん・・・」
僕「ん?なあに?」
上目遣いで眼鏡がきらーん、ってなってる。
雪菜「私たち・・・どうなる・・・です・・・か」
僕「ど、どうなるって、お土産を宅配便で家に送って、あとは時間がくるまで・・・」
雪菜「ううん・・・違う・・です・・・これからの・・・雪巳お姉ちゃんや雪沙・・私・・・夏休み終わってから・・・」
そうだ、近いうちに結論を出さないといけないんだ、
どっちを選ぶにしても準備や説明っていうもの、あと手続きもいるかも知れない。
タイムリミットはもうそこまで、いや、そんなものはもう過ぎてるのかも・・・?
僕「・・・どうしようか」
雪菜「えっ・・・・・」
僕「ちょ、ちょっとだけ、もうちょっとだけ・・・夏休み中には絶対決めるから」
雪菜「お兄ちゃんと・・・ずっと暮らしたい・・・です」
僕「でもさ、そのさ、僕のさ、都合っていうのもさ・・・色々あってさ」
・・・ここまでしておいて酷い奴だな、って客観的に思う。
でも、受け止め様によっては僕だって今日までは流されただけ・・・とも言い切れないんだなこれが。
雪菜「あの・・・お願い・・・」
僕「な、なに?なになに?」
雪菜「私を・・・もらって・・・くだ・・・さい」
ぶっ!!!
なんかプロポーズされたみたいだ!しかもこんな所で!!
僕「ま、まあ、そ、それは、ともかく、色々と、相談する人も、いるから、さ」
雪菜「・・・私を貰ってくれるのは・・・お兄ちゃん・・・です」
僕「だ、だからね・・・あ、建物の中に入るから静かにしよう」
中は3列になってる、これならあと数分だ。
雪菜「・・・・・お兄ちゃん・・・」
僕「・・・しーーーっ」
雪菜「・・・・・耳をかして・・くだ・・・さい」
・・・どんな事を言われるのかどきどきしながらしゃがむ。
雪菜「・・・・・・・・・・好き・・・・・です」
僕「・・・・・・う・・・うん・・・」
雪菜「捨てないで・・・捨てたら・・・ばら・・す・・・です」
ひ、ひいぃーーーーー・・・一気に涼しくなった・・・
・・・・・さ、さっさと荷物を・・・記入票をまずもらって・・・
あ、じ、字が震えちゃう・・・落ち着こう・・・冷静に冷静に・・・・・ふしゅううぅぅぅぅ・・・・・
宅配便を送り終えて巨大地球儀の前へ来た、
丁度、雪絵ちゃんたちが出発するところだ、
也幸くんは雪絵ちゃん雪音ちゃんに挟まれて見張られてる。
お姉さん「それでは伝説の宝を探しに、しゅっぱーつ!!」
ちびっこの列が行進していく、
先頭のお姉さん以外にも一番後ろにガイドのお兄さんがついてる、
それにまわりを見ると、確かにシーのスタッフが要所要所に立ってて、
監視カメラとは別にスタッフの目でも360度園内くまなくチェックしてる感じだ、
これなら子供を預けても平気だな、也幸くんが逃げてもあっという間に捕まっちゃうはずだ。
雪菜「どこへ行く・・・です・・か」
僕「そうだね、2時間あるから・・・」
雪菜「お兄ちゃんとふたりっきりだから・・・嬉しい・・・です」
きゅっ、と手を握られる、
恥ずかしいなあ、小6相手に・・・
でもまあ楽しませてあげないと・・・よし、じゃあ・・・
僕「乗り物は前に来た時、粗方乗ったよね」
雪菜「新しいのに・・・乗ります・・・か」
僕「んー・・・歩きながら考えよう、まずはあっち!」
2人で仲良く地中海エリアの方へと歩いた。
雪菜「あ・・・あそこ、工事中になっちゃってる・・・です」
僕「え?本当だ、『7つの海の旅』はリニューアル中ですって看板が」
雪菜「来年春『7つの海の絵本』再オープン、って書いてある・・・」
僕「より子供向けになるのかな?先月乗っておいて良かったね」
雪菜「来年の春・・・お兄ちゃんと・・・乗りたい・・・です」
来年・・・来年かぁ・・・
ぴったりくっついてお願いされても、
じゃあ来年一緒に、って・・・言い切れないよな。
僕「んー・・・絵本になったら乗るスピードも遅くなりそうだな」
雪菜「速いのに乗りたい・・・です・・・か」
僕「うん・・・まあね、でも雪菜ちゃんに合わせるよ、今は」
雪菜「だったら・・・・・あれに乗る・・・・・です」
僕「あれって?あれ・・・奥のエリア・・・え、ええ!あれ!?」
あれはジャングルエリアに新しくできた、1回転コースター!
スピードもありそうだし、いくらなんでもあれは雪菜ちゃんには・・・
僕「ち、近くで見るだけ見てみようか」
雪菜「・・・・・うん・・・・・はい・・・・です」
僕「ネズミートレインから見た時よりも大きく感じるね」
列ができていて雪菜ちゃんがその一番後ろに並ぶ。
雪菜「30分待ち・・・です」
僕「いいけど・・・平気?」
雪菜「お兄ちゃんとなら・・・平気・・・です」
整列係りのお姉さんがやってきた。
お姉さん「ようこそー、ちょっとよろしいですかー?」
僕「はい、何でしょう?」
お姉さん「このアトラクションは身長140cm以上でないと乗れないんですよー」
雪菜「私・・・・足りない・・・かも」
お姉さん「ちょっと調べますねー」
木の棒を持ってきた、
あれが多分、長さ140cmあるんだろう。
それを立てて見比べる・・・う〜ん・・・・・微妙か!?
お姉さん「・・・そうですねー・・・」
雪菜「・・・・・・・おねが・・・い・・・」
お姉さん「いいでしょー!ではこのまま御並びくださーい」
僕「ほっ・・・良かったねー雪菜ちゃん」
雪菜「うれしい・・・・・です」
大目にみてくれたんだろうか?
本当に、次はいつ来れるかわからないもんな、
雪菜ちゃんが安心して僕にきゅううぅぅ〜〜って抱きついてきた。
雪菜「お兄ちゃんの・・・おかげ・・・です」
僕「ははは、な、なんで?」
雪菜「7月のさいしょに学校で計ったとき・・・身長137cmだった・・・です」
そっか、じゃあ僕の家にきて3cm伸びたってことか、
1ヶ月でその伸びは凄いな、うちで美味しい食事をもりもり食べたからかも。
雪菜「お兄ちゃんに・・・いっぱいお礼したい・・・です」
僕「もうしてもらってるよ、いつもありがとう」
雪菜「もっともっと・・・もっと・・・ずっと・・・したい・・・です」
やさしく頭をなでてあげる・・・
僕「雪菜ちゃんは気の利くいい子だから、どこでもやっていけるよ」
雪菜「お兄ちゃんが・・・いい・・・の・・・」
僕「じゃあ、今日はめいっぱい楽しもう?せっかく楽しみに来たんだからさ」
周りの目が恥ずかしいけど、
ここは順番がくるまで甘えさせてあげよう・・・・・。
僕「さあ、いよいよ出発だね」
雪菜「眼鏡外したから・・・よくわからない・・・です」
僕「その分、怖さは薄くなるといいけど・・・あ、動き出した!」
カタンカタン・・・
カタンカタンカタン・・・・・
カタカタカタカタカタカタ・・・・・・・・・
ゆっくりゆっくりジャングルの古代遺跡を登っていく、
遺跡の呪いで暴走、だとかアナウンスが聞こえてくるけど、
園内を見渡せる景色の方に見入って・・・と思ったら下り坂へ!
ゴゴゴゴゴーーー!!
僕「うわーーー!」
雪菜「きゃ・・・・・」
かなりのスピードで下っていく!
右に左に傾いて、旋回して、そして・・・
僕「ループがくるよ!」
雪菜「・・・・・!!!」
ガガガガガガガガガーーー!!!
・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
プシューーーー・・・
僕「いやー凄かったね・・・雪菜ちゃん?」
雪菜「・・・・・」
僕「着いたよ?雪菜ちゃん?もう終わったよ?」
髪を乱して、ぽけーーーっとしてる。
目が視点合ってない、顔の前で手を振ってあげると・・・
ようやく我にかえって慌てて降りた、そして眼鏡を装着する。
僕「ど、どうだった?刺激が強すぎた?」
雪菜「あ・・・あの・・・お兄ちゃん・・・」
僕「どこかで座って落ち着こっか?」
雪菜「・・・今すぐ・・・もう1回乗りたい・・・です」
僕「ほ、本気!?今すぐに!?」
強いなー・・・
そんなに気に入ったのか。
やっぱり雪菜ちゃんって、凄い子だ。
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