アトラクションから出るとピザ屋が見える。

 

雪巳「あー、あれ美味しそー」

僕「先月来たとき、雪沙ちゃんが食べたがってた宇宙ピザだね」

雪巳「ねー、今日のお昼ご飯はあそこにしよー」

僕「んーっと・・・安いな、よしわかった、雪絵ちゃんたちと合流したらここね」

雪巳「雪沙には悪いけどー・・・お持ち帰りはできないのかなー」

 

冷めちゃうから無理だろうな。

 

雪巳「ねー、ねーーー」

僕「どうしたの?」

雪巳「ふたりっきりで写真とりたーい」

僕「うーん・・・わかった、どこで撮ろうか」

雪巳「あそこーーー」

 

ぴーんと伸ばした指の先は・・・ネズミー城だ。

 

僕「お城の前ね、オーソドックスだけどいいかもね」

雪巳「うれしー、いこいこー」

僕「わ!そんなに引っ張らないで!」

 

腕がもげるんじゃないかっていうくらい抱きついて引っ張る!

はしゃいでるなぁ・・・でも、こんなにはしゃがれて悪い気はしない、

中1らしい本当の笑顔を見れるんだから・・・ずっとこの笑顔でいられるといいな。

 

雪巳「ここいい感じー」

僕「うーん・・・でもお城がうまく入るかな」

雪巳「全部入らなくていいよー・・・すみませーーーん!」

 

従業員の人にお願いしてカメラを渡してる、

そして僕と雪巳ちゃんはお城の前で、はいポーズ・・・念のためもう1枚・・・

いい感じで撮れたかな?雪巳ちゃん、僕に抱きついて片足なんて上げちゃってたよ。

 

雪巳「ありがとーーー」

僕「すみませんでした・・・さ、行こう」

雪巳「ついでに入っていこうよー」

 

そういえばお城の中はアトラクションだったな、中をツアーするやつ。

雪巳ちゃん中1だけど、運良く子供がいない組に入れば雪巳ちゃんが勇者に選ばれる可能性も・・・

あれ?並ぶ列ってどこだったっけ?なんだか雰囲気がちょっとだけ寂しい。

 

雪巳「あーーーーー!」

僕「こ、声が大きいよ!で、どうしたの?」

雪巳「これー、ひどーーい」

 

看板がたててある・・・なになに?

 

「長らくご愛顧いただきましたネズミーランドキャッスルは8月17日をもって終了致しました」

 

僕「うわ・・・終わっちゃった、というか廃止されちゃったんだね」

雪巳「なんでー?入りたかったのにー」

僕「うーん、勇者のメダルが取り合いの喧嘩にでもなったのかな?しょうがないよ」

雪巳「あーあ、お兄ちゃんと暗いところで一緒になれたのにー」

僕「はは、逆に先月、廃止になる前に入れて良かったと思おうよ」

 

お城の真下を突き抜けると、夢の国エリアだ。

 

雪巳「ここのってかなり乗ったよねー」

僕「うん、乗れないのもあったけど・・・ほらあれ、空とぶピーターパン」

雪巳「40分待ちだってー、前きたときは60分待ちだったよー」

僕「どうしよっか、雪絵ちゃんたちとあらためて来るのもいいし」

雪巳「また乗れないで帰っちゃうよー、乗れるうちに乗ろうよー」

 

はは、雪巳ちゃんにしては珍しく、しっかりした事を言うな。

このエリアは雪絵ちゃん以下の子供向けが多いから、みんなで来たかったけど、

でもそれくらいの子供って30分以上も並んで待たされるの耐えられないだろうし・・・うまくいかないもんだ。

 

僕「じゃあ並ぼう・・・ここが最後尾だ」

雪巳「えへへーーー」

僕「どうしたの、にやけちゃって」

雪巳「だってー、お兄ちゃんと2人っきりだもーん」

僕「そ、そう、それはよかった・・・」

 

あらためて言われると、恥ずかしいな。

 

雪巳「今度は最初から2人きりでどこか行きたーい」

僕「うん・・・そうだ、明日だけどさ、雪菜ちゃん雪沙ちゃんをお詫びも込めてどこか連れて行こうと思ってるんだ」

雪巳「えー、じゃー私はー?」

僕「・・・雪巳ちゃんもだよ、ただ今日疲れると思うからあんまり遠くは無理だけど・・・」

雪巳「いいよー、じゃー帰ったら雪菜と雪沙とで相談するねー」

 

・・・まとめて連れて行けば楽だけど、

ここはやっぱり午前・昼・夜と分けて別々で会いたいな、

2人っきりでちゃんと、今後の事とかをあらためて、話してみたい。

 

僕「じゃあさ、1日を3つに分けて、それぞれ別でデートしようよ」

雪巳「いいけどー、だったら3日で1日ずつにしよー?」

僕「それも考えたけどさ、その・・・残り時間があまり無いし、それにその、1日丸ごとだと・・・嫉妬するでしょ」

雪巳「んー・・・・・わかったー、それでいいよー」

也幸「・・・(コクコクコク)」

僕「良かった・・・じゃあそれで雪菜ちゃん雪沙ちゃんとも話して・・・って、也幸くん!?」

也幸「・・・・・」

 

い、いつのまに!?

しかも探検家みたいな帽子をかぶって!

雪絵ちゃん雪音ちゃんや、ガイドのお姉さんは近くに・・・いないよな?

 

〜〜〜♪♪♪

 

携帯電話が鳴った!

 

僕「もしもし!?」

お姉さん「申し訳ありません!ガイドの者ですが、也幸ちゃんがですね・・・」

僕「いま、ここにいますけど」

お姉さん「ええええええ!?ど、どちらですか!?」

僕「空飛ぶピーターパン、の前です」

 

也幸くんが、どうしたの?って感じで目をパチクリして僕を見上げてる。

 

お姉さん「そんな遠い所に・・・いま、係りの者が迎えに行きますから!」

僕「はい、遠いってどこにいたんですか?」

お姉さん「海賊島で隠れネズミーを探していただいてたのですが、その隙に・・・」

僕「すみません、よく言っておきます」

お姉さん「こちらこそ本当に申し訳ございませんっ!!」

 

ガイドマップを見ると・・・海賊島は・・・あった、

エリアは隣の隣だけど、池の真ん中だぞ!?どうやって来たんだろう?

見張りの従業員もいっぱいいただろうし、その目をかいくぐって、しかも僕らの所へ・・・!!

 

僕「こら也幸くん!勝手に来ちゃ駄目!」

也幸「ーーー!!」

雪巳「あー、これカメラだー」

僕「本当だ!デジタルカメラ、これどうしたの!」

也幸「ー!ー!ーー!!」

 

カメラの横の文字を指さしてる、

えっと・・・『キッズツアー専用』て書いてある、

つまり備品か、多分これで隠れネズミーを写すんだろう。

 

お兄さん「すみませーん!」

 

慌てて係員のお兄さんがやってきた、

キッズツアー用の帽子とカメラを持ってるから一目で也幸くんとわかったんだろう、

逆に言うとこれだけ目立つ格好なのに、よく脱出できたもんだな、野良猫なみの素早っこさだ。

 

雪巳「也幸がごめんなさーい」

お兄さん「申し訳ありません!也幸くん、みんなが待ってるよ」

僕「行っておいで、もう逃げちゃ駄目だよ」

也幸「・・・(コクコク)」

雪巳「頑張ってくるんだよー」

 

連れ戻された也幸くん、

どこをどうやって島から脱出したのか謎のままだ・・・

ネズミーランドの監視カメラで後から検証するなら、その場に立ち会いたいよ。 

 

 

 

 

雪巳「おもしろかったー」

僕「そうだね、凄く良くできてた」

 

空とぶピーターパンをようやく見る事ができて2人で出てきた所だ、

このアトラクションが人気な理由がよくわかる、本当に空を飛んだ気分になったよ。

 

雪巳「もう1回乗れるかなー」

僕「うーん、時間的に無理そうかな」

雪巳「じゃー、また来たーい」

僕「大阪の大きい遊園地がこれと似た映画のアトラクションあるみたいだからそっちに・・・」

雪巳「今度はみんなで大阪旅行だねー」

 

自然と話が次も旅行いく事になってる、

もう雪巳ちゃんの中では僕と家族や恋人になる事が決定事項であるかのように。

 

雪巳「あーーー」

僕「ど、どうしたの!?」

雪巳「同じクラスの子に見られたー」

僕「本当に?どこどこ?」

雪巳「もう行っちゃったー、ちょっと恥ずかしいー」

 

そう言いながらもウキウキしてるようにしか見えないんだけど・・・

 

僕「学校で、何か言われるのかな」

雪巳「んー・・・言われたいかもー」

僕「へ、変な事言わないでよ、学校って、へ、変な事に敏感なんだから」

 

敏感なのは僕か。

 

雪巳「もう行っちゃったからー、もっとくっつくー」

僕「こら!べたべたされると暑いから・・・」

雪巳「じゃー涼しい所へいこー」

 

早く別のアトラクションに入っちゃおう。

 

僕「何か希望はある?ここ行きたいっていう」

雪巳「んー、あれも前に乗れなかったから、あれかなー」

僕「どこ?島?・・・蒸気船リンカーン号か」

雪巳「あそこだったら気持ちよさそー」

僕「じゃあ並ぼう、船内にトイレ無いと困るから済ませるなら先にね」

 

一緒に蒸気船へ向かう途中も、やたらべたべたくっつく・・・

機嫌良さそうだな、まあここは、大人の振る舞いとして、好きにさせておくか・・・ちょっと恥ずかしいけど。

 

 

 

 

 

雪巳「蒸気船楽しかった〜」

僕「そ、そう・・・良かったね」

 

あんまり居心地よくなかったな、

別に揺れるとか座れないとかじゃなくって、

雪巳ちゃんが船の景色より、ずーっと、じーっとこっちを見てたから・・・

 

雪巳「一緒の写真もまた撮れて良かったー」

僕「まだ撮れる枚数は残ってるよね?」

雪巳「うんー、後で雪絵たちも撮ろー」

 

蒸気船降り場から離れると丁度、お昼のパレードが始まった所だ。

 

雪巳「すごい綺麗ー」

僕「うん、夜のパレードとはまた違う華やかさだね」

雪巳「シャボン玉がいっぱい飛んできたー」

 

ひらひらと舞う紙ふぶき、

まるで僕らを祝福してるみたいだ、

別におめでたい事がある訳でもないのに嬉しくなってくる。

 

僕「これが魔法ってやつかな・・・」

雪巳「あー、あそこー」

僕「え?あ、カフェの屋上に也幸くん達が!」

 

あんな所からパレードを見下ろしてる、

羨ましいな、多分本来は立ち入り禁止なんだろうけど、

キッズツアー参加者だけの特典か何かで上げてもらえてるんだろう。

 

雪巳「雪絵と雪音が、はしゃいでるー」

僕「也幸くんは指くわえながら、じーーーっと見てるね」

雪巳「距離があるから、着ぐるみも怖くないみたーい」

僕「まあ、そっちはほっといてちゃんとパレードを見よう」

雪巳「あー、ネズミーさんがこっち見て手ふってくれたー」

 

・・・いつのまにか僕の胸に収まってる雪巳ちゃん、

恋人同士のデートっていうのを満喫しているようだ。

僕までちょっと、その気になってきちゃう・・・キスする度胸は無いけど。

 

雪巳「あー、あのお姫様だれかなー」

僕「かぼちゃの馬車だからシンデレラかな」

雪巳「写真撮っちゃおー」

 

ほんっとうに楽しそう・・・

雪巳ちゃんを選んで良かったと思わせる、

と同時に留守番の雪菜ちゃん雪沙ちゃんがちょっと可哀そう・・・

ま、明日フォローするからいっか、お土産も買ってあげたし。

今は今で雪巳ちゃんとの、そして雪絵雪音也幸くんとの時間を楽しもう。

 

雪巳「あー、ブーブーベアーから蜂蜜の匂いがしてるよー・・・」

 

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