僕「・・・・・もう夜か、早いなぁ」

 

パソコンに熱中してると時が経つのはあっという間だ。

ネズミーリゾートのホームページ調べたけど、

キッズツアーは2時間で終わっちゃうのか・・・

だったらそんなに早く行かなくてもいいかな、

人気のアトラクションは身長制限があって乗れないのが多いし、

あんまり歩幅の小さい子供を急がせるのも良くない。

のんびりとピクニック感覚で、帰りも日が暮れる前がいいかな。

 

どたどたどた・・・

 

雪巳「お兄ちゃーん、お父さん帰ってきたよー」

僕「ほんと?じゃあ急いで降りるよ」

雪巳「でも酔ってるよー?」

 

う・・・まずいな。

とりあえず会うだけ会ってみよう。

パソコンそのままに玄関へ走り外へ・・・

外はもう暗い。階段を降り19階のエレベーターに雪巳ちゃんと飛び込む。

一気に1階へ・・・ついて雛塚家の玄関へ向かうと、いた!雛塚家のお父さんが、途中で座り込んでる!

 

雛塚父「ウィ・・・ヒック・・・・・・なんでえ・・・・バカヤロー・・・」

僕「あの・・・・・お父さん?」

雛塚父「誰がお前に、俺をお父さんって呼んでいいって言ったコノヤロー!!」

雪巳「お父さんここで寝たら風邪ひくよー?」

雛塚父「いいんだよ!俺がここで寝ればお前たちが俺の布団で寝れ・・る・・・ふぁあぁああああぁぁーーー・・・」

 

あー、目瞑っちゃった。

こりゃあ会話を成立させる事も無理だな・・・

よし、おぶるか・・・よいしょ・・・うっ、酒くささがシャツにうつっちゃう・・・

 

雪巳「お兄ちゃん重くないー?」

僕「大丈夫だよ、さ、ドア開けて」

雪巳「うんー、わかったー」

 

色々と大変なんだろうな・・・

僕はこのお父さんをおぶるの平気だけど、

お父さんは雛塚家のみんなを背負ってたんだから・・・

押しつぶされてもしょうがない。

だからお酒で、背中の重みを麻痺されてるのかな?

 

・・・・・僕にその重みを3人分、

引き受ける事は本当にできるのだろうか?やれるのだろうか?

 

僕「・・・おじゃましまーす」

 

中ではすでに戦争みたいに夕食を奪い合ってる、

三悪兄弟が山賊みたいに取れるだけ奪って食べてて、

雅幸や隆幸も何とか最低限は確保してる。

雪絵ちゃん雪音ちゃん也幸くんは・・・良かった、

別のちゃぶ台に分けて、隅っこで食べてる。雪巳ちゃんの心遣いかな。

 

僕「すいません、旦那さんを・・・」

ビッグマザー「そこらへんに転がしときなっ!」

僕「は、はいっ」

 

ちらかりすぎて奥の寝室には連れて行けそうにないな、

悪いけどトイレの前に寝かすか・・・というか寝かせるスペースはそこしかない。

家の中に入れば後は安全だろう、財布とか落としてなければいいけど。

 

僕「じゃあ、失礼します・・・」

ビッグマザー「さっさといきなっ!しっしっ!」

僕「はい・・・」

雪巳「私は洗い物があるからこっち残るねー」

僕「うん、じゃあ・・・」

 

1人で雛塚家から出る。

追い出されたようなもんだけど、

いてもあのお父さんが、あんな状態じゃなあ・・・

 

僕「・・・って雪巳ちゃん、こっちの夕食はどうすんだ!?」

 

洗い物が終わったら来るか。

それにしても明日、どうしよう。

雪絵ちゃん雪音ちゃん也幸くんには明日って約束しちゃったし・・・

 

僕「明日朝聞いてみて、駄目ならしょうがないか」

 

まあ、今更聞かなくてもって気がするし、

どこかへ連れて行ってほしいって言ってたのはあのお父さんだ。

そういう意味では許可はもうもらってる・・・後は留守番組に伝言頼めばいいよな。

 

僕「よし、明日行こう!」

 

 

 

 

 

午後8時半になって、ようやく夕食の時間になった。

 

僕「いただきまーす」

雪巳「いただきますー」

雪菜「いただきます・・・」

雪沙「いただきまぁ〜す」

ソヨカゼ「ふにゃぁ〜」

 

4人と1匹で食事、

こういうのもれっきとした「家族」なのかなぁ?

この子たちを養子に引き取ればそうなるけど・・・

 

僕「ん・・・この芋の味付け、おいしい」

雪菜「私が作った・・・です・・・うれしい・・・」

雪巳「雪沙ー、ふりかけかけすぎだよー?」

雪沙「おしぃ〜んだもぉ〜ん」

僕「はは、ごはん増やして薄めて食べるといいよ」

 

この子たちも1ヶ月ちょっとで料理うまくなったよなー、

元から天ぷら揚げれるくらい、雛塚家では作らされてたんだろうけど、

こっちに来てからは材料も豊富だから、めきめき上達したように思える。

 

雪巳「ほらー、雪沙おしょうゆシャツについたー」

 

ぼけぼけのようで、結構面倒みてる雪巳ちゃん。

天然キャラだけど、する事はちゃんとやってくれるんだよな、

遊園地の引率係には雪巳ちゃんを選ぶのも悪くないかもしれない。

 

雪菜「ほら雪沙・・・ティッシュあげるから・・・」

 

しっかりものの雪菜ちゃん、ほんと、小6なのに気がきくよな。

動きのトロさを頭の回転がカバーしてる感じ、何かと助けてくれるし。

遊園地の引率係は雪菜ちゃんもいいよな、動物園では大変そうだったけど。

 

雪沙「ん〜・・・あとがついちゃうからいまからせんたくするぅ〜」

 

シャツを脱ぎながら廊下へ出て行った雪沙ちゃん、

行動力は凄いよな、しかも幼く見えて、面倒見は結構いい。

遊園地の引率係として、下の3人との架け橋に丁度良い年齢かも?

 

僕「う〜ん・・・迷うなぁ」

雪巳「どうしたのー?」

雪菜「はやく食べないと・・・冷めちゃう・・です」

僕「あ、うん、おいしそうな料理ばっかりだからつい迷っちゃって」

雪巳「全部お腹に入れるから、どれが先でも一緒だよー?」

 

ま、考えるのは食後でいいや。

明日の朝に決めればいい、寝ながら結論を出そう。

 

ぴんぽーーーん

 

僕「あれ?インターフォン・・・」

雪沙「はぁ〜〜い」

 

廊下をパタパタ走ってく雪沙ちゃん、

ちらっと見えたけど新しいシャツを着ながら走ってた、

器用だなぁ、まあ裸で出ないだけマシか・・・さて、来たのは誰だろう。

 

雪巳「お兄ちゃーん、雪絵たち明日何時にこさせるー?」

僕「そうだな・・・小学校と同じように8時くらい出発でいいかな」

雪菜「ネズミーランド・・・開く時間に間に合わない・・・です」

僕「でも人気のアトラクションは、あの子達、背が低すぎて乗れないの多いから」

雪巳「えーーーネズミーいくのーー?いいなーーーーー」

僕「日が暮れるくらいには遊園地出るから、ついた時と帰るときにここへ電話するね」

雪巳「わかったー、じゃー7時くらいに呼んでくるー」

 

とたとたとたとたとた・・・・・

 

雪沙「ゆきみおねぇちゃん、ゆきなおねぇちゃん、パパがよんでるよ〜」

僕「ええ!?インターフォン、お父さんだったの?」

雪沙「ううん〜、まさゆきとぉ〜、たかゆきぃ〜」

僕「今すぐ?じゃあ僕も・・・」

雪沙「おねぇちゃんたちだけだってぇ〜、はやくはやくだってぇ〜」

 

食事を中断して席を離れる2人、

そして雪沙ちゃんと合わせて3人で玄関へ・・・

急に何だろう?心配だけど、僕は行っちゃいけないみたいだ。

 

雪巳「じゃあ行ってくるー」

雪菜「お兄ちゃん・・・先に食べ終わってて・・・です」

僕「うん、そうするよ」

雪沙「えれべ〜た〜でたかゆきとまさゆきがまってる〜」

僕「行ってらっしゃい、何かあったら呼んでくれたらすぐ行くから」

 

慌ただしく出ていった・・・

あのお父さん、もう酔いが醒めたのかな?

酔っ払ったまま呼び出してたら不安だ・・・

まあ、あの子たちしっかりしてるし、

ゆっくりご飯を食べながら待とう・・・食卓が一気に寂しくなったけど。

 

ソヨカゼ「ふにゃぁ〜」

僕「お前はもう食べ終わったのか」

ソヨカゼ「にゃ・・・」

 

僕も食べ終わろう。

 

 

 

 

 

僕「・・・・・・・おかしい」

 

食事を終わらせてかなり時間がたった。

時計なんてもうすぐ10時だ、なのに3姉妹が戻ってこない・・・

台所の食事はすっかり冷めてるだろう、食べかけのまま放っておくなんて、らしくない。

 

僕「これはひょっとして・・・」

ソヨカゼ「にゃ」

僕「ソヨカゼ、留守番頼むよ」

 

下の様子を見てこよう、

ひょっとしたらあのお父さんに「もう行っちゃ駄目だ」て言われたのかもしれない、

もしくはずっと暴れたまま誰か怪我したとか・・・心配になってくると、いてもたってもいられない。

 

僕「雪巳ちゃん・・・雪菜ちゃん・・・雪沙ちゃん・・・」

 

あの子たちの事を想うと切なくなってきた。

もう、3姉妹無しの生活は考えられなくなってきてるのかも知れない。

まずはこの不安感を取り除かないと・・・家を出て1階につき、雛塚家へと向かう。

 

僕「あれっ?あそこにいるのは・・・?」

 

ふと外に人影を感じ駐車場を覗く、

花壇のところに座る人影が・・・・・6つ。

よーーーく見てこっそり隠れながら近づくと・・・いた!

 

雪巳「もー隆幸ー、あんまりおっぱいに顔くっつけないのー」

隆幸「ねえちゃーん・・・ゆきみねえちゃーん・・・」

 

顔を雪巳ちゃんの胸にうずめ、抱きついて甘えてる隆幸・・・

押さえつけられてる訳じゃないからちゃんと呼吸はできるみたいだ。

 

雪菜「おねがい・・・わかって・・・無理いわないで・・・」

雅幸「やだよ・・・帰ってきてよ・・・さみしいよ・・・」

 

胸元ですっかり甘えきってスリスリしている雅幸・・・

雪菜ちゃん困りながらも頭をなでなでと、なでてあげてる。

 

也幸「・・・・・♪」

雪沙「いいこいいこ〜♪」

 

2人の兄の真似をしているのか、

雪沙ちゃんと並んで座って肩にもたれかかってる也幸くん。

その頬を猫をゴロゴロいわせるみたいになでる雪沙ちゃん・・・お姉さんの顔してる。

 

隆幸「ねーちゃーん・・・手にぎってくれよー・・・」

雪巳「うんー・・・でも、もうちょっとしたら帰るよー」

隆幸「やだよー、だったら一緒に上へ連れてってよー」

雪巳「だめー・・・つらくなったらこうやって甘えさせてあげるからー」

隆幸「毎日甘えさせてよー・・・なんで連れてってくれないのー・・・うぅっ・・・」

 

あーあ、かわいそうに隆幸くん・・・

まだ小4だもんな、あんな母親じゃ甘えさせてくれないだろうし。

 

雅幸「お姉ちゃん・・・・・いいにおい・・・・・」

雪菜「もう・・・そろそろ・・・かえらなきゃ・・・」

雅幸「帰ってきて・・・こっち帰ってきてよ・・・行かないで」

雪菜「むり・・・雅幸、ちゃんとみんなの面倒みるの・・・お兄ちゃんでしょ・・・」

雅幸「雪菜お姉ちゃんも・・・ちゃんと僕たちの面倒みてよ・・・一緒に帰ろう」

 

ぐずってるぐずってる、

雪菜ちゃんもすごく困りながらも突き放せないでいるな。

 

也幸「♪♪♪」

雪沙「なでなでぇ、なでなでぇ」

也幸「〜〜〜♪」

雪沙「いいこでいるんだよぉ〜?」

也幸「・・・・・ZZZzzz・・・」

 

にしても、なんでこんな所にいるんだろう?

お父さんに呼び出されたはずなんだけど、事情が知りたい。

 

雪巳「もう嘘ついちゃだめだよー?」

雪菜「ほんと・・・お父さんが呼んでるとか・・暴れてるとか・・・」

隆幸「そう言わないと来てくれないじゃんかよー・・・」

雅幸「お姉ちゃんたちが・・・騙されててかわいそうだから・・・」

雪沙「だまされてないよぉ、まさゆきがだましたんだよぉ」

也幸「ZZZZZZzzzzz・・・・・」

 

そういうことか・・・

雅幸も隆幸も我侭だなあ、

でも、あんな家にいてしかも唯一守ってくれてた姉がいなくなったんじゃ、

寂しくって、何とかして呼び出したくなる気持ちもわからなくはない。

でも・・・問題なのは、僕がぽつーんと放っておかれてる事だ!くそー、後で三姉妹に甘えよう!

 

そろりそろりと気づかれないように離れ、

エレベーターに戻って上へ・・・そして誰もいない自宅へ。

 

僕「ただいま・・・」

ソヨカゼ「にゃぁ〜〜」

僕「あ、お前がいたか・・・ただいま」

 

今夜はソヨカゼに甘えて寝よう・・・

 

もどる めくる