三姉妹に聞かれたくない話しが山盛りなので、使ってない部屋に座布団2枚だけひいて・・・
美鈴「美人局の宝石詐欺ね、いつかこんな目に会うんじゃないかって前々から心配してたわ」
美鈴「あの様子じゃ罪悪感無いでしょうね、単なるバイト感覚。いつか絶対酷い目に遭うわ」
そう考えると、外見は三姉妹を足して大人にしたような感じだったけど、
中身はビッグマザーと雪香と三悪兄弟をまぜてさらに性悪にしたようなものか・・・でも胸大きかったなぁ・・・
美鈴「あの美人局に未練でもあるの?ああやって着飾ってたけど実際はあんなのタレ乳で黒乳首よ」
美鈴「そう思って諦めなさいって事!それとも90万円払ってでもする価値のある女だったのかしら!?」
美鈴「シップ貼っただけよ・・・これに懲りたらお金の怖さとありがたみをよく考える事ね」
僕「はい・・・あ!ひとつだけ・・・ジャングル大帝のTシャツ!」
美鈴「そんなもの、くれてやりなさい!それにもう着たくないでしょ?」
僕の部屋に戻るとみんな今日観た劇団十期の話題で盛り上がってる。
美鈴「あら、大変よー?大学出てさらに研修所に行かないといけないわよ」
美鈴「子役だって5歳とか6歳の時から鍛えて、やっと10歳とかでデビューできるのよ」
そうか、10歳の子役でもキャリア4年とかなのか、大変そうだ。
雪沙「ゆきさもいまからきたえたら16でデビューできるぅ〜?」
美鈴「ん〜、あそこは凄く厳しいから普通じゃ無理よ、例えば劇団十期の座長さんにしてもこんな話があるのね」
ひょっとして、座長さんが劇団の女優を片っ端から・・・とか!?
美鈴「座長の志染先生が『明日は朝10時からリハーサルを始めましょう』って言ったとするわね」
美鈴「そう、で、雪巳ちゃんだったら何時にそのリハーサルに行く?」
美鈴「それくらいの時間に志染先生が入ると思って朝9時に来たとするでしょ?でも実は・・・」
美鈴「そう、志染先生はすでに朝8時に来てリハーサル前の個別指導をしている訳」
美鈴「で、8時までに来てなかった人はリハーサルに出れないだけじゃなく、もう即クビよ」
僕「でも、そういった事を耐え抜けば、デビューできて後は楽ができると」
美鈴「劇団十期の劇団員は制約も多いわ、スキー禁止、自転車禁止、個人的な海外旅行禁止・・・」
美鈴「大事な役者さんが怪我したら大変だからよ、例えばこのオペラ座の怪人」
美鈴「劇団員が見習い含めて1000人近くいても、この怪人役をやれる人は今2人しかいないのよ」
僕「確か劇って、主役のプリンシパルだとかいうのに対して、控えの役者が全ての役にいていつでも交代できるっていう・・・」
美鈴「それは普通の劇団ならね。でも、座長の志染先生は厳しいから、この難しい役をやれるのはこの人とこの人だけ!ってなっちゃうの」
美鈴「ううん、他の劇場で違う劇の違う役をやっているわ、だからアンダースタディ(代役)は無いの、現にジャングル大帝の劇が名古屋と東京でやってた時、
名古屋の悪いライオン役の人が交通事故で出れなくなって、わざわざ東京で別の劇の役をやっていた人を新幹線で呼びつけたの、
もちろんすぐには来れないから名古屋の会場では3時間遅れになっちゃって、その間、トークショーやミニ即興劇で時間をもたせたり、
入場料は全員払い戻し、だから3時間待てば無料で劇が見れたの、さらに終わった後、劇団員が出口で全員ペコペコ謝っていたそうよ」
美鈴「当然、代わりに来た人がいれば東京で本来その人がやるべきだった役が空く訳で、そこにはさらに他の芝居の稽古中だった人を強引に入れたり・・・」
美鈴「そうよ、だから体調管理も大変、週に1度ある休日は本当に『体を休める』ための日で1日潰れちゃうわ」
也幸くんがとことこやってきてその雪巳ちゃんの頭をなでなで・・・
美鈴「日本中に10個も劇場があるうえに地方を回る劇もあるからほんっと大変よ」
美鈴「むかーし、ちょっと追っかけてたから・・・私が通ってた頃はオペラ座の怪人、怪人役は1人しかいなかったのよ」
美鈴「中止ね、事故で入院とかになったら退院するまで中止、払い戻しで大変な事になるわ」
美鈴「それでもその人は3年半ずっと怪人役を1人で毎日演じ続けたの、それはそれは迫力あったわぁ・・・」
美鈴「ま、その人は3年半怪人やった後『そろそろ違う役をやりたい』って座長の志染先生に言ったら即クビになったけどね」
美鈴「君のやりたい役とお客様が君に演じて欲しい役は一緒じゃない、それもわからん君はクビだー!って」
美鈴「それがいいわ、雪巳ちゃんには雪巳ちゃんに合ったお仕事があるはずだから」
と同時にこれは僕への教訓か!?あの一見完璧に見えた詐欺女にうつつをぬかすよりもっと自分に合った相手をっていう・・・
美鈴「こちらこそ、弟クンの大ピンチを救ってくれてありがとう」
美鈴「いいわ、それより今夜はその子たちに慰めてもらいなさい!じゃあね」
そう言い残して美鈴ねえさんは本当の夫の所へと帰っていった・・・
もうこれ以上、手間をかけさせないように気をつけよう・・・特にああいう美人局は、もうこりごりだ。
僕「う、うん、僕は食べない予定だったから、贅沢は言わないよ」
僕「ん?ジャングル大帝の劇のキャスト表か、配ってたやつ・・・秘密の扉パスワード?」
ジャングル大帝の秘密の扉、と・・・あった、ここに打ち込むのか・・・・よし!
老猫のひげをつんつんしてはソヨカゼに迷惑そうな顔をされてた也幸くんが、
呼ばれて僕のほうへ来た、膝にのせて、っと・・・検索ワード、猫猫園、っと・・・よし繋がった!
僕「前の子猫ちゃんたちが貰われていった、猫猫園のホームページだよ」
僕「あの子たちいるかな・・・あった、三毛猫のオス登場!だって」
僕「ライブカメラコーナーもある、今現在の猫猫園の中が見れるよ、ちょっと待ってね」
猫猫園の園内だ!ライブカメラを自由に動かしてズームインもできる。
貴重な三毛猫のオスも・・・也幸くん、ちょっと目がうるんでる。
詐欺女にひっかかった傷心も少しは塞がるな、本当、家族って大事だ。
当分はこの子たちの面倒に専念するかなぁ・・・うん、そうしようっと。