僕「いよいよ開始だ・・・でも、由優さんが・・・来ない?」

 

まだトイレに並んでるのかな?

まさか僕にあきれて帰っちゃったって事・・・

いや、それはないはず、だってまだ何もしてないし。

 

僕「あ、はじまった・・・」

 

〜ミュージカル・ジャングル大帝上演中〜

 

僕「・・・・・」

由優「・・・・ごめんね」

僕「あ!もう始まってますよ」

由優「お土産見てたら始まっちゃって、最初のシーン終わるまで入っちゃ駄目って言われたのぉ」

僕「そうなんだ・・・って声出しちゃまずそうだから続きは後で」

 

厳しいんだな劇団十期って。

演劇の途中で入るには、シーンとシーンの間でないと駄目なのか、

これだと演劇中にちょっとトイレ、なんて出来ないな、油断ならない・・・

 

〜ミュージカル・ジャングル大帝楽しいよ!〜

 

なかなか面白いな、

子供向けというよりファミリー向けだ、

ミュージカルとはいえ、格式高いとかじゃなく大衆演劇って感じ。演目にもよるんだろうけど。

変に構えて来るんじゃなかったなー、これなら雪巳ちゃんたちでも楽しめそうだ、現に雪沙ちゃんより小さい子だって見てる。

・・・三姉妹、劇場の外でぼーっと待ってるんだろうか?だったら可哀想だなぁ、勝手につけてきたとはいえ・・・・・

 

〜ミュージカル・ジャングル大帝、ハラハラドキドキの後半へ続く!!〜

 

アナウンス「それではここで20分の休憩に入ります・・・」

僕「思ったより面白いね、みくびってた」

由優「そうねー、子役の子がかわいかったわねー」

僕「うん、小学生なのに運動神経が凄かった、びっくり」

由優「ああいう子供、ほしいなぁ」

 

と言いながら僕の肩に頭をすりすり・・・

まさか、子供ほしいってアプローチっていうことは・・・

いや、でも、それだったらちゃんと、順序っていうものが・・・あるよな。

 

由優「お土産買ってあげる!」

僕「え!?」

由優「行きましょう♪」

 

ぐいっと引っ張られる、

やっぱりお姉さんなんだなぁ・・・

まさに理想のタイプ、彼女として申し分無いどころか過ぎる相手だよ。

 

由優「おそろいのTシャツでも着る?」

僕「いいけど由優さんってこういうのも着るんだ」

由優「寝るときにね。このスカーフは私が個人で買おうかしら」

僕「それくらいだったら僕が買います!」

由優「だーめ!ここは私が出すの!すみません、Tシャツ2つとこのスカーフを・・・」

 

あーあ買っちゃった、

そしてTシャツを貰う・・・

僕のほうが奢ってもらうなんて珍しい、由優さんって本当に良い人なんだな。

 

由優「早速今夜から着るね」

僕「ぼっ、僕も!」

由優「だったら一緒に着ようよ、ね?」

 

い、い、いっ、いっしょに・・・一緒にって!!

 

雪沙「え〜、ジュース500円だってぇ、たっかぁ〜い」

雪菜「雪沙・・・おっきい声で言わないの・・・」

雪巳「お土産のプチケーキみんなでお金出して買おうよー」

 

あ!三姉妹が飲食売店に!

入ってきちゃったのか・・・どこにそんなお金が?

答えは僕が今朝、1万円ずつ渡したから・・・一番安い席、学割なら2150円だもんな。

 

由優「そうそう、ジュース持って入ろうとしたら怒られちゃった」

僕「え?客席でジュースは駄目なんだ」

由優「せっかく君のも買ったのに、慌てて2杯飲んだの・・・だからもう1度トイレ行ってくるねっ♪」

 

そんなにかわいく言わなくても・・・

僕は三姉妹に見つかる前に席につこう。

 

僕「でも、ちょっとだけホッとしたかも」

 

暑い外で待ってなくてよかった・・・

ちゃんと楽しんで観てくれてるといいけどなぁ。

 

アナウンス「只今より後編を開始いたします・・・」

 

って、また戻ってこないのかよ!!

 

〜ミュージカル・ジャングル大帝、後半スタート!〜

 

う〜ん、普通に面白い・・・

喜怒哀楽が凝縮されてる、さすがは手塚作品だ。

合言葉は「くよくよするな、なんとかなるさ」か・・・20歳にして勇気付けられるよ。

 

由優「・・・・・チャオ♪」

僕「おかえりなさい・・・」

 

やっと戻ってきた。

そして僕の肩に頭をのせて・・・

お姉さんなのにかわいいな、手をにぎってあげよう。

 

由優「!!」

僕「え!?」

 

弾かれた!?

 

由優「・・・トイレ行ってきた後だ・か・ら」

僕「あ!ごめんなさい・・・」

由優「しーーーーーーっ!」

 

まだまだ修行が足りないな、女心の。

 

〜ミュージカル・ジャングル大帝、いよいよクライマックスへ!!〜

 

すごい迫力、そしてすごい演技だ・・・

これは違う意味で由優さんの手を握り締めたい!でも・・・

 

由優「ZZZZZzzzzz・・・・・」

 

なんでこんな大事な所で寝てるかなぁ・・・

でも起こすの可哀想だから、しょうがないか。

後で細かく内容を教えてあげよう、それかまた一緒に来よう。

 

〜ミュージカル・ジャングル大帝、終了!!!〜

 

パチパチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!

 

・・・・・長い拍手だ、

そして何度もしつこく出てくる演者さんたち、

前半しか出番のなかった子役もみんな揃ってる。

 

由優「素晴らしかったわね」

僕「う、うん・・・」

 

いつのまにか起きた由優さんも拍手してる、

きっとみんなの拍手で目が覚めたんだろうな・・・

やっと拍手が終わって場内が明るくなった、みんな席を立つ。

 

由優「ミュージカルっていいわねー」

僕「今まで食わず嫌いだったけど、良すぎてびっくりしました」

由優「でも劇団って事は普通のお芝居もやるのよね?見てみたいわ」

 

・・・寝なきゃいいけどね。僕は寝そうだ。

 

由優「来週行きましょう!」

僕「え?来週?」

由優「これ!このチラシ、劇団十期の新作・革命館!」

 

ははは・・きつそうだけど、

でも由優さんが観たいっていうんなら、行くしかないか。

 

由優「前売り券買いに行きましょう」

僕「今すぐ?」

由優「売り切れたら嫌でしょう?来週しか私、時間ないしぃ」

 

急にアクティブになってきた・・・

ぐいぐい引っ張られ春劇場を出る、

大きな劇場の隣にある小さな小屋・・・これが自由劇場か。

 

由優「買ってくるね・・あー、さっきのお土産で手持ちなくなっちゃったぁ」

僕「じゃあ僕が買いますよ」

由優「本当?だったら2万円だけ貸して!それで買ってきちゃうから」

僕「いいですよ、はい、2万円・・・でもS席って1万1500円なんじゃ・・・?」

由優「端数くらいなら持ってるから、買ってくるから座って待っててね」

 

言われた通りベンチに座る・・・

そして少し離れたベンチには雪巳ちゃん雪沙ちゃんが座ってる、

あれ?雪菜ちゃんは?・・・いた!自由劇場に入っていく?いいのか?チケットは!?

 

僕「係員さんも別にとがめない・・・あ、トイレ借りたのか」

 

由優さんは前売り販売所で何かゴタゴタしてる、

お金が実は足りなかったとか?なら引き返してくるはず・・・

2人並んでる席が無いとか?チラシを見る・・・明治初期の革命物語・・・頭痛が出そうだ。

 

僕「帰って来た・・・雪菜ちゃんが」

 

ちらっ、と由優さんの方を見てる、

まさか隠し持ってたナイフでグサッと!

・・・する訳はないか、そして由優さんも終わって戻ってきた。

 

由優「手間取っちゃった」

僕「買えました?」

由優「うん、すっごく良い席が取れたの!」

僕「どこどこ?見せて見せて」

由優「駄目!当日、座ってからのお楽しみ!私が預かってるね」

 

楽しみだけど最前列真ん中とかで寝てたら演者さんに素で怒られそうだ。

 

由優「おなかすいたぁ」

僕「じゃあ御飯食べに行きましょう」

由優「実はもう予約してあるの、夕食と・・・ホテル」

 

どっっっきぃーーん!!!

 

由優「今度は私につきあってもらう番、ね?いいでしょ?」

僕「は、はいっ!どこへでも!!」

由優「地下鉄で虎ノ門まで行くからちょっと時間かかるわ」

僕「タクシーで行きましょう」

由優「いいの?たのもしいわぁ」

 

・・・・・三姉妹は見なかった事にしよう、うん。

 

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