遅く起きた朝、今日は大人の女性とデートの日!

天気は快晴!・・・と言いたいけど曇りだ、しかもどんより。

雨が上がってくれただけ良しとすべきだけど、途中で降りそうで嫌だな。

 

僕「今日も電車で行くか」

 

そうだ、軽く香水でもつけようかな。

後は雨で蒸した時のために発汗を抑えるスプレー・・・

服は・・・ネクタイまでは行き過ぎだよなぁ?う〜ん、どうしよ・・・

 

雪沙「あ〜、おにぃちゃんかっこいい〜」

僕「え?本当?」

雪沙「うん〜、べつじんみたぁい」

 

小5でも女の子に褒めてもらうと嬉しいな。

 

僕「そうだ!雪沙ちゃん、雪巳ちゃんと雪菜ちゃんを呼んできて」

雪沙「はぁ〜〜〜い」

 

夕べは也幸くんが部屋で寝てくれたおかげで、

誰にも襲われる事はなかった・・・雪菜ちゃんがデートのこと聞いてたとしたら、

阻止しようと体中や顔中にキスマークでもつけかねない。也幸くんは女色情霊対策のお札みたいだ。

 

雪巳「なーにー?どうしたのー?」

雪菜「いま・・・お昼ご飯つくってる・・・です」

雪沙「つれてきたよぉ〜」

也幸「・・・・・」

老猫「にゃぁ〜〜〜〜〜」

 

也幸くんとソヨカゼは余計だ。

 

僕「猫と也幸くんは呼んでないから、ごめんね」

也幸「・・・・・(コクッ)」

僕「雪巳ちゃん、雪菜ちゃん、雪沙ちゃん、よく働いてくれたよね」

 

サイフを取り出し、1万円ずつ渡す。

 

僕「ちょっと早いけど8月分のお給料だよ」

雪巳「えー、こんなにー?」

雪菜「凄く多い・・・・・です」

雪沙「いいのぉ〜?ほんとにいいのぉ〜?」

僕「うん、それで僕は午後から出かけるから、遊びに行くといいよ」

 

これで何とかデートをごまかそう。

 

雪巳「じゃーお兄ちゃんも一緒にー」

僕「僕は用事があるから・・・今夜も夕食はいらないから」

雪菜「・・・・・・・」

僕「そうだ!多過ぎるっていうなら、弟妹たちとそのお金で遊んできなよ」

雪沙「ど〜しよ〜、きゅ〜にいわれてもわかんなぁ〜い」

 

これで雪巳ちゃんたちが弟妹と遊びに行っている間、

僕は健全に大人の女性と大人のデートを・・・僕って頭いい!

うん、これでいいんだ、これが正常な大人のする事なんだ、きっと。

 

僕「也幸くん、お姉ちゃんたちが遊びに連れていってくれるよ」

也幸「・・・・・・?」

僕「よかったね、どこへ行くかはお姉ちゃんたちに聞いてね」

 

よし、これをきっかけに、大人の恋人を作る事にしよう!!

 

雪菜「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

午後1時の5分前、待ち合わせの浜松町駅についた、

由優さんは・・・いた、すでに待っててくれたみたいだ!

 

☆まちあわせ☆

僕「由優さーん!」

由優「こんにちはー、早いのねー」

僕「由優さんだって!」

 

女性は遅れて来てもいいのに、

僕より早く来て待っててくれてたなんて、嬉しいな。

しかも、かなり着飾った格好・・・大人の色気がムンムンだよ。

 

由優「さ、行きましょう」

 

きゅうっ、と腕を組んで手を握ってくる・・・

髪や服から匂う大人の可憐な香り・・・あぁ・・・いぃ・・・

美鈴ねえさんだと、これがちょっとキツいんだよな、

薬剤師の薬の匂いを消すためなんだろうけど・・・

 

由優「他に向かってる人も多いみたいね」

僕「はい・・・夏休みだけあって親子連れも多いですね」

由優「あら、子供だけっていうのもいるみたいね、ほら後ろ」

 

振り返ると・・・ええっ!?

あれは雪巳ちゃん雪菜ちゃん雪沙ちゃん!?

あ、電柱の影に隠れた!バレバレなのに・・・僕を尾行している!?

 

由優「この流れに乗っていけばつきそうね」

僕「はい・・・でも劇場はいっぱいあるみたいですね」

由優「ジャングル大帝はどこかしら・・・あれね、あの一番大きな劇場」

僕「本当だ、レオの顔がでっかく貼ってある」

由優「わかりやすくてよかったわぁ、行きましょう」

 

・・・・・背後が物凄く気になるけど、この際無視しよう。

 

僕「当日券売り場はここですね」

由優「S席11500円ですって、大丈夫?」

僕「全然平気です!由優さんの分も出させてください!」

由優「いいのぉ?無理しないでC席3150円でもいいのよぉ?」

僕「学生はさらに千円引き・・・いえ、ここはS席の、真ん中の席で!」

 

買って劇場に入ると豪華な吹き抜けのロビーだ、

劇団十期の係員がチケットをもぎると否応無しにチラシを渡される、

ファンクラブ入会案内に他の劇場の宣伝チラシ・・・記念に持って帰ろう。

 

僕「こっちかな?違う、これは秋劇場だ」

由優「春劇場はこの入口みたいね」

僕「お土産売り場もジャングル大帝グッズでいっぱいだ」

 

Tシャツにお菓子にプログラム・・・

分厚いプログラムは写真集っぽくって3500円だ、

あとは今日の出演者一覧、これは無料で配ってる、って役者名見てもピンと来ないけど。

 

由優「綺麗な劇場ねぇ」

僕「それに大きい・・・席につきましょう」

 

中央のちょっと前のほうに座る、

振り向くと・・・客席は三階建てだ、凄い!

確か2000人くらい収容できるんだっけ?すでに8割埋まってる。

 

由優「今のうちにトイレに行っておくわね」

僕「はい、待ってます」

 

・・・・・後姿も華麗だなぁ・・・

僕なんかで本当に、お相手が務まるのだろうか?

ミュージカルかぁ・・・ん?ステージの下に何かある・・あれは、オーケストラ!?

 

僕「すご・・ステージの下にオーケストラが埋まってる」

 

という事は生演奏か・・・

緊張しちゃうな、って緊張したら僕もトイレに行きたくなってきた。

由優さんはちゃんとバックを持ってったみたいだし、席を空けても大丈夫だろう、行こう。

 

僕「それにしても、ちびっ子が多い・・・」

 

特に女の子が多い、

でももう、やばい所を覗く気にはならないぞ!

なぜなら今日は、大人の、お・と・な・の、女性とのデートなのだから!!

 

僕「・・・わ!トイレすんごい混んでる・・・と思ったら女子トイレだけか」

 

男子はスルー状態だ。

さっさと・・・あれれ?トイレを過ぎた先、

従業員用ドアの近くで由優さんが携帯電話をかけてる。

 

由優「・・・はい、今夜・・・・必ず・・・・・連れて・・・・・はい」

 

並ばなくていいのかな?

そうか、並びながら電話してると他の人に迷惑だもんな、

本当に気のきく大人の女性だ、ああいう大人に僕もならなきゃ・・・

 

僕「そうだ、トイレトイレ・・・」

 

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