僕「雨が止まない・・・」

 

昨日の夜から降り始めた雨は、

朝になっても止まず、お昼の今になってさらに強く降ってきてるようだ。

 

僕「はやく帰って、合コンの前にシャワー浴びるかな」

 

軽い買い物のつもりが予定外に時間がかかってしまった、

身だしなみを考えて色々買いすぎちゃった、合コンなんて緊張しちゃうな。

 

僕「あれ?あそこにいるのは・・・?」

 

☆雨降り雪沙☆

間違いない、雪沙ちゃんだ!

 

僕「何してるの?」

雪沙「みてぇ、雨になったらかたつむりがでてきたぁ〜」

僕「ほんとだ、昨日までカンカン照りだったのにね」

雪沙「どこかにかくれていたのかなぁ〜」

僕「そうだね、排水溝とか木の陰とかでじっとしてたんだよ」

 

こうして見ると、ほんっとに幼く無邪気な少女・・・

小5なんだから、これが本来の姿なのかも知れない。

こんな子が、あんなHな事とかしちゃうのはやっぱ駄目だよな。

 

僕「どこか行ってたの?」

雪沙「ん〜、おにぃちゃんをむかえにきたのぉ」

僕「僕?傘なら持ってってるのに」

雪沙「う〜ん〜、あいたかったのぉ〜」

僕「そっか・・・じゃあ、手ぇ繋いで帰ろう」

 

きゅっ、と急いで握ってきた幼い手。

そうだよな、こういう子の手は、こうして握るためにある。

変な所をさわらせちゃ駄目だ・・・合コンがうまく行ったら、もう変な事はやめさせよう。

 

僕「不審者とか出るみたいだから気をつけなきゃ駄目だよ」

雪沙「わかってるぅ〜、がっこ〜でもいつもいわれるよぉ〜」

僕「特に雪沙ちゃんはかわいいから狙われ易いのかもね」

雪沙「おにぃちゃんにならねらわれてもいいなぁ〜」

僕「僕は襲わないって!人聞きの悪い事言わないでほしいな」

 

・・・それに襲われるとしたら、僕のほうだよ、まったく。

 

 

 

 

マンションの玄関に入ると、

掲示板に手書きの貼り紙が新しく貼ってある。

 

僕「なんだろ?管理人の字だけど・・・」

 

それどれ・・・

 

『警告!当マンションにおいて、猫などの動物の声、ベランダでの夜間の花火など

 騒音を撒き散らす苦情が出ております、今後このような事があった場合、当マンションから

 退去していただきます、また、そのような迷惑行為をする住人の情報をお持ちの方は管理人まで』

 

僕「なんだこりゃ・・・」

雪沙「なんてかいてあるのぉ〜?」

僕「ま、気にすることないよ、早くいこっ」

 

あの管理人、ピンポイントで狙ってきたな・・・

僕がしっかりしていれば大丈夫だけど、気をつけないと。

何で僕があの管理人と戦わなきゃいけないのか疑問は残るけど・・・

 

雪沙「あ〜〜〜〜!」

 

エレベーターの前では雅幸くんが立ってる、

雪沙ちゃんがアカンベーをするとムッとしたままこっちを睨んでる・・・

 

僕「雅幸くん・・・こんにちは」

雅幸「・・・・・」

雪沙「こんなのにあいさつすることないよぉ〜」

僕「こらこら!双子なんだから、こんなのとか言っちゃ駄目だって!」

雪沙「ひどぉ〜い、まさゆきぃ、たかゆきにあげたズボンはいてるぅ〜」

 

え?あの水色の半ズボン・・・

初島で雪沙ちゃんが隆幸くんのお土産用に買ったやつだ!

というか、うまくのせられて僕が買わされたんだけど、それを雅幸くんが履いてる。

 

雅幸「・・・・・・・・・ふんっ」

雪沙「にげたぁ〜〜〜」

僕「まぁまぁ、着る物がごっちゃになるのってよくあるんでしょ?」

雪沙「でもぉ〜、まさゆききっと、たかゆきからとったぁ〜」

僕「そこまで気にしてたらきりがないよ、エレベーターきたよ、乗ろう」

 

でも雅幸くん、何しにここへきてたんだろ?

ズボンのお礼?それとも雪菜ちゃんを待ってたんだろうか?

睨んでたよなー、多分僕の事も・・・でも、あの位の子供なら嫉妬なんてかわいいもんだ。

 

雪沙「あのねぇ〜、あのねぇ〜」

僕「なになに?どうしたの?」

雪沙「まさゆききっとぉ〜、どこかへあそびにつれてってほし〜んだよぉ〜」

僕「えっ、僕に!?」

雪沙「おにぃちゃん〜、のお金でぇ〜、ゆきなおねぇちゃんにぃ〜」

 

やっぱりそうか・・・贅沢な奴だ。

 

僕「それで張ってたのかな」

雪沙「きの〜、おとぉさんがおにぃちゃんに言ってたからぁ」

僕「僕に・・・あ、そっか、他の子たちもどこかへ連れてって欲しいって話ね」

雪沙「それを〜、まさゆきがきいてたみたいぃ〜、だからおにぃちゃんにぃ〜」

僕「僕にお金と雪菜ちゃん両方を出させようって思って来てたのか」

 

でもまぁ、雪菜ちゃんがみんなを動物園に連れて行った時みたいに、

雪巳ちゃんたち三姉妹に任せて、雅幸くん以下の弟妹たちをどこかに遊びに連れて行ってもらうのもいいかもな。

 

僕「後で三鷹アニメ美術館のインターネットサイトでも見るかな・・・」

雪沙「まんがみにいくのぉ〜?」

僕「美術館だよ、後で見せてあげるよ、でっかいカニバスのぬいぐるみもあるよ」

 

 

 

 

 

昼食を終えて一息ついた、

僕は色々と身だしなみ中・・・

合コン、失礼のない格好でいかないとな・・・

 

雪巳「あー、お兄ちゃんおめかししてるー」

僕「友達と食事に行くだけだから!」

雪巳「でもー、デートに行くみたいだよー」

雪菜「香水みたいなのつけてるの・・めずらしい・・・です」

僕「きょ、今日は雨で蒸れるから・・・別に変な事しに行くんじゃないから!」

 

やばい、まだ外に出てないのに汗がでてきた・・・

 

雪沙「なんじにかえってくるのぉ〜?」

僕「わからないけど夕食たべてくるだけだから10時過ぎかな」

雪巳「10時半過ぎたら鍵閉めちゃうよー」

僕「門限かよ!第一ここは僕の家だし!!」

雪菜「寝ないで待ってる・・・・です」

僕「いや、酔ってひょっとしたら友達の家に泊まるかも・・・」

雪巳「えーーーー、泊まってきちゃうのー!?」

僕「帰る!帰るから!帰れなくなったら電話するけど、帰れるようにするから!」

 

なぜか追い詰められてる・・・

合コンがそんなに悪い事なのか!?

・・・後ろめたくないかって聞かれると、ないとは言い切れないけど。

 

僕「じゃあ行ってくるから・・・」

雪菜「待って・・・猫の毛がズボンについてるです・・・」

僕「ほんとだ、よく気付いたね、ありがとう」

雪沙「まちきれなくなったらむかえにいくねぇ〜」

僕「駄目!雪巳ちゃん、家の事はお願いね」

雪巳「うんー、行ってらっしゃーい」

僕「行ってきます、って本当に食事してくるだけだから!」

 

玄関では老猫と也幸くんがダラーンと伸びてる。

 

僕「也幸くん、夕食終わったら下の家に戻るんだよ?」

也幸「・・・・・・・・」

老猫「・・・・・・・・・・」

僕「聞いてる?・・・じゃあ、行ってくるから」

老猫「・・・・・」也幸「・・・・・・・」

 

ふぁさっ、と老猫のしっぽが大きく揺れてる、手を振る代わりみたいだ、

也幸くんもそれにあわせて手だけでばいばい・・・雨の日は猫も也幸くんも眠いみたい。

 

僕「バイクはきつそうだな、タクシーで行くか・・・」

 

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