エレベーターで19階に昇ると、

雪沙ちゃんが20階の僕の家へ通じる、

階段前の扉にもたれていた、にこにこしながら。

 

雪沙「えへへ〜、おにいちゃ〜ん・・・」

僕「んっと・・・じゃあ、入ろうか」

雪沙「うんっ♪」

 

満面の笑み・・・

家を追い出されたというのに・・・

・・・でも、美鈴姉さんも言ってたけど、

この子たち、多分ここに住みたいって思ってるんだよな、

それをはっきりとした形で母親に言われて雪沙ちゃんは大喜びしてた・・・・・

 

 

ガチャ

 

雪沙「ただいまぁ〜〜〜」

僕「ただいま、って・・・」

 

玄関に入ると靴を脱ぎ散らかして僕の部屋へ向かっていった、

その靴を綺麗に揃えてあげる・・・あいかわらず、よくこんなボロボロの靴はいていられるなぁ。

部屋に入ると帽子とランドセルを脱いで、ちょこんっと座って僕を待っていた、膝をつけてかわいらしく・・・

 

雪沙「おにぃちゃん、どうするぅ〜?」

僕「どうするって、雪沙ちゃんはどうするの?」

雪沙「何でもするよぉ?そ〜じもせんたくも、おりょうりもおつかいも、あとはぁ、あそんであげるぅ〜〜」

 

・・・遊んであげるって、なんだかなぁ・・・

こんな少女に言われると、おままごとでもしてるみたいだ。

もしくは、雪沙ちゃんが弟か妹の面倒でも見ているようなニュアンスっぽい・・・

 

僕「何でもできるの?」

雪沙「するよぉ、できることはするぅ、でも、できないことはごめんなさぁ〜い」

僕「はは、そりゃそうだ」

 

にこにこしながら僕を見上げてる・・・

でもやっぱり、不安もあるんだろうなあ・・・

何でもするって・・・うーーーん、何をさせればいいのか・・・

 

雪沙「ん〜、おふろそうじしよっかぁ」

僕「え?あ・・・うん、じゃあ、お願い」

雪沙「は〜〜〜い」

 

ピンポーン

 

あ、誰か来た!

 

雪沙「はいは〜〜〜い」

僕「あ、ちょ、ちょっと!」

 

玄関へ行く雪沙ちゃん、

って僕が出ないとやばい気が・・・

追いかけていく・・・モニターに映ってるのは、雪菜ちゃんだった。

 

雪沙「あれ?これ、ここ押すのぉ〜?」

僕「いいからいいから!・・・・・雪菜ちゃん?」

雪菜「あ・・・・・はい」

 

ピッ、とロックを開ける、

ドアをくぐって階段を上がってくる・・・

やっぱり雪菜ちゃんも、ビッグマザーに言われて・・・?

 

ガチャッ

 

雪菜「・・・・・あの」

僕「いらっしゃい」

雪菜「その・・・・・お母さんに・・・」

雪沙「ゆきなおねえちゃんも〜?」

雪菜「・・・・・・・うん」

 

ちょっと動揺してるのかな?

そりゃそうだよ、親に正式に出ていかされる事になったら、

いくら僕の家が居心地良くても不安な気分になるよ、まだ小学生だもの。

 

僕「じゃあ、上がって」

雪菜「・・・・・いいの?」

僕「うん、あがっていいよ」

雪菜「・・・・・・・う、うん・・・」

僕「それとも、家に帰りたい?」

 

首を横に振る雪菜ちゃん、

眼鏡のレンズが昨日と同じ、片方割れた線が入ったままだ・・・

ランドセルを脱いで、それを玄関に置こうとする・・・

 

僕「遊びに来たんじゃないんだから、部屋に持っていって」

雪菜「あ・・・・・は、はい・・・」

雪沙「ぢゃあ、おふろあらってくるねぇ〜〜」

僕「ひとりでできる?」

雪沙「うんっ♪」

 

元気にパタパタと風呂場へ走っていった・・・

雪菜ちゃんは僕の部屋へ入ってランドセルと帽子を脱いで・・・

小学校のブラウスも脱いで・・・って、上はスリップ下着姿に!!

 

雪菜「・・・私も・・・お風呂洗う・・・ます」

 

スカートも脱いで・・・

脱いだ服を持ってお風呂場へ・・・

洗濯したいんだろうな、やっぱり。

 

それにしてもドキッとする・・・

目の前で小学6年生少女の生脱ぎは心臓に悪い、

下着姿で止まってくれたからいいけど・・・

って、ブラウスもスカートも脱衣所で脱げばいいのになぜここで?サービス?

い、いや、きっと家での習慣なのだろう、脱衣所の無いユニットバスだから脱ぎちらかす・・それを途中で気づいたとか。

 

僕「さて・・・じゃあ、今のうちに買い物へ行くか・・・」

 

少なくともまた夕食は食べさせないといけないだろう、

だからその分の料理を買ってこなくっちゃ。

雪巳ちゃんも来るのかどうかわからないけど・・・って、来るよなあ、これは・・・

 

・・・

・・・

・・・

 

スーパーでの多めの買い物を済ませ、エレベーターに乗る。

あれ?雪巳ちゃんが来た!閉まりかけの扉を「開く」を押して、っと・・・

間に合った、雪巳ちゃんが入る、女子中学生の「女の子のいい匂い」が僕の鼻をちょっとくすぐる。

 

雪巳「ありがとー」

僕「うん・・・19階だよね?」

雪巳「うん、私、今日から家政婦だってー」

僕「僕の?」

雪巳「そうだよー」

 

やっぱりな・・・夏休み終わるまで・・・

って、よく考えたら夏休みってまだだよな?

小中学校はまだ、海の日まで学校があるはず・・・

 

僕「えっと、家政婦って、住み込み?」

雪巳「そだよー、聞いてないー?」

僕「い、いや、確認しただけ・・・」

 

19階についた。

キーを開けて階段をあがる・・・

 

僕「まだ授業残ってる?」

雪巳「ちょっとだけねー」

僕「じゃあ、教科書とかは全部持ってこなくていいの?」

雪巳「こっちにー?学校に全部置いてあるから学期の終業式には持ってくるよー」

僕「そっかそっかそっか・・・」

 

雛塚家に置いてある教科書を僕の家に持ってこなくて大丈夫か、

って事を聞いたつもりだったんだけど・・・教科書は全部学校かぁ。

そういえば宿題とか全部学校でしてるんだっけ、じゃあ今持ってるカバンの中は弁当や筆記用具くらいかな?

 

ガチャッ

 

僕「ただいまー」

雪巳「おじゃましまーーーす」

 

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