・・・・・・・とたとたとた・・・
廊下を歩いてくる音がする、
ようやく終わったのかな?と思ったら入ってきたのは・・・
雪沙「おにぃちゃ〜ん」
雪菜「まだもうちょっとかかるみたい・・・です」
僕「あれ?雪巳ちゃんは?」
雪沙「ゆきみおねぇちゃんだけおはなししてるよぉ〜?」
雪菜「その次は私だけ・・・そのその次は・・・雪沙だけ・・・です」
3人同時の面談から個別に切り替わったのか・・・
嫌だなぁ2人で小さい女の子を問い詰めるやり方って。
もちろんこの子たちのためなんだろうけど、変なモヤモヤを感じ、納得いかない。
僕「美鈴義姉さんもいないしなー・・・」
雪菜「いなくても・・・平気・・・なように・・・する・・・です」
僕「そうだね、怯えててもしょうがない」
雪沙「なりゆきあそぼぉ〜」
也幸「・・・(コクコク)」
マイペースな雪沙ちゃんだ。
也幸くんは老猫をいじるのをやめて、
両手を握って雪沙ちゃんに突き出す、また両方ハズレのアレかな。
雪沙「ん〜〜〜・・・こっちぃ〜」
也幸「・・・・(ぱっ)」
案の定、何もない・・・雪沙ちゃんのリアクションは?
雪沙「わぁい、あたったぁ〜〜!」
也幸「!!!(コクコク)」
僕「ええっ!?なっ、なんにもないよ?」
雪沙「よくみてみてぇ〜」
僕「よく見て、っていっても手のひらには・・・・あ」
細くて白い猫の毛が1本・・・
僕「これが当たり?」
也幸「・・・(コクッ)」
僕「僕にやったときも、あった?」
也幸「・・・・(コクコク)」
雪沙「つぎはゆきさのばんだよぉ〜」
なんてわかりにくいんだ・・・
長年、也幸くんの世話をやってる雪沙ちゃんだからわかったのかも。
そう考えると也幸くんから雪沙ちゃんを取り上げてこの家に住まわせたのは、ちょっと悪い気がするな。
雪菜「お兄ちゃん・・・」
僕「ん?どうしたの?」
雪菜「お兄ちゃんを・・・信じてる・・・です」
僕「う、うん、ありがとう」
雪菜「だからお兄ちゃんも・・・信じて欲しい・・・です」
言いたい事は、わかる。
今日は僕がこの三姉妹と家族になるための試験のようなものだ。
だからこそ、みんなで結束して、相談所の人にわかってもらわないといけない。
雪沙「どっちだぁ〜〜」
也幸「!!!・・・!!(ぽんっ)」
雪沙「あたりぃ〜〜、はい、あ〜〜〜ん」
也幸「・・・(ぽか〜ん)」
雪沙「えいっ!!」
ぽいっ、と肝油ドロップを入れた、
ちゃんと忘れず食べさせてる雪沙ちゃんも偉いな。
雪菜「・・・洗濯物・・・畳む・・・です」
僕「お願いするよ、僕はテレビでも見てるから」
とはいっても画面を本当に「見てる」だけ、
上の空状態で相談所の人たちの事を考える・・・
ああ言われたらどうしよう、こう言われたらこう答えよう・・・
雪巳ちゃんたちが何を聞かれてそれにどう答えたかによっても変わってくる。
僕は一応大人なんだから、僕だけでも大人らしい受け応えや戦略を考えていよう。
・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・雪巳ちゃんが戻ってきた!
雪巳「次は雪菜だよー」
雪菜「うん・・・・行ってくる・・・」
僕「雪巳ちゃん、どうだった?」
雪巳「うんー、ばっちりだよー」
僕「そっか、よかった」
何がどうばっちりなのかわからないけど、
雪巳ちゃんなりに手ごたえがあったのなら大丈夫だろう。
続いて雪菜ちゃん・・・僕の顔をじっと見つめてる、不安そうだ。
僕「笑顔で、ね」
頭をやさしくなでてあげると口元が緩む。
雪菜「うん・・・・・です」
僕「怖くないから、いなくても僕がついてるから」
雪菜「・・・・・・・・・はい」
意を決したように廊下へ出ていった。
さて、僕は雪巳ちゃんから色々と情報を仕入れなきゃ。
僕「それで、相談所の人、何を聞いてきたの?」
雪巳「んー、何を聞かれたかお兄ちゃんに言っちゃ駄目だってー」
僕「なんで!?僕に聞かれるとまずような話でもしたの?」
雪巳「してないと思うけどー、言っちゃ駄目って言われたから言えないのー」
僕「怖いな・・・でも雪巳ちゃんが言いたくないなら、それでいいよ」
相談所の人が言うな、って言った事を無理やり聞いたら、
僕が雪巳ちゃんたちを脅している風にも取れなくもない。
ひょっとして、そういう事を調べるために口止めを・・・?まさか、考えすぎだろう。
雪巳「洗濯物畳んであるー、しまってくるねー」
僕「うん、お願い」
雪沙「あ〜、なりゆきぃ〜、ねこのきんたまつついたらきたないよぉ〜」
也幸「・・・・・(つんつんつん)」
雪沙「も〜だめ〜、てぇあらってくるのぉ〜!」
あの老猫もそろそろ洗いたいけど、
まだ手術跡があるからなぁ、もうしばらくの我慢かな。
雪沙「おにぃちゃ〜ん、ばんごはんなににするぅ〜?」
僕「そうだな、ちょっと最近豪華すぎたから簡単なのでいいよ」
雪沙「ぢゃ〜カレーつくるねぇ〜」
僕「カレーか、いいね、雪沙ちゃんが作るの?楽しみだなぁ」
雪沙「おにくいっぱいいれるねぇ〜・・・も〜なりゆきぃ〜、つっつかないのぉ〜!」
・・・・・次は雪沙ちゃんが色々聞かれる番なのに、
能天気というか肝っ玉が据わっているというか、
ぐじぐじ考え込んでてもしょうがないって事かな。
雪沙「も〜、ゆきさがなりゆきのきんたまつっつくよぉ〜?」
也幸「!!!」
雪沙「てぇ〜あらいにいこっ」
2人で廊下へ出てっちゃった、
老猫も起き上がってそれについていく・・・
部屋に残されたのは僕1人、落ち着かないけどどっしり構えていよう。
・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
雪菜「私の番・・・終わった・・・です」
僕「おかえり、次は雪沙ちゃんだね」
雪菜「もう呼んで相談所の人のとこへ・・・行った・・・・です」
僕「そっか・・・ん?カレーの匂いがするね」
雪菜「雪沙が作ってて・・・いま・・・雪巳お姉ちゃんに・・・交代・・・」
僕の隣にちょこんと座ってテレビを見る。
・・・何を聞かれたかとかは問わない方がいいな。
雪菜「お兄ちゃん・・・」
僕「ん?」
雪菜「お兄ちゃんを・・・・信じてる・・・・・です」
僕「そ、そう、ありがとう」
雪菜「信じてます・・・・・です」
どういう事だろう、
きっと相談所の人たちと話した事に関係があるんだろうけど、
その踏み込んだ内容は聞くわけにはいかないから・・・・・まあいいや。
雪菜「猫の毛・・・ちらかってる・・・掃除する・・・です」
僕「うん、お願いするよ」
雪菜「掃除機かけるから・・・ちょっとうるさくなる・・・です」
僕「いいよ、テレビ消そうか」
雪菜「・・・・・・・どっちでも・・・・・です」
台所へ行ってみよう。
廊下に出ると客間から漏れる僅かな声が気になる、
でも聞いちゃいけないから急いで台所へ・・・中に入ると・・・
雪巳「お兄ちゃんー、もうちょっと待ってねー」
ちゃんとした服の上に黄色いエプロンをつけてる、
今朝の裸エプロンがまるで夢でも見てたかのような・・・
ああいうのは夢のまま、幻として片付けておこう、うん。
老猫「にゃぁ〜〜〜」
雪巳「もー、足元じゃまー」
調理中の雪巳ちゃんの足元でソヨカゼがごろごろ転がってじゃれてる、
さらに也幸くんまで真似してごろごろ・・・猫に比べればでかいし本当に邪魔だ。
雪巳「也幸も真似しないのー」
也幸「・・・・・(ごろんごろん)」
老猫「ぶにゃぁぁ〜〜〜〜〜」
見てるだけでほほえましい・・・
こういう家庭っていいなー、彼女を作りたくなっちゃう。
雪巳ちゃんが恋人だったら、こういう光景も毎日見られるんだろうな・・・
雪巳「もー、しっぽ踏んじゃうよー?」
僕「よし、僕も手伝うよ、何かさせて」
雪巳「じゃー、じゃがいもむいてー」
僕「いいよ、そうだ!也幸くん、お肉叩ける?」
也幸「!!!(コクコク)」
こうしてたほうが気がまぎれるから、丁度いいや。
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
たたたたたた・・・・・
雪沙「おにぃちゃ〜〜〜ん」
僕「あ!終わったの?」
雪沙「うん〜、つぎはおにぃちゃんのばんだよぉ〜」
僕「えっ、僕?僕・・・一人だけ?」
雪沙「そうだよぉ〜〜〜」
最後に僕の個別面談があったのか・・・
よし、三姉妹が頑張ったんだ、僕も負けていられない!
僕「じゃあ雪沙ちゃん、料理あとは頼むね」
雪沙「うん〜、おにぃちゃんもがんばってぇ〜」
雪巳「そうだよー、お兄ちゃんが一番心配ー」
僕「ま、任せてって!じゃあ行ってくるよ」
也幸「・・・(手ぶんぶん)」
さあ、相談所の人がどう出るか・・・
三姉妹から色々聞いて、疑問点とか突っ込んでくるかも知れない。
でも、あの子たちを守れるのは僕だ!って胸を張れば、きっとわかってくれる・・・はず!
僕「失礼します」
客間に入ると相談所の2人がノートにつけたメモをチェックしてた、
僕が座るとそれを閉じる・・・もうそれだけでドキドキものだ、さあ、どうなるか・・・?
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