お寿司が終わって家に帰って来た、

僕の部屋では早速、三姉妹と作戦会議をしている。

 

雪巳「だからー、ママも悪いけど一番悪いのは広幸お兄ちゃんたちだよー」

僕「うーん、責任をなすりつけてやりすごす方法で本当にいいのかなあ」

雪沙「ゆきさがいっぱいおしゃべりするからぁ、そ〜だんしょのひともあきてかえっちゃうかなぁ〜」

僕「あ、雪菜ちゃん、美鈴ねえさんとの電話どうだった?」

雪菜「・・・・・お兄ちゃんに全部・・任せなさいって・・・」

 

やっぱり美鈴義姉さん、今回はノータッチの方針か。

 

雪巳「ねー、服とかどーしよー」

雪菜「旅行で買ってきた服が・・・いいです・・か」

僕「うーん、変に着飾ると怪しく思われちゃうかも」

雪沙「ふつ〜がいいのかなぁ〜」

僕「あ、でも雪巳ちゃんとか、前に相談所の人が来たときセーラー服着たんだっけ?」

 

・・・でもそれは美鈴ねえさんのやり方だし、

1回目と2回目ではまた違ってくるだろうしなぁ・・・

う〜ん、そもそも服装なんてそんなに気を使う事でも・・・あるか?

 

僕「お客さんが来ても変じゃない普段着で!」

雪巳「わかったー、着替えてくるねー」

雪菜「雪沙は・・・そのままでいい・・・よ・・・」

雪沙「うん〜、いまのうちにぱうだぁ〜つけとくぅ〜」

僕「じゃあ僕は・・・・・早いけど客間の掃除でもするかな」

 

で、也幸くんは・・・老猫と同じ格好で寝てる、

横になって・・まるで親子みたいだな、でも老猫の方が年上か。

 

僕「雪沙ちゃん1人でつけられるよね?」

雪沙「ん〜、つけてほしぃ〜けど〜、がまんするぅ〜」

僕「いい子だね、じゃあ掃除してくるから!」

 

相談所の人が来るから1人でつける気になったのかな?

・・・ていうか、雪沙ちゃん自分1人でちゃんとつけられるんじゃん!

今までは甘えてただけなのか・・・それでも、甘える相手がいなかったのなら仕方ないか。

 

僕「さて掃除・・・っていっても大して汚れてないな」

 

お客さんが来たときに使う部屋だからな、

座布団に猫の毛がちょっと残ってるくらい・・・

老猫かその前の猫がこっそり入り込んで寝てたんだろうか?はたいて、っと・・・

 

僕「テーブルも軽く拭いたほうがいいな、タオル持ってこよう」

 

ぴんぽーーーーん

 

僕「誰か来た!美鈴ねえさんだと嬉しいな」

 

管理人さんだったらさっさと帰ってもらおう、

児童相談所の人がいる前で何を言い出すかわからないし・・・

玄関へ行きモニターを見るとそこには2人の人影、あ、あの2人は!!

 

僕「はい」

女性「すみません、児童福祉事務所のものですが・・・」

僕「お、お久しぶりです!」

 

もう来ちゃったよ!

予定は5時とか言ってたのに、まだ3時前だぞ!?

これも1つの抜き打ち検査みたいなものか・・・一気に不安感がつのる。

 

僕「いま開けます!」

 

下のドアをあけて、慌てて雪巳ちゃんたちに連絡しなきゃ!

三姉妹の部屋へ急いで駆け込む!!

 

僕「相談所の人たち来たよ!!」

雪菜「きゃ・・・!!」

僕「わ!ごめん!着替え中だったね」

雪巳「もー、相談所の人の前で変なとこ見たら駄目だよー」

僕「わかってる、わかってるから早く着替えて!」

 

僕の部屋にいる雪沙ちゃんにも・・・ってパウダーつけてる最中だっけ?

 

僕「雪沙ちゃん!相談所の人が入ってくるよ!」 

雪沙「え〜〜〜〜〜まだとちゅ〜だよ〜」

僕「客間に通しておくから、終わったらちゃんと服を着て!」

雪沙「なりゆきぃ〜、せなかにつけてぇ〜、いそいでぇ〜」

也幸「・・・・・(目ごしごし)」

 

ぴんぽんぴんぽ〜〜〜ん

 

もう玄関の前まで来た!

 

僕「はいはい、いま開けます!」

 

急いで開けると相談所の職員さん2人が入ってきた。

 

職員女「失礼します、早くついてしまったもので・・・」

職員男「外は蒸し暑いですねー、すぐに汗がでてきてしまって・・・」

僕「どうぞどうぞこちらへ・・・雨が近づいてるみたいですよ」

 

客間に案内して座ると雪巳ちゃんが慌ててお茶を持ってきた。

 

雪巳「冷たい麦茶ですー」

職員女「雪巳ちゃんこんにちは、ちょっと焼けた?」

雪巳「うんー、島に行ってきたのー、楽しかったー」

職員男「よかったね、島で何してきたのかな」

雪巳「お魚釣ったりー、泳いだりー、夜は温泉だったよー」

 

う・・温泉って響きはちょっとやばいような気もしないでも・・・

 

雪菜「こんにちは、です」

 

しずしず入ってきた雪菜ちゃん、

ちょっと硬い表情で僕の隣に座った。

 

職員男「雪菜ちゃんも温泉行ってきたんだよね」

雪菜「うん、はい、猫がいっぱい、でした!」

職員女「前に会った時よりちょっとふっくらしたかしら?」

雪菜「毎日、お食事ちゃんと、食べてる、から・・・」

職員女「良かったわねー、こちらで面倒みてもらえて」

 

口元が緩む雪菜ちゃん、自然なほほえみだ。

 

とたとたとたとたとた・・・

 

雪沙「こんにちわぁ〜〜〜」

職員女「こんにちは、雪沙ちゃん元気ねー」

雪沙「うん〜、とってもげんきだよぉ〜」

職員男「温泉はどうだった?」

雪沙「はじっこからはじっこまでおよげたよぉ〜」

 

これでみんな揃った・・と思ったら、

遅れてヒョコヒョコと也幸くんが歩いてきて、僕の背中に・・・

 

也幸「・・・・・(むぎゅううう〜〜〜)」

 

全身で抱きついてきた!

 

僕「ははは、どうしたの」

也幸「・・・・・」

雪沙「なりゆきこうするとおちつくみたい〜」

僕「でもお客さんが来てるから・・・」

職員女「也幸くんこんにちは」

也幸「・・・・・(さっ)」

雪沙「あ〜、おにぃちゃんのうしろにかくれちゃったぁ〜」

 

何だかよくわからないけど、力になってくれるのかな。

 

職員女「それで美鈴さんは・・・」

僕「今日は来れないって言ってました、仕事なのか兄の家かはわかりませんが」

職員男「こちらで一緒に暮らしている訳ではないんですね?」

僕「ええ、でもたまに様子を見に来てくれますから」

雪巳「昨日も来てくれたよー、旅行のお土産渡したのー」

雪菜「お兄ちゃんと一緒に、私達を、助けてくれてる、です」

雪沙「なりゆきぃ〜、そ〜だんしょのひとにちゃんとあいさつしなきゃだめだよぉ〜」

也幸「・・・(ちらっ)・・・・・(さっ)」

職員女「美鈴さんはお仕事ですか、日曜なのに大変ですねー」

僕「あ、いや、仕事かどうかそこまで詳しい事は・・・」

 

そっか、今日は日曜だっけ、

夏休みだから曜日感覚がまるっきり無くなってる。

 

僕「でもそちらも日曜日に来ていただいて、本当にすみません」

職員女「いえ、日曜日の方がお子さんが家にいる時間ですから」

職員男「それにご両親もご自宅にいらっしゃる事が多いですから」

僕「なるほど、じゃあ見回りは日曜とかにやっているんですね」

職員男「見回りというか、ご訪問ですね、相談所に休みはありませんから」

 

・・・見回りなんて言ったらちょっと乱暴だったかな?

それより職員さんたちの本題は何だろう?単に様子を見に来ただけならいいけど・・・

 

職員男「そうだ、温泉に行かれた事なんですが、雪巳ちゃんたちの家には・・・」

僕「一応、お父さんの許可は取ってあったはずですけど、その」

雪巳「酔ってる時だと覚えてないかもー」

雪菜「これ・・・・みてほしい・・・です」

職員女「何かしら・・・あら、これは・・・許可証かしら?」

 

そうだ、ネズミーランド行く前に雛塚家のお父さんから貰った承諾書があったんだ、

どこへ連れていってもいいっていう・・・それを雪菜ちゃんが出して見せてくれてる、用意がいいな。

 

職員男「しっかりした字で書かれてますね」

僕「はい、お父さんに確認されてみてはどでしょう」

雪巳「酔ってなかったらねー」

雪菜「ママに言うと、お土産とか、みんな連れていけとか、うるさい、です」

僕「承諾書があったから言わなくていいかなと思ったんですが・・・美鈴ねえさんには言ってありますし」

雪沙「いったらひろゆきおにぃちゃんたちもきちゃう〜、きたらいじめられるからいやぁ〜〜」

職員女「そうですか・・・う〜ん、難しいですね」

僕「そうですね、変に他の子もってなっちゃうと、この子たちがここへ避難してきた意味がなくなりますから」

 

う・・・背中の也幸くんが重くなってきた。

 

僕「也幸くん、今、大事な話してるから、ちょっと部屋に戻ってね」

職員男「あの、雪巳ちゃんたち1人1人と個別にお話させていただいてもよろしいですか?」

僕「え?あ・・・い、いいですよ、じゃあ、えっと・・・」

職員女「まずは雪巳ちゃんたち3人とお話したいので・・・」

僕「わかりました、也幸くん、いこっ」

也幸「!!!(コクコクコク、手ぎゅ〜〜〜)」

僕「じゃあ自分の部屋で待ってますから」

 

客間から出て僕の部屋へ・・・

也幸くんは僕の手を離して猫へまっしぐら、

ひげをつんつんしてる、迷惑そうな老猫の表情だ・・・

 

僕「・・・・・隔離されちゃった」

 

きっと色んな事を根掘り葉掘り聞いてるんだろうな、

三姉妹がポロッと変なことを言わないか凄く心配だ、

こうなるのを予測して個人面談の対策をしとくべきだった・・・

 

僕「ま、信じて待つしかないか」

 

聞き耳たてにいきたいけど、

ここはぐっと我慢・・・とはいえ落ち着かない。

 

僕「う〜〜〜ん・・・暇だ・・・」

 

とことことこ・・・と也幸くんがこっちへ来た。

 

也幸「・・・・」

僕「どうしたの?」

也幸「・・・(ぐっ、と両手を握って前に出す)」

僕「え?・・・あ、どっちの手の入ってるか?じゃあ・・・こっち!」

也幸「・・・・(ぱっ)」

僕「何もない・・・ハズレだったか」

也幸「・・・・・(ぱっ)」

僕「あれ?こっちの手も何もない?」

也幸「・・・・・・・(ふっ)」

僕「どっちもハズレ!?」

 

すたすたすたすた・・・猫の方へ戻っちゃった。

 

僕「何がしたかったんだろう・・・・・謎だ」

 

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