僕「也幸くんどうしたの・・・わっ!ひどいっ!」

 

顔中、マジックで落書きがしてある!

それだけじゃない、体がかなり痩せて頬もこけてる。

 

也幸「・・・・・・・・・(ぐすんぐすんぐすん)」

猫「みぎゃーーーーーー!ふしゃーーーーーーー!!」

 

大事そうに猫を抱えながら泣く也幸くん・・・かわいそうに。

 

雪巳「ひどーい!きっと広幸お兄ちゃんたちのせいだよー」

雪菜「ごはんたべさせてもらって・・・・ないの?」

雪沙「なりゆきぃ〜、もうなかないのぉ〜、おうちにはいろぉ〜?」

也幸「・・・・・・・・・・・・(えぐえぐえぐ・・・ぽろぽろ)」

猫「ふにゃああああああああ!!ごなああああああああああ!!!」

 

いくら兄弟でもここまで酷いことするか!?

それに食事もろくに・・・そうか、旅行前に也幸君をここに短期滞在させたとき、

食事や服をいっぱいあげたもんな、それで兄たちの嫉妬を買ったのかも知れない、悪い事しちゃった。

 

僕「それよりさっきからその猫うるさいな」

也幸「!!!!!(あせあせあせ)」

雪沙「あ〜〜〜、そのねこぉ、けがしてるみたぁ〜い」

僕「どこ?・・・・わ!左腕が紅く腫れあがってる!こりゃひどい!」

雪菜「すごく痛そう・・・です」

 

車にでもぶつかったのかな、野良猫の宿命とはいえ、かわいそうだ。

 

也幸「ーーーーー!!!」

雪沙「え〜、ねこのおいしゃさんつれてってほし〜のぉ〜?」

也幸「!!!!!(コクコクコクコクコク!!!)」

僕「・・・わかったよ、でも也幸くんその顔じゃ連れていけないよ」

雪菜「私が・・・洗う・・・です」

 

でもこんな夜に獣医って・・・あ、確か夜間治療してる有名な所があったぞ。

 

猫「な”ぁああああああああああああああ!!!!!」

僕「わかったわかった!んー・・・猫入れる籠は美鈴ねえさんが持ってっちゃったんだっけ」

雪巳「私が持っていくよー?」

僕「じゃあ逃げないようにしっかり抱えてね、也幸くん、雪巳ちゃんに渡して」

也幸「・・・・・・・(そーーーーー)」

 

目が真っ赤な也幸くん、

どっちかっていうと自分のことより猫が心配で連れてきたみたいだ。

それにしても、きったない猫だなぁ、毛玉のかたまりみたいな・・・あーあ、雪巳ちゃんの腕が痒そう。

 

僕「すぐ行ってくるから、荷物とか也幸くんをお願いね」

猫「ふぎゃあああああああああああああ!!!」

僕「こら!近所迷惑だぞ!さっさと行こう」

雪巳「あー、噛まれそうになっちゃったー」

雪菜「鍵・・・・鍵・・・・・・・あった・・・です」

雪沙「なりゆきぃ〜、おふろいれてあげるぅ〜」

也幸「・・・・・・・・・(おろおろおろ)」

 

せっかく家に帰れると思ったのに、また外だよ・・・

 

 

 

 

 

タクシーで動物病院へ着いた、

夜間外来のインターフォンを押すとロビーの電気が連動してついた。

 

僕「すみません、急患なんですが」

インターフォン「・・・はい、いま参ります」

 

奥からナースさんが出てきた、

入口の鍵をあけて・・・まず猫を渡さなきゃ。

 

僕「あの、この猫を・・・」

ナース「はい、すぐ先生がいらっしゃいますから。まずはこちらに記入をお願いします」

 

座らされて何か書かされる、

住所氏名連絡先を書く欄か・・・

野良猫に住所も名前もないぞ?って僕のを書けばいいのか?

 

猫「びにゃああああああああああああああ!!!」

 

ナースさんが猫を奥へ連れて行って怪我をチェックしてる。

・・・野良猫なんだし、このまま置いて帰っちゃおうか?と一瞬思ったが、

そんな無責任な事はできない・・・仕方ない、個人情報を書こう。まずは、っと・・・

 

僕「ペットの名前・・・なんだろう」

雪巳「ソヨカゼだよー」

僕「そうなの?」

雪巳「いまつけたー」

僕「・・・それでいいや」

 

後は僕の住所氏名連絡先を、と・・・

書き終わった所で奥ではいつのまにか男の先生がきていた。

 

先生「レントゲン撮るよ」

ナース「はい・・・猫ちゃんもうちょっと我慢してねー」

猫「ごなあああああああああああああああ!!!」

 

色々大変そうだ、

そして雪巳ちゃんの腕からは・・・蚤がとんでる。

バリボリそれを掻いてる、って僕にも跳んできたぞ!?

 

ナース「飼い主さーん、こちらへ」

僕「あ、はいっ!」

雪巳「猫どーうー?」

先生「見てください、左前足の骨が折れてますね、きっと轢かれたんでしょう」

僕「わっ、ひどい・・・」

 

あれだけぎゃーぎゃー騒ぐはずだ。

 

先生「いま麻酔を打ったところです、手術しますね」

ナース「承諾書にサインを・・・」

僕「わかりました」

 

一応、動物でも承諾書はいるんだ。

かなりおおごとになってきてるぞこれは・・・

 

ナース「ではロビーでお待ちください」

雪巳「治るのー?」

僕「ほら!邪魔しちゃ悪いから行くよ!」

 

ロビーで座って待つ僕と雪巳ちゃん、

もう時計は午後9時を回ってる・・・家は大丈夫かな。

 

雪巳「このテレビつけていーいー?」

僕「うーん、手術中だから、おとなしく待ってよう」

雪巳「じゃートイレいってくるー」

 

じゃあ僕は・・・・・ちょっと寝てよう。

 

 

 

 

ナース「手術終わりましたよー」

雪巳「お兄ちゃーん、終わったってー」

僕「・・・はっ!ついた?・・・いや、お、終わった?」

 

そうだ、ここは動物病院だった、すっかり寝てた・・・

 

先生「手術は成功しました、ただ中で固定してあるのでもう1度手術する必要があります」

 

レントゲンで説明してくれる・・・

 

先生「ここにこう針金を入れまして、術後が良ければ2週間後にまた来ていただいて・・・」

僕「はぁ・・・やっぱり大怪我だったんですね」

先生「かなり歳をとった猫ですので動きが鈍ったんでしょう、10歳は越えてますね」

僕「そんなに!?全然気付かなかった・・・」

ナース「あら、ソヨカゼちゃんっていうのー、もうちょっと体綺麗にしてもらった方がいいわねー」

 

家に帰ったら洗うかな・・・

 

先生「痛み止め以外に蚤防止の薬も出しましょうか」

ナース「蚤除けの首輪と猫用のシャンプー・ブラシもありますよー」

僕「じゃあ、まとめてお願いします」

雪巳「よかったねー、ソヨカゼ」

老猫「・・・・・zzzzzzz」

 

そーっと猫を受け取る・・・今気付いた、オスだ。

 

先生「手術してすぐですので今夜は洗わないでください」

僕「はい、ブラッシングくらいにしておきます」

ナース「エリザベスカラーをつけますねー」

 

傷口を舐めないようにする、エリマキみたいなやつだ。

 

先生「何もなければ2週間後に」

僕「はい、ありがとうございました」

雪巳「ありがとーーー」

ナース「ではお会計はこちらで」

僕「はい・・・ゲージも買っちゃおうかな」

 

でも美鈴ねえさんが持ってるのが借り物じゃなかったら、それ貰えばいいか。

 

ナース「・・・それでは合計8万2760円になります」

僕「・・・・・・・・え!?」

ナース「8万とー、2760円・・・」

僕「えええっっ!?・・・・・ちょっと待って」

雪巳「たっかーーーーーい」

 

なんだそりゃ・・・ボッタクリ!?

いや、動物は人間の保険なんてきかないし、

手術もしたんだから、これくらいが普通なんだろう、多分。

 

僕「・・・ちょっとコンビニで足りない分を下ろしてきます」

雪巳「まってるねー」

僕「すぐ戻ってきます!」

 

サイフの中、初島旅行で余った6万円ちょっとしかないよ、

ていうか宿泊費より高い・・・どうなってんだ、ちょっと浅はかだったかも?

コンビニでとりあえずあと4万円下ろして・・・ペットってお金かかるんだなー。

 

 

 

 

ナース「はい、お釣り7240円になります」

僕「はい・・・」

ナース「ソヨカゼちゃんお大事にねー」

雪巳「お姉さんもありがとー」

僕「帰りは歩いて・・・いや、またタクシーでいいや」

 

もういろんな意味で疲れたよ。

楽しい旅行から帰ってこの出費、痛いなぁ・・・

まさかこんなにかかるとは・・・高くなっても1万円前後だと思ってたよ。

 

雪巳「餌とかトイレの砂はー?」

僕「確かまだ残ってたはず、とにかくもう早く帰りたい」

雪巳「タクシー止めるねー」

 

・・・何をやってるんだ、僕は。

 

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