駅のアナウンス「熱海〜熱海〜」

 

もうすっかり暗くなりはじめ、

僕らはようやく帰りの新幹線に乗れた。

ばらばらの指定席に座るとみんな疲れたのか早くも寝始めてる。

 

僕「・・・・ふぅ」

 

ようやく落ち着いてお茶を飲む、

三姉妹の面倒見るのはやっぱり大変だ。

本当は僕が見てもらう立場なんだけど、この際そんなのどうだっていいや。

 

僕「楽しかったなぁ・・・」

 

さて、僕も寝ようかな・・・という訳にはいかない、

ネズミーランドの帰りに雪菜ちゃんが痴漢に襲われた事があったし、

定期的に三姉妹が隣の人とかに変な事されてないかチェックしなきゃ。

 

乗務員「切符を拝見いたしまーす」

 

前から順番に・・・まずは雪巳ちゃんからだ、

寝始めてた所を起こされガサゴソ探してる・・・

通路挟んだ隣のお兄さん、雪巳ちゃんの胸に目がいっちゃってる、大丈夫かな。

 

雪巳「・・はーい」

乗務員「ありがとうございました」

 

次は窓際を取れてご機嫌な雪沙ちゃん、

隣はおばあさんみたいだから心配なさそう・・・

ていうか背が低いから椅子の背もたれに隠れて何やってるのかよく見えない。

 

雪沙「これぇ〜〜〜」

乗務員「・・・はい、ありがとう」

 

そして僕が一番注意して見てあげないといけない雪菜ちゃん、

通路挟んで斜め前にしてあげたから、変なのが近くに来てもすぐ守れる。

雪菜ちゃんの隣は普通に真面目そうなサラリーマンって感じだし、大丈夫っぽいな・・・

 

雪菜「はい・・・」

乗務員「・・・はいどうも」

 

切符の確認だけで何でこんなに神経使ってるんだろ僕は?

それだけ他所様の娘を連れて旅行に出るって事は大変なんだろうけど・・・あ、僕の番だ。

 

僕「あれ?切符どこだっけ・・・?」

 

 

 

 

 

車内アナウンス「♪〜♪♪〜♪♪♪〜」

 

・・・・・はっ!?

しまった!いつのまにか僕まで寝ていた!

三姉妹は大丈夫か?・・・・・特に変わった事はなさそうだけど・・・

 

車内アナウンス「次は終点、東京です」

 

もうつくのか・・・

そういえば乗客も半分くらいに減ってる、

きっと品川駅で結構降りたんだろう・・・じゃあちょっと移動するかな。

 

僕「雪沙ちゃん雪巳ちゃんの隣は空いてるな、雪菜ちゃんは・・・ん?」

 

隣のサラリーマン、

ぼーーーっと窓の外を見てる・・・?

いや、違う!窓ガラスに映った雪菜ちゃんを、じーっと見てる!

しかも、寝ちゃった雪菜ちゃんの袖から脇の奥をガラス越しに覗いて・・・

や、やばい!これはやばい!僕はとっさに立ち上がり雪菜ちゃんに駆け寄る!!

 

僕「雪菜ちゃん!雪菜ちゃん!」

雪菜「・・・・・・・・ん・・・ぁ・・・お兄ちゃん・・・」

僕「ほら、もうすぐつくよ、準備して!眼鏡ずれてるよ?」

 

強引に雪菜ちゃんを起こす・・・

 

僕「ほらほら、荷物も取って!」

雪菜「・・・・・・・・はぃ・・・」

隣のサラリーマン「お取りしましょう」

雪菜「ぁ・・・ありがとう・・・・です」

僕「えっ!?・・・・・あ・・・はい、どうも」

 

荷物渡すとき雪菜ちゃんをまじまじ見てる・・・

 

僕「ほら、行こう」

 

僕の席のほうへ連れてくる、

そして僕も荷物を取って・・・雪巳ちゃん雪菜ちゃんの方へ!

 

僕「ほら、もうすぐ東京駅だよ!」

雪巳「ん・・・・んー・・・・ぁ・・・なんかブラずれてるー」

僕「ええっ!?」

雪巳「寝ててずれちゃったみたいー」

僕「そ、そうならいいけど・・・」

 

雪菜ちゃんも雪沙ちゃんを起こしてる。

 

雪菜「雪沙・・・雪沙、いくよ・・・おいてくよ・・・」

雪沙「ん〜〜〜・・・なぁ〜にぃ〜?もうおうちぃ〜?」

雪菜「お家帰るために降りるの・・・ほら・・・」

 

そう言ってる雪菜ちゃんも、眠くて「ぐでんぐでん」みたい。

 

僕「荷物忘れないようにね」

雪巳「お兄ちゃんもだよー」

僕「わかってるって」

雪沙「ん〜・・・おにぃちゃん、てぇつないでぇ〜」

僕「荷物が多いんだから無理言わないの!」

 

新幹線が到着すると逃げるように降りる、

ふぅ・・・とりあえずもう安心かな、ああいう密室は怖い。

男の僕だと全然気にもとめなかった、女の子が感じる「身の危険」がちょっとわかった気がする。

 

雪沙「のどかわいたぁ〜」

僕「はいはい、ジュース1本だけだよ」

雪巳「晩御飯どーしよー」

僕「そうだな・・・よし、駅弁買おう!」

雪菜「おうちで駅弁・・・ですか」

 

保存のききそうな笹寿司を買う、

夕食だから多目に5箱買っておくかな・・・

ついでにオードブル、はもう売り切れだ、もうすぐ午後8時だから当然か。

 

僕「あとは家まですぐだから、もうちょっと頑張ろう!」

 

結構お金残ってるから、最寄り駅じゃなくってここからタクシー使っちゃおうか?

って、あんまり浪費を三姉妹に覚えさせちゃいけない、ここは辛くてもちゃんと電車を乗り継ごう、

それにタクシーだと帰省の渋滞に巻き込まれたら料金がどんどん跳ね上がる・・・お金は大切に残さないと。

 

雪沙「ん〜おもい〜」

僕「あ、1つ持ってあげるよ」

雪巳「お兄ちゃん甘やかしちゃ駄目ー!」

雪菜「雪沙・・・お兄ちゃんと手をつなぎたいだけでしょ・・・」

雪沙「あしもいたぁ〜い、ねむぅ〜い、おなかすいたぁ〜」

 

なんて言いながらもしっかり歩いてる・・・

僕もそろそろ、この子たちの扱いに慣れてこなきゃいけない頃だよな。

で、丁度慣れ終わったくらいに夏休みが終ってお別れ、になっちゃうのかなぁ・・・うーん・・・・・

 

 

 

 

 

ブロロロローーー・・・

 

バスから降りるとついに我がマンションに帰って来た。

 

雪巳「ついたーーーーーー!!」

雪菜「ただいま・・・・・です」

雪沙「はやくねたいよぉ〜〜〜」

僕「うん、さっさと上がろう」

雪巳「うちのお土産はー・・・明日でいっかー」

 

そうだな、僕も美鈴ねえさんとかのお土産は明日にしよう。

エントランスに入り郵便受けをチェック、新聞が3日分溜まってて、

さらに郵便物もいっぱい・・・後で仕分けよう、今夜はお風呂入ってまず寝たい。

とりあえず回収してからエレベーターに乗り19階につく、と、そこには・・・・・!?

 

「・・・・・(くすんくすん・・・しくしくしく・・・)」

「にゃーーー!にゃああーーーーー!ふにゃーーーーーー!!」

 

20階へ行く扉の前で、猫を抱えてしゃがんでいる少年・・・也幸くんだ! 

 

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