
夕食、みんなが席につくと豪華な前菜が運ばれてくる。
雪沙「この石な〜にぃ〜?」
僕「え?石?・・・あ、石じゃないよこれは」
雪巳「貝だよねー、なんだっけー」
雪菜「・・・・・あわび・・・です」
僕「よく知ってるね、偉い偉い」
従業員さんがアワビの下にある固形燃料に火をつけ蓋をする。
雪沙「隠しちゃった〜」
僕「こうすると火が消えた頃に蒸しあがってるんだよ」
雪巳「ねー、料理これだけー?」
僕「ううん、前菜だから食べ終わったら次のが出てくるよ」
雪菜「・・・がんばって・・・たべる・・・です」
小学生でも1人に1個あわび丸ごとかぁ、
ちょーっと贅沢すぎたかも知れないな、今更だけど。

僕「いただきます」
雪巳「いただきまーす」
雪菜「いただきます・・・」
雪沙「いただきまぁ〜〜す!」
まず最初は巻貝から行こう・・・
ん?他の3姉妹もみんな一斉に巻貝へ手を・・・
はは、なんだか僕もこの3姉妹の本当の兄になったみたいで嬉しいな。
雪巳「んー・・・」
ガリガリバリッ!!
僕「わわっ!貝噛んじゃ駄目!」
雪巳「えー、だって蓋あかないんだもーん」
僕「爪楊枝がささってるでしょ?それであけるの!」
雪菜「・・・・・・・」
パキッ!
僕「あ、折れちゃった」
雪菜「難しい・・・です」
僕「貸して、僕があけてあげるから」
力が無いから枝に負担がいっちゃったんだろうな。
雪沙「ん〜、おいし〜かも〜」
ちゅ〜ちゅ〜ちゅ〜
僕「その貝は吸うんじゃなくて食べるの!」
雪沙「え〜、ふたちょっとしかあいてないも〜ん」
僕「だからそれを爪楊枝で・・・」
ガリガリッ!
雪巳「かたーーーい」
僕「貝の蓋は食べられないの!その奥の身だけ!」
雪巳「そうなのー?」
やっぱりこんな妹、手がかかるから大変だ。

雪沙「こっちまだかなぁ〜」
僕「あ!あわびの蓋はまだあけちゃ駄目!」
雪菜「バターのいい匂い・・・です」
僕「まだ硬いから、しっかり蒸さないと」
雪巳「貝の身、にがーい」
・・・たく、初めて3姉妹が家に来た時を思い出すよ。
ってことは、旅行先最後の夜だけあって、はめを外してるのかな?
最初っから外しっぱなしのような気もするけど、でも喜んでいい事かな。
僕「はいはい、雪沙ちゃん蓋しめて・・・」
雪沙「は〜い、こっちあけてぇ〜」
僕「貝は待って・・・はい雪菜ちゃんどうぞ」
雪菜「ありがと・・・です・・・・にがいけど・・おいしい・・・」
僕「雪沙ちゃんも・・・・・はいっ」
なんてしてるうちに次々と料理を消化していく。


雪巳「味のついてる御飯、ひさしぶりー」
雪菜「たけのこが・・・すふぉくおいしい・・・」
雪沙「おさしみしょ〜ゆなくてもおいしぃ〜よ〜」
僕「喋りながら食べるのはいいけど、汚さないようにね」
雪菜「・・・アワビの火が消えた・・・です」
どれどれ、蓋をあけると・・・むわっ、と良い香りが広がる。
僕「バター蒸しでやわらかくなってるね」
雪巳「ほんとー?私もー・・・わー、こんなの食べるのはじめてー」
雪沙「ゆきさもあけるぅ〜」
雪菜「だめ・・・途中であけたから・・もうちょっと待つの・・・」
僕「うん、雪沙ちゃんはもうちょっとだけ待ったほうが、やわらかく食べられるよ」
殻からあわびをナイフとフォークで外して・・・
ちゃんとスライスに切って・・・ってこれ、3姉妹にもやってあげた方がいいな。
僕「みんなのもやってあげるから食べてて」
雪巳「えー、私このまま歯でかじるからいいよー?」
僕「駄目!口のまわりバターとあわびの汁でべっとりになるよ?」
雪菜「やわらかくても・・・切るの大変そう・・・です」
僕「うん、だから切ってあげるの、順番に回るから待っててね」
雪沙「ゆきさじぶんでしてみた〜い、じぶんでするよぉ〜」
僕「その気持ちは偉い!でも喉に詰まらせても困るからさ、雪沙ちゃんのはサイコロにして切ってあげるよ」
いつも料理作ってくれてるお礼のつもりでもあるし・・・
せっかくの旅行はその骨休めでもあるんだ、これくらいしてあげなきゃ。
僕「・・・はい雪沙ちゃんも完了!あとは食べるだけ」
雪沙「ありがと〜〜〜・・・・んぐんぐんぐ」
雪菜「ん・・・ん・・・やっぱり・・・かたい・・・です・・・」
雪巳「にがーい、あんまりおいしくなーい」
僕「そう?せっかくのあわびなのに・・・あむ・・・美味しい!」
やっぱ小中学生には大人の味すぎたかな?

雪沙「ふはぁ〜、へほんはひふぁ〜〜」
僕「こら!口にアワビ入れたまま喋らない!」
雪菜「デザートきちゃった・・・です」
雪巳「メロンでお口直しするー」
雪沙「んっ・・・・・するするぅ〜〜」
ガムみたいにアワビを吐き出した雪沙ちゃん、
注意しなきゃ・・・と思ったけど、食べられない物は仕方ない。
もったいないけど、小学生の口には合わないんだし、お腹壊されても困る。
雪巳「あまーーーい!」
雪沙「うん〜〜、やっぱりあまいのがいいぃ〜〜」
僕「ほらほら、お口がべとべとだよ?」
雪菜「・・・・・あわび・・・かみきれない・・・です」
僕「あ、無理ならいいから!じゃあメロン食べて終わりにしよう」
結局、3人分のあわびほとんど残しちゃったなー・・・もったいない。
これが贅沢っていうものなんだろうけど、これでいい訳ないよ・・・な?
う〜ん、やりすぎちゃった、よな・・・この豪華な旅行に連れてきちゃったのは。
雪菜「・・・・・メロン・・・おいしい・・・です」
僕「そう、良かった。じゃあ僕も・・・」
・・・・・確かに美味しいけど、心はモヤモヤだよ。
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