ここは1人で出よう!

 

僕「1人で行くよ、やっぱり夜中に女の子連れていくのは離島でも物騒だからね」

雪巳「えー、お兄ちゃんが心配ー」

雪菜「すぐいって・・・すぐ帰ってくる・・・です」

雪沙「いきたいいきたいいきたぁ〜い」

僕「だーーーめ!ついてきちゃ駄目だよ?もう早く、先に寝なさい!」

 

ちょっと命令口調で突き放す。

ここまで言えば、ついてこないだろう。

キーを持ってドアに手をかけると三姉妹が見送る。

 

雪巳「はやく帰ってきてねー」

雪菜「もうちょっとしたら・・・ねる・・・です」

雪沙「おみやげいらないからねぇ〜」

僕「はいはい、じゃあね・・・おやすみ」

 

廊下からエレベーターに乗って一階へ・・・

裏口はこっちか・・・なになに?0時を過ぎたらキーをこちらへ入れて開閉、か、

よかった、戻ってきたら閉錠されてて閉め出された、なんてことにはならないみたいだ。

 

僕「さあ、ミニ遊園地の裏門へ・・・って、真っ暗で恐いな」

 

テニスコートやパターゴルフの明かりも消えてるからな、

こっちから行くのはちょっと危険かも・・・ここは遠回りでも、

電灯のある港方面を歩いて行こう、丁度良い散歩にもなるだろうし。

 

・・・

・・・・・

・・・・・・・・

 

潮風が気持ちいい・・・

第二港はそれなりに明かりがついて綺麗だ、

あ、これから釣りに出るグループもいるのか・・・

釣り受付中の看板もいくつか出てる、夜釣りもいいな、

でも三姉妹と行ったら途中で寝ちゃいそうだな、もっと大人になってからでないと・・・

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

 

第一港は静まり返ってる、

波の音が寄せては返るだけ・・・

さすがに食堂も閉店してる、でも猫は地べたでのんびり寝てる。

 

僕「やっぱ蚊が多いや」

 

・・・食堂街を抜けて遊園地へ行く道もずいぶん暗いぞ?

でも、海が見える分、月が海面に反射して道はよくわかる、

急いで入場券を入れて、さっさと戻ってこよう。誰もいないんだし。

 

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・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

僕「あったあった、入場券をいれて、っと・・・」

 

これでもう文句は無いだろう、

厳密には昨日分はもう回収されちゃってるかも知れないけど、

ちゃんと入場券を入れたんだから、もうやましくは無いはずだ、心が軽くなる。

 

僕「さあ、帰ろう」

 

・・・・・でも、あんまり早く帰るのもなぁ・・・

僕を待っててくれてるかも知れないけど、帰ったら帰ったでまた僕の取り合いになるだろう、

あの子たちのペースに乗せられないためにも、ちょっとゆっくりして行くのもいいかな・・・

 

僕「でも、だからってコンビニとかないよな」

 

あってもホテルの中だ、

それにここは離島、熱海へ戻ろうにも船が無い。

都会の便利さを懐かしむとともに、こういう何も無いのも良いものだなと思った。

 

僕「船の待合所で猫でもなでてくかな・・・」

 

・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

 

僕「あれ?待合所、鍵がしまってる」

 

だから猫たちも外で寝てたのか。

・・・・・これ以上散歩するにも、行く場所が・・・

公園でも行くかな?でも蚊が多いしなぁ、しょうがない、真っ直ぐ戻ろう。

 

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

僕「第二港だ・・ここからホテルまでの坂が大変なんだよなー」

 

ちょっと休んでいこうかな、

ハーバーハウスの前にあるテーブルで・・・

椅子に座って落ち着こ・・・ん?釣りの看板のほかに違う看板が出てるぞ!?

 

『船の休憩所あります、この先にて』

 

そんなのあるんだ、ちょっと見てみたい。

普通の船なのかな?それとも海の上に建てた船っぽいボートハウスとか・・・

ええっと・・・どこだろ、どれだろ・・・どんどんどんどん埠頭を奥へ進んでいくと・・・あった!!

 

『船のラブホテル1室のみあります、ご休憩2時間5000円、ご宿泊朝まで8000円』

 

ラブホテル!・・休憩所って、そういう意味かー!!

で、この船か、小さなクルーザー・・・あ、あれ?この船って確か・・・マリーナ号!?

 

真理奈「お客さんー?」

僕「あ、真理奈さ・・・ん」

真理奈「あれー?ボク覚えてるよ、お昼にお魚くれたお客さんだよねー?」

僕「う、うん、そうだけど・・・」

真理奈「休憩ー?それともお泊りー?・・・あれ?女の子はー?」

 

夜中はこんな仕事してるのか・・・

とりあえず正直に、本当の事を言って帰ろう。

 

僕「いや、散歩してたら休憩所ってあったから勘違いしちゃって・・・」

真理奈「んー・・・いいよー、今日もうお客さん来なさそうだしー、中で休んでくといいよ」

僕「え?いいの?じゃ、じゃあ、ちょっとだけ・・・」

 

お言葉に甘えて船に乗る、

中は涼しい・・・蒸し暑くて汗かいちゃったからな。

あれ?昼はソファーだったのが変形して、合体してうまい具合にベッドになってる!

 

真理奈「シャツ濡れてるねー、シャワー浴びてちょっと干したらー?」

僕「え?シャワー浴びて・・いいの?」

真理奈「いいよー、タオルも浴衣もそこにあるよねー?」

 

ええっと・・・あったあった、しかも2人分。

他には・・・これはシロップ?・・・ローションって書いてある、どう使うんだろ?

あとティッシュもあって、その横には・・飴?いや、こ、こここ、これは・・・コンドーム!!!

 

僕「本当にラブホテルなんだな・・・」

 

って、入ったことないけど。

テレビでもつけようかな・・・あれ?真理奈さんは?

いつのまにかいない・・・まあいいや、シャワー浴びさせてもらおう、シャツ脱いでハンガーにかけて、っと・・・

 

螺旋階段をカンカンカンカン、と音をたてて降りる、

シャワー室はここ・・・狭いけど窮屈では無い、ボディソープやシャンプーもちゃんとある。

 

ガタンッ!!

 

僕「うわっ!動いた!?」

 

ポンポンポンポン・・・・・

 

・・・出港しちゃってるみたいだ。

どこ行くんだろう?どきどきどきどき・・・

シャワーをひねる・・・温かいお湯・・・汗を流すと気持ちいい・・・

 

シャーーーーー・・・・・

 

ちょっと外出て入場券放り込んできただけなのに、

こんなに汗かいてたとは・・・ボディソープとかは、まあ、いっか。

 

キュッ、キュッ、キュッ

 

シャワーから出て体を拭いて・・・

トランクス履いて浴衣を着て、上がろう・・・

 

カンカンカンカンカン・・・・・

 

螺旋階段を上がって戻る、

ベットの上には綺麗な掛け布団・・・

ここでカップルが、あんなことしたり色んな事を・・・

 

僕「・・・あ、島が・・・遠い」

 

シャワー浴びてる間にずいぶん動いたな、

そしてまわりに釣り船のいない、まったく何もない海の上で止まった。

 

僕「夜釣りでもするのかな・・・?」

 

運転席から真理奈さんが帰ってきた。

 

真理奈「おまたせー、体よく拭いた?」

僕「うん、まあ・・・」

真理奈「首筋まだ濡れてるよ、ボクが拭いてあげるよ」

 

タオルで丁寧に拭いてくれる・・・

なんか、昼間とはちょっと雰囲気が違うような・・・

 

僕「ありがとう、でもどうして船を出したの?」

真理奈「だってほら、お客さん来たら困るから」

僕「でも、お客さん来たら僕はすぐに・・・」

真理奈「それにボクの話も聞いてほしかったからさ、聞いてくれるかな?」

僕「え?う、うん、いいよ」

 

ベットに座ると、その隣にちょこんと座る真理奈さん。

 

真理奈「よかった・・・君なら聞いてくれると思ったんだー」

僕「それで、どんなお話?」

真理奈「ボクの話・・・ボクね、3年前、パパとママが死んじゃったんだ」

 

・・・重い話みたいだ。

 

真理奈「交通事故でさ、ボクの名前をつけたこのクルーザーだけを残して・・・」

僕「そうなんだ・・・それじゃあ、1人で大変だね」

真理奈「1人だったらまだ気が楽なんだけど、ボクには弟と妹が5人もいるから」

僕「そ・・・それはもっと大変だ」

真理奈「だから、船舶免許急いで取って、こうやってボクが1人で稼いでるんだ」

 

・・・そりゃあ夜のラブホテルも運営してないと、

やっていけないよな・・・あ、それでお昼にお魚いっぱい持ってったんだ、弟妹のために。

 

僕「休む暇が無いね」

真理奈「うん、ほんとそう、仕事の前や間や終わってからは弟たちの面倒も見ないといけないし」

僕「お金もかかるよね・・・それは僕もわかるよ」

真理奈「それでね、忙しいのはもう慣れたし、お金も頑張って稼いでるし、弟たちの世話も、別に嫌じゃないんだー」

僕「偉いね、本当なら夏休みとか取らなきゃいけないのに」

 

リゾートの島だと、特に釣りは1年中シーズンだからなぁ・・・

 

真理奈「でもね、ボク・・・ボク、1つだけ我慢できないことがあるんだ」

僕「それは・・・・・何?」

真理奈「・・・・・お願い・・・今だけ・・・・・・甘えさせて・・・・・くれる?」

 

体を寄せてきて、僕の肩に頭をのせてくる・・・

サンバイザーから、ほのかな潮の香りが漂う。

 

僕「そうか・・・・・息抜きができないのか・・・」

真理奈「うん、甘えたいのに甘えられる人がいないのが・・・ボク、つらいの」

僕「・・・・・・・・・いいよ、僕でよければ、今だけ甘えても・・・」

真理奈「本当!?」

僕「あんまり時間は取れないけどね・・あ、喉が渇いたから、飲み物貰っていいかな」

 

ちょっと遠慮気味に真理奈さんから離れて、

冷蔵庫からコーラを取り出す・・・真理奈さんも飲むかな?

 

僕「えっと、真理奈さんも飲・・・むっ!?」

 

ふ、服を、脱ぎはじめてる!?

 

真理奈「ううん、ボクは終わってから飲む方だからー」

僕「お、おお、終わってから、って!!」

 

全てを脱ぎ終え・・いや、サンバイザーだけまだつけてる、

それ以外はすっぽんぽんで、ベットの前にぺたんと座っている。

 

真理奈「はやく来てベットに座ってよー」

僕「ま、まま・・・・・待って」

 

気を落ち着けよう・・・

まずコーラを開けて・・・

 

プシューーッ!!

 

僕「わーー!!」

真理奈「だいじょうぶー?」

僕「う、うん・・・」

 

ごくごくごくごくごく・・・・・

ふぅ・・・さて、真理奈さんの方に行かなきゃ・・・・・

 

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