僕「美鈴姉さんごめんなさい、薬剤師のパート、今日もあったんでしょ?」
美鈴「いいのいいの、可愛い弟クンのお願いだから・・・はい、おしまい」
美鈴「今日みたいにガリガリ掻くぐらい酷い汗疹のときはこの薬を塗ってあげて」
美鈴「そう、よほど悪い環境でないとあそこまでは・・・サウナにでも閉じ込められてたの?」
美鈴「やっぱり・・・湿気が原因ね、あとは衛生面。カビとかも関係してるわね」
美鈴「どうしてこんなに酷くなるまで放っておいたの?これはもう立派な虐待よ?」
美鈴「汗疹だって、放っておくと環境によっては蕁麻疹になって一生アレルギーで苦しむことになるのよ?そのもう手前よこれ?」
・・・そういえば僕、雪沙ちゃんの裸を見ないように、って目を逸らしてばかりいた、
そのせいで酷い湿疹に2日も気が付かなかった・・・変な意識は持つべきじゃなかったかも知れない。
美鈴「まあこの先、毎日清潔にして気をつければいいわ・・・えっと・・・」
美鈴「さっきの塗り薬は症状が酷いときだけ。いつもはこれを全身につけて清潔にしなさい」
美鈴「ベビーパウダーよ、汗を抑えるために朝夜と酷く汗をかいた後につけて」
蓋を開けると懐かしの、肌にポンポンあてる毛のやつがある・・・
美鈴「湿疹の症状が出てる時には絶対つけちゃ駄目よ?肌に逆効果だから」
美鈴「そう、子供の時期の大事な肌だからずっと続けて・・・まあ、下の毛が生える頃までの辛抱ね」
美鈴「いいからいいから!あ、お嬢ちゃんたちはちょっと待っててねー」
美鈴「・・・わかってるでしょう?何からナニまで洗いざらいよ」
さすが、美鈴さん(28歳)が務めてた病院に入院した僕の兄(24歳)を
病院でたらしこんで、あっという間に結婚までこじつけた事だけはある・・・
その言葉では一言に言い表せない「押し」のテクニックは弟の僕をもねじ伏せるようだ。
さすがに「雪巳ちゃんの胸をつかんじゃった」とか「雪菜ちゃんの陥没乳首が」とか「雪沙ちゃんのパンチラを」とかは言えないけど。
成り行きでここまできちゃって、この後どうすればいいのか本当に困ってる。
通報・・・警察か、でも今までだって何度もそういう事あって無駄だったって聞いたけど。
美鈴「こういうのは積み重ねだと思うの、事ある毎にきちんとしかるべき所へ通報すれば、
最初の数回や十何回目はきかなくっても、確実に少しづつ親や警察を、悪い言い方をすれば
追い詰める、ってことになると思うの、根気も手間もかかるけど、でもそれがあの子たちのため」
でもそれだと、幼い三姉妹自身も追い詰められやしないかな・・・不安だ。
美鈴「2つ目、今すぐあの子たちを家から出して今後一切関わらない」
美鈴「な〜にハタチになったばかりの若造が言ってるのよっ!!」
美鈴「選択肢の1つとしてはじゅうぶんある事よ?他人の揉め事には関わらない」
美鈴「病院に勤めてたとき、普通に路を歩いてただけなのに喧嘩に巻き込まれて死んじゃった人を見たわ」
僕「そ、それは・・・だからって目の前の可哀想な子を放っておく訳には・・・」
美鈴「他にも溺れた子供を助けたために自分が溺れ死んだ人とか・・・美談にはなっても死んだ本人は幸せにはなれないわ」
美鈴「自分も生きて戻る自信があるならいいわよ・・・つまり、背負いきれないなら放っておきなさいってこと」
美鈴「そのまさかよ、あの子たちを君が引き取って、面倒みるの」
美鈴「もうハタチじゃないの、法律的には立派な大人よ、オ・ト・ナ!」
美鈴「君はそれだけの財力もあるし部屋もあるし、権利もあるのよ」
僕「だからって・・・それに、あの子たちやその両親の意思は・・・」
美鈴「もちろんよ、だから、あの子たちやご両親が許可すれば・・・養子に貰うことは出来るわ」
こうした話術でペースを完全に握るのが美鈴さんの技なのかもしれない。
僕の兄も短い入院中にすっかり身も心も骨抜きの虜にされたそうだからなあ・・・
美鈴「まあ、今まで言った3つはどれも極端だけど、でもそれくらいの決意は必要よ?」
僕「はぁ・・・確かにあの子たちを『その日暮らし』みたいにはさせられないですよね・・・」
美鈴「そういうこと。あの子たちも不安でしょうし・・・で、弟クンは今の3つならどれを選ぶ?」
美鈴「追い出したいのなら私が引き受けて、やってあげてもいいわよ?」
でも、追い出したら可哀想・・・かといって引き取るなんて・・・
やっぱり通報?でもそれも面倒・・・うーーーーーーーーーーーーーーーん・・・・・
美鈴「そうね、私なら児童相談所に直接出向いて、おせっかいでも色々とお願いするわ」
美鈴「親がどれだけ酷いかの証明をして、児童虐待で逮捕してもらって子供を施設に預かってもらうの」
僕「そうするのがいいっていう話はちょっと小耳に挟んだけど、なかなかうまくいかないみたい・・・」
その分、他人であっても近所の人とかが動くことになるのか・・・