
本当だ、もう初島が見えてきた!
どこにいたのか船員も慌しく準備しはじめてるのが窓の外に映る、
出航してもう15分くらい経ってるもんな、本当、あっという間だ。
僕「結局、指定席のチェックに来なかったな・・・」
雪巳「この部屋、貸し切りだったねー」
雪菜「ちょっと・・・酔ってきた・・・です」
僕「え?もうちょっとだから我慢できる?」
雪沙「ゆきさはぜんぜんへ〜きだよぉ〜?」
あと数分でつくけど、ちょっと心配だ。
雪菜ちゃんの方へ行って・・・確かに具合悪そう。
僕「誰も来ないから横になっていいよ」
雪菜「・・・・うん」
僕「ほら、椅子3つ分あるんだから・・・そうだ」
僕は一番通路に近い椅子に座り、
椅子の上に横になった雪菜ちゃんの後頭部を、
僕の膝の上にのせる・・・ちょっと高すぎるかな?でも表情が安らいだ。
僕「椅子がクッションきいてるから、それが逆にまずかったのかな」
雪菜「・・・・・」
僕「船の先頭っていうのもまずかったかな?帰りは船底に近い方がいいね」
雪菜「・・・・・・・・・」
僕「あ、眼鏡外したほうがいいね?」
外そうとすると、そっと手でガードされる・・・
ぽーーーっとしたまま僕を見つめて、顔を紅くしている。
雪沙「いいな〜、つぎゆきさねぇ〜」
雪巳「雪沙全然酔ってないからー、それにさっき甘えてたから次は私ー」
雪沙「ゆきみおねぇちゃんだってよってないよ〜?」
雪巳「雪巳はねー、お兄ちゃんに酔っちゃったのー」
僕「ちょっと2人とも静かにして!」
お水を飲ませた方がいいかな?
でも戻しちゃったらまずいし、
どうするにしろ、ついてからだな。

グラグラグラッ!!
僕「わ!」
雪菜「!!」
きゅうっ、と僕の腕を掴む雪菜ちゃん!
こう見えて力あるな、しっかり捕まえてる。
僕「どうしたの?」
雪沙「もうつくよ〜」
僕「あ・・ほんとだ、島が目の前」
雪巳「ようこそ初島アイランド、だってー」
僕「じゃあ降りる準備しよう、雪菜ちゃん?」
起き上がって荷物を持つ、
ちょっとふらっと・・まだ揺れてるもんな。
僕「僕が持つから」
雪菜「・・・・・へいき・・です」
僕「任せて任せて!」
雪巳「一緒に持とうよー」
僕「いいよ、さ、降りよう」

もう太陽が高い・・・
あとちょっとでお昼だからな。
雪巳「ついたー」
僕「うん・・・って腕絡まさなくても荷物は持てるよ」
雪巳「いいのー、いこー」
僕「待って!雪菜ちゃんたちが・・・」
雪巳「もーー」
振り返ると雪菜ちゃんと雪沙ちゃん、
酔ってたはずの雪菜ちゃん、全然大丈夫そうに歩いてる、
表情はちょっと暗いけど、やっぱり島に降りて安心したのかな?
雪菜「荷物、もう持てるです・・・」
ぐいっ!
僕と雪巳ちゃんが腕を絡ませながら持ってた雪菜ちゃんの荷物を、
強引に奪っちゃった。でもおかげで雪巳ちゃんと腕をはずせられる。
雪沙「おにぃちゃ〜ん♪」
と思ったら今度は雪沙ちゃんが手をつないできた!
・・・ま、いっか。って雪巳ちゃんも荷物なくなったのに腕絡ませたままだし!
僕「あ、暑いから離して!」
雪巳「えー」
雪沙「え〜〜」
僕「エーじゃないっ!」
雪菜「・・・呼んでる、です」
港ではバスが1台停まっていて、
船に乗るときにいたお姉さんが声をあげている。

女性係員「初島ゴージャスホテル行きバスはこちらでーす」
島にもバスはあるんだ、当たり前か。
どうやらホテル専用の送迎バスみたいだけど・・・
宿泊客がどんどんどんどん乗り込んでいってる。
僕「えっと、確かチェックインは午後2時からのはずだ」
雪巳「3時間も待つのー?」
雪菜「島・・・回ってみたい・・です」
雪沙「あ〜、あっちにねこがいる〜」
僕「じゃあ、時間潰しながら歩いて行こう」
荷物もそんなに重くないし。
バスを横目に港を進むと・・・

おじさん「はいいらっしゃい!釣りはこちらですよー」
おばさん「お昼はこちらでーす!伊勢海老が入りましたよー」
おっさん「荷物預かるよ〜食事も宿もあるよ〜」
お姉さん「スキューバはこちらで受け付けていまーす!」
小さい子「ごはんこっち〜ごはんこっち〜こっち〜〜」
お兄さん「釣り船は予約なくてもこちらで受け付けまーす!」
お爺さん「あい、初島定食1500円!サービスだぁ!」
太った猫「にゃ〜〜にゃ〜〜〜にゃぁあ〜〜〜〜〜〜」
客引きがいっぱい・・・
ずらっと並んだ食堂の人たちが、
バスに乗らなかった人の流れを奪い合ってる。
ホテル行かなかった半分以上が釣り目当てなんだろうな、
その中で予約せずに来た人たちを奪い合ってる・・・みんな必死だ。
僕「あっちとは別行こう」
雪沙「お昼はあとだねぇ〜」
雪菜「混んでるから・・・後がいい・・です」
雪巳「船の待合室に猫がいっぱーい」
僕「ほんとだ、こんなにいるんだ」


ざっと見ただけで5・6匹はいる。
釣りの島だから当然か、也幸くんがいたら喜んだだろうな。
雪菜「・・・この猫・・・反応が・・・薄い・・・です」
僕「人間には慣れっこなんだろうね」
雪沙「これな〜に〜?」
雪巳「石碑があるよー」
僕「どれどれ・・・なんだろこれ」

えーっと・・・初島についての説明か。
ふむふむ・・・なるほど・・・う〜ん・・・
よし、ここは雪巳ちゃんたちに説明してあげよう、
この初島が江戸城を作るための石を切り出した場所である事、
大昔から人が住んでた歴史とか・・・ここに書かれてある事だけど、
ちょっと物知りっぽく言えば尊敬されるかも?
たまにはちゃんと大学生らしいところも見せないとな。
もうちょっと読んで、納得したように思わせといて・・・
・・・・・そろそろいいかな?雪沙ちゃんあたりは、
難しい漢字に退屈してるかも知れないからな、そろそろ・・・
僕「・・・・よしわかったぞ、これはね・・・」
・・・隣を見ると、いない!?
猫「にゃあ」
石碑の上にいる猫が僕の後ろを見てる。

雪巳「さっきの食堂並んでるとこの先が遊園地だってー」
雪菜「港が・・・もう1つある・・・そのずっと先がホテル・・・」
雪沙「あ〜〜バーベキューセンターってある〜おいしそ〜」
ずこっ!!みんな初島案内板を眺めてるよ、
・・・・・飽きて後ろに興味が行ったみたいだ。
雪巳「お兄ちゃーん、向こうの道行くと神社と資料館があるみたいー」
僕「わかった、そっちから行こう」
雪沙「この猫もいっしょにつれてく〜」
猫「ぶにゃん!!」
僕「こらこら!持ってきちゃ駄目!」
雪菜「ゆきさ・・・ねこ・・かわいそう・・・」
僕「ほらほら、行くよ!」
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