雪巳「ただいまー」

僕「おかえり」

雪巳「うんー・・・」

 

軽く挨拶だけして、

薬局の袋を片手に廊下を歩いていく・・・

覗き込むと・・・三姉妹の寝室へ入っていった。

 

僕「やっぱりちょっと具合悪そうだな・・・」

 

はじめてなら不安なんだろうな、

美鈴ねえさんに連絡、は僕からはしない方がいい、

デリケートな問題だから・・・って入れ替わりで雪沙ちゃんが出てきた。

 

雪沙「お・・おにぃちゃん〜」

僕「んー・・・もっと明るい顔して」

雪沙「う、うん〜・・・」

 

そんなに雪巳ちゃんが心配なのかな、

姉想いのいい子だ、ぎゅうって抱きしめたくなっちゃう。

 

雪沙「おせんたくもの干すね〜」

僕「そうだね、もう止まってるから」

雪沙「うん〜〜〜・・・」

 

空気が重い・・・

毎月こんな空気なら、僕がもたないかも。

・・・・・って今月いっぱいで三姉妹はお役御免だった。

 

僕「娘を持つお父さんって大変なんだな・・・」

 

問題は、雪菜ちゃん雪沙ちゃんにまで伝染しちゃってることだ。

いや、別に伝染病じゃないんだろうけど、自分達ももうすぐ、って思うと、

沈んじゃうものなのかも・・・こういう時、僕はどうするべきか・・・知らないふりが、一番いい。

 

僕「雪香へのむかつきも、吹き飛んじゃう気分だよ」

 

別に悪い事じゃないのに・・・

そうか、昔はお赤飯を炊いたっていうのは、

無理にでも、おめでたい事にして気分を沈ませないように・・・昔の人は偉いな。

 

雪菜「あの・・・」

僕「わ!いつのまに」

雪菜「夕御飯・・・できた・・・です」

僕「うん、食べよう」

雪菜「・・・・・・・はい」

 

不安いっぱいって表情だ、

こんな時こそ僕が明るくするべき、かな・・・

 

 

 

静かな食卓、

いつもはおしゃべりな雪沙ちゃんも黙ってる、

雪菜ちゃんはいつも通り、雪巳ちゃんも静かに食べてる・・・

って、元気は無いけど特に酷く辛そうとかは無い感じだけどな、

医者や元ナースじゃないから細かいことはわからないけど・・・

 

僕「今日はまいったよ、雪香ちゃんに冷やし中華おごらされちゃってさ、最後なんかメロンまで・・・」

 

・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

 

雪菜「あ、あの・・・」

僕「どうしたの?」

雪菜「あの・・・お兄ちゃん・・あの・・・」

僕「う、うん・・・」

雪菜「・・・・・ごちそうさま・・・です」

僕「え、もう!?」

雪菜「・・・・・(コクン)」

 

出てっちゃった・・・

具合が悪いのって、まさか雪菜ちゃん!?

 

雪沙「ゆきさも・・もういい〜」

僕「そ・・か」

雪沙「ごちそ〜さまぁ〜」

 

てててて・・・って出てっちゃった。

残された僕と雪巳ちゃん・・・う〜ん・・・

雪巳ちゃんも顔に影がかかってる感じだし・・・

まさか、3人同時いっぺんに、きちゃったとか!?

年齢的にはいつきてもおかしくないし、姉妹だし、奇跡の確率で・・・!?

 

僕「・・・・・僕ももういいや」

雪巳「・・・・・うんー」

僕「ごちそうさま」

 

・・・・・部屋に戻ろう。

廊下をとぼとぼ歩く・・・

初島、どうしようかな、このままじゃ行きにくいよな。

 

・・・・・あれ?

 

振り返ると、コップに水を汲んだ雪巳ちゃんが三姉妹の寝室へ・・・

誰が具合悪いのか気になる、でも覗く訳にはいかないし、どうしよう。

 

僕「・・・・正直に聞くしかない・・・か」

 

でも、聞けるか!?

年頃の女の子が一番答え難い事を!?

こういう時は美鈴ねえさんに・・ってやめとこう、

最近、美鈴ねえさんに何でも頼りすぎてる、最近かなり来てもらってるし。

変に三姉妹を刺激しない方がいいだろうし、美鈴ねえさんと僕の兄との首輪プレイも、そう邪魔はできない。

 

僕「・・・・・・・・寝よう」

 

早すぎるけど、気分がモヤモヤするし、布団かぶって寝よう。

明日は元気になってるといいな、でも・・女の子のアレって1日じゃ治らないよな?

具合悪いのが続きそうなら明日にでも初島はキャンセルしよう、楽しみにしてたけど、しょうがないよ。

 

僕「おやすみ・・・」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

僕「・・・・・ふうっ・・・何時だ?」

 

午後9時・・・3時間も眠れてない、

そりゃそうだ、時間が早すぎるし起きるのも遅かったし、

体内時計では昼寝感覚だったんだろうな、トイレ行ってこよう。

 

ガチャ・・・

 

廊下を歩く、三姉妹の部屋の扉がちょっと開いてて誰か1人寝てる、

お風呂場では誰か入ってるみたいだ、シャワーの音が漏れ人影が・・・

さらに別の部屋・・・テレビのあるキャバレーソファーの部屋では・・・

覗くと雪沙ちゃんがぼーっとテレビ見てる、邪魔しちゃ悪いな、トイレ、トイレ・・・

 

僕「・・・・・?」

 

使用中になってる?

えっと、雪沙ちゃんがテレビ見てて、

いま、目の前でトイレに誰かが入ってて、

お風呂では誰か入ってて、三姉妹の寝室では誰か寝てる・・・

あれれ?1人多いぞ?どういうことだ?目の前のトイレをノックする。

 

コンコン

 

雪菜「・・・・・もうちょっと・・・待って・・・」

 

この声は雪菜ちゃんだ。

お風呂場は・・・脱衣所を覗くとスポーツブラ・・・

あのPIXYの文字は雪巳ちゃんのだ、擦りガラスごしに巨乳が見えるし。

 

僕「じゃあ寝てるのは誰だ!?」

 

三姉妹の寝室へ・・・

布団の中から髪の毛だけが見えてる、

ゆっくりめくると濡れタオルをおでこに乗せた少年が・・・!!

 

僕「これは・・・雅・・・ちがう、隆幸、くん?」

隆幸「・・・・う〜ん・・・う〜ん・・・」

僕「わ!すごい熱だ!やばいかも」

 

近くにはコップに入った水、

そして薬局で買ってきたのか小児用バファリン、

さらにはおかゆっぽい卵入り御飯が・・って、おじやか。

 

僕「これは・・・美鈴ねえさんだな」

 

ほんとの緊急事態だから仕方ない。

玄関の電話を取って・・・ここは救急車?

やっぱりまずは美鈴ねえさんだ、電話をかけて・・・

 

トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・

 

僕「出て!はやく・・・出て!」

 

トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・

トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・

トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・カチャッ

 

僕「もしもし?」

留守電「ただいま留守に・・・」

 

いないか!

 

美鈴「もしもし?」

僕「あ、美鈴ねえさん!」

美鈴「どうしたの?携帯じゃなく家に電話って、珍しいわね」

僕「あ!そっちかけちゃったか・・いや、その・・・」

美鈴「あわててるわね、おちついて、深呼吸して、はい」

 

すーーー・・・はーーー・・・・・・

 

僕「えっと、雛塚家の男の子が高熱でうなされてて」

美鈴「それで、いまどこ?」

僕「僕の家です、とりあえず布団に寝かしてあります」

美鈴「そう、すぐ行くから待ってて」

僕「はい!」

 

さあ、どうしよう!!

 

雪菜「あの・・・」

僕「わ!!」

雪菜「・・・・・(ひっく・・ひっく)」

僕「泣かない!とにかく今は、雅幸くんを!」

雪菜「隆幸・・・です」

 

三姉妹の寝室へ戻り、

隆幸くんの様子を見る、

凄い汗・・・一応、こまめに拭いてるみたいだけど・・・

 

僕「夏風邪かな・・それとも、子供特有の何かかな・・・」

雪菜「わからない・・・です」

僕「とりあえず、もうすぐ美鈴ねえさんが来るから」

雪菜「いい・・ん・・です・・・か」

僕「こういう事情だから仕方ないよ」

雪菜「また・・ふえて・・おこられる・・です・・・」

僕「そういう心配より今は隆幸くんの心配だよ!」

隆幸「・・・・・・・う〜〜〜〜ん・・・」

 

はぁはぁと息苦しそうだ。

 

僕「確か氷まくらが奥にあったはず・・・」

雪菜「ごめんなさい・・・です」

僕「凍らしてくるから、よく見てるんだよ!」

 

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