美鈴「みんな乗ったわね、忘れ物は無いわね?」

僕「はい、布団も取り込んだし」

雪巳「どのくらいかかるのー?」

美鈴「2時間近くかしら」

雪菜「猫・・・おしっこしたらどうしよう・・・」

雪沙「おでかけうれし〜な〜」

也幸「・・・・・」

美鈴「はい、しゅっぱーつ!」

 

ブロロロロロローーー・・・

 

後ろの座席でピクニック気分の3姉妹と也幸くん、

僕は助手席で美鈴ねえさんの補佐・・っていっても、

カーナビがあるから美鈴ねえさんはスイスイ運転している。

 

美鈴「高速乗るから飛ばすわよ」

僕「はい・・・あ、雪菜ちゃん、ここで小説読んでたら酔っちゃうよ?」

雪菜「漫画だから・・・ちょっとだいじょうぶ、です・・・」

雪沙「うたうたいたぁ〜い」

雪巳「みんなでうたう〜?」

也幸「・・・・・」

雪沙「ねこおとなしいねぇ〜」

 

1時間くらいしたら、

猫の給水も兼ねてドライブインに入ったほうがいいな・・・

 

 

 

雪沙「あ〜〜、ネズミーランドだぁ〜〜」

雪巳「ほんとだー、シーもあるー」

雪菜「ホテルも・・みえる・・・です」

也幸「・・・・・」

雪巳「ランド、まだ乗ってない乗り物あったよねー」

僕「シーはほとんど全部乗ったけどね」

美鈴「若いっていいわねー、もう私くらいになると落ち着いて回っちゃうから」

僕「美鈴ねえさんはネズミーランド最初に行ったのはいつですか?」

 

開園の年に行ったのなら当時の話とか聞きたいな。

 

美鈴「5年生春の遠足の時ね、ただ、乗り物ほとんど乗れなかったわ」

僕「え?何でですか?」

美鈴「その時は班行動が絶対で6人ずつに分かれて行動してたんだけど・・・」

雪巳「いいなー、遠足でネズミーランド」

美鈴「同じ班に心臓病の子がいてね、暗かったり速かったり狭かったり恐かったりする乗り物は絶対乗っちゃ駄目だったの」

雪菜「それ・・・何も乗れない・・・です」

美鈴「だから、ゆっくりした2階建てオープンバスとか、パレード見たりとか・・・」

雪沙「ベンチにすわらせてぇ、5人ではやいの乗ればよかったのにぃ〜」

美鈴「そうはいかないわ、班行動ですし、みんなが楽しまないといけないもの」

僕「楽しめました?」

美鈴「病気の子はすっごい楽しんでたわ、生きている間の良い思い出になったって言ってたわ」

 

・・・・・そっか。

その子がその後どうなったかは聞かないほうがいいな。

 

雪沙「しんぢゃったのぉ〜?」

 

おいっ!!

 

也幸「・・・(ぐいぐい)」

雪沙「なんでひっぱるのぉ〜」

美鈴「ええ、次の年の夏休み前にね」

僕「何となく・・・その子のためにした美鈴ねえさんの気持ち、わかります」

美鈴「ええ、だから乗り物ろくに乗れなくても楽しかったし、もちろん私も良い思い出にもなったわ」

 

・・・・・この話、僕への、そして3姉妹へのメッセージにも聞こえるな、

人に合わせるっていうことの大切さ・・・思いやり・・・美鈴ねえさんって、そばにいるだけで勉強になる。

 

美鈴「ま、その反動で夏休みは家庭教師のお兄さんをたっぷり連れまわしちゃったけど」

僕「はは、大変だ」

雪沙「あ〜も〜みえなくなっちゃった〜」

也幸「・・・・・」

雪巳「也幸は猫しかみてないみたーい」

美鈴「もうすぐドライブインだからそこで休憩しましょう」

雪菜「猫にお水あげる・・・です」

 

 

 

休憩を終えバスは房総半島へ・・・

このへんはのどかだなぁ〜、ザ・田舎って感じがする。

マザー牧場への案内看板が見えたけど、それより更に先へ行くみたいだ。

 

雪沙「ねこもらってくれるの、どんなひと〜?」

美鈴「猫が大好きな人よ」

僕「でも4匹いっぺんにって大変ですよね」

美鈴「それは大丈夫、ま、ついたらわかるわ」

雪菜「カーナビ・・・あと5キロ・・・です」

雪巳「あー、こねこうんちしたー」

也幸「・・・・・」

僕「あともうちょっとだから!」

 

なんてやっている間に目的地についたようだ、

でっかい倉庫?いや、ここは・・・大きな看板を読むと・・・

 

僕「千葉・猫猫園」

美鈴「そうよ、猫専門の室内型動物園」

雪沙「ひといっぱ〜い」

美鈴「ほら、降りるわよ」

雪巳「猫、おとなしかったねー」

雪菜「ねてるみたい・・・です」

也幸「・・・・・」

雪沙「なりゆきもねてるぅ〜」

 

みんな車を降りて猫猫園へ・・・

事務所のほうへ入る、園長さんらしきおじさんがやってきた。

 

園長「遠いところをわざわざ・・・ささ、こちらへ」

美鈴「はい、みんな上がって」

僕「失礼します」

雪巳「招き猫があるー」

雪菜「猫の絵もいっぱい・・・」

雪沙「なりゆきぃ、まだねこあけちゃだめぇ〜」

也幸「・・・・・」

 

みんなソファーに座ると事務のお姉さんからお茶を配られる。

 

園長「それで早速ですが、お話の猫は・・・」

美鈴「弟クン、出してあげて」

僕「はい、じゃあ・・・うんしょ・・・」

美鈴「母猫じゃないの、仔猫よ、三毛猫、ほら」

僕「え、そっち?はい・・・んっと・・・三毛猫、だけでいいんですか?」

美鈴「とりあえずはね・・・ありがとう」

 

三毛猫だけ渡すと園長先生の手へ・・・

ひっくり返してまじまじと見てる、仔猫は呑気にキャッキャキャッキャしてる。

 

園長「ほほう・・・確かにオスだ」

美鈴「信じていただけました?」

園長「いやぁめずらしい、本当にオスだ」

 

・・・三毛猫のオスがどうかしたんだろうか。

 

園長「本当に凄い!素晴らしい!」

僕「・・・美鈴ねえさん、どういうこと?」

美鈴「三毛猫はね、普通、メスしか産まれないの」

雪巳「うっそー?」

美鈴「本当よ、染色体の関係で・・説明すると長くなるけど、三毛猫のオスは突然変異でないと産まれないのよ」

 

でも、いまここにいるぞ?

 

園長「三毛猫のオスっていうのは現存では10匹も見つかっていないんですよ」

美鈴「昔から1万匹に1匹って言われてるけど、もっと確率は少ないわ」

僕「超レアなんですね」

雪巳「しんじらんなーい」

雪菜「はじめて知った・・・です」

雪沙「ぢゃあ、もらってくれるの〜?」

園長「もちろん!頭を下げてお願いしますよ!」

也幸「・・・・・」

 

あんな、なんでもない仔猫が・・・

人も猫も、その価値なんて簡単にはわからないもんだ。

 

園長「これはきちんとした三毛猫できちんとしたオスですからねぇ」

雪沙「きちんとしてないのもいるの〜?」

園長「ええ、その場合はオスでも珍しくはありませんが、これは貴重だ」

美鈴「次はお母さん猫を」

僕「はい・・・んしょ」

 

こっちは価値無いだろ、いくらなんでも。

 

ガツン!

 

母猫「にゃ〜〜」

僕「ごめん、ぶつけちゃって」

園長「慎重に、慎重に!」

僕「え?だって、普通の猫じゃ・・・」

美鈴「あのねぇ、三毛猫のオスを産んだ猫よ?」

僕「でも、この猫自体には価値は・・・」

雪菜「また・・・産むかも・・・です」

美鈴「そうよ、また産む可能性だってじゅうぶんあるのよ?」

僕「そうか!なるほど」

也幸「・・・・・」

 

そう思うと神々しく見えるな。

 

僕「じゃあ、他の仔猫2匹も価値が・・・」

美鈴「それは普通の駄猫」

僕「そか・・・」

 

がっくし

 

美鈴「でも園長先生」

園長「約束ですからね、4匹一緒に生活できるように引き取らせていただきます」

雪巳「ほんとにー?」

雪菜「よかった・・・です」

雪沙「わぁい、よかったねぇ、なりゆきぃ」

也幸「・・・」

 

猫たちが奥へ連れていかれる、

愛用の猫トイレも一緒に・・・さようならー・・・

 

園長「さて、ではお約束の・・・」

 

園長のテーブルで何か数えてる、

約束って?猫猫園の入場券か何かかな?

 

園長「75・・・76・・・・・・・・・・80」

雪菜「あ・・・お金」

園長「80万円で確かにお譲りいただきました」

美鈴「はい、領収証です」

園長「ありがとうございます、猫猫園の目玉になりますよ」

 

は、ははは、はちぢゅうまん〜〜〜〜〜!?!?!?

 

美鈴「さてと・・・半分は手数料と仲介料でいただくわね」

僕「ええっ!?」

美鈴「何か文句ある?」

僕「逆です、半分ももらえるんですか!?」

美鈴「そうよ、也幸くんがね」

 

40万円の札束を渡された也幸くん、

困ってる、めちゃくちゃ困った顔してるぞ!!

 

雪巳「すごーい!こんな大金はじめてー」

雪菜「なんでもかえる・・・です」

雪沙「おもちゃいっぱいかう〜?」

也幸「・・・・・」

僕「でも、法律的には也幸くんの親に渡さなきゃいけない・・・ってことは?」

美鈴「そのへんは大丈夫よ、すでにウチで貰ってから譲ったんだし、後は也幸くん次第ね」

 

也幸「・・・・・」

雪沙「え〜〜?」

也幸「・・・・・・・」

雪沙「ほんとにぃ〜?」

也幸「・・・・・・・・・・」

雪沙「もったいないよぉ〜」

也幸「・・・・・・・・・・・・・」

雪沙「そうだけどぉ〜〜〜」

 

何か、もめてる!?

 

雪沙「おにぃちゃ〜ん」

僕「どうしたの?」

雪沙「なりゆき、お金をぜんぶ、おうちのやちんはらうって〜」

僕「ええっ!?下の1階の延滞してる家賃を?」

也幸「・・・・・(コクコクコク)」

 

なんてできた子なんだ・・・

40万あったら自由に遊び呆けていいのに、

ビッグマザーや家族のために、滞納家賃を払いたいだなんて・・・

 

僕「本当にそれで・・・いいの?」

也幸「・・・(コクリ)」

僕「えっと・・・5か月分だから、それでも滞納分全部払えないけど、それでも?」

也幸「・・・・・(コクコク)」

僕「わかった・・・じゃあ僕が振り込んでおくよ」

 

40万円を也幸くんの小さな手から受け取る・・・

うっく・・・泣けてくるぜ!!

 

園長「さあ、猫猫園を楽しんでいってもらえますか?」

美鈴「無料で入れてくれるそうよ」

雪巳「いいのー?やったー」

雪菜「猫・・・さわる・・・です」

雪沙「なりゆき〜、たのしみだね〜」

也幸「!!!(コクコクコク!)」

園長「ではこちらですよー」

 

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