たったったったったったったったったっ・・・

 

裏口を駆けていったのは・・・也幸くんだ!

どこへ行くんだ?まさか猫を持って逃げ・・・てはいないようだ、

あの方向は確か駄菓子屋や公園があるはず・・・見失わないうちに追いかけよう!

 

暗い中、道を飛び出してる、あぶない・・・

でもなんで、あんなに必死なんだろうか?

ちょっと只事じゃ無い感じだぞ、とても追いつけない・・・ふう、ひい、ふう・・・

 

たたたたたたたたたたたたた〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・

 

さらにスピードをあげて公園へ入っていく!!

いいなあ、あれくらいの子は体が軽くて・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・

大学だと授業に体育が無いから、すぐに息が切れちゃう・・・で、也幸君はどこだ?

 

也幸「・・・・・」

 

いた!・・・茂みに入っていった!

あそこは確か・・・母猫たちがダンボールで住んでたあたりだ!

ということは、母猫の忘れ物か何かがあるんだろうか?追って僕も入る・・・

 

がさごそ、がさがさ・・・・・

 

也幸「・・・・・(きょろきょろ)

 

母猫たちがいたあたりに立ってキョロキョロしてる、

凄く心配そうにあせって・・・キョロキョロキョロキョロ・・・

 

仔猫「・・・にゃぁ〜〜」

也幸「!!!」

 

茶白の仔猫が出てきた!

也幸くんが近づく!しかし・・・

 

仔猫「ふしゃーーーー!!」

也幸「!?」

 

仔猫は思いっきり威嚇しちゃってる・・・

それでも何とか捕まえようと構える也幸くんだけど、

仔猫を目を見開いて、歯をむき出して・・・って、その後ろからでかい黒猫が!!

 

黒猫「なぁ〜〜〜〜ご〜〜〜〜!う”う”う”う”う”〜〜〜〜〜!!」

 

怒ってる!でっかい黒猫が、めちゃくちゃ怒ってる!

仔猫はその大きな黒猫の後ろに隠れて擦り寄って・・・

 

黒猫「シャーーーーー!!」

仔猫「ふしゅうううう〜〜〜!!」

也幸「〜〜〜〜〜!!!」

 

・・・・・だいたい予想がついた、

也幸くんの慌て方を見ると、あの仔猫は、

きっとウチに連れてきた母猫の、漏れた仔猫・・・!!

 

也幸「〜〜!〜〜〜!!〜〜〜〜〜!!!」

 

ああっ、逃げた!仔猫も大きい黒猫も!!

・・・あれはきっと、もう戻ってこないな、也幸くんには可哀想だけど。

 

也幸「・・・・・(クスンクスン)」

僕「也幸くん」

也幸「・・・・・・・・」

 

あ〜あ、涙をこぼしちゃって・・・

 

僕「也幸くんの気持ちはよくわかるよ、あの仔猫だけ置いていくのは可哀想だと思ったんだよね」

也幸「・・・(コクコク)」

僕「でも、あの仔猫は、もう野良で生きていく事を選んじゃったみたいだから・・・」

也幸「・・・・・・・・」

僕「きっとあの黒猫は、父猫なんだよ。お父さん猫と一緒に生きていく運命だったんだよ」

 

・・・・・僕の胸に飛び込む也幸くん、

顔をうずめて、えぐえぐ泣いてる・・・

 

僕「どこでどう別れちゃったのか知らないけど、嫌がってるのを無理矢理は連れていけないから、ね?」

也幸「・・・・・(ひっく・・・ひっく・・・)」

僕「さあ帰ろう、母猫と仔猫が、そしてお姉ちゃんたちが待ってるよ」

 

強くなれよ・・・也幸くん。

 

 

 

僕「あれ?玄関に靴が・・・」

雪沙「おかえりなさ〜〜い」

僕「帰ってきてたんだ」

雪沙「うん〜・・あ〜、なりゆきないてる〜〜」

雪巳「お兄ちゃーん、いまお土産あけてるのー、きてー」

 

也幸君を玄関に下ろすと、

トコトコと雪巳ちゃんの声のする方へ歩いていった。

僕も雪沙ちゃんと一緒に行く・・・大きなお土産袋が3つも!

 

僕「すごいね」

雪菜「ただいま・・・です」

雪巳「みてー、サインがいっぱーい」

僕「サイン色紙、ちゃんと1人に1枚ずつなんだ、へえ」

雪菜「たべものもいっぱいあるよー、なりゆきにもあげるー」

僕「ええっと、誰がどのサインだ?清水アキラはこれかな・・これは梅垣・・・かな?」

雪沙「ど〜んど〜んど〜ん!べたべった!」

僕「なにそれ?」

雪沙「きょうみたやつぅ〜、おもしろかったよぉ〜」

雪巳「よくわからないのもあったけどー、それでも笑っちゃったー」

僕「そうか、よかったよかった」

 

あれ?雪菜ちゃんの髪の毛にピーナッツがついてるぞ?

也幸君がそれをみつけて、つまんで・・・ひょいぱくっ、と食べちゃった。

 

雪沙「あぁ〜、それしょっぱいよ〜?」

雪菜「なりゆき・・・きたない・・・」

雪巳「そのピーナッツ、ひょっとしてー」

僕「んん?なんだ?なんだ?」

也幸「・・・・・(ぽりぽりぽり)」

 

・・・お土産に目を戻すと、ティーカップとか、

手ぬぐいとかタオルとか黒豆とかクッキーとか・・・

おっ、バームクーヘンがある!これ好きなんだよなー。

 

雪巳「あー、お兄ちゃんこれほしー?」

僕「う、うん、うんうん」

雪巳「じゃああげるー」

雪菜「私のも・・あげる・・です」

雪沙「ゆきさのもらって〜〜〜」

僕「ありがとう・・でも3個は多い、かな・・はは」

也幸「・・・・・・」

僕「じゃあ也幸くんに1個!」

雪沙「あ〜!それゆきさがおにぃちゃんにあげたの〜!だめ〜!」

僕「どれも一緒だって・・・」

 

 

 

お土産の整理が終わった。

もう10時過ぎてる、お風呂に入ろう。

 

雪沙「え〜?なりゆき、なぁにぃ〜?」

也幸「・・・・・」

雪沙「ゆきかおね〜ちゃん?がどうしたの〜?」

 

ぎっくうっ!!

 

也幸「・・・・・」

雪沙「まけたのにかったっていってたの〜?なにで〜?」

也幸「・・・・・」

雪沙「だまっちゃったらわからないよ〜」

也幸「・・・・・」

雪沙「も〜〜〜!きゅうにだまっちゃうんだからぁ〜」

也幸「・・・・・・・」

 

僕にはいつ喋ってていつ黙ってるのかさえわからないんだけど・・・

 

也幸「・・・」

雪沙「え〜〜?ねこ、あしたいっちゃうの〜?」

僕「そうだ!言うの忘れてた!あしたの昼、美鈴ねえさんが猫みんな連れていくって」

雪菜「どこへ・・・ですか」

僕「何でも千葉で、いい所らしいけど・・あ、洗わなくっていいって言ってたよ」

雪巳「じゃー、猫最後だねー、この家で寝るのー」

僕「そうだね、あと・・・也幸くんも」

也幸「・・・・・(コクッ)」

 

かわいそうだけど、そういう約束だから。

 

雪沙「ぢゃ〜、さいごに花火しよ〜よ〜」

僕「今から?いいよ」

雪菜「もってくる・・・です」

雪巳「猫にもみせるー?」

僕「駄目だよ、火は恐がっちゃうから。それより水とバケツ!」

 

外は・・・雨はまだだ、

也幸くんのために我慢してくれているのかも知れない。

ベランダへライターを持って出て、色々と準備をして・・・と。

 

僕「也幸くんはどれやる?」

也幸「・・・・・」

雪沙「えらべないの〜?ぢゃあこれやろ〜」

僕「空中回転花火、也幸くん大丈夫かなぁ」

雪沙「なりゆき、ぼ〜のはしっこもってるんだよ〜」

 

釣竿みたいな花火だ、

糸の先には針のかわりに回転するタイプの花火・・・

よーし、火をつけるぞ・・・ついた!離れると綺麗にしゅるしゅると!!

 

雪巳「きれいー」

也幸「!!!」

雪沙「あ〜、手はなしちゃだめ〜」

 

びっくりした也幸君が竿を落とすと回転花火が落ちた!

それが回りながら也幸君の方へすべってくる!あぶないっ!!

 

也幸「!!!」

僕「うわっ!!!」

 

僕に跳びついてきたっ!

ぶるぶる震えながらしっかりと胸に抱きついて・・・

って、雪巳ちゃんの方が近いのに、なんで僕に抱きついてきたんだろ・・

 

雪巳「花火おとなしくなってきたよー」

雪菜「雪沙・・・これ、8才以上ってかいてある・・・」

雪沙「ご、ごめんなさ〜〜い!」

僕「まったくもう・・ほら也幸くん、もう恐くないよ?」

也幸「・・・・・」

 

やっぱりみんなで線香花火くらいが丁度いいよな。

 

 

 

僕「よし、今日はこれでおしまい!」

雪巳「バケツしまったよー」

雪菜「花火も・・・です」

雪沙「あ〜、あめだ〜〜〜」

僕「終わったとたんに降ってきたよ・・さて、お風呂先に入るね」

也幸「・・・・・」

僕「也幸くんも一緒に入りたいの?」

也幸「・・・(コクコク)

僕「じゃあ、一緒に入ろう」

 

ずいぶんなついたな・・・

 

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