雪巳「いただきまーす!」

雪菜「・・・いただき・・ます」

雪沙「いっただっきぃ〜!」

僕「いただき・・・痛っ!指が・・・」

 

朝の華やかな食卓、

今日は和食が多いけど、ベーコンのスクランブルエッグもいい匂い。

指の軽いやけどがなければ急いでパクつきたい所なんだけど・・・

 

雪沙「ミートボールおいしぃ〜!」

雪巳「1人4つまでだからねー!」

雪菜「雪沙・・・ごはんですよ、のせすぎてる・・・」

雪沙「ごはんでうすめるからいいの〜!」

雪巳「雪菜、早くしないと、ジャコなくなっちゃうよー?」

雪菜「ちくわがあるから・・・だいじょうぶ・・・」

 

うーん、箸の戦争だ・・・

昨日も思ったけど、雛塚家の食卓はこの何倍すごいんだろうか・・・

1人で落ち着いて食べるのに、もうすっかり慣れちゃったからなあ・・・

雪巳ちゃんのテーブルには包まれたお弁当箱がある、すでに昼食分は確保してあるようだ、

でも結構小さなお弁当・・・おかずはどのくらい入れる事ができたんだろう?ちょっと心配。

 

雪菜「あ・・・雪沙、それ5つ目・・・」

雪沙「もぐもぐ、もうたべちゃったぁ〜」

雪巳「またお腹壊してもしらないよー」

僕「えっと、ミートボールは僕のをあげたってことでいいから」

雪沙「ほんと〜?ありがとぉ〜!おにいちゃんだいすきぃ〜!」

雪巳「私もちょーだーい!だいすきーーー!」

 

ははは・・・安い愛情だなぁ・・・

 

・・・

・・・

・・・

 

僕「じゃあ、気をつけて・・事故しないようにね」

雪巳「ありがとー!今日はゆっくり行けるからー」

雪菜「お世話に・・なりました・・・」

雪沙「行ってくるねぇ〜、おにぃちゃ〜ん!」

僕「えっと・・・もう、来ちゃだめだよ、ここへは」

雪沙「え〜?なんでぇ〜?また遊びに来るぅ〜!」

僕「駄目!他人なんだし、その・・・これ以上はとにかく駄目」

雪巳「雪沙!わがまま言わないのー」

雪菜「ごはん・・おふろ・・・洗濯・・・ありがとう・・です」

僕「うん、それじゃ・・さよなら・・・学校いってらっしゃい」

 

3人を玄関で見送る。

雪沙ちゃんは納得いってない様子だけど、

雪巳・雪菜ちゃんは、しっかりわかってくれてるようだ・・・

嵐のような少女たちが去っていった・・・ふう、これで落ち着ける・・・

さあて、少し休んだら僕も大学へ行かなくっちゃ、ちゃんとした日常に戻ろう。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

窓の外では大雨・・・

時計は午後10時を回っている、

心配していた少女たちは来なかった、

来たら拒むのが、大変というか心苦しいというか面倒くさいというか・・・

とにかく一人での夕食を終え、一風呂あびて落ち着いた所だ・・・でも・・でも・・・

 

僕「う〜〜〜ん、アイス食べたい・・・ガリガリくん・・・しかも3種類を一気に!」

 

急な衝動にかられ服を着替える、

外は大雨とはいえ、ちょっとコンビニまで行って帰ってくるだけだ。

少々の濡れよりもガリガリくん三本一気食いの方が僕の中では断然優位・・・

 

一番大きい黒傘を手に玄関を出て、階段を降り、19階のエレベーターに乗る。

1階から外へ・・・それにしても凄い雨だ、帰ってきたらもう1度お風呂入るはめになるかも?

歩道を歩いているうちに遠めに公園が見える、さすがに人はいないようだ、トイレの中まではわからないけど・・・

 

僕「いるわけないよな・・・」

 

コンビニについて籠を手にする、

アイス売り場へ行く前に本でも見よう・・・

と、そこで僕は唖然として立ち尽くす!そこには・・・

 

僕「雪巳ちゃん!?」

雪巳「・・・・・・・」

 

コンビニの本棚側面に隠れるように背をもたれ、

すやすやと眠る雪巳ちゃんの姿が!こ、こ、こんな所にぃ!?

 

僕「雪巳ちゃん、雪巳ちゃん、雪巳ちゃん!」

雪巳「ん・・・あ・・・あ、朝の、上の階の、お兄ちゃん・・・!?」

僕「こ、こんなとこで、寝てるの!?」

 

いくら大雨だからって、これはないだろう・・・

よく怒られないよな・・・そういえばコンビニって防犯の意味でも、

長時間の立ち読みは黙認してるんだっけ?でも彼女はまだ中1なんだし・・・

 

雪巳「うん・・・」

僕「だ、駄目だよ・・・」

雪巳「・・・・・」

 

あーあ、また寝ちゃった・・・

どうしよう・・って、もうどうしようもないか・・・

僕は僕でガリガリくんを買おう・・・あったあった三種類。

後はお茶とジュースと、こんなもんでいいかな?よし、レジへ・・・

ピッ、ピッ、とバーコードを通してもらってる間に・・・雪巳ちゃんの方を見ると・・

 

僕「わ!あれは・・・やばい?」

 

知らないおぢさんが雪巳ちゃんの方をじーーーっと見てる、

なんか視線が危ない・・・というか、あのおぢさん自体が危ない、

そしてこのままでは雪巳ちゃんの身が危ない!僕は会計を急いで終わらせ雪巳ちゃんの方へ!

 

僕「雪巳ちゃん、起きて」

雪巳「・・・っ?」

僕「立って立って!ほら!」

 

強引に腕を引っ張って起こす、

危なげなおぢさんはニヤニヤこっちを見てる・・・

 

僕「ほら、行くよ!」

雪巳「・・・どこへー?」

僕「いいから!ほらほら!」

雪巳「・・・・・雪菜はー?」

僕「え?雪菜ちゃん?」

 

雪菜ちゃんが、どうしたというんだろう?

 

雪巳「雪菜もー・・・いるよー」

僕「どこに!?」

雪巳「そこー・・・」

 

窓の外を見る雪巳、

・・・どこだ?どこにも見えないけど。

 

僕「そこってどこ?」

雪巳「だからー・・・そこー」

僕「外?とにかく、コンビニから出るよ!!!」

 

おっさんを尻目にコンビニから出る、

雪菜ちゃんはどこだ?とあたりを見回す・・・

どこにもいないぞ?大雨でちょっと見えにくいけど。

 

僕「雪巳ちゃんと一緒に来たんだよね?」

雪巳「うんー・・・」

僕「じゃあ、まだ中のどこかに・・・?」

 

首を左右に振る雪巳ちゃん。

じゃあどこだ?まさか、さっき通った公園のトイレ!?

・・・と、僕はある物に気がつきそこへ近づく。まさかここに・・・?

僕はコンビニの前によくある三分写真ボックスのカーテンに手をかけ、

一気にシャッ、とスライドさせた!!

☆三分写真☆

 

僕「・・・いた!!」

雪菜「・・・・・」

 

ま、まさに都会の死角!

一昔前のゲームの隠れキャラみたいだ。

って、そんな感心している場合じゃないや!

 

もどる めくる