すでにステージではちびっこ達が最前列にかぶりついてる、

僕らは後ろの余裕がある席に座って、ぼーっと前説のお姉さんのトークを聞いていた。

 

お姉さん「はーい、ではねえ、いくつか大事な注意がありまーす!」

最前列のガキA「ねーちゃんパンツ見えねーよー」

最前列のガキB「それスカートに見えて中はズボンみたいになってるじゃん、詐欺ー!」

お姉さん「聞いてくれないと始まりませんよー」

最前列のガキC「うるさいぶーーーーす!」

 

あーあ、お姉さん顔ひきつらせてる・・・

そうか、あれはスカートじゃなくキュロットパンツか・・・

なんて納得してる場合じゃない!ああいうガキの親は何やってんだか・・・

 

お姉さん「まず、ステージにはぜっ・・・・たいに上がらないでくださいねー」

最前列のガキA「なんでだよー」

最前列のガキB「悪い奴はおれがやっつけるぜー!」

お姉さん「こらっ!あたしの靴の紐ひっぱらないのっ!」

最前列のガキC「へんなまゆげーーー」

 

もう見てらんない・・・

おとなしく座ってる也幸くんを見習わせたいよ。

と思ったら口の中で飴をモゴモゴ・・・だからおとなしかったのか。

 

お姉さん「もちろん手をふれたりしても駄目ですよー」

最前列のガキA「おっぱいおっきーから彼氏にさわらせてんだろー?」

最前列のガキB「はやくはじめようぜー」

お姉さん「さらにフラッシュ撮影、物を投げ込む行為・・・」

最前列のガキC「化粧濃いねー、おばさーん」

 

あ!お姉さんの動きが止まった!!

 

お姉さん「お・ば・さ・ん、ですってぇ〜〜〜!?」

 

足を振り上げて・・・後ろのセットに蹴りを!!

 

ボゴッ!!

 

でっかい穴が・・・木のセットなのに!

格闘ゲームのキャミィだかモリガンだかみたいな、見事な蹴り・・・

 

最前列のガキA「・・・・・」

最前列のガキB「・・・・・」

最前列のガキC「・・・・・」

 

会場がシーンとなっちゃった。

 

お姉さん「ではいよいよ電飾戦隊カッ・・・きゃぁ〜〜〜!!」

 

デパート屋上に響くお姉さんの白々しい悲鳴、

ステージには人目で悪の軍団とわかる連中が裏からドヤドヤやってきた。

遅れてあきらかに悪の司令官とわかるドクロをモチーフにした親玉がお姉さんに迫る。

 

悪の司令官「はっはっは、このデパートは我々ブラックスケルトン軍団が占拠した!」

お姉さん「たすけて〜〜!」

悪の司令官「泣け!わめけ!このドクローン様はお前が泣けば泣くほどパワーアップするのだー!」

 

・・・いいなあ、ああいう悪の司令官ってやってみたいかも。

 

かっこいい謎の声「待て!」

ドクローン「そ、その声は!」

お姉さん「たすけて〜、カッコイインジャ〜〜〜!!」

 

♪ジャジャンジャジャンジャーーン♪ジャジャッ♪ジャジャッ♪ジャーーーー♪

 

テーマ曲がかかり、

5人の戦士がブラックスケルトン軍を蹴散らす!

テレビで見るよりちょっと動きは悪いけど、それでもがんばってる。

 

青い人「カッコイイ・ブルー!」

黄色い人「カッコイイ・イエロー!」

銀の人「カッコイイ・シルバー!」

白い人「カッコイイ・ホワイト!」

赤い人「カッコイイ・レッド!」

全員「電飾戦隊カッコイインジャー!!!」

 

声はテレビと一緒だ!

ははーん、テープを別で声だけ流してるんだな。

・・・って、大人になるとこういう見方をしてしまうから損だ。

 

レッド「もう大丈夫だよ」

お姉さん「ありがとうカッコイインジャー!」

ドクローン「うぬう・・・こうなったら、子供達を人質に取ってくれるわ!」

 

え?え?ブラックスケルトン軍団が客席にやってきた!

小さな子供を次々と抱きかかえてステージへ・・・こっちに来た!?

うわっ!也幸くんをすくって、かっさらってった!目をパチクリの也幸くん・・・

 

僕「雪沙ちゃん!」

雪沙「なりゆきさらわれちゃった〜」

僕「大変だよ!雪沙ちゃん手握ってたのに、何で離しちゃったの!?」

雪沙「だってぇ〜、おしばいだも〜ん」

僕「あ・・・はは・・・よくわかってるね」

 

小5だもんな、冷めたもんだ。

 

ドクローン「これで手出しできまいカッコイインジャーどもよ!」

レッド「くそ・・・こうなったらあの技を使うしかない!」

ホワイト「あの技ね!」

お姉さん「あの技って!?」

レッド「もうみんなはわかってるよね、電飾フラッシュさ!」

 

あーあーあー、いつものお決まりのやつね。

 

イエロー「大変だレッド!ここで使うにはエネルギーが足りない!」

レッド「なんだってー!?」

ブルー「大丈夫だ、みんなの声援があればきっと成功する!」

シルバー「みんなの声援をエネルギーにして集めればきっと!」

レッド「よし、みんな!お願いだ、僕たちに声援を!」

 

わかりやすい展開だなー

 

お姉さん「さあ皆さん!もっともっと大きな声で!」

ドクローン「はっはっは、まだまだこんなもんじゃ我々は倒れんぞ!?」

最前列のガキA「カッコイインジャーがんばれー!」

最前列のガキB「まけるなー!まけるなー!ドクローンをやっつけろー!」

最前列のガキC「いけー!いけー!ぶっころせーーー!!!」

 

やんややんやと盛り上がってきた。

也幸くんは相変わらずステージ上でポーーーっとしてる・・・

でっかい着ぐるみは恐いのにドクロの敵は恐くないのか?基準は何だろう・・・

 

観客「カッコ・イイン・ジャー!カッコ・イイン・ジャー!カッコ・イイン・ジャー!」

ホワイト「レッド、パワーが上がってきたわ!」

ブルー「みんな、もう少しだ!もっともっと!」

ドクローン「ぐう・・まずい、これはまずいぞ・・・」

お姉さん「皆さん、もう一息ですよ!カッコ・イイン・ジャー!カッコ・イイン・ジャー!

 

♪ピュピュピュピュピューーーーン!!

 

ホワイト「エネルギー満タン!レッド!!」

レッド「よし!いくぞ!!」

5人「電飾・・・フラーーーッシュ!!!」

 

ビビビビビビビビビ〜〜〜〜〜〜!!!

 

ドクローン「ぐわ〜〜〜〜!しびれる〜〜〜!おのれ!退却!退却だ〜〜〜!!」

 

逃げていく敵の皆さん、

ステージ上の人質少年少女たちと一緒に喜ぶカッコイインジャー、

也幸くんだけ浮いてるな、マイペースというより石になってるっぽい。

 

レッド「これでこのデパートの平和は守られた!」

お姉さん「皆さん、カッコイインジャーにお礼を言いましょう!」

最前列のガキA「ありがとー!」

最前列のガキB「かっこいいー!」

最前列のガキC「僕も入れてー!」

レッド「またこのデパートがピンチになったら必ず来るよ!」

ブルー「ではみんな、最後に握手をしよう!」

お姉さん「はーい皆さん、それでは握手をしたい方は前から順番に・・・」

 

まずは人質になった子から順番に握手、

握手が終わった也幸くんがトコトコと戻ってきた、

目をパチクリさせたまま・・・ちょっと刺激が強すぎたか!?

 

僕「おかえり、お疲れ様」

也幸「・・・・・」

雪沙「よかったね〜」

也幸「・・・・・」

僕「じゃあ、行こうか・・・」

 

まだ夢の中といった感じだ、

これって喜んでるん・・・だよな?

多分、おそらく、きっと・・・だと、思う・・・うん。

 

☆屋上ゲームセンター☆

僕「次は・・・あれ?こっちはゲーセンか」

雪沙「外にも中にもあるよ〜」

僕「乗り物系は也幸くん、あんまり・・・だったよね?」

也幸「・・・・・」

僕「あれ?どこ行くんだ?」

 

てくてくとゲーセンの屋内部分に入って、

まわりをキョロキョロ・・・見失わないようについていかなくっちゃ。

って、あっちへふらふら、こっちへふらふら・・・何を探してるんだろう?

いや、探しているというより、あちこち見ているだけで楽しいのかも知れない。

人がやってるのをじーっと見たり・・・あ、何かの前でピタッと止まった!そしてこっちをチラッと。

 

雪沙「なにやりたいの〜?」

也幸「・・・・・(もじもじ)」

僕「お菓子落としかぁ」

 

☆お菓子落とし☆ ☆お菓子落とし2☆

 

指をくわえて、じーっと目で訴えかける也幸くん。

こんなの、普通に買ったほうが安いのに・・・でもまあ気持ちはわかる。

自分で苦労して手に入れたお菓子は、普通に買うより美味しいはず・・よし!

 

僕「じゃあ500円ずつね、はい」

雪沙「ゆきさもいいの〜?」

僕「もちろん!さあ・・・」

 

って、也幸くんはすでに500円玉を投入済み・・・素早い。

お菓子をクレーンがすくって・・・山になったお菓子がちょっとだけ前に出た。

あと5回・・・てきぱきと作業を進める、これだとぎりぎり6回目で落ちるかな。

別のマシンの雪沙ちゃんは・・・お菓子のタワーを落とそうとタイミングを狙ってるようだ。

慎重だな、結構いいかげんにポンポンやっちゃうタイプかと思ってたのに、ちゃんと計算してる。

 

ウィーン・・・ウィーーーン・・・・・

 

僕も何かするかな・・・いや・・・

見てるだけでいいや、也幸くん急いでやってるなー、

それでもちゃんと少しずつお菓子が押し出され続けていて・・・

 

也幸「・・・・・・!」

 

次が6回目だ!

まだ1つも落ちてないけど、

うまく行けば積みあがっているお菓子が一気に!!

 

也幸「・・・・・」

 

ウィーーーン・・・・・

 

お菓子が1つだけ掬われて、

段に落ちる・・・動く!ずれる!これは・・・行くか!?

 

・・・・・・・・・ぽとっ!!

 

也幸「!!」

 

落ちた!・・・・・1個だけ!!

他はギリギリでふんばっている、

お菓子のタワーがあと1ミリでもずれたら落ちそう・・・

 

也幸「〜〜〜〜〜!!」

 

僕のソデを引っ張る也幸くん!

もう1回やりたいっていう意思表示なんだろうな、

確かにあと1回でお菓子が一気に・・・でも、これであげてしまうと・・・

 

僕「駄目だよ、500円だけだから、もう駄目」

也幸「〜〜〜!〜〜〜!〜〜〜〜〜!!!」

僕「そんなに悲しそうな顔したって、だーめ!」

 

歯止めをかけなきゃ。

 

雪沙「わ〜〜〜い!!」

 

あれ?雪沙ちゃん、どうした!?

 

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