朝食のサンドイッチは僕の部屋に運んだ、

あたたかいミルクを飲む、まだ生渇きの母猫と3匹の仔猫たち・・・

そしてまだお風呂の湯気が抜けきれてない3姉妹と也幸くん・・・くん!?

 

僕「也幸くん、その服・・・」

雪沙「かえがないから〜、ゆきさのしたぎだよ〜」

 

女の子用のブラウス下着と、フリル付きパンツ・・・

でも別に恥ずかしがる様子もなく、黙々とサンドイッチを食べてる・・・

これって、パッと見、女の子だよな・・股間をよーく見ないと男ってわからない・・・

 

雪巳「也幸を服が乾くまでここに置いていいー?」

僕「う、うん、外はまだ凄い台風だし」

雪菜「あ・・・お母さん猫がきた・・・」

雪沙「ハムあげる〜〜〜」

母猫「にゃあにゃあにゃあ」

僕「そうだ!猫のトイレどうしよ」

雪菜「外・・・は・・無理です・・・」

雪巳「砂がいるよねー」

雪沙「かわりのものとかないの〜?」

僕「うーん・・・洗面器にティッシュでも丸めて詰めるかな」

也幸「・・・・・(くちゃくちゃくちゃくちゃくちゃ・・・)」

 

 

 

早い朝食が終わって猫たちはバスタオルの山で寝てる、

雪巳ちゃんたちは洗面器に丸めたティッシュを入れる作業中・・・

 

僕「あんまりぎゅうぎゅうにすると硬くなってトイレできなくなるよ」

雪巳「ちぎった方がいいー?」

雪菜「これがトイレって・・・教えないと・・・」

也幸「・・・・・」

僕「ん?也幸くん、仔猫がそんなに気になるの?」

雪沙「ど〜したの〜?なりゆきぃ〜〜」

也幸「・・・・・・・・・・」

雪沙「ええ〜〜〜!?そ〜〜だったのぉ〜〜〜!?」

僕「な、なに?どうしたって?」

雪沙「こねこ、いちばんさいしょは、よんひきいたんだって〜・・・

僕「えっ?声が小さくてよく聞こえないけど・・・」

雪沙「・・・・・や、やっぱりなんでもないよ〜〜〜」

也幸「・・・・・・・・」

 

変なの・・・ま、いいか。

 

僕「それにしても、この猫どうしよう・・・」

雪巳「台風終わったら元に戻すのー?」

僕「そういう訳にもいかないからさ」

雪菜「貰い手・・・探す・・・です」

僕「うん、仔猫は結構、欲しい人いるだろうし」

雪沙「売れるの〜?」

僕「まさか!ただの雑種だから、逆立ちしたって売れないよ」

也幸「・・・・・」

 

あれれ?也幸くん、もそもそと四つんばいで猫のほうへ・・・

そして・・・バスタオルの山に頭から突っ込んで、猫たちと一緒に・・・寝ちゃった。

 

僕「也幸くん!そんな所で寝なくても布団で・・・」

也幸「・・・・・」

僕「あーあ・・・ほんとに面白い子だ」

雪巳「お兄ちゃん飼えないのー?」

僕「このマンションはペット禁止だからね、オーナーであっても駄目、だと思う」

 

だよな、多分・・・

それより猫がいる事が管理人にばれたら、

それこそここぞとばかりに騒ぎたてられそうだぞ、まずいな・・・

あの管理人のことだ、猫を飼うならじゃあ三姉妹は私が、とか言いそうだ、

これは早く貰い手を見つけないと・・・こういう時も美鈴ねえさんにメールだな。

 

雪沙「まだ6時〜、ゆきさもっかいねる〜」

僕「うん、僕もあと3時間くらい寝ようかな」

雪巳「私はお風呂の掃除するねー」

雪菜「漫画読む・・・です」

僕「台風が過ぎるまで、みんなじっと我慢、我慢」

 

 

 

 

 

お昼過ぎには台風もすっかり通り過ぎ、

夕方はセミの鳴き声がうるさく蒸し暑いくらいになった。

晩御飯が終わって三姉妹は猫たちに夢中・・・ていうか、もはや、いじくり回している。

 

雪巳「あー、服の中に入ってきたー」

雪菜「しっぽが・・・ぴーんとしてる・・・」

雪沙「こねこで〜、おてだまできるよ〜」

僕「こらこら!乱暴にしない!」

也幸「・・・・・」

 

母猫が心配そうに仔猫を見てる、

そして也幸くんも・・・って、もうこんな時間だ!

 

僕「服はもう乾いたよね?也幸くん、そろそろ下へ・・・」

也幸「・・・!!(ぶるんぶるん)」

 

一生懸命、首を左右に振ってイヤイヤしてる。

 

雪沙「・・・猫がしんぱいなんだって〜」

僕「大丈夫、雪巳ちゃんたちがちゃんと面倒見るから」

也幸「!!!!!(ぶるんっぶるんっぶるぶるぶるぶるぶる!!!」

 

そんなに首をシェイクしなくても・・・

確かに雪沙ちゃんたちのこの様子じゃ心配になるよな。

 

僕「うーん・・・困ったな・・・」

雪巳「ねー、おにーちゃーん、也幸って手間かかんないよー?」

雪菜「なりゆきだけなら・・・世話・・・できる・・・です」

雪沙「そ〜だ〜、ぢゃあなりゆきが猫のせわがかりする〜?」

也幸「!!!(コクコクコク!!!)」

 

そうきたか・・・

う〜ん、でもこれを許してしまうとなぁ・・・

 

ぴんぽーーーん

 

僕「お客さん!?」

 

美鈴ねえさんかな?

時間はもうすぐ午後8時・・・

雪巳ちゃんが玄関へ行く・・そして・・戻ってきた。

 

僕「誰だった?」

雪巳「・・・・・相談所のひとー」

僕「ええっ!?」

雪巳「下、あけちゃったよー?」

僕「ど、どうしよう・・・美鈴ねえさんに電話だ!」

 

玄関の電話、は、間に合わない!

携帯、携帯・・・あった・・・そうだ、時間稼ぎを!

 

僕「雪巳ちゃん雪菜ちゃんは相談所の人を来客用の居間に案内して!」

雪巳「はーい」

雪菜「はい・・・です」

僕「雪沙ちゃんはお茶を運んで!」

雪沙「は〜い、なりゆき〜、いっしょにいこ〜」

僕「あ、なりゆ・・・ええい、もういいや!あ、もしもし美鈴ねえさん!?」

 

大変なことになったぞーーー!!

 

 

 

 

来客用居間では児童相談所の女性職員・男性職員が座ってる、

雪沙ちゃんが麦茶を出してくれて、雪菜ちゃんもちょこんと座って、

雪巳ちゃんは僕の部屋で美鈴ねえさんと電話中・・・あれ?也幸くんはどこ行った?

 

女性職員「申し訳ありません、連絡もなく突然・・・」

男性職員「台風、大変ではなかったですか?これだけ高層階ですと」

僕「でもしっかり造られてますから、あまり揺れませんでしたよ」

雪沙「ゆきさぜんぜんこわくなかったよ〜」

雪菜「気持ち良く眠れ、ました、とっても」

 

・・・緊張するなぁ、抜き打ち検査なんだろうなぁ・・・

別に虐待とかしてないんだし、ちょっとえっちな事されてるだけなんだから、

オドオドする必要はないんだけど、かなりドキドキする・・・僕も麦茶を飲もう。

 

とたとたとた・・・

 

雪巳「美鈴おねーさん、いまデパート出たってー」

僕「そうなんだ・・・ん?」

也幸「・・・・・」

 

とことこと、乾いたばかりの自分の服を着た也幸くんが来て・・・

え?え?ちょこんっ、と僕のヒザの上に座ったぞ!?で、相談所の人をキョロキョロ見て・・・

あ、くるっと僕のほうを振り向いて、僕の胸に顔を隠しちゃった、あいかわらず人見知りな子だなぁ。

 

女性職員「その子は・・・」

僕「也幸くんです、雪巳ちゃんたちの一番下の弟の・・・」

雪巳「台風だったから避難してるのー」

雪沙「なりゆきもむぎちゃのむ〜?」

雪菜「なりゆき・・・ぎょうぎ、よく、しなさいっ」

男性職員「いえいえ、いいんですよ、よくなつかれてますね」

僕「ええ、まあ・・・はは」

 

こんなのはじめてだよ、雪沙ちゃんならしょっちゅうだけど・・・

 

女性職員「それで今日伺ったのは、こちらのマンションの管理人さんから電話がありまして・・・」

 

ぎっ・・・くうっ!!

 

男性職員「きちんと世話ができているか疑わしいといった内容でした」

女性職員「ベランダで花火を打ち上げた、とか・・・」

僕「あ、あれは・・・」

雪沙「ゆきさがまちがっちゃったの〜〜」

雪菜「反省・・して・・ます」

雪巳「でもいっかいだけだよー」

男性職員「他にも一緒にお祭りに行ったとき、その、世話がしきれてない様子だったと・・」

 

んな事言ってたのか、あんにゃろめ!!

 

僕「そんなことはないですよ」

雪巳「えー?問題ないよねー?」

雪菜「ちゃんとお世話されて、ます」

雪沙「おにぃちゃんのおせわもしてるよ〜?おてつだい〜」

也幸「・・・・・」

 

あ、也幸くん、僕の胸でいつのまにか寝てる・・・

 

女性職員「それで、もてあましてるようでしたら、管理人さんが引き取りたいという申し出を・・・」

僕「この子たちをですかぁ!?」

雪沙「やだ〜〜、やだやだ〜〜、あのひとこわい〜〜〜」

男性職員「・・・いや、私どもも実は、その管理人さんの事についてお聞きしようと・・・」

雪菜「管理人さん・・の目、こわい・・・です」

僕「こらこら、悪口言わないの!」

雪巳「管理人さん、私達に片思いしてるんだよー」

 

片思い、か・・・確かに。

 

女性職員「あの・・・こう言っては何ですが、あの管理人さん・・・問題ありませんでしたか?」

僕「そうですね、直接は無いですが、ちょっとこの子たち、管理人さんに怯えている部分はあるかと」

雪沙「だって、変なことされそうなんだも〜ん」

男性職員「何かあったんですか?」

僕「いえ、ただ・・・管理人さんがこの子たちを祭りに誘ったんですが、この子たちの方が・・・」

雪菜「お兄ちゃんのが、いい、です」

雪巳「ゆきさがねらわれてるみたいなのー」

僕「まだ変なことがあった訳じゃないんですが」

雪沙「ゆきさ、こわくてけっちゃった〜」

女性職員「・・・大体わかりました」

男性職員「そういうことですか、なるほど」

僕「・・・へ!?」

 

なんなんだ!?

 

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