マンションの自宅に帰る、
食べ物は僕の部屋のテーブルに置いて・・・
雪巳「あー、花火だー」
雪菜「綺麗・・・すごい・・・」
僕「20階ならではの景色、特等席さ」
そう、毎年8月最初の土曜は打ち上げ花火があって、
午後8時から、ベランダに出てのんびりと見ることができる。
雪巳ちゃん雪菜ちゃんはすでに暑さを忘れて窓の外へ・・あれ?雪沙ちゃんは?
雪沙「背中かゆいからおふろ〜〜」
僕「はやく出ないと花火終わっちゃうよ」
雪沙「お風呂でみれないの〜?」
僕「方向が違うよ」
雪沙「ん〜・・・シャワーだけあびてくる〜〜〜」
僕もベランダに出て3人並んで花火をみつめる・・・
風に乗ってまだ、はっぱ隊の曲が聞こえてくるけど・・・
綺麗だなぁ〜・・・間近で見るには有料だけど、この高さなら無料でもじゅうぶん堪能できる。
雪巳「同じマンションなのにー・・こんなの見れるんだー」
僕「そうだね、1階からだと見えないもんね」
雪菜「うらやましい・・・です」
僕「でもエレベーターで19階まで来れば・・あ、方向的に駄目か」
雪巳「ねー、来年もここ来て花火見てもいいー?」
僕「うーん・・・それは・・・駄目、だ、な・・・」
雪菜「・・・・・・・・」
何だか僕のほうを見てる雪菜ちゃん、
・・・恋人同士になればいいよね、とでも言ってる気が・・・
でも、とりあえず僕の返事は、駄目、と言っておかないとな、うん。
雪巳「いいなー、こんな景色、独り占めできてー」
僕「ひ、ひとりじめって事はないよ」
雪巳「屋上は開放しないのー?」
僕「うん、色んな設備とかあるし、防犯上の理由もあるし」
雪菜「このベランダが・・・屋上みたい、です・・・ね」
僕「そうだね、これだけ広いと」
雪菜「ここにお布団ひいて寝たら・・・気持ちよさそう・・・です」
雪菜ちゃんらしい発想だなあ、
確かに夜空の下で気持ち良さそうだけど、暑さが・・・
僕「そうだ、実は奥の部屋の1つに・・」
雪沙「おにぃちゃ〜〜〜ん!!」
とたとたとたとたとた・・・
僕「ん?わ、裸で!しかも濡れたままじゃないか」
雪沙「ベランダでこれふくらまそ〜よ〜〜」
僕「何を引きずってきたんだ・・それは、フリーマーケットで買った・・・」
雪巳「ビニールプールだー」
雪沙「これにお湯入れたらお風呂になるよ〜、花火見ながら入れるよ〜」
僕「へー、それは良さそうだね・・・でも、準備してる間に花火終わっちゃうよ?」
雪菜「もう・・・間に合わない・・・です・・・か」
僕「そうだね、まず膨らます時間に30分くらいかかっちゃうから」
雪沙「ざんね〜〜ん、ぢゃあ花火みてる〜〜」
僕「うわ!廊下水びたしじゃないか!」
雪菜「私・・・拭いてくる、です・・・」
雪沙「わぁ〜〜、ど〜〜〜〜〜ん!!」
雪巳「雪沙も手伝うのー!」
廊下を拭き終わってベランダで焼きとうもろこしを食べながら花火観覧・・・
やがて打ち上げ花火が終わり、時計は午後9時、お祭りはまだやってるみたいで踊りの音色はまだ止まない。
雪沙「こっちの花火しよ〜よ〜」
僕「いいけど、まずパンツくらい履こうよ」
雪菜「はい・・・もってきたよ・・ゆきさ」
雪沙「え〜、花火終わったらもいちどお風呂はいる〜〜」
僕「だったらそれまでまた新しいの履けばいいから!換えはいっぱいあるでしょ?」
雪巳「ゆきさ〜、お兄ちゃん困らせないの〜」
ほんとだよ・・・目のやり場に困る。
僕「裸で花火なんかさせないよ、ヤケドしちゃうから」
雪沙「は〜〜〜い、おにぃちゃんのゆ〜と〜りにする〜」
雪菜ちゃんの持ってきたパンツとパジャマを着て・・・
大きい花火セットを持ってきた、まずは何からしようかな。
雪菜「雪巳おねえちゃん・・・バケツにお水・・・」
雪巳「そっかー、お兄ちゃん、バケツあるー?」
僕「うん、玄関の靴箱の隣にしまってあるはずだけど」
雪沙「打ち上げ花火もいっぱ〜い」
僕「それは・・・ここからはやばいな、苦情が来ちゃう」
雪沙「え〜?どれならいいの〜〜?」
僕「打ちあがったり爆発しないタイプなら・・・こういう棒のとか、あと・・」
雪菜「線香花火・・・ください」
僕「うん、いっぱいあるよ、どうぞ」
雪菜「ありがとう・・・」
ネズミ花火もまずいよな・・・
これは・・・ちょうちん花火、雪沙ちゃんに持たせたい。
それと・・・ヘビ花火に、パラシュート花火はここじゃ無理だ、あとは・・・
雪巳「お水くんできたよー」
僕「ありがとう、は、花火」
雪巳「マッチはー?」
僕「あ、そうだ!ええっと・・・」
雪菜「どこに・・ある・・ですか」
僕「うーん、僕、タバコ吸わないしなあ・・・あ、そうだ」
前にラーメン屋で粗品に貰ったライターが・・・
あったあった、貰ったときはいらなかったけど、
こんな時に役立つもんだ、確かこの店もう潰れたはずだけど。
僕「じゃあ雪沙ちゃんからまずつけるよ」
雪沙「は〜〜い」
カチッ・・・・・シャーーーーー・・・
雪沙「きれ〜〜〜」
雪巳「これはいいー?」
僕「ドラゴン花火・・・火柱が立つだけなら、いいかな」
雪菜「線香花火・・・つけてほしい・・・です」
僕「はいはい、つけるよ・・ってこれ上下逆だよ?」
あわてて直す雪菜ちゃん、かわいい。
カチッ・・・・・パチパチパチパチパチ・・・
雪菜「きれい・・・」
部屋の明かりにあたらないようにか、
ベランダ隅の真っ暗な方へ行く雪菜ちゃん、
しゃがんでじーっとその閃光をみつめてる・・・
雪巳「ゆきさー、その花火でこれつけてー」
雪沙「は〜〜〜い」
ブシュウーーーーー・・・
ドラゴン花火が火柱をあげる、
無邪気に戯れる三姉妹は火の妖精みたい・・・
そう考えると、なんだか手のひらに乗せたとたん消えてしまうような、儚いものに思える。
雪沙「7色花火だよ〜〜」
雪菜「私も・・・その銀色の・・・」
雪巳「お兄ちゃんもやろうよー」
僕「よし、じゃあ2本同時に」
雪沙「まだいっぱいあるね〜〜」
そうだそうだ、火の始末をちゃんと気をつけなくっちゃ、
ライターは・・あった、でも三姉妹とも花火の火を継ぎ足し継ぎ足しで、
好きにやってる・・・ヤケドだけには気をつけなきゃ・・ん?雪沙ちゃんが持ってるのって?
雪沙「火うつす〜〜」
雪巳「あー、それ、ロケット花火ー!
雪菜「ゆきさ、あぶないっ!!」
雪沙「え〜?きゃ〜!!」
僕「うおっ!!」
ロケット花火が斜め上を向く!
ピューーーーーーーー・・・・・パーン!!
ベランダから幸いにして外へと飛んでいった・・・
雪巳「もー!なにやってんのー!」
雪菜「ゆきさ・・・・・もう花火持っちゃだめ・・・」
雪沙「え〜、わざとぢゃないよ〜、まちがえちゃっただけだよ〜」
僕「こらっ!!」
雪沙「ふぇ〜〜〜ん、ごめんなさぁ〜〜〜〜〜い!!」
危ない危ない、
みんなに自由に花火取らせたのがいけなかった。
今後は僕が一括管理して面倒でも1つ1つ手渡ししよう。
僕「それよりみんな、怪我は無い?」
雪巳「ないよー」
雪菜「ゆきさ・・・て、みせて・・・」
雪沙「へいきだよ〜〜」
僕「良かった・・・今日はもう終わろう、続きは明日」
焼きそばとお好み焼き食べて、
お風呂と歯磨きが終わったら寝よう。
僕「で、このビニールプールどうするの?」
雪沙「し、しまうよ〜〜」
雪巳「バケツのお水と花火捨ててくるねー」
雪菜「使ってない花火・・・しまう、です」
僕「それは大人の仕事だから、僕がやっておくよ」
・・・ちょっと気が抜けすぎてたかな、気をつけなければ。
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