すでに昨日か、今日、城でゆっくりしていけと言われたとしても明日には来るはずだ。
それを超えるとなると、1週間ではきかぬだろう、1ヶ月から3ヶ月はじっくり考えていただく事になる・・・
「逆に、騙されたと思い憎まれたならば、これ以上は考えることすらせぬだろうな」
ようやく地上についた頃にはあのお方がアバンスあたりで幸せな家庭を・・・
「そうだとしても、その現実を受け入れることが償いになるなら、仕方あるまい」
リリがあのような状態である以上、私が自分で作らねばならぬからな。
もちろん、そんな可能性は少なく、あとでゆっくり両方飲む事になるのだが。
よって風の動きは夜に強くなる事が多いくらいで、いつもは一定だ。
しかし今は昼にも関わらず、なんというか、空気が渦巻いて何かを待っているようだ。
何もせず、あてにもせず、ただ心に期待を押しとどめる待機もあれば、
くるはずのないものをソワソワと玄関で待つのも立派な待機だ、そして今、私は後者を取りたい。
さらに、玄関の前とかではなく、屋上に向かって風が吹き上げる・・・
室内であっても、見えない誰かが招きよせているようだ、屋上へ出て待てと。
「これでもし、本当に来たら、それはあのお方とは天命で繋がってる事になるな」
神が初めから決めていた筋書き・・・だが、それが無いならば、私が自ら書くだけだ。
特別な来客を、いや、住人を迎え入れるために、抱きしめるために心を落ち着けているような・・・
どうしても白竜が戻ってくるはずだと関連付けてしまう、まあ良い、しばらくはこうして待たせてもらおう。
「私は、ここにいる・・・さあ、戻ってくるのだ、愛しいお方よ・・・」
その時にはこういった現象が起きるのだが、まだ日は高い・・・う〜む・・・
眩しい陽射しに目を細めながらよーく見ると、白竜だがかなり大きい!まさか!
伏せた所でようやくわかった、乗っていたのは2人、シャクナと・・・・・
「ハプニカ様と離れてみて、一人でじっくり考えて、ようやくわかったんです、
俺が愛すべき人、俺が本当に愛する人に、どうするべきかという事を・・・
もう俺は迷いません、ハプニカ様、好きです、愛しています、どうか、今までの無礼を、
許してください・・これからはどんなことがあっても、ハプニカ様の、そして、
みんなのそばを勝手に離れたりしませんから・・・もう疑ったりもしませんから・・・」
夢でも幻でもなければ、私は、私は・・・あぁ、強く抱きしめてあげねば・・・!!
「ううぅ・・・そなたから・・そのような言葉が聞けるとは・・・
私は・・・どう感謝していいのか・・・謝るべきは私の方であるのに・・・」
「ハプニカ様・・・感謝するなら白竜にしてあげてください・・・
いつのまにか登ってきた4姉妹やミルも手伝って・・・さすがにこの状況は邪魔できぬか。
荷物が全て降ろされると、白竜のほうから私の元へ歩み、すまなかったとでも言いたげに擦り寄ってきた。
「白竜よ、ご苦労であった、そなたをパートナーに持てて誇りに思うぞ」
白竜はおそらく、人の心が読めるのだ、それは考えている事が筒抜けになっているのか、
リリのように、なんとなくこう思っているだろうと感じる力が発達しておるのか、もっと賢く、
仕草や口調、喋る内容で心理状態を緻密に分析しているのか・・・飛び上がり木の枝、家族の元へ戻っていった、本当に感謝だ。
でもハプニカ様が俺に、本当にそばにいて欲しいというのであれば、
私はハプニカ様の望む限り、そばにいようと思います・・・ですから・・・
「もし、了承してくれるなら・・・俺にも・・・はめてください」
感動を噛み締めるように、愛しいお方の左手を取り、薬指にゆっくりとはめた。
しばし見つめたのち、やさしく、やさしく唇を重ねてくれたのであった・・・・・
シャクナとマリーが内政を取り仕切り、誰か看板として国王に掲げるまでは予測していたが、
まさかそれをバニーガールにさせ、娯楽の国にするとまでは思いもよらなかった、驚愕の事実だ。
そしてシャクナやマリーに説得され、よく考え直して、皆の気持ちに応えたくなったという・・そう、皆の、な。
私に告白したように、他のララたちやミルにも告白したいという。
別に何もおかしな事はない、元々は皆で王妃になるつもりであったし、
嫉妬心から言えば、まず最初に私から告白していただいたという事実だけで十分だ。
あのお方が戻ってきてくださった時、皆は邪魔せずに私たちを祝福してくれた、
それはもう、帰ってきた時点で皆の想いを受け入れに来てくれた、と安心したからであろう。
だから私も邪魔はせぬ、明日から、いや、今夜からは横一線のスタートと言えるが、今は皆が幸せを噛み締める時だ。
「あのお方に色々と聞いたが、城の、いや、国の再興、ご苦労であった」
「ありがとうございます、でも、私も今日をもって城を出てしまいましたので・・・」
「バニー国王とは思い切った決断であるな、他国もさぞ驚いたであろう」
「それが、逆に観光客を呼び込む宣伝をしていただきまして、特にアバンスからツアーが」
「なんと、それは感謝であるな、私がいなくなっても、国と国との関係として、助けていただける・・・ありがたい」
「それでハプニカ様、新国王シグリーヌ・シルヴィアさまから伝言があります」
「・・・私はもうただの、何の地位も無き女であるが、ありがたく聞かせていただこう」
「はい、ハプニカ様のこれまでの功績と想いを受け継ぎ、かならず平和で幸せな国にしてみせる、と」
「それは心強いな、城にいた時に、1度でも直に会っておくべきであった、心配はなさそうだな」
「まだマリーさんがついてらしていますが、シグリーヌ様ひとりに任せても、もう大丈夫かと」
「で、そのマリーはどうしているのだ?一緒に来たのではないのか」
「私もお誘いしたのですが、考えが2つあると・・・1つはハプニカ様の下した刑を守りたいそうです」
「確か1年の奉仕労働であったな、国への奉仕と置き換えるならば、あと半年は来れぬか」
「もう1つの考えは教えていただけませんでした、想像すればいくつかは浮かびますが・・・」
「だがおそらく、半年後にはここへ来るであろう、まあ、来るならば自分の白竜で、という事かも知れぬな」
「あとシグリーヌ様からもう1つ伝言が、このスバランの木のことですが」
「・・・ここは王家のものであるが、所有の所在をはっきりさせたいのであろうか?」
「ここは元々、聖域として立ち入り禁止でしたそうなので、そのまま、ここを守ってさしあげたいと」
「はい、さらには今後のために、国の中の自治国とするなり、独立しても良いのではと」
「ここを国にするとな・・・思い切った提案だな、そこまで敬意を払っていただけるのか」
枝の上や木の内側を開発すれば5階層6階層の、木をくり抜いた塔の様なものにもでき、
立派な空中の国と呼べるまでに発展させる事は可能だ、そうするなら国名はどうしようか・・・
「わかった、いつになるかわからぬが、シグリーヌに会って礼を言おう」
「では私は、部屋に戻って、トレオ様を待たせていただきます、きっと・・・」
「そうか、シャクナも確かに告白されるべきであるな、待たせてはならぬ」
「私は最後でしょうから・・・ドキドキしています、教会の神父さまが特級僧侶就任式に出た時よりも」
「就任できたか、それは良かった・・・シャクナよ、あのお方をここに連れてきてもらって、本当に感謝する、ありがとう」
あとはとっておきの、母上が造って保管したままの、スバランの黒い実の酒を出そう。
よかった・・・本当によかった・・・2泊で戻ってきてくれた・・・
私たちの愛は、決して間違っていなかった、そして、やっと、想いが叶ったのだ・・・!!
あのお方をいかに幸せにし、私も幸せにするか・・・その権利を、やっと手にしたのだ!!
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めくる