もう涙が止まらず、ただただ抱く力を強める・・・

しかし1点のみ、腰だけは深く沈めることはできない、

これだけは相当な覚悟がいる、今から犯すことを宣言せねばならぬ・・・

 

「そなたを犯す事を、許して欲しい・・・許せぬなら後で首を切ってもよい・・・

この先どうなるにせよ、最後ならなおさら、そなたとの繋がりが欲しいのだ・・最後の繋がりが・・

もうここまで来てしまったらどんな無礼も同じだ・・私は私らしく、素直に自分の想いを遂げさせてもらう・・

国も地位も名誉も、国民も4姉妹もミルも、もう関係ない、いや、はじめから関係ない、あるのはそなたへの愛だけだ!

さあ、私の・・愛を・・感じてもらいたい・・偽りなき・・本当の・・気持ちを・・・愛しい人よ・・・・・」

 

ず、ずぬずぬずぬ、ずぷずぷずぷずぷずぷ・・・・・

 

「はあう!ハプニカさまぁ!!」

「あああ・・これが・・夢にまで見た・・そなたなのだな・・」

「き、きついっ!は、入ってく・・絡みついて入っていくぅ!!」

 

ううっ、まるで初めてのように、き、きついっ・・・

だが、もう腰は止められぬ・・・奥深くまで入りきると、一気に振動のような快感が膣を収縮させる!!

 

「はああ!そなたが・・そなたがあああぁぁぁ!!!」

「き、気持ちいいっ!ハプニカさまっ!し、しめつけすぎてるううう!!」

 

熱いペニスをそのまま取り込まんとばかりにグチュグチュと捻る・・・

夢中で腰をるとずちゅ、ずちゅっ、と卑猥な音が響き、愛しいお方の表情が快感で悶える。

じゅぶっ、じゅぶっと愛液は飛び散り、より速く、より深く、より強い快感を求め一心不乱に捻じ込み続ける!

 

「ああっ!ハプニカ様!出る!出る!出るう!!」

「中へ・・・私の中へ・・頼むっ!中へっ!!」

 

はやく、はやくっ、はやく熱い精が欲しいっ!

私の体が、心が、愛しいお方の迸りを今か今かと待ち構える!はやく・・はやく・・・く・・・くるっ!!!

 

どぴゅっ、どくっ、どくどくどくどくどく・・・

 

「はぁん!熱いっ!そなたのが・・い、いいーーーーーーーーーーっっ!!!」

「ああっ・・ハ・プ・ニ・カ・・さ・・まぁ・・・」

「そなたがーっ、入ってくるっ、満たされ・るっ!いいぃーーー!!」

 

あああ、ついに、ついに私の中へ・・・意識ある精が入ってきた・・・

さらに精を吸い尽くさんばかりに腰をくねらせ、膣を絡ませる・・もっと、もっとだ・・・

子宮を満たす精が、神経を直接愛撫しているかのよう・・・まだまだびゅるびゅると射精が続く・・・

もう夢中でこの悦楽の瞬間に浸ろう・・・このまま深い深い快感の海へ、共に潜って・・・あぁ、良過ぎる・・・

・・・・・長い長い絶頂が終わり、私の体は芯から痙攣するようにぶるぶる震え、糸の切れた人形のように愛しいお方の胸に落ちた・・・

 

「・・・・・」

「・・はぁっ、はぁ・・ハプニカ様・・・」

「・・・・・・・」

「・・・はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

とろける、身も心もとろけてしまった、

生涯最高の絶頂であった、マリーにされた悪戯など、これで全て吹っ飛んだ・・・

互いに汗まみれだ・・・あぁ、もっと、まだ続けたい・・・その証拠に膣はまだ愛しいお方のモノを強く咥え込んだまま、離さぬ・・・

 

「・・・ハプニカ様・・・」

「・・・・・・・・・・」

 

このまま私のものになってくれ・・・

快感の余韻に浸り、少しでも長く繋がっていたい・・・

荒い息を整えようとするが、熱い熱い連結部がまだ火種のようにくすぶってくる・・・

愛しいお方の手を強く握る、こうやって心と心で愛し合い続ければ、わかってくれるはず・・・

いや、その「くれるはず」が間違っていたのだ、私がわからせなければならないのだ、はっきりと・・・

 

・・・愛しいお方もぼーっとした表情になっている、

何かを考えているというより、今の自分を、そして私を感じてくれているようだ、

ここにいてくれれば、いくらでもこうして感じ合える、分かり合える・・・誤解も解いてみせる。

城で最後に過ごした、ただ泣きすがって抱き合うだけの夜に比べると、全然違う、進化したと言っていいくらいだ。

このお方が教えてくれたのだ、別れると言ってくださった事で、ようやく、人の愛し方、恋の叶え方、想いの貫き方を・・・・・

 

「・・・お、重い・・・し、しびれて、きた・・・」

「・・・・・す、すまない・・・」

 

あわてて起き上がる、いけないいけない。

 

「・・・うぅ・・すまない、泣いてばかりで・・・」

「いえ、俺の事など気にしないでください・・・」

「・・・それは酷い言葉だな・・そなたしか考えられぬ私には・・・」

 

感極まって流れていた涙をぬぐう、

腰を上げると「ぐぽっ」という音と共に白い液が大量にあふれる・・・

愛しいお方は少し背中を痛そうにしながらも上半身を起こした。

 

「・・・・・私は、また取り返しのつかぬ過ちをしてしまった・・・

そなたを無理矢理犯してしまった・・・うぅ・・・私は・・私は・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

 

そうだ、犯してしまった事実に、変わりはないのだ・・・

 

「そなたを犯して・・・感じてしまった・・今までのどんな時よりも・・・」

「・・・その、俺・・・・・」

「私はどうすれば良いのだ・・私は・・・どうすれば・・・」

 

急に罪悪感が私を襲う、精神のバランスが崩れたような状況だ、落ち着いて私は想いを語る。

 

「そなたは・・苦しみに苦しみぬいて私を助けてくれた・・・

その引き替えに・・心の傷も大きかったのであろう・・・冷静に分析すればわかる事だ・・

そなたはあの時、1人で闘い続けていた特、ずっと助けを求めて声なき悲鳴を上げていたのであろう・・・

しかし私はそれを気づかぬどころか、攻撃を・・・そなたはおそらく、助けてもらえなかった事に対して、

無意識に私を責めているのであろう・・反論せずとも良い、責められて当然だ・・・だから信じてもらえぬのだろう、

私が、私達が助けられなかったがために、すっかり信じられなくなった・・そうなって当然であろう・・

そう考えると・・・もう2度と信じてもらえなくても無理はない・・私はもう、どうしたらよいのかわからぬ・・・」

 

思わず頭を抱え、首を激しく振り乱すと髪が舞った。

 

「私を捧げたいのだが、そなたはいらぬと言う・・捨てられた私は行く道がもうない・・・

ここで、そなたの幸せを祈る事しか思い浮かばぬ・・辛い・・辛すぎる・・・うぅっ・・・」

 

あらためて自分の立場を確認すると、胸が痛く締め付けられる・・・・・

 

「私の愛は・・伝わらぬか・・この気持ち・・偽りはないのだが・・伝えきれぬ・・・

そなたを犯してしまって・・これはもう愛ではないのかもしれぬな・・欲望でしか・・・

しかし・・あきらめきれぬ・・いや、永遠にあきらめぬであろう・・そなたの事を・・・」

 

・・・・・だからこそ、わかっていただくまで愛したい、

もう私は国を捨てた、だから時間はいくらでもある、ここで愛し続けるも良し、

ついていって旅をしながら愛し続けるもよし、それにはもっともっと、信頼が必要だ、

私の愛を信頼してもらえなかったのは、全て私が悪い、ではどうすれば良いのか・・・

教えてもらえれば楽になる、愛しいお方が私に天使になれというなら天使になり、

悪魔になれというならば、悪魔になる、今の私ならこのお方が間違った事をしようとしても、

悪に身を染め大戦をはじめようとしても、喜んで補佐してしまうであろう、もちろんそのような事をするはずがないから、

私はこのお方のためなら、このお方の望むことなら何でもしようと思うのだが・・・このお方の望む女になりたい!

全てはこのお方、いとしい、いとおしい、愛するこのお方のためだけの女に、恋人に、妻になりたいのだ!!こんなに愛しているのに・・・うぅ・・・

 

「私は・・そなたへの愛の証明の仕方がもうわからぬ・・こんな事になるのなら・・ 

戦いだけではなく、もっともっと、恋について勉強しておくべきであった・・・

もう後悔してもはじまらぬが・・せめて、せめてそなたへの想いの伝え方を・・・」

「・・ハプニカ様にはそんなの必要ないですよ、凛としたハプニカ様は、それだけで皆の心を引き付けます・・・」

「私には、そなたの心さえあれば、他にはいらぬ、他のものの心より、そなたの心だけが欲しいのだ・・

ここならば、そなたに守ってもらったり、そなたを守ったりする必要などない、完全に隔離された空の孤島だ、

あとはそなたの、今度は心を癒すのみ・・体がここまで治ったのだ、私が責任を持って、そなたの心を癒しきってみせる、

どうか、どうか私にもう1度だけ機会を与えてもらえぬか、我が侭で贅沢な願いである事はわかっておる、無礼な事も・・

だが、そなたのいない地獄に私はどうしても耐え切れぬのだ!どうか、どうか私に、哀れみを、与えてやって欲しい・・・・・」

 

いくら私がこれだけ愛していても、捨てるも拾うもこのお方次第だ、

何でもする、どうとでも成ってみせる、と言ったところで、いりませんと言われれば、それでお終いだ。

現にそうなってしまっていたのだ、拒否されてしまった以上はいくら私が泣きすがっても、どうしようもない。

それを無理に、理由を付けて連れ去り、1週間はいてもらえる事になった・・・拒否を覆すには短すぎる時間だ。

せめて1ヶ月は欲しい、できれば外へついていくより、ここでの滞在を延ばしていただいた方が様々な都合が良い。

ただそれは私だけの都合にしかならない、愛しいお方のいう事を何でもきくといっても、では別れてくれ、といわれたら、

それもきくしかないのだから・・・その時は、このお方に申したように、一生、ここで愛しいお方を想い続けるしか・・・ない。

ああ、想像しただけで、また涙が溢れてしまう・・・どうか私に、せめて、どうすれば良いかのヒントだけでも・・・・・ほしい!!!

 

「ハプニカ様、もう泣かないでください・・ハプニカ様らしく、してください・・・」

「・・・そうか、わかったぞ、そなたは、そなたの思う私、が良いのであるな・・・」

「え?そ、それはどういう・・・」

「それがそなたの望みであったか・・・そういえばあの夜もそう言っておったしな・・・ようやく、今になってやっとわかった」

「その、あの、えっと・・・」

 

私らしく・・・それが、愛するお方の望み!、

ならば、女王ハプニカとして、愛を貫き通す!!

気が引き締まり、服を拾い、裸のまま別荘の中へと向かう。

 

「そなたもいつまでもそこにいても仕方あるまい、来るのだ」

「は・・・・・は、はい」

「体を洗い流そう、きちんと風呂も完備されておるからな」

「すごいですね・・そうですね、全部洗い流さないと」

「ああ・・だが、もし子供ができても安心しろ、私がここで立派に育ててみせるからな」

 

まだ子のできる可能性は無いに等しいが、

本当に、全てが許されたとき、いや、許されはしないが、

互いの愛が重なり合い続ければ、いつかはできるであろう、必ずな。

 

 

 

日が暮れて夜にった、

スバランの木は静寂に包まれ、白竜も大人しくなる。

たまに風による葉音が聞こえてくるだけ・・・そんな外とは違い、

別荘の中では華やかな料理を並べた、スバランの木から取れる葉や実、

愛しいお方は魚を珍しそうに見ている、おそらく見たことの無い種類だろうからな。

 

「ん?それか、この木の中の川にも独特の魚が泳いでおってな、網で簡単に掬えるのだ」

「はぁい、おにぃちゃん、卵が焼けたよぉ」

「おいしそうだね、これもこの木にしかいない鳥の?」

「これはぁ、白竜の卵なのぉ」

「ええっ!?」

「安心しろ、無精卵だ、白竜も文句は言わん」

「そ、そうですか・・白竜の卵・・・」

 

命の無い卵は単なる食料だ、

精をたくわえていただくには白竜の卵は効果絶大・・・

味も、もちろん美味だ、こうした1つ1つの事に意味を、魂をこめなくてはな。

 

「いただきます・・・んぐ・・・お、おいしいっ!!」

「でしょ?ミルもここの木の実は食べるの楽しみだったのぉ」

「ここの食事に慣れると下での食べ物が物足りなくなるほどだ、濃厚な味わいであろう?」

「はい、どれもこれも地上にない味でとても美味・・いくらでも食べられそうです」

「そうか、実はいくらでもあるぞ・・どれ私もいただくとしよう、ミルも落ち着いて食べるがよい」

 

このような家庭的で落ち着いた食事はいつ以来であろうか?

城では4姉妹やメイドがいつも並んでおり、意識せずとも慌しい。

だが今は、食卓にとても温かみを感じる、ひどく懐かしい・・・そうだ、

父上母上、兄者とミルと、5人だけでここへ来たときの食卓、それがまさしくこうだった、

ここに私と愛するお方の子供でも何人かいれば、それを立派に再現できるのだが、それはまだ想像に留めておこう。

 

今は幸せそうに食事を頬張る、このお方を見ているだけで十分だ、

それはミルとて同じであろう、もう過ちを繰り返してはならない、

これがずっと続けば・・・私も食事を口にする、いつもより美味しく感じるのは気のせいでは、ない。

 

 

 

「ここが寝室だ」

「わぁ・・・これって、ベットだけの部屋ですか!?」

「そうだ、6つあった大きいベットを組み合わせたらこうなった」

「おにぃちゃん、なんだか雪の上みたいだねぇ、楽しそう!」

「こらこらミル、あまりはしゃぐでない」

 

シーツの上を泳いでおる、

洗濯し干して綺麗になったものだ。

 

「はしゃぎすぎてシーツが破れたらどうする!」

「でもお姉様ぁ、楽しいよぉ」

 

・・・私も真似してみたくない訳ではないが・・・

 

「じゃあ俺も・・そらっ!」

 

ばふっ!!

 

「本当だ!すごくふかふかしてて、気持ちいい!」

「でしょぉ?おにぃちゃん!一緒に泳ごぉよ!」

「楽しいですよ、ハプニカ様!」

「・・・・・そ、そうか?そなたが言うなら・・・」

「お姉様もはやくぅ!」

 

私も少々遠慮しながらシーツの海へと潜り込んだ。

 

「ん・・・確かに広々として良いな、我ながら良い考えであった」

「しかしなぜこんな部屋を!?」

「どうしても一緒に寝たくてな、ミルもそうせがむので、3人一緒に寝るにはベットを集めた方がと思い・・気がつけばこうなった」

「そうなのぉ、1つのベットに3人は狭いからぁ、いっぱいあればいいなぁって」

「ミルはともかく、そなたに喜んでもらえて嬉しいぞ、運んだ甲斐があった」

 

思わずミルがせがんだ事にしてしまったが、

まあ、問題はなかろう、話を合わせ、このように喜んでおるのだからな。

 

「その、言ってくだされば、一緒に運んでもよかったのですが」

「・・・・・」

「ど、どうしたのですか?ハプニカ様・・・」

「おにぃちゃん運べないよぉ、その体じゃ・・・」

「ミル!!・・・そうであったな、すまぬ、そなたに一声かければよかったな」

 

たいまつを持っての誘導くらいならしていただけたであろう・・・

愛しいお方の表情が少し、ばつの悪いものになってしまったようだ、

運べないのに運びたいと言ってしまったからだろうか?気にすることなど無いのに。

 

「ハプニカ様、すみません、俺・・・」

「・・・・・なぜそなたが謝るのだ」

「え!?」

「・・ふふ、そなたはやはり、やさしいのだな、やさしすぎる」

「あ、あの・・・」

 

愛しいお方の体に腕を絡ませる・・・

 

「そなたのやさしさに・・甘えさせてもらうとしよう・・・」

「あ・・んっ・・・・・」

 

唇を重ねると抵抗なく受け入れてくれる・・・

さあ、舌の動きひとつひとつに、想いを込めよう・・・

お互いに口の中で会話をするのだ、愛している、そなただけだと・・・

愛しいお方の力がどんどんどんどん抜けていく、沈み込むように・・・・・

ついには首がカクン、と落ちたが、なおも上から執拗に舌を絡ませ、想いを伝え続ける・・・

 

「あー、お姉様ずるぅい!ミルもするぅ!」

 

負けじと私たちの間へ潜り込むミル、

愛しいお方の胸元でゴソゴソとやっておるが、

今は私に夢中なのだ・・・ふふふ・・・もうそろそろよかろう、舌を、唇をゆっくりと外す。

 

「ふふ・・愛しているぞ・・ふふふ・・・」 

「おにいさまぁ・・好きぃ、だぁい好きぃ・・・うふふふふぅ・・・」

 

このまま私とミルは、朝まで愛し続けたのであった・・・・・

 

 

 

 

 

「うわあ、本当に綺麗だ・・・」

 

翌日、遅い朝食が終わったのち、片付いた屋上へと案内した。

この別荘は3階建てとはいえ、かなり高い建物なため、塀のようになっている木の淵の外が見渡せる、

まあ下は雲しか見えないのですぐに飽きるが、こうして穏やかに空を見つめているだけで心が洗われる。

朝から夜まで、いや、夜になっても星空を眺めるだけで、うっとりとした時間がゆっくりと流れていく。

兄者もここで本を読むのが好きであったな、こうして・・・とハンモックに腰を下ろし、愛しいお方を手招きする。

 

「今日はここで一日中、横になっていようではないか」

「は、はい・・・」

「さ、来るのだ、まだゆうべの疲れも残っておろう」

 

私の横に寝ると、ハンモックが沈み、2人が密着する・・・

愛しいお方を抱きしめると、ギシッ、ギシッと縄が音をたてる、

スバランの木のつるで作った縄だから切れはせぬと思うが・・・あぁ、幸せだ、

犯さずとも、体を交じり合わせずとも、こうして胸に抱いているだけで、本当に幸せだ、

愛しいお方もそう感じているようだ、それは私の思い込みではなく、間違いなく・・・そう思うと、嬉しい。

 

「・・・そなたのその表情、嬉しいぞ」

「え・・?」

「その安らいだ表情・・そなたは今まで、私に心から信頼した表情を見せてもらえなかった気がするのだ」

「そうで・・すか?」

「ああ・・だが今、はじめてそなたの心から安らいだ表情を見た気がするのだ・・」

 

これは私が真剣にこのお方の表情を見ていなかったからかも知れぬ、

恥ずかしい、という気持ちがあったことも否定せぬが、精を出させさえすれば良いと、

乱暴な言い方をすれば、やっつけで処理をしていたのかも知れぬ、気持ちの確認を怠って。

だからこれからは、しっかりと気持ちの確認をし合うのだ、できる限り言葉に出して・・・

もっともっともっと会話が必要だ、時間は限られている、私の事も、もっとよく知ってもらわねば・・・

 

「・・・さあ、どうしようか・・私の話でも聞いてくれるか?」

「話・・ですか・・」

「ああ・・それともこうして何も言わずただ、幸せに浸っているだけでも私は良いが・・」

「幸せ・・ですか・・・」

「そうだ・・私は・・・幸せだ・・・」

 

このお方が何も話さずただこうしていたいと言うなら、

その意思を尊重して、ただ抱き合っていよう、それだけで私は幸せだ、

今までの私なら、私を知ってもらえてなかったからいけないのだと、

ただ闇雲に突っ走って感情を押し付けていたであろう、だが、それではいけないのだ、

私は話したい、愛しいお方もそれを聞きたい、そうなって、はじめて会話は成立するのだ。

 

もう、過ちを起さないためにも・・・

 

「そなたの髪を、背をなでさせてもらうぞ・・・」

 

やさしく撫で、指のひと掻きひと掻きに想いをこめる・・・

陽射しのあたたかさが私たちを包み込み、心を穏やかにしてくれる・・・

私の話、退屈しのぎでも良いから聞いていただきたい、私の・・・全てを・・・・・

 

「そなたには・・もっと私を知って欲しい・・」

「ハプニカ様を、ですか・・・」

「そうだ、聞いてくれるか?私の事を・・」

 

無言でうなづいてくれた・・・

私は、幼い頃の話から順を追って語った。

物心ついた時から姫としての教育を受け、白竜と出会い、

おそらく今になって初恋と言えるのではないかと思える、教育係シルファスとの日々・・・

はじめて武術大会で優勝した時の喜び、戦争が起きて母が殺された事、父や兄を止められなかった後悔・・・

楽しい事も悲しい事も、また愛しいお方と出合って大戦中、好きで好きでたまらないのに告白できなかったジレンマ・・・

嘘偽り無く、誇張も謙遜もなく、何もかも、ありのままを話し、心を丸裸にしていく・・・全てをさらけだす会話を一生懸命続ける・・・

それを愛しいお方も一語一句、きちんと真摯に聞いてくださっているようだ、これで私の想いが本当に伝わるといい、いや、伝えなくてはならない・・・・・

 

 

 

こうして愛しいお方との甘い時間は過ぎ、

ミルが運んでくれた昼食を挟んでも会話は続き、

日は傾きやがて夕方になった・・スバランの木には沢山の白竜が戻ってくる・・・

 

「・・見よ、まわりを・・・」

「わあぁ・・・すごい、これは・・・」

 

☆夕焼け☆

 

雲海が夕日で紅く染まり、

その幻想的な風景の中、雲間を割って多くの白竜が戻ってくる・・・

迫力があるが、もう怖さは感じていないだろう、白竜たちは愛しい家族の下へ戻ってきたのだから・・・・・

 

「俺・・綺麗すぎて・・・心が洗われるようです」

「そうか・・」

「はい、心が・・癒されます」

「それを聞いて安心したぞ・・・」

「でも・・その、幻想的すぎて・・幸せすぎて・・少し恐いです」

「恐い・・・・・?」

「ええ、その、ひょっとしたら俺はあの時・・実は目を覚ましていなくて、ずっと夢を見続けているんじゃないかと・・」

「つまりここが夢の中、と?」

「そうです、ここがまさしく天国のような環境だから・・ひょっとして実はもう死ん・・・」

 

その言葉をさえぎるように、ぎゅっ、と抱きしめる・・・

 

「夢であるものか・・そなたは今、現実に私の胸の中にいるのであるぞ・・・」

「そ、そうですね・・」

「夢ではない・・このぬくもり、夢にしてたまるものか・・夢で終わらせてたまるものか・・・」

 

そうだ、終わってはおらぬ、これからなのだ・・・

疑いを少しでも取り払い、1つ1つ新たに信用していただく・・・

ここでなら、邪魔する者もいなければ、逃げられる事もない・・・・・今は、だが。

 

「お姉様ぁ、おにぃちゃぁん、夕食ができたよぉ」

「ミル・・もう、そんな時間か」

「あたりも暗く・・なってきましたね・・・」

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