そうこうしているうちに、

あの悲劇から3ヶ月が過ぎた・・・

私は1日の3分の1はあのお方の看病に割けるようになった、

とはいえ、傍にいられる時間が長くなればなる程に、自分のしてしまった罪に苛まれ、

必死に看病するものの、このまま起きてはもらえないのではないか、という恐怖がつきまとう・・・

 

「・・・・・何度、夢に見たであろうか・・・あのお方が目覚めるのを」

 

ここ毎晩、あのお方が起きる夢を見た、

そのたびに喜び、朝、目が覚めてはあのお方を確認しに行き、落胆する・・・

最近ではこれは予知夢ではなく、あえて私をがっかりさせるための、酷い戒めのような気さえする。

 

「レンもミルも、同じような夢を見ると言っておったな」

 

おそらく、そろそろ起きてもらわなければまずいという焦りからであろう、

私たちはすべき事をするだけ、全身全霊を尽くして看病するだけ、しかし結果が出ない焦り・・・

確かに長期間の根競べとなってしまえば起きる可能性は絶望的だ、今度は私たちがいかに精神を保てるかという勝負になる。

 

「幼いレンやミルには酷な試練だ・・・」

 

しかも先の見えない、一生続くやも知れる試練・・・

そう思うと、無理にでもあのお方の婚約者7名が丸一日、手の空く日を作って、

同時に集中的に看病をする日を設けるのも手だな、そしてする事は1つ・・・皆の愛をぶつけるのだ。

 

「・・・・・時間が無い、それを実行するのは、今日だ」

 

 

 

寝室に集まった王妃予定者7名、

急に思い立った計画なのに、皆、快く集まってくれた。

 

「あらためて趣旨を説明しようぞ・・・第7王妃・シャクナ、そなたは主に回復魔法を頼む」」

「はいっ!皆さんの、サポートに徹する覚悟ですっ!」

「うむ頼んだ・・・第6王妃・レン、そなたは左足を、第5王妃ルル、そなたは右足を頼んだ」

「はいぃ、いっぱいいっぱい愛しますぅ」「片足だけでも立派な愛する人の一部だから、頑張ります」

「第4王妃リリは左腕と左胸、第3王妃ララは右腕と右胸だ」

「何だか料理のようですねー、おいしくいただきますー」「みなさんで一斉に全身を愛せば、きっと良い刺激になりますわ」

「第2王妃ミル・・・そのだ、本当に・・・股間を任せて、大丈夫であるな?」

「うんっ!回復魔法しながらだからぁ、きっとここからとっても元気になるとおもうのぉ」

「そして第1王妃、私は頭部・・・目標というか、接吻だけでイカせるつもりで・・・愛する」

 

皆が皆、7人同時で愛を注げば、きっと蘇る・・・

やれる手はどんな手でも尽くすべき、ありとあらゆる手をな。

これであきらかに良い反応が出れば、看病にも光が見えるであろう、その時は毎日でも行おう。

 

「では参るぞ・・・さあ・・・・・想いを、込めるのだ!」

 

その合図とともに、

皆が貪るように担当の体を愛し始めた!

無論、私も横から唇を重ね、頬をなでながら・・・」

 

ちゅっ・・・ぶちゅるっ・・・れろっ・・くちゅくちゅ・・・ちゅくっ・・・

 

「・・・・・・・・ん・・・」

 

キスをはじめるとすぐ夢中になり、はぁ、はぁ、と息が荒くなる、

愛するお方の舌はあまり反応せぬが、それでも次第に温もりが伝わってきて、

息遣いも私に合わせて荒くなってきたような気がする、単に苦しいだけとは違う、心の鼓動・・・!

 

「ん・・・はぁ・・・・んん・・・・・」

 

一方的なキス・・・

今度の私は唇で、舌で犯している状態だ、

だがこれが体の芯をジンジンを熱くさせ、恍惚に浸る・・・そうだ、他の者は・・・?

 

唇を合わせながらもふと体のほうを見ると・・・

まずはララとリリが愛するお方の乳首を両側から同時に舐めている、

丹念に丹念に、いやらしく、ねちっこく・・・と同時に腕を胸で挟んでおる。

 

ぴちゃ・・・れろっ・・・れろれろ〜〜っ・・・ちゅうっ・・・はむっ・・・

ちゅぱっ・・・ちゅぷっ・・・つつつ〜〜〜っ・・・ちゅぴっ・・・ぢゅっ・・・

 

舌でねぶられ、ピクピク反応する乳首・・・

これが体を熱くさせ、心臓を活発化させ、

脳に血が、酸素が多く巡り、意識を取り戻してくれると良いのだが・・・

 

続いて股間のミルはさておき、その先で足を担当するルルとレン、

こう言っては何だが一番つまらぬ部分なのに、一生懸命、かいがいしく舐めておる。

指の先を1本1本、それがまるで勃起したペニスに見立て、指の間も舌を這わせて・・・

 

れろ〜〜〜・・・ぴちゃちゅぱっ・・・れろれろれろっ・・・

ぺろぺろぺろっ・・・ぴちゃぴちゃぴちゃっ・・・れろおぉ〜〜〜っ・・・

 

指先から足の裏、かかと、足首から太ももへ移行・・・

足の1つ1つの部位を楽しむかのように、しゃぶりつくしている・・・

しかも事務的ではなく、這う舌ひとつひとつの動きに感じてもらおうという意図が見える、

意識があればさぞかし、くすぐったくも気持ちよく感じたであろう、逆に起きてくれていれば、

もっと吸ってキスマークを付けたり、軽く噛んでみたりともっとやれる事は広がるのだが・・・

 

「トレオ様・・・」

 

ふとシャクナの腕が視界に入る、

部分的に回復魔法を浴びせている、

どうやらララたちがしゃぶっていた部分で、

少し強くやりすぎて跡がついた所を癒しているようだ、

特に乳首は責めやすい反面、つい、強く吸ったり食んだりするため・・・

 

ポワッ、と魔法をかける、

部分的なうっ血程度ならすぐに治癒し、

治ったぶぶんを今度はシャクナが指でちょっかい、いや、愛撫するのを忘れない。

全体に気を配りつつ、愛する手も忘れないシャクナ、そのきめ細かな心遣いはさすがであるな、

私が吸いすぎた唇にも魔法がきた・・・よく見たら少し腫れていた、気をつけなくては・・・舐めて癒そう。

 

れろれろっ・・・

 

そして一番大切な部分を任されているミルに目を移す、

愛おしそうに一生懸命舐め、袋を手でなでながら、魔法で癒しているようだ・・・

回復魔法をかけられながらイク瞬間は、やはり気持ち良い物なのだろうか、目が覚めたら聞きたい・・・

 

ちゅぴちゅぴちゅっ・・・れろろろろ〜〜〜っ・・・・・しゃくっ・・・

 

下から上へとペニスの筋を舐めるミル、

幼くぎこちないながらも一生懸命尽くしているのがわかる、

性行為というものがいかに心で交わるべきものか、というのを具体化しているのだな・・・

 

あむっ・・・じゅぼじゅぼじゅぼ・・・

 

勢いのまま先端を咥え、

顔を上下に・・・私も負けてはおられぬ、

キスだけでイカせるつもりで、ペニスより舌の方が感じたと後で言わせるためにも・・・それには起きていただかなくては!

 

ちゅ・・ちゅううっ・・・れろれろれろぉ〜〜〜っ・・・がぽがぽっ・・・ぢゅるるるっ・・・

 

激しくしたキスの音に合わせてか、

皆の愛撫、舌技もシンクロするかのように激しくなる!

 

じゅるじゅるじゅる〜〜・・・つつつ〜〜・・・

れっろぉ〜〜〜、れろっ、れろぉ〜〜〜〜〜・・・・・

ちゅ、ちゅ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅぱちゅぱ、ちゅぅうぅうううぅぅ〜〜〜・・・

あむあむあむっ・・・はむっ・・・かぷっ・・・かぷかぷかぷかぷかぷっ・・・むぐむぐっ・・・

ぢゅぷぢゅぷぢゅぷ・・・ぐぽぐぽっ・・・ぢゅるるるるるっ・・・ぬちゃぬちゃぬちゃ・・・ぐぼぼぼぼぼぼぉ・・・

 

皆の攻めで全身グチョグチョとなっている愛しいお方、

唾液がシャクナやミルの回復魔法に反射しヌラヌラと光っている、

そして一際音が大きくなるのはミルが咥えてる、愛しい愛しいモノ・・・

 

「ハプニカさまっ!」

「んっ・・・どうしたシャクナ」

「その、皆様夢中で気にしてないようですが、時間がもうかなり・・・」

 

・・・そうか、皆が皆、担当場所を夢中で貪っておったため、

時の流れまで気が回らなかった、確かにあまり長時間すると体に負担もかかろう。

 

「すまないシャクナ・・・では皆よ、これから・・・イカせるのだ」

 

このような指揮をとるのは、まだいささか赤面であるが、

真面目にやっておるのだから仕方あるまい・・・その合図に皆の愛撫もスパートする!

私も愛しいお方の唾液を、いや、精気を全て吸い尽くさんばかりの勢いでディープキスに耽入る・・・!!

 

「ん・・・んん・・・・・」

 

あまり気道を塞いでもいられない、

愛するあまりキスで窒息死させたとあっては悔んでも悔みきれぬ!

鼻の呼吸を邪魔せぬよう気遣いながら舌をかき混ぜるように絡ませ、想いを昇華させる・・・!!

 

ぺちょぺちょっ・・・

ちゅうううううぅぅぅ〜〜〜〜っ・・・

くぽっ、じゅっ、じゅっ、じゅっ・・・じゅぽじゅぽじゅぽ・・・

 

皆の動きが、快楽責めがひときわ激しくなり、

それに合わせてシャクナも全体へ魔法を強める!

口いっぱいに頬張るミルも、精を吸い尽くさんばかりに激しく・・・あ!愛するお方の体が、ピクピクと!!

 

「!!!」

 

びゅくびゅくびゅくびゅくびゅく〜〜〜〜〜!!!

 

脈動する全身、

噴射された精がミルの口に収まりきらずあふれ出す!

しかしそれを一生懸命飲み込もうと頑張る・・・頑張る・・・吸い続ける・・・が・・・

 

「っ!・・・けほけほけほ・・・」

 

さすがに耐え切れぬ量であたか、

しかしミルが離れたとたん、すぐさまレンが咥えてまだ噴出し続ける精をゴキュゴキュと飲み続ける!

・・・もしこの愛するお方に意識があったならば、それはそれは凄い快感に酔われていただろう・・・私とて・・・・・酔いたい。

 

「ミル・・・辛いであろう、こちらへ吐き出すのだ」

「・・・いやぁ・・・全部飲みたいぃ・・・お兄ちゃんの生きてる証を・・・」

「そうか・・・レン、あまり強く吸うとおそらく痛い、気をつけるのだ」

 

こんな状況でも冷静に指示を出してしまう・・・それが虚しい。

やはり、このお方の命を守りたい、意識を取り戻させたいがためだろう、

すでに1度、いや、細かいのを入れれば何度も取り乱しているゆえ、免疫がついたのかも知れぬな・・・

 

「・・・・・とりあえず今日は・・・これまでか」

 

やさしく、やさしく、今度は挨拶のキス・・・労を労う口付けだ、

他の者はすでに後戯に移りながら唾液や精でまみれた体を拭きはじめている。

早く意識を取り戻して欲しい、そうすれば、遠慮なく我を忘れて、互いに愛し合えるのだ・・・・・。

 

ちゅううぅぅぅ・・・・・ちゅぽんっ!

 

全てを吸い終えたのかレンが頬張っていた口を外す、

すぐさまそのペニスに回復魔法をかけるシャクナ・・・

・・・そうだな、この後、皇務の前に色々と聞いておかねばなるまい。

 

「皆よご苦労であった、とりあえず私は湯を浴びて戻る・・・シャクナよ」

「は、はいっ!!」

「そなたも体を清めた後、このお方をミルに任せるなりして玉座に来て欲しい、それからララ」

「ん・・・ん・・・んふふふ、こんなに気持ちよさそ・・・う?あ、ハプニカさま!?」

「例の悲劇の最終報告書がまとまっておろう、それを持ってきて欲しい・・・私は風呂だ、お付はいらぬ」

 

後を任せ皇室浴場へと向かう、

歩く足が徐々にガクガクしはじめる、

たまらず早足になり・・・急いで脱衣所へ入ると鍵をかける!

 

「はぁっ、はぁっ、はあっ!!」

 

スカートをめくると足首まで愛液が垂れていた、

キスだけで、もうこんなに我慢できぬ体になっているとは・・・

あわててショーツの中へ指を入れ、自分を慰める!!熱い!!!

 

くちゅっ・・・くちゃっ・・・ぬちゃっ・・・・・

 

「あぁ・・・ぁ・・・・ぁぁぁ・・・・・」

 

接吻だけでこんなに火がついてしまうのなら、

完全燃焼するにはあのお方しかない・・・こんな体になったのはマリーのせいもあるが、

愛するお方が全身で皆に感じさせられる様子を見ては、起きている時に皆でもっと犯せばどんな反応になるかと妄想して・・・

 

「ぁう・・・指が・・・とまら・・・ぬ・・・」

 

ずぶっ・・ずにゅにゅっ・・・くぷくぷっ・・・・

 

ああぁ・・・こんな淫乱な王妃を許して欲しい・・・

しかし、淫乱にでもならなければ自我が保てぬのだ・・・

ならばあのお方にも受け入れてもらえるよう、凛々しき淫乱になってみせようぞ・・・

 

「ん・・・んくううっ・・・くふううっっ・・・・・」

 

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

 

「おかえりなさいませハプニカ様、長湯でいらしたようで」

「ああ・・・ララも軽く湯は浴びたのか?」

「濡れたタオルで全身を拭きました、ゆっくり落ち着いている場合でもないので」

 

確かにそうであるな、

痴態に耽っていた私は本来、恥ずかしいのかも知れぬ、

だがそれはあのお方を愛しているという私の確認行為、

同時に火照った体を覚ますために必要な・・・と自己正当化を思い浮かべている私の前へ、

まとめた書類を渡してくれたシャクナ、あの悲劇のトーナメント、その最終報告書である。

 

「ふむ・・ふむ・・・・・なるほどな」

「はいっ、わたくし、びっくりいたしました、その、襲われた相手が、ハプニカ様の配下の方だったなんて」

「シャクナにはすまない事をした、いや、一番すまないのはあのお方であるが・・・」

 

トレオを敵とスロトに思い込まされていた私たちは、

本気で殺そうとした、しかしそれを知らず、シャクナをかばい続けたあのお方・・・

そして何より、私のために、私を守るために、とうに限界を超えた体で戦い続け、ボロボロに果てた・・うぅ・・・

 

「いかん、また思い出すと涙が・・・」

 

そっとぬぐってくれるララも、目を潤ませておる。

 

「それでララ、報告書にある、シャクナがいない間にあのお方を救ったバニーガールだが・・・」

「はい、シグリーヌ・シルヴィアさんと申しまして、単なる踊り子さんです」

「本当にこれだけの謝礼で良かったのであろうか・・・もっと地位や名誉、そして大金を希望しても良いであろうに」

「運営側としてごく普通の、当然のことをしたと申しておりますし、それに、こういう形で目立ちたくは無いと」

「そう書いてあるな、まあ変に名誉を手にしては、これまでの生活がしにくくなるであろう、シャクナのように王妃となるならまだしも・・・」

 

次の報告書・・・あのお方の形見についてだ。

 

「やはり復元は難しいようであるな」

「はい、モアス島、黄金のメダル・・・道具屋の主人はすぐに溶かしてしまいまして」

「仕方が無い事は理解できる、悪人としか思えぬ輩が持ってきたのだ、金が本物か偽物か確かめる一番早い方法は溶かすしかないからな」

「あと、悪い人間から買い取った事がばれないように、証拠隠滅の意味もあったのでしょう」

「その溶かした金もすでに混ぜられ有耶無耶・・・溶けていても同じ物であれば、まだ『取り返せた』事実は残ったのだが」

 

もちろん、元の形成をなしておらぬそれを見せられても本物かどうかはわからないであろう、

逆を言えば本物でなくとも純金であれば、元のメダルが溶かされたのがこれだと言い張れば・・・

 

「結局、そのメダルのデザインは、わからず終いか」

「店主も金が本物かどうかだけが気がかりだったようですので、絵柄はまったく覚えていないと」

「モアスの文献や生き残りの証言・・・ほとんど無しか」

「リューム様にお願いしまして、アバンス在住のモアス出身者全ての方にあたっていただいたのですが・・・」

「モアス島民は島を出る時は全てを島に残す掟、よって名誉のメダルも全て島と共に海底か・・・」

 

それでも記憶を元にある程度の証言は得られた、

複雑な絵であったようで、食い違いも見られるが、一か八か、推測するしか無いな。

 

「念のためアバンス以外の国に住む元モアス島民にも聞いて回りましたが、アバンス以上の成果はありませんでした」

「元々、本当にあるのか疑わしいとまで言われた島国であったからな、観光客などいる訳がないゆえ行ったという文献も無い」

「上空からも不思議な霧や雲が隠して、見つからないようになっていたそうですから」

「もし今、どこかのオークションでこのメダルが出れば国土を半分売ってでも手に入れるのだが・・・」

「はい、後で店主もメダルの本当の価値を知って、非常に悔しがっていたそうです」

 

ん?シャクナが何か言いたげだな。

 

「どうしたシャクナ?」

「その・・・トレオ様にその店主は、不良品のエリクサーを売ったと聞きます、モアスのメダルと引き換えに」

「ああ、詐欺だと申したいのであろう、気持ちはわかる、だが、そのエリクサーのおかげであのお方の命がぎりぎりで助かったのかも知れぬ」

「つまり、結果的には命の恩人という事になってしまうのでしょうか?」

「そうだな、命は金では買えぬゆえ・・・ただし、シャクナが不快に思う気持ちもよくわかる、よって相殺とし、褒美は無しだ」

 

ただし事実としてあの道具屋が、瀕死の次期国王にエリクサーを売って助けた訳であるゆえ、それを看板にして商売するのは仕方あるまい。

 

「ではララ、そなたが中心になってモアス名誉メダルのデザインをできる限り復元して欲しい」

「わかりました、同じデザインができれば、あのお方も別に作ったとは気付かないでしょうから」

「あのお方が目覚めたら、それとなく聞いて見るのも良いな、所持品には関連付ける物は無かったが」

「それとは別にダルトギアの名誉メダルを造ってさしあげるのも良いアイデアだと思います」

「うむ・・・次の報告書は・・シャクナの処遇についてか、丁度目の前におる」

 

そして第7王妃が決定なゆえ、これは読まずともよかろう。

 

「シャクナよ、あらためて私に、そしてこのダルトギアに、ガルデス城に要望はあるか?」

 

跪くシャクナ、顔を上げ、真剣なまなざしで私の目を見る。

 

「ハプニカ様、要望という程のものではありませんが、こうしていただきたいという希望はいくつかございます」

「ほう、申して欲しい、次期国王であるあのお方の代理として聞こう」

「はい、もし聞かれて私に失望されるのであれば、すぐに取り下げさせていただきますっ!」

 

私が失望するとな?・・・もしや、やっぱりあのお方の第一王妃になりたい、とかではあるまいな?

 

「はっきり申し上げますと、これは私が僧侶の地位昇格を受け入れた理由の1つでもあるのですが、お金を、いただきたいのです!」

「・・・そうか、そういう事か、いや構わぬ、別に失望などはせぬ、全ての欲を禁じられた修道僧ではないゆえ、物欲も結婚も普通の事だ」

「言い訳を・・・説明をさせていただきますと、私のゲングラード教会は、多くの孤児を抱えることもあり、貧乏なので・・・」

「ではその教会をミルに頼んで皇室公認、いや、国王直属の教会にするのはどうだ?詳しい、細かい内容はミルと詰めるがよい」

「いえ、わたくしだけが、わたくしどもの教会だけが潤えば良いという気持ちでお願いしたのではありません、聞いていただきたいのです!」

 

ただ単に金が欲しいというのではなく、切実な現状を私に聞かせたいようだ。

 

「先の大戦で多くの孤児が教会で暮らしておりますが、今の所、補助金が十分に、なおかつ均等に渡っているとは言えません」

「確かに・・・だがそれは国の復興、破損した街や城、国土全体の整備が最優先と国防会議でスロト中心に決められた話であった」

「読ませていただいた報告書によりますと、そういう大義名分でスロトたちが不正に予算を流用し、汚職をしていたと・・・」

「ああ、だからシャクナが言わずとも、予算を組みなおして、いくばくかは教会へ回せる額も増えるはずなのだが」

「建物や国土ばかりを復興させても、人が、子供たちが復興されなくては、国の本当の復興とは言えないと思うのです」

 

シャクナの教会はよほど貧乏で苦労したのだろう、孤児の扶養は大変だからな、

なおかつ、他の教会のことも考えている・・・自分だけが良いと考えないあたり、さすが将来の皇級僧侶だ。

 

「わかった、教会への予算の名目と額は増やすとしよう、シャクナもその会議には出席するのであるぞ」

「はい、なるべく教会によるおかしな偏りが無いように、もちろん規模や内容に見合ったバランスを・・・」

「普通に正しくすれば問題は起こらぬ、まあそれができないからこそ問題が起きるのであるが・・・」

「教会責任者の階級差別はもちろんのこと、皇族関連のエリートか、そうでないかで額は桁違いでしたので」

「どのみち皇級僧侶となればシャクナが教会への予算を決めるのだ、ミルと供に全てな・・・今回の件は早急に出そう」

 

ぱらぱらとシャクナ自身について書かれた報告書をめくる。

 

「シャクナの所の神父は平民出の上級僧侶であったか、なのに孤児を養う数があきらかに多すぎる」

「はい、頼まれると断れない性格ですから・・・でも特級僧侶の試験を何度落ちても挫けない心の強い神父さまです」

「この手の試験はどうしてもエリートが優遇されるからな、このあたりの改革もシャクナの新たな仕事だ」

「神父様を急に追い抜いてしまうのは心苦しいですが・・・しかし立場上、試験は、審査は適正にしたいと思います」

「・・・国王としてではなく私個人の本音を申せば、皇級僧侶となるシャクナを育てたというだけで、特級、いや、最特級僧侶の資格があると思うのだが」

 

・・・ふむ、報告書の最後のページによれば、

今でも週に1度はゲングラード教会へ戻っておるようだ、

あのお方の看病や、色々と忙しい事もあるのに・・・これは何とかせねばならぬな。

 

「シャクナよ、こまめに教会へは顔を出しているようであるな」

「はいっ、神父さまや孤児たちに顔を見せたいというのもありますし・・・」

「この報告書によれば金策のため募金活動や講義も行っておる、体は大丈夫なのか?」

「私は平気ですっ!おかげさまと言っていいのか、教会で私が出る日は、人も寄付も凄く集まってらして・・・」

「すっかり有名僧侶になってしまったからな、だからといって無理をして体を壊してしまっては困る」

 

ララに読み終えた報告書を渡す。

 

「ララよ、ミルにお願いしてミルの弟子をシャクナの教会の手伝いにやって欲しい」

「かしこまりました、そうお伝えしてきますわ、ミル様自身も行きたいとおっしゃるでしょうね」

「そんな!も、もったいない・・・神父さまも、きっと緊張なさってしまうのでは・・・」

「シャクナはあのお方と私の補佐に専念して欲しい、教会に顔を出す事を無理には禁じぬが、楽にはなるであろう」

「あ・・・ありがとうございます!色々な、様々なお心遣い、一生ご恩に着ます!」

 

恩を感じるのは私のほうだ・・・。

 

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