翌朝、ララたちは4姉妹揃い、何食わぬ顔で私のサポートをしている。

皇務の補佐は2人いれば足りるのだが、まるで私の指示、いや、問いかけを待っているのかよう・・・

 

「・・・よしララ、この件はこれまでだ、あとは書類を回しておけ」

「はいハプニカ様、ではこれはルルに・・・次はシャクナ様直々の、戦争孤児への補助金のお願いについてですが・・・」

「待て・・・本当ならば皇務が終わってから聞くことであるが、すっきりせぬゆえ、いま聞かせてもらおう」

 

やはり来たとばかりに私の前に並ぶ親衛隊4姉妹。

 

「細かな詮索はせぬ、なぜあのお方を、私が済んだ後とはいえ・・・その・・・犯した、で、あろう」

「それは悪い言い方ですわね、でもハプニカ様がその言い方をなさったという事は、ハプニカ様にも罪の意識はあるようで安心致しました」

「もちろんー、私共もー、ハプニカ様と同じ罪を犯しましたー、しかしー、その理由はハプニカ様とまったく同じものですー」

「ここで『犯したんじゃなく契りの儀式をした』とでも言い繕う事はできるけど、事実、犯したんだからそれは否定しません」

「生きている間にぃ、いただきたいものをいただいただけですぅ、痛い思いをさせたからぁ、おわびにきもちよくさせたかったのぉ」

 

・・・私に問い詰められたらどう言い返すか、すでに打ち合わせでもしておったかのようだな。

 

「まずはララからだ・・・ララ、私が受胎しなかった時の予備とでも言おうか、保険のためにあのお方の精を受け取ったのか?」

「・・・まずはっきりさせておきますと、今の私はハプニカ様の親衛隊ではなく、あのお方の親衛隊であります」

「ああ、そう命じたのは私だ、だからといって犯して良い理由にはならぬであろう、無理をしてるならばなおさらだ」

「・・・さらにはっきり申し上げますと、私もハプニカ様と同じくらい・・・いえ、比べるものではありませんが、あのお方を愛しています」

「しかしあのお方は国王に、私は王妃になり、その間の子を授かろうとしたのだ、ララたちには関係はなかろう!」

 

体が熱くなってきた、あのお方の事となると、感情的になってしまわざるをえない。

 

「ハプニカ様が嫉妬なさるのはよくわかります、しかし、恋愛に地位や強弱は関係ありませんわ」

「私が納得ゆかぬのは、あのお方の子をこの国に残すのが目的で、政治的意図しか考えてないであろうその感情だ!」

「・・・もちろん結果として私だけが妊娠し、あのお方が亡くなってしまったら、私のした事は政治的意味では正しいのでしょう」

「それが許せぬのだ!政治的な事のみ、国の発展のみを考えれば、私は我が兄とラーナンの間の子は抹殺した!しかしそれをしなかった理由がわかるであろう!」

「ええ、その大英断はよくわかります、しかし・・・昨日申し上げた通り、すでに私の心はあのお方に奪われてしまっていたのですわ」

 

パチン!と両手を合わせるララ。

 

「この一瞬で、人は恋に落ちる事は可能です、それは予期せぬ恋もあれば、落ちたくて落ちる恋も同じ・・・」

「つまり、ララは子を身籠る理由をつけたいがために、恋に落ちたと言い張るのであるな?ずっと私が慕っていたのを知りながら!」

「ハプニカ様が1つ勘違いしてらっしゃるのは、私は嫌いな方を無理に好きになった訳ではありません、好きになる価値のある方だから好きになったのですわ」

「そんな唐突で都合の良い恋愛感情など、信じられるわけが無かろう!いかに私の影武者、分身といえど、そこまで真似る事はあるまい!」

「真似たのではありません、自然とこうなったのです、もう私の心はあのお方への愛で、いっぱいに埋まってしまっておりますわ」

 

うっとりとした表情・・・心の底から恋をしている表情だ。

 

「だからといってあのお方の意思確認も無く、犯して良いと思っておるのか!」

「でしたらハプニカ様も同じですわ、経緯はともあれ結果的にはハプニカ様は、ふられ・・・」

「ええいうるさい!もうよい!・・・ではリリ、次はリリに問う、なぜあのお方を・・犯した・・・のだな?」

 

顔をポッと紅くしたリリ。

 

「私もー、ハプニカ様がおっしゃるようなー、義務感や責任感、親衛隊としての立場でした訳ではありませんー」

「リリは戦の前、バイハラード家やビッチェル家の御曹司から求婚されていたであろう、それを差し置いて・・・」

「それを断るのはー、私の選択ですー、そしてー、私の選択でー、あのお方を選びましたー、目を覚まされたら求婚しますー」

「求婚するのは私だ、では、私と競うつもりがあるというのであるな?そうしてまであのお方と結ばれたいと申すか?」

「いえー、私の希望はー、あのお方の第二、第三王妃になる事ですー、ハプニカ様やララ様やー、妹たちと一緒にー・・・」

 

そう来たか・・・確かに我が兄・ジャヴァーは王位継承の暁に、5人の王妃を迎え入れる予定であったが・・・

ならばなおさら、本心を聞き出さなくてはならぬ・・・もし少しでも迷いや、仕方が無くといった感情があれば即刻、城から叩き出そう。

 

「大戦の時、あのお方の話題などリリはしなかったではないか」

「それでしたらー、ハプニカ様もあえて避けて話題にしなかったとー・・・」

「だが胸の内は・・・では聞こう、私が納得する、リリがあのお方を愛している理由をだ」

「はいー、はっきり理由を言いますとー、一言で表現するとー、なんとなくー、ですー」

「なんとなく、あのお方を心底愛したとでも申すのか!はっきりした理由も無く、なんとなく、と!?」

 

・・・しかしリリの表情に動揺や曇りは一切無い、

本当に、なんとなく恋に落ちた・・・それを誇りにすら思っている顔だ。

そう言われれば、確かにララの「なんとなくこうだと思いますー」には何度も命を助けられた、

あのお方の、悲劇のトーナメントの時も、結果的にはこうなってしまったが、しっかり警鐘は鳴らしてくれていた。

だからこそ、リリの「なんとなく」ほど、根拠の無い意思には強い強い説得力があるのだ、こう言われてしまっては、逆らい様が無い。

 

「その直感・・・リリのなんとなく落ちた恋に、嘘偽りは無いのだな?」

「はいー、こんなに切なく激しく胸に想う恋はー、生まれてはじめてですー」

「わかった・・・とりあえず、わかった・・・ではルルはどうだ?あのお方についてきちんと考えた事はあるのか?」

 

ルルはすでに顔を真っ赤にしている、説明するのも恥ずかしい様子だ。

 

「えっと、正直に言います、大戦の時はハプニカ様が好きな人なんだなって思っただけで、それを私の恋愛に結びつける発想がなかった」

「そうであろう、私のことを気付いたのであればなおさら、応援してくれるべきであろう」

「それで、トーナメントであんな事になって、終わってからもそんな事を考える余裕もなくて、ただ目の前の事に一生懸命で・・・」

「ならば、あのお方を犯してから好きになったとでもいうのか?それはいくらなんでも許せぬぞ、愛など犯した後に沸く物では無い」

「はっきり意識したのは、ツァンク将軍の息子が、私と稽古した後に、交際を申し込んできたとき、すっごく考えたんだ」

 

ずいぶんギリギリのタイミングであるな、嘘くさいと言われても文句は言えまい。

 

「考えたのはツァンクJrとつきあうかって事じゃなくって、じゃあ私が恋人になる人って誰だろうって」

「それであのお方への感情が沸いてきたというのか、しかも、犯してしまうくらいにまで」

「すっごく考えながら、ツァンクJrの言った、強い女性が好きって言葉から、私はどんな男性が好きかって考えて・・・」

 

もじもじしはじめたルル、さらに赤くなった顔が湯気でも出そうだ。

 

「それで目の前で看病してた、あのお方が大戦やトーナメントでしてた苦労を思い出して」

「大戦では別行動が多く、覚えてなかろう・・・トーナメントもシャクナならまだしも、ルルはあのお方の傍にはいなかったではないか」

「でも、想像したら、胸が苦しくなって、涙が出て、それであのお方の体を拭いてたら・・・すっごく好きになっちゃったんだもん!」

「ならば失礼ではないか?自分の思い込みであのお方を好きな相手に仕立て上げるような行為は・・・しかも犯してまで・・・」

「あれだけの事を成し遂げたんだから、好きにならない訳ないよ!ハプニカ様が好きになったんだから、私たちも本気で惚れてもおかしくないよ!」

 

・・・そう言われてしまうと納得して・・いや、私が好きな方だから倣って好きになっているのであれば違う!

もちろんルルは、私が好きになる程の男であるからこそ、リリに限らずどの女も惚れるであろうという事を言いたいのであるが・・・

 

「ルルの言い分もわかった、強引に話をまとめられた気もするが・・・最後にレン、レンはまだ受胎して良いような年齢ではなかろう」

「でもぉ、時間は待ってくれないからぁ・・・お姉さまたちも止めたけどぉ、どうしてもやりたかったのぉ」

「それはララ・リリ・ルルがやったからこそ、自分も姉妹である事を主張するためにやったのではないのか?」

「ちがいますぅ、ミルちゃんもやったからとかぁ、そうじゃなくてぇ・・・好きになった人と、なにもしないで別れちゃうのは嫌ぁ・・・」

「・・・ミルの場合はどうしても、恋愛よりも償いという言葉が胸に思い浮かんでしまうのだ、あのような形で、あのお方を・・・」

 

涙を流し始めるレン。

 

「・・・・・どうして悪いのぉ?」

「レン・・・レン?・・・レンよ、どうした?」

「私が殺しかけちゃったからぁ、死にそうになってるからぁ、元気になってほしくってぇ、好きになっちゃいけないのぉ?」

「いけないとかいうのではなくだな、それでは本来の、正しい恋愛ではなく、ただ単に責任を取らされているだけになるのではと・・・」

「好きなのお!本当に好きなのお!好きだから元気になってほしいのお!好きだから、元気にならなくっても、赤ちゃんに生まれ変わっても生きてほしいのお!!」

 

大きく響くレンの声は、私の心にも響いた・・・

冷静に考えれば、レンのこの言っている事は、私と同じではないか!

私があのお方を犯してしまったのと同じ理由・・・だからこそ、私がレンを責めることは・・・できない。

 

「ひっく・・ひっく・・・好きだからぁ・・・好きだから、好きだから本当はぁ、まだ寝てるのにしたくなかったのにぃ・・・」

「す、すまない・・・皆も済まない、私は恋愛というものに絶望的に疎いゆえ・・・許して欲しい」

 

レンを胸で泣かせてやるリリ・・・

ララがサッと一歩前へ出て私と対峙する。

 

「本当のことを申し上げれば、あのお方を犯す提言を、あえてハプニカ様にしない事も考えましたわ」

「それはそうであろう、愛する方を、ちゃんとした意思確認も無しに犯すのであるから、戸惑いがあって当然だ」

「いえ違います、ハプニカ様に内緒で、私たちだけであのお方をこっそり犯して受胎する事も可能だったという事です」

 

なんと・・・出し抜く計画もあったというのか!?

 

「しかし、ハプニカ様のこれまでの想いに敬意を表して・・・義務感があったとすればそれはハプニカ様自身に対してですわ」

「私に気を使ったとすれば、そういう意味でなのか・・・私ありきで提案したのではないのだな」

「はい、最初にあのお方を犯していただいたのは、最初にあのお方を愛したハプニカ様への敬意であり、私どもが思う存分に犯せるようにです」

「・・・皆が共犯となってしまったな、こうなれば、皆であのお方の王妃になるしか無い・・・よし、では次にミルの話も聞こう」

「今すぐにですか?あのお方の看病をシャクナ様と交代してらしてる時間ですが・・・お供いたしましょうか」

 

いや、ここは2人きりで話がしたい。

 

「ここで待っておれ、すぐに戻る・・・」

 

あのお方の寝室へ向かう、

廊下を歩きながら考える・・・

さすが親衛隊4姉妹、有無を言わせぬ説明をしてくれた。

実際に恋愛経験の疎い私には何が正しいか正しくないか判断しかねる、

だからこそ、欲しい納得をさせてくれた・・・さて、ミルはどう納得させてくれるのであろうか・・・

 

「・・・・・失礼する」

 

入るとそこではミルが・・・

裸の愛するあのお方の肌を、な、舐めている!?

 

「何をしておる!」

「ん〜、気持ちいいと起きてくれるかなぁって」

「気持ちいいも何も、その・・・・・うぅ・・・」

 

ピーンと勃起したモノが目立つ・・・

まさか昨日からずっと?いや、さすがにそれは・・・

 

「ミルよ・・・その、やはり・・・いたした・・・のか?」

「うんー、初めてなのにとっても気持ちよかったぁ」

「そうか、それはよかっ・・・ではない、なぜそのような事をした!?」

「お姉さまと同じぃ、愛してるからぁ・・・お姉さま大事なお話を聞いてぇ」

「なんだ?・・・それより寒くはないのであろうか」

 

そっとあのお方の肌に布を被せるミル。

 

「お兄ちゃんに起きてもらうにはぁ、一生懸命、看病しないといけないんだけどぉ・・・」

「ああ、私も精一杯、起きていただくためにしなくてはならぬ事は、何でもするつもりだ」

「でもぉ、回復魔法とかよりもぉ、本当の愛がないとぉ、きっと起きてもらえないのぉ」

 

おとぎ話のようであるな、

眠れる姫を起すのは、真に愛する王子のキスのみ・・・

今は逆であるな、眠れる王子を起すのは、本当に愛している姫のキスのみという訳か。

 

「それでぇ、本気で愛してる人が多ければ多いほど、お兄ちゃんは起きてくれるのぉ」

「なるほど・・・ならば、親衛隊4姉妹と私とミルがいれば・・・」

「でもぉ、だからってぇ、レンちゃんやララさんリリさんルルさんはぁ、人数合わせとかじゃないよぉ」

「それは先程聞いたが・・・なる程、このお方を起すために本気で愛そうと言う訳か」

「本気で愛してるからぁ、看病してるのぉ、ララさんたちもぉ、ハプニカ様もぉ・・・だからここまで治ったのぉ」

 

言い方によるのだな、考え方によっては、皆が本気で愛していたからこそ、呼吸できるまで治療できた・・・

 

「ララさんたち言ってたもぉん、もし死なせちゃったらぁ、お姉さまに関係なくても一緒に死ぬってぇ」

「自害すると言っていたのは、私の後を追って、責任を取ってではなく、このお方の後を追ってという訳か」

「でも私、思うのぉ、もし起きてもらうために恋して愛するとしてもぉ、それが一生続くなら本当の恋だってぇ」

「それはもはや偽りの恋ではなくなるからな・・・ララたちの言っていた事も、間違ってはいない・・が・・・」

「だからぁ、お姉さまあんまり焼きもちやいちゃ駄目ぇ、みんなで仲良くお兄ちゃんと結婚しようよぉ〜、お願いぃ」

 

・・・・・そうだな、それが丸く収まる方法かも知れぬ。

このお方も愛してくれる王妃は多ければ多いほど良いであろう、

あとは婚姻を結んでからの競争だ、私はそれに勝ち抜いてみせよう。

 

「わかった、では皆で王妃になろう、ただし私は第一王妃、これだけは譲らぬ」

「うん〜、あとぉ・・・シャクナさんがぁ・・・」

「シャクナがどうした?・・・そうか、そういう意味ではシャクナは外れる事となるな」

「外してあげないでぇ・・・シャクナさんもぉ、お兄ちゃんのこと、憧れてて好きなんだからぁ」

「なに!?シャクナまでもか・・・まあ、あのお方の戦いをトーナメントで供にしていたからな・・・」

 

間近で勇士を見てきたなら惚れても無理は無い。

 

「シャクナは皇級僧侶が内定の身・・・地位的には申し分は無い」

「それとぉ、看病もぉ、あの回復魔法は恋してないとできないよぉ」

「魔法の相性ではなく、真の愛が治癒力を高めたのか・・・わかった、シャクナに意思を確認しよう」

「疲れて寝てるからぁ、夕方にぃ・・・じゃあそろそろぉ・・・」

「うむ、邪魔してすまない、ララたちも待っているゆえ・・・ミル、無理はするでないぞ」

 

私がドアへ向かうとミルはあのお方の足元へ潜り込んだ。

 

・・・ぺちゃっ・・・ぴちゃっ・・・れろっ・・・

 

ミルのあの頭の位置は・・・!

 

「ど、どこを舐めておるのだミル!」

「・・・・・・」

「こ・・・今夜、もう1度・・・やらせてもらうぞっ!」

 

部屋を出て考える・・・

まさかミル、今からまた犯すつもりでは!?

だが、だからといって止めさせる事は・・・今更・・・できぬ・・・か。

 

「ええい・・・皇務だ、皇務!」

 

 

 

日が沈み、

夕食の前にシャクナがやってきた。

玉座の前で深く深く礼をする・・・すでに上級僧侶の証となる帽子をかぶっている。

 

「シャクナ、よく来てくれた・・・この後、ミルと交代するのであるか?」

「はい、その前に寄らせていただきました、先日は上級僧侶昇格の儀式をミル様直属のお弟子さまにしていただいて、ありがとうございます」

「だがその帽子もすぐに用が無くなる、本音を言えば明日にでも、いや、今夜にでも皇級僧侶になってもらいたいのだが・・・」

 

その言葉にクラッとするシャクナ、

1級僧侶から数えれば4階級特進であるからして、

気が遠くなるような昇進なのであろう、だがシャクナには当然の地位だ。

 

「ハプニカさまっ!わたくしめに、皇級僧侶就任との命ですが・・・」

「辞退は許さぬ、すでに次期国王の命を救い、担当医にまでなっておるゆえ・・・」

「はいっ!そのっ、就任の件は命令でございますから、受けさせていただきます」

「そうか、決断してくれたか!では早速、中央闘技場で大々的に就任の儀式を・・・」

「お待ちくださいませ!その前に、どうしてもお願いがございます」

 

表情が一気に引き締まるシャクナ。

 

「全てにおいて物事には順序というものがあります、上級僧侶につきましては緊急ということもあり納得いたしましたが・・・」

「いきなり特級、最特級を飛び越えるのは嫌というのか?ならば2ヶ月、いや、1ヶ月ずつ開けて順次、儀式を・・・」

「いえ、その方法で急いで昇格しても、名ばかりの皇級僧侶で、他の僧侶の方々も、何よりわたくしが納得いたしません」

「ではどうするのだ?通常の試験では、早くとも最特級まで40年はかかるぞ?現に前の三賢人で一般から成り上がった唯一の僧侶は67歳で・・・」

「しかし他のお二方は皇族の方でしたため、2〜30代で就任なされたと聞きます、ですから、できればそのカリキュラムを、わたくしめに・・・」

 

そうか、皇室流の育成方法で、エリートとして学びたいのであるな、シャクナの素質であれば、その資格は十分にある。

 

「わかった、ミルは6歳から英才教育を施し11歳で皇級僧侶となり、今は三桁の弟子を教育しておる、

 シャクナはそのミルと同等の素質があるうえに、今の年齢から覚えれば5年もかかるまい、よしわかった、

 ミルから直々に教わると良い、あのお方への治療をおろそかにせぬ程度で・・・ただし、こちらからも1つ条件がある」

 

そうだ、丁度良いな、同時に意思確認もできる・・・こうしよう。

 

「シャクナよ、皇室の教育を受けるには、どうしても皇室に入らなくてはならぬのだ」

「ええっ!?わ、わたくしめが、皇室の、中に、で、です、すす、かかかかか・・・・・かっ!?」

「ああ、そうでなければ門外不出の教育法はできぬ、危険な魔法も覚えてもらうゆえに」

「かかか・・かしこ、まり、ました、そ、それで、ど、どのように、すれば、皇室へ・・・」

「簡単だ、政略結婚のような、まどろっこしい事はせぬ・・・あのお方の王妃となれば良い」

 

今度は両手を前で振り回して、あたふたしておる。

 

「そそそ、それは、皇級僧侶よりも、おおおおお、恐れ多い・・・トレオ様と、そんな・・・」

「トレオ・・・その呼び方がシャクナにはしっくりくるのであるな、そうだ、トレオの妻となるのだ」

「も、もも、もったいのうございます!私なんかに、つ、つつ、務まりますでしょうか・・・」

「務まるもなにも、トーナメントであのお方、トレオを最も支えたのはシャクナではないか、その資格はある」

「そう申されても・・・で、でも、それがあのお方の迷惑にならないのであれば・・・わ、私・・・」

 

みるみる顔を赤らめて、恥ずかしそうにうつむいた・・・

 

「私、私、わたくし、トレオ様が喜んでいただけるのでしたら・・・」

「きっと喜んでくれるであろう、もちろん私もミルも、親衛隊4姉妹も同じ王妃として供にあのお方を支えようぞ」

「はいっ!ま、末席で構いませんっ!元々、トレオ様には生涯尽くすつもりでしたから・・・光栄です!」

 

喜んでくれたようだ、これで安心・・・

 

「一応、順番はつけなくてはならぬゆえ、私は第一王妃、ミルが第二、その後が親衛隊で・・・シャクナは第七王妃となるが」

「そ、そばに、お傍にいられるだけで、わたくしは、トレオ様の王妃というだけで・・・・・幸せですっ!」

「ならば決まりだ、あのお方が目を覚ましたらすぐ知らせるつもりだ・・・シャクナよ、必ず目を覚まさせてあげて欲しい」

 

これでシャクナも心置きなく、心の底から愛を持って治療を・・・ん?泣いておる?

 

「どうしたシャクナ?」

「う・・・うれし・・く・・て・・・」

「そうか・・・だがその涙は、あのお方が起きた時のために取っておいて欲しい」

 

扉の方でいつのまにかララが待っておる、そろそろ食事に行かねばならぬな。

 

「では私はそろそろ・・・シャクナは食事はもう済ませたのか?」

「い、いえ、トレオ様へ食事を、な、流し込む作業がありますから・・・」

「そうか、ではあのお方と一緒に食事をするのだな、羨ましいぞ」

 

・・・シャクナとは皇級僧侶になってからの計画のようなものも聞いておきたいが、

今は時間が無いようだ、ミルもそう待たせてはいられぬからな、今度ゆっくり聞こう。

 

「ではシャクナ、頼んだ・・・この国のためにも、何より、あのお方のために」

「はいっっっ!!!」

 

もどる めくる