私は玉座に深く腰をかけ、あの青年との戦争中の事を思い出す・・・
いや、愛しい人との思い出に想いふける、と言った方が正しいだろう・・・
私はいつのまにか、あの青年の不思議な魅力に心惹かれて行った、
あのお方を想うと胸が締め付けられ・・・これが「ときめき」と確信するのに時間はかからなかった。
しかし私は軍をリーダー・セルフと共に取りまとめる必要があった。
セルフは若い、若すぎる、よって軍をまとめるには威厳という面で欠けていた。
威厳だけであればツァンク将軍がいたが、ベテランすぎるうえに我が強すぎる。
結局、セルフでは足りない「まとめる」といった部分では私が担う事も多かったが、
それゆえに特定の戦士に個人的感情を抱いている事がばれると、一気に立場がなくなる。
まだ胸も楽になったであろうに・・・出来た事はせいぜい数秒、見つめるだけ・・
それでも幸せであった、なぜなら私も、あのお方も生きている、それが確認できたから・・・
そう決めた時、すでにあのお方は姿を消してしまっていた、まるで幻でもあったかのように。
とにかくこの国の、今後の道筋をつけ、安定させなければ身動きが取れない・・・
落ち着いたら親衛隊に任せてあのお方を探し出そう、そう思っていたらあのお方のほうから来てくれた。
「そうか・・・ではその笑顔のまま、あのお方に渡してきて欲しい」
「ララお姉さまとの自信作ですー、きっと気に入っていただけますー」
「一応、売らない様に釘を刺しておきます、念のために言っておかないと」
「お薬塗ってさしあげますねぇ、新しい国王様になられる方ですからぁ〜」
・・・・・あのお方はセルフの遣いで来ている、ということは、アバンスへ戻るのであろうか。
人の気も知らず、それがさも当然のように参謀にでもするに違いない!
そうはさせん!あのお方は、私の隣で夫として、国王となる事が決まっておる!
ランスも手に・・セルフといざ本当の戦いになってもこれで良いだろう、
よし、あのお方を連れてアバンスへ行こう!今すぐにだ!近くの衛兵に声をかける。
「そうか、わかった・・・いつでも飛び立てるようにしておいてくれ」
軽い旅支度を整えるとあのお方の休まれている客間の前についた。
さて、どうやって連れ出すか・・・そうだな、散歩・・・とでも言っておこう、
アバンスへ軽く散歩へ行って、セルフにあのお方を私が貰うことを宣言し、
そしてまたここへ戻ってくる・・・なあに、私の白竜なら日が沈む頃には戻ってこられる。
「かしこまりました、新しい国王様のために私達4姉妹で作らせていただきます」
「そうしてくれ、まだ返事は貰えていないがこの国に住みたくなるような料理を頼んだ」
どうしても目の前にいる敵の大群と闘うと言ってきかない事があった。
だがしかしリスクが高すぎた、ここは目の前の敵を逃がしてでも、
皆が合流するのを待つべき・・あまりにセルフがきかなかったので平手打ちで目を覚まさせた。
セルフの無理をつっぱねた最大の原因であった事は誰にも言えない・・・
あのお方がいなければ逆に勝負に打って出た可能性もじゅうぶんにあった、
だが、こういう賭けは自分が必ず勝てると自分に言い聞かせられなければできぬ、だから・・・
「だからあのお方がいると、賭けに勝つ確信が持てなかった・・・」
そう思うがゆえに、私が生き延びてあのお方を守ろうと思ったものだ。
いかにあのお方が私に必要で、かけがえのない者であるかの説得・・・
私のあのお方に対する特別な感情など、セルフはとても知りえないであろう、
いや、セルフと結婚したリュームは気付いていたかも知れぬな、あの洞察力なら・・・
そしてリュームがセルフにそれを伝えていたとしたら?身を引いてくれるであろうか・・・
とは、とても言えぬ。逆に口説けていない事を暴露しているようなものだ、
そうなると隙を見せ、今度はセルフがあのお方を口説いて大臣か参謀にでも・・・!!
そういえば踊り子出身のチャヌムがセルフと稽古した時、ふざけて胸をはだけたらセルフは動きが完全に止まった。
・・・私も・・いや、ならぬ!私の胸を見て良い男は、あのお方のみ!!
「いやその・・・どういう服が良いかわからなくて・・・着替えてくる」
「ハプニカ様はハプニカ様な方がいいですよ、無理なさらず・・それでどこへ?」
何も疑わず付いてきてくれている、さあ、白竜のもとへ・・・!!