読んでいるのは・・・ミル様の日記!しかもミル様はベットで疲れて寝てらっしゃる!?
あのまま読ませても良いのでしょうか、大戦の事を克明に書かれた日記でしたら、
ハプニカ様があのお方へ好意を抱いていく様子も順番に書かれているでしょうし、
大戦後の闘技トーナメント最終日まで書かれていれば、記憶を蘇らせる事になるのでは・・・!!
私は言い訳を考えながらハプニカ様に声をかけようと扉をさらに開くと、
ミル様がこちらを見て唇に指をシーッのポーズであてていらっしゃる、
きっとミル様にはミル様なりの考えでハプニカ様に自ら日記を読ませているのでしょう・・・わかりました。
「何ですルル?朝食でしたら書類の整理に区切りがつく9時過ぎにいただきます」
「私は・・・私のすべき事を・・・・・ではハプニカ様の所へ・・・」
ソファーで寝ているリリを起こさないようにゆっくりと廊下へ・・・
体力的にはもう力を取り戻せそうですわね、でも問題は精神面・・・!!
「ふむそうか、ミルの日記は闘技トーナメントの予選が終わったところで切れておってな・・・」
・・・やはりミル様、忙しくて日記の続きを書く暇が無かったのでしょうね。
「そうか・・・レンが優勝したか、ではレンも心の底から姉妹の繋がりを誇れるであろうな」
「なに?日付ではトーナメントから半月が過ぎておるのだが・・・」
「・・・・・待て!その・・・なんだ・・・トーナメントだが・・・」
「ぅ・・・・・そうだな、来年はターレ殿に出ていただこう、本当なら優勝して貰ってから私と結婚すべきであろうが、国民も待てまい」
「その・・・半月も治療が必要なら只の怪我ではあるまい、運営に落ち度があったならば会って謝らねばならぬ」
ついに・・・ハプニカ様の本能が対面を決意されたようですわね。
ひょっとしたら、また当分食事が喉を通らなくなるかも知れませんから・・・
「ララよ、ミルの日記を読んで記憶を思い出していたのだが・・・おかしな事があってな」
「この私が・・・大戦の間、仲間に恋をしていたというのだ、おかしいとは思わぬか?」
「ハプニカ様が恋をする、すごく真っ当で自然な事に思えますが」
「だが私には父上が決めた、ターレ公爵という婚約者がいる。私が二股をかけるように思えるか?」
「ハプニカ様はこと恋愛に対しては真摯で情熱的だと思われます」
「私もそうだと思っておる、よって、二股などかける訳がない、そうであろう?」
「はい、2人と同時に恋愛ができる程の器用さは持ってはいないはずです」
「しかし、ミルの日記では私がターレ殿ではない者に恋をしている、おかしいではないか」
「ミルよ、あの日記は事実に着色を加えた創作、そうであるな?」
「小説を書くのは自由であるが、もう少し真実味を出して欲しいものだ」
もし看病の最中に読まれでもすれば大変だ、幸い帰郷しておられるが・・・」
「ターレ殿が戻られたら、わざと1日休んで看病してもらう事にするぞ、
私の意識がはっきりしている時に1日中傍で甘えさせてもらえれば私は嬉しい・・・」
ミル様も泣きそう・・・と、ようやくあのお方の治療室についた。
「どうした?泣くほどではないであろう、親衛隊四姉妹として当然の優勝だ」
シャクナさんは少しでも油断すると土色に変色してしまう、あのお方の体を懸命に治癒魔法で包む・・・
「・・・・・失礼する・・・ララよ、これは・・・もう死んでおるのではないか!?」
「私も最初はそう思いました、治療を止めればたちまち全身が腐ってしまうでしょう、でも、まだ生きておられます」
「生きている、というより、無理矢理生かしておるだけでは・・・それで、これは・・・・・誰だ?」
「ん?・・・なぜだ?・・・なぜ私は・・・泣いて・・・お・・・る・・?」
「ハプニカ様・・・お気づきになられませんか・・・最愛の方を・・・」
「これは・・・・・ま、まさか・・・この・・胸の傷は・・・そして・・この顔は・・・おぉ・・・・・」
「そうか・・そうだ・・・思い出したぞ・・あの日記は・・真実・・・そして・・・あの翌日・・悲劇が・・・・・」
「ハプニカ様、このお方はまだ生きておられます、そして、意識を戻させるのは、ハプニカ様が必要なのです!」
「私は・・・私は何という事を・・・おぉ・・・う・・うぁ・・・うああああああああああああああああああああ!!!!!」
「おねえさま!!助けないとぉ!!はやくぅ!たすけてあげてぇ!!」
「うあっ・・あうっ・・うっ・・・ぁぁあうっ・・・う・・えぐっ・・えぐっ・・・・・ぉえっ・・・」
嗚咽が部屋に響く中、シャクナさんは黙々と魔法をかけ続けている・・・
「・・・ハプニカ様、落ち着いてください・・・あのお方の治療中ですから・・・」
「ぅぅぅ・・・・・ぅあ・・・ああぁ・・・・わた・・しは・・・なんと・・いう・・あやま・・ち・・を」
「まだ生きておられます、仮死状態ですが、懸命に治療を続けておりますゆえ・・・」
「・・・・・・ララよ・・・あれから・・・何日が経ったと申した・・・」
「はい、倒られてから、半月が過ぎております、15日です・・・ですからもう生命の猶予が・・・!!」
「・・・・・・・・・・・よし、私に泣く暇は無い、治療を急ぐぞ!」
「一刻の猶予も無いのであれば、泣いたり後悔したりするのは後だ、私はこのお方の治療に専念する!」
ハプニカ様、なんと強い意志を持っておられる方なのでしょう!!
「えっとぉ・・・声をかけたりぃ、体をさすったりぃ、息をおくりこんだりぃ・・・」
「湯で体を拭くのはどうだ?もしくは何か大きな刺激を与えるとかだな・・・」
おそらくまだ死んでいない事、意識が戻る希望がある事を理解し、
自分の感情が、精神が崩れ落ちる前に「自分がなすべき事」を認識して実行なさってる!
悲しむこと、後悔する事を後回しにして全てを愛する方の生命維持優先とする・・・さすがですわ、
でもこれだと、愛するお方が亡くなった瞬間、ハプニカ様の精神は間違いなく修復不可能に崩壊する・・・!!
「かしこまりました!私も全力でおてつ・・だ・・・・ぁ・・・」
今度は私が・・・限界にきて・・・しまった・・よ・う・・で・・・・・
ぁ・・・安らかな魔法・・これは・・・ミルさまの・・・回復・・ま・・ほ・・・・・・