翌日・・・前日のマリーからの尋問により、

かなり核心を突いた情報を聞き出す事ができました。

予想外に反ハプニカ派が根強くはびこり、拘束者は三桁を超えた・・・

 

「まだ油断はできませんが、まずは一安心ですわね」

「はいー、マリーの罪の軽減も考えないといけませんねー」

「それはハプニカ様かミル様の決める事ですわ、皇族の方は皇族の方からでしか裁けない掟ですから」

「マリーさんの証言ー・・・本当に全て信じられますでしょうかー」

「ええ、話に矛盾はありませんし、何よりあの瞳・・・ハプニカ様やミル様の輝きを僅かながら感じました」

 

マリーの証言は疑わしい人間を告発したとともに、

まったく怪しくない、信頼できる人間も同時に教えてくれたわ、

つまりそれはマリーたち反・ハプニカ派が警戒すべき敵だったため、

計画を悟られないようにするためマークすべき人間・・・その特定のおかげで私達の労力が一気に解消される事となる、

あのお方の警護1つにしても、ターレ公爵1人に任せるより衛兵10人を置いた方が・・・ターレ公爵もよくやってくれましたけど。

 

「マリーさんを独房から、特別牢へ戻してさしあげましょう」

「良いのですかー?万が一、また脱走するような事があったらー・・・」

「そのときは・・・ミル様に決断をしていただきましょう、大変重い決断を・・・」

 

ドタドタドタドタ・・・・・

 

「ララ姉さん!」

「ルル、どうしました?また何か?」

「ハプニカ様が・・・目を覚ましました!」

「目を覚ましたとは・・・正気に戻ったという意味ですね?」

「そ、それが・・・とにかくハプニカ様の所へ!!」

 

急いでハプニカ様の寝室へ駆けつける!

そこには上半身を起こしているハプニカ様と、

隣で体を震わせながらもハプニカ様に食事を与えるミル様・・・

 

「ハプニカ様!!」

「・・・・・・・・・」

 

無言でヨーグルトの乗ったスプーンを口へ入れるハプニカ様、

ごくりと飲み込んで、スプーンをミル様が抜くと、ゆっくりこちらを向いた・・・

 

「・・・・・あなたは・・・・・だあ・・・れ?」

「ハプニカ様!ララです!親衛隊長の、ララでございます!!」

「ララ・・・・ララは・・・おとなでは・・・ない・・・の・・・」

「ハプニカ様?・・・・・ハプニカ様?」

「・・・ねえ・・・ちちうえ・・・と・・ははうえ・・と・・・あにうえ・・・は?」

 

まだトローンと、まどろんだ瞳・・・

私はハプニカ様が運ばれた直後に命を狙いに来た僧侶・ラーナンの言葉を思い出した。

 

「まさか・・・ハプニカ様、子供還りに!?」

 

ミル様は震えの止まらない手で懸命にハプニカ様へ水を飲ませる・・・

 

「そうなのぉ、きっとお姉さまぁ、10才くらいになってるのぉ」

「と、いうことは・・・戻るのですね?」

「これから少しずつぅ、年をはやくとってもらってぇ、元の年齢まで戻ってもらうのぉ」

 

・・・・・ううっ、思わず私の目から涙が・・・

ハプニカ様が戻る・・・元のハプニカ様に・・・戻してみせる!!

 

「・・・・・ミル様、手がおぼつかないようですね、かわりましょう」

「うぅん、私がおねぇ様をもどすのぉ、私でないとできないのぉ、きっとぉ」

「でもそんなに震えていらっしゃって・・・まさか、お風邪でも・・・?」

「・・・きのぉ、マリーさんにされたのがぁ・・まだのこっててぇ・・・」

 

!!・・・・・そうでしたわね、

まだその余韻が抜け切っていないのでしょう、

でも、その体を我慢してでもハプニカ様を助けたいその気持ち・・・痛いほどわかりますわ。

 

「ではハプニカ様はお任せします・・・」

「明日になったらぁ、シャクナさんと代わりますぅ」

「え?シャクナさんはあのお方の治療に・・ではいつ、休まれるのですか?」

「シャクナさんもぉ、私もぉ、ちょっとずつ休んでるから心配しないでぇ」

「わ、わかりました・・・それではあのお方を見てまいります」

 

・・・・・ミル様の弟子でも謀反者の白黒がはっきりしてきていますもの、

白とはっきりわかってらっしゃる方に、これからもっともっとサポートしていただきましょう。

 

「リリはこの部屋の前で見張りを」

「はいー」

「ルルは謀反者の尋問の続きをお願いするわ」

「わかっています、休んでいるレンの分もがんばるよ」

「レンが戻ったらルル、次はあなたが休みなさいね」

 

私はあのお方の治療室へと向かう・・・

まだ慌しい・・・運び込まれた時の忙しさがそのまま今日まで続いているのですもの。

 

「おお!ララではないか」

「ターレ公爵、どちらへ行かれるのですか?」

「いやその・・・ハプニカ様の様子を知りたくてな・・・」

「まだミル様が看病しておられます、部屋もリリが見張っております」

「そうか・・・そういえば街で面白い噂を聞いたぞ」

 

噂・・・もうすでに流してあるはず・・・

 

「ハプニカ様の結婚相手が、事もあろうにあのトレオとして現れた大戦の英雄であると・・・」

「そうですか、それでターレ公爵はどうなさったのですか?」

「どうもせぬわ、その方がいざ発表の時、私が出た時の国民の驚きと喜びを見たいのでな!はっはっは」

 

・・・結果的に良い方に出ている様ですので、ここは放っておきましょう。

 

「しかも英雄の像を皆で造ろうとカンパまで・・・私も一口乗っておいたぞ」

「そうですか、国民の皆さんはそんなことまで・・・」

「ま、最終的には私の像になるのであろうがな・・では城を見回るとしよう!はっはっはっは」

 

すっかり次期国王気分・・・

ここまでくると気の毒にならない事もないですわ。

でも、ターレ公爵の勝手な思い込みですもの、同情はすれどハプニカ様のお相手はもう・・・

 

「ハプニカ様のためにも、国民のためにも、あのお方に生きていただかなくては・・・!!」

 

 

 

静かに、邪魔にならぬように治療室へ入る、

シャクナさんが回復魔法をかけながら助手が口へ運ぶフルーツを食べる・・・

相当疲れている様子は目のくまから見てとれる、早くミル様が代わってあげないと・・でも・・・

 

「・・・・・」

 

ごくっ、とフルーツを飲み込むと両手に力を込め、

魔力をあげる・・・それはさながら命を削り、寿命をあのお方に分けているかのよう・・・!!

 

「・・・・・・・トレオ様・・・・トレオ様、もうすぐ・・もうすぐ良くなりますから・・・!!」

 

・・・やはり邪魔をしてはいけないようですわ・・・

私は静かに部屋を出る・・・と、開けた扉に立っていたのは・・・

 

「レン・・・もっと休まなくてはいけませんよ」

「もうじゅうぶん休んだのぉ・・・シャクナさんを助けるぅ」

「この部屋の警備は信頼のできる衛兵に託しました、レンは今日1日休むのが仕事ですよ?」

「でもぉ、シャクナさんが休めないからぁ、シャクナさんのお手伝いしたいのー!」

「・・・・・・わかりました、レンは頑固ですものね、邪魔にならないようにするのですよ?」

 

レンが落ち着いて休めない気持ちは痛いほどわかる・・・

でも、まだまだする事はいっぱい・・・ハプニカ様が戻られる目処が立ってきた以上、

今こそ気を抜かず、気を引き締めてやらないと・・・さて、私もこれから尋問を手伝うことにしましょう。

 

 

 

 

 

さらに翌日、外は雨・・・

 

「ふう・・・尋問は難しいですわね、リリ」

「はいー、人の心は頑丈ですからー、証拠を突きつけても理論的な部分を無視する方もいらしてー・・・」

「・・・・・心は頑丈・・・だからこそ、1度壊れてしまうと、脆いのでしょうね・・・」

 

ハプニカ様はあれから回復されたのでしょうか・・・

あのお方も、回復なさってくれないと・・・たとえハプニカ様が回復なさっても、

せっかく正気に戻ったハプニカ様があのお方の亡骸と対面しては、今度こそ「戻らない発狂」をしてしまうかも知れません。

 

「・・・・・今ですら、戻る保障はどこにも・・・」

「お姉さまー、どうなされましたー?」

「い、いえ・・・リリ、あのお方の様子を見てきてもらえますか?」

「はいー・・・ではお姉さまはー・・・」

「ハプニカ様の方を見てまいります」

 

・・・向かうとハプニカ様の部屋の前には衛兵が見張っている、

軽くノックをして中へ入ると・・・あら?いない・・・どちらへ?あ、ベランダ・・・

 

「どうしたのですか?ルル」

「はい、どうしても出るって言ってきかなくって」

 

ベランダで雨に打たれながら上空を見つめるハプニカ様・・・

何かを思い出そうとしているのか、何かに呼ばれているのか・・・・・

ただ一点、雨粒が全身に落ちるのもかまわず空を見上げ続けている・・・・・

 

「ハプニカ様・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ」

 

上空に影が・・・

黒い雨雲の間を縫ってやってきたのは・・・・・ハプニカ様の白竜!

 

「グエーーーッ!グエッ!グエエーーーーーッッ!!!」

 

白竜を見つめるハプニカ様・・・

 

「・・・・・・・・ぁ・・・・・あなた・・は・・・私・・の・・・と・・も・・だ・・・・・ち」

 

きっと白竜もハプニカ様の復活を待ち望んでいるのね・・・

ここは、白竜とハプニカ様の2人っきりにしてさしあげましょう・・・

ベランダから部屋へ戻るとルルが大きなタオルを用意して待っている。

 

「ハプニカ様を後でお風呂へ入れてさしあげてください」

「はい、そのつもりです」

「・・・それで、ミル様は?」

「ミル様はシャクナ様と一緒にあのお方の治療中で、レンもそれにつきそってます」

「確かにハプニカ様の回復が進んだ今、比重をあのお方に移すべきですわね・・・」

 

もちろん、どっちが大事と言われれば両方大事ですわ、

この国の新しい国王様とその王妃様ですもの、どちらも助けなくてはいけない・・・

 

「・・・・・あら?では、謀反者の尋問は?」

「それが・・・する事が無いからやらせて欲しいと、ターレ公爵が・・・」

「・・・ターレ公爵も休んでいただかなくてはいけませんわね」

 

信頼のおける大臣も徐々に復帰していただいている事ですし・・・

とはいえ、こういう尋問は本音を言えば最も適役なのはハプニカ様・・・

だからといって回復を待ってはいられない、となるとやはり私とルルでするしか無いわね。

 

「私はターレ公爵と交代してきます、ルルもリリと交代して来てください」

「わかりました・・・・あ、ハプニカ様が・・・」

 

ベランダに目をやると・・・

 

「・・・う・・ううっ・・・うううっっ・・・」

 

白竜の頬に顔をつけて泣いてらっしゃる・・・

何を想って泣いてらっしゃるのかわかりませんが、

ハプニカ様ならきっと、きっと、立ち直ってくださると信じています・・・・・

 

 

 

 

 

「ふう・・・今日の尋問はこれで終わりにしましょう、ルル、残りは明日ですわ」

「はい・・それで、あきらかに悪い人間はそろそろ処罰しないと・・・牢がもう、いっぱいです」

「・・・・・仕方ありませんわ、軽い部類の罪人は恩赦という事で出してしまいましょう」

「良いんですか?ハプニカ様に無断で」

「ミル様に判を突いていただく必要はありますが、この際仕方ないでしょう、ただ、あきらかに軽い罪しかないと見て取れる人のみです」

 

軽い罪だけと思ったら実はとんでもない重罪人、ってこともありえますから・・・

 

「マリーさんのおかげで、かなり白黒ついてきたはずなのに・・・終わりませんわね」

「ええ、マリーも全部、隅から隅まで知り尽くしていた訳ではないようですから」

「そういえば、そのマリーさんはどうしています?」

「あ、あの・・・その・・・と、特別牢で・・・そ・・その・・・」

「・・・・顔を赤くしていないで、はっきりと教えなさい」

 

人差し指と人差し指をつんつん合わせるルル。

 

「その・・・看守を誘惑しては、その、何度も何度もイカせて・・・」

「また脱走を繰り返しているのですか?」

「いえ、もう、脱走する気は無いみたいで、なんていうか、ストレス解消の、ヤケ食いみたいに、男も女も見境なく・・・」

 

あきれた・・・

一応、皇族の方なのに何と言う淫乱な・・・

・・・・・そうだわ、こうなったら、猫の手でも借りたい事ですし・・・

 

「明日から容疑者や罪人の尋問はマリーさんにもやってもらいましょう」

「え!?いいんですか?だってマリーも一応、まだ刑罰を待つ罪人なのに」

「でも改心していますし、マリーさんなら敵側に内通していて直接尋問させた方が早いと思います、それと・・・」

 

こうなったらマリーさんの手もフルに使ってもらいましょう。

 

「ジャイラフ様やジャヴァー様が使っていた地下の拷問室、あそこをマリーさんに貸しましょう」

「でも、拷問はハプニカ様が禁止したはず・・・だから今もこうしててこずって・・・!!」

「拷問室を貸したのはマリーさんのやり易い様にするためです、苦痛を与えなければ拷問にはなりませんよね?」

「・・・・・なるほど、ララ姉さん頭いい、マリーのその・・・いやらしい手で」

「苦痛を与え続ければ拷問ですが、快感を与え続ければ拷問ではない、という解釈にしましょう」

 

実際はどうか知りませんが、これくらいの法の抜け穴は許してくださいますよね?ハプニカ様・・・

 

「そういえばハプニカ様の様子はいかがなされましたか?」

「リリ姉さんがついているはずだけど・・・あ、戻ってきた」

「ララお姉さまー、ハプニカ様がお呼びですー」

「私を?・・・ということは、もしかしたら・・・?」

「泣いているうちにー、何かを思い出したようですー」

 

・・・・・喜ぶのはまだ早いでしょう、

こういう事は慎重に、慎重に・・・・・では行きましょう!

 

 

 

「ハプニカ様、お呼びでしょうか?」

「ああ、忙しい所、すまない・・・」

 

すっかり痩せこけてはいるものの、

眼光は取り戻しつつあるようですわ・・・

 

「ララよ、それで・・・どうだ、今の様子は」

「はあ、今の様子・・・ですか」

 

・・・・・慎重に、慎重に・・・

 

「・・・ハプニカ様、何の様子でしょうか?」

「その・・私が・・・だな・・・その・・・あれだ・・・あの・・・」

 

まだ記憶が混乱しているのでしょう、

逆に私の言葉を待って、それで思い出すとっかかりにしようとしている・・・

しかし、こういう時にあわてて今の現状を言うのは危険でしょう、そうなるとここは・・・

 

「ハプニカ様には様々な情報収集をお願いされておりますから・・・どれからお話しましょうか」

「ああ・・・ではだな・・・・・父上の様子はどうだ」

「・・・ジャイラフ様のことですか?」

「そう・・・そうだ、そうであった、父上と兄上が・・・不穏な動きをしておるようだが」

「・・・・・今は様子見の段階です、動きがわかり次第、報告させていただきます」

 

ここまで思い出してくださってる、ということは・・・もうすぐですわ。

 

「そうか・・・では父上に、私はザムドラーが信じられぬゆえ、これから忠告に・・・」

「お待ち下さいハプニカ様・・・まだこの部屋からは出られませぬよう・・・」

「なぜだ?では兄者を呼んできてはもらえぬか、兄者なら話が早い」

「ジャヴァー様も今は・・・あちらの鏡をご覧なさいませ」

「なに?・・・・・!!・・・なんだ、この酷い顔は・・・これが本当に・・・私、か?」

 

ふらふらになっているのに気付かないハプニカ様・・・

それだけ記憶が「寝ぼけた」状態になっておられるのでしょう、

だからこそ、ハプニカ様自身の力で、記憶をゆっくりと順番に取り戻していただかなくては・・・

 

「ハプニカ様・・・まだ休まれるべきですわ」

「なぜ・・どういうことだ・・・どうして・・うっ・・・」

「・・・あれだけ泣かれたのですもの・・・仕方ありませんわ・・・」

「泣いた・・・そ・・そうだ・・・ううっ・・・は・・母・・・上・・・・・」

「・・・・・・・まだお母様を亡くされたショックが強いようですわね、落ち着くには時間がかかると思います」

 

泣き崩れるハプニカ様・・・

あの悲しみを、もう1度味わってらっしゃる・・・

私も心が痛みます・・・でも・・でも、これで良いのですわ、きっと・・・

 

「リリ、ハプニカ様に食事を」

「はいー、お持ちいたしますー」

「毒見もしっかりするのですよ」

「ううっ・・・うっ・・・・っっ・・・」

「ハプニカ様・・・とにかく早く栄養をつけていただかなくては・・・」

 

・・・・・記憶はハプニカ様のお母上が殺された所まで戻ってきたのでしょう、

そうなると後は大戦、そしていよいよ・・・慌てて急にあのお方の事を思い出させては、

あまりにショックが大きすぎて、今度こそ廃人になってしまうかも知れません、だからこそ、

ゆっくりゆっくりと、気を落ち着かせて、記憶を戻させてあげないといけません・・・

一番良いのはあのお方が元気な姿をハプニカ様に見せる事ですが・・・・・その可能性は・・・・・

 

 

 

 

 

ハプニカ様の記憶が戻り始めてからさらに4日が経ちました。

すっかりやつれていた体は血色を取り戻しはじめ、表情もキリリとしてきましたが・・・

 

「ララ、父上と兄者は?」

「はい、色々と忙しいようで・・・」

「ふむ、やはりザムドラーに騙されておるのであろうか・・・」

「それよりハプニカ様の食欲が戻られて嬉しいですわ」

「・・・母上を斬ったのは、やはり父上なのであろうか・・・私が直に問い詰めたいのだが・・・」

 

ハプニカ様が体力を取り戻し始めた以上、

いつまでもこの部屋に軟禁しておく訳にはいかないようですわね・・・

 

「父上も兄者も、顔ひとつ見せてくれぬとは、薄情であるな」

「・・・・・ハプニカ様も、ひょっとしたら切り捨てられたのかも知れませんわね」

「・・わかっておる、それくらい察しはついておる・・・しかし大戦だけは避けねばならぬ・・・」

 

ドタドタ・・・バタンバタン!!

 

「なんだ?騒々しい」

「見てまいりますわ」

 

外へ出るとそこには・・・

 

「ルルよ通せ!我が妻が元気になったそうではないか!」

「ターレ公爵!だめだよ!ハプニカ様はまだまだ療養中だよ!」

「食事をあれだけ運んでいるということは、私との面会も可能であろう!」

 

ターレ公爵・・・

ハプニカ様が一番デリケートなこんな時に・・・!!

 

「おお!ララではないか!ひと目、元気なハプニカ様を・・・」

「ターレ公爵、ハプニカ様は今、とても大事な・・・」

「何だ?おお、ターレ公爵か、少し髭が伸びたようだな、こちらへ参れ」

 

ハプニカ様、いつのまに私の後ろに!?

 

「ガッハハ!そうかそうか!では遠慮なく」

 

強引に入り込むターレ公爵!

ちゃんと事の事態をわかってくださってるのでしょうか!?

 

「あの・・・ハプニカ様!!」

「ララもこちらへ来い、ルルは外で待っておれ」

 

ドアが閉められ、部屋はハプニカ様と私とターレ公爵のみ・・・!!

 

「ターレ公爵・・・久しぶりであるな」

「ハプニカよ、元気そうで何よりだ、看病した甲斐があったぞ」

「・・・・・そなたが私の看病をしてくれていたのか!?」

「ああ、私が責任を持ってな・・・大変であったがそなたの顔を見て、今までの事など吹き飛んだぞ!」

「あの、ハプニカ様、看病は私達も・・・」

「それでだハプニカよ!」

 

私の言葉を塞ぐように言葉を被せるターレ公爵。

 

「約束は覚えておるな?」

「やく・・そ・・・く・・とは?」

「ターレ公爵!今は・・」

「忘れたとは言わせぬぞ!ハプニカ、そなたとの婚約を!!」

「・・・・・ああ、そうであったな、父上が決めたのであった」

 

何もこんな時に・・・!!

 

「それだけ確認したかったのだ、ハプニカは私と結婚する、それに相違無いな?」

「ああ、父上の決定は絶対だ、だが前も申したように、大戦の気配がするゆえ・・・」

「では大戦が終わったらすぐに結婚、で良いな?」

「・・・大戦は止めるつもりであるが、どちらにせよそうなるであろう」

「お待ちくださいハプニカ様!ターレ公爵も!その・・・」

「あいわかった!ハプニカよ、これで私の用件は済んだ!後はじっくり体を治せ!ガッハッハ!!」

 

満足そうに体をひるがえし、部屋を出て行くターレ公爵・・・!!

そして考え込むハプニカ様、ああ、なんという展開でしょう・・・ああ!!!

 

「ハプニカ様、その・・・」

「そうか・・・ターレ公爵が看病を・・・見直したぞ・・・ふむ・・悪い気はせぬな・・・」

「その・・・あの・・・・・ターレ公爵!!」

 

私は慌ててターレ公爵を追う!!

 

「ん?なんだララよ、ハプニカの看病はどうした」

「・・・・・ずるいですわ、あのような状態のハプニカ様に・・・」

「ずるいも何もこのターレ公爵、嘘はついておらぬぞ!!」

「確かにそうですが、でも・・・」

「巷で言われているおかしな噂もこれで払拭できるわ!ハプニカと結婚するのはこの私だ!ガッハッハ!!」

 

勝ち誇ったような態度・・・

このままではいけない・・・

早く、早くあのお方に意識を戻していただかないと!!

 

「・・・・・あのお方の様子を見に行きましょう・・・」

 

ハプニカ様はルルに任せ、

私はあのお方の治療室へ向かった・・・・・

 

もどる めくる